スイングバイIPOとは?スタートアップ企業がIPOで成功するためのコツも解説

創業手帳

スイングバイIPOは新しい形式のIPO


スタートアップ企業や起業家の中には、IPOを目指している方もいます。そのような中、登場した手法が「スイングバイIPO」です。
ユニークで日本では例を見ない新たな手法となり注目を集めています。

今回は、新しい形式の新規株式公開でもあるスイングバイIPOについてご紹介していきます。
スイングバイIPOが誕生した背景や事例、一般的なIPOとの違い、スタートアップ企業がIPOを目指すメリットなども解説していきます。
新規株式公開を目指している企業やスイングバイIPOに興味のある方は、ぜひチェックしてみてください。

スイングバイIPOとは?


まずは、スイングバイIPOを理解するためにも、どのような形式であるのかを、誕生した背景や事例と一緒に解説していきます。

大手企業の子会社から再びIPOを実施すること

IPOは理解できていても、スイングバイIPOについては理解していない方もいるかもしれません。
IPOは新規上場株式を意味し、株式市場に株式を公開することです。社会的信用の向上や資金調達の選択肢の拡大などのメリットがあります。
中小企業やベンチャー企業が目指している傾向にあります。

一方、スイングバイIPOとは大手企業の子会社となって力を蓄えてから上場する手法のことです。
スイングは宇宙の専門用語となり、探査機が大きな惑星の重力を活用して再加速して遠くまで進む様子を表している言葉です。

スイングバイIPOが誕生した背景

スイングバイIPOは日本でも珍しいスタイルのIPOです。
スイングバイIPOが誕生した背景には、日本で初めてスイングバイIPOで新規上場株式を果たしたKDDIグループの子会社・株式会社ソラコムが関係しています。

ソラコムがKDDIグループに参画した直後、創業メンバーのひとりでもあるエンジニアが宇宙用語でもある「スイングバイ」を比喩し、「KDDIという大きな惑星の引力により、宇宙船であるソラコムも大きく飛躍したい」と発言しました。
そして、IPOをして大きな目標を達成すべく成長したいと考え、「スイングバイIPO」という言葉が誕生したのです。

KDDIグループの子会社・株式会社ソラコムの事例


スイングバイIPOを生み出した企業でもある、KDDIグループの子会社・株式会社ソラコムの事例を解説していきます。

2017年にソラコムがKDDIグループ入りを果たす

ソラコムは、2014年に創業された会社です。IoTプラットフォームの「SORACOM」を提供しています。
具体的には、インターフェースやIoTデバイス、SIMといったハードウェアに加え、通信回線やデータ保存や可視化機能などのアプリケーションソフトウェアなど、ネットワークサービスです。
ソラコムは、2017年にKDDIグループへと参画しています。
大企業の一員となることを安心するのではなく、「グローバルプラットフォームになる」ことを夢見た参画で、M&Aをした際には「出口ではなく届かなかった領域に道を拓くエントランス」と表現しています。

KDDIグループに参画した当時はまだスイングバイIPOのようなコンセプトは生まれておらず、「自分たちのプラットフォームを世界中のお客様に使ってもらえるようになりたい」という想いもあったそうです。
その後は、KDDIの支援のもとで事業に邁進し、M&Aを行った当初は8万回線だったサービスが2019年には100万回線を超え、創業以来の夢でもあったグローバルプラットフォームに近づけるところまで来ていたのです。

2024年3月に東証グロース市場へ上場

2019年の秋にKDDIの社長や経営チームに上場の相談をしたところ、好意的に考えてくれ、ソラコムの夢に対してもサポーティブだったそうです。

しかし、ソラコムが一度KDDIに参画したにもかかわらず上場するとなれば、事情を知らない人から見れば疎遠になる印象もあり、ポジティブな印象を与える必要がありました。
その結果、「スイングバイIPO」というコンセプトが誕生し、2020年から上場の準備を進め、2024年3月に東証グロース市場への上場を果たしたのです。

一般的なIPOとスイングバイIPOの違い


前述したように、IPOは株式市場で株式を公開することを指しています。「Initial Public Offering」の略語で、証券取引所に上場すれば市場を通じて取引きができます。
国内には多くの企業が存在していますが、その中でも証券取引所に上場している企業は4,000社ほどといわれており、上場のハードルは高いです。

IPOとスイングバイIPOとの違いは、大企業からの支援の有無です。スイングバイIPOの場合、企業が一度大企業の子会社となってからIPOすることをいいます。
実際のところ、KDDIが買収する前の段階ではソラコムの契約回線数は10万も満たしていませんでした。
しかし、グループに参画して以降、徐々に回線数を増やしていき、2023年度末には600万回線を突破しています。
大企業のサポートを得ることで成長し、大きく成果を伸ばした結果、上場できたのです。

スタートアップ企業がIPOを目指すメリット


ここからは、スタートアップ企業がIPOを目指すメリットを解説していきます。
IPOはハードルが高いですが、スイングバイIPOを目指せれば様々なメリットを得ることにつながります。

資金調達力が向上する

IPOを行えば、募集株式の発行ができるようになります。新たに株を発行して株主を募集し、出資をしてもらうことで会社の資金を増やすことが可能です。
社債を発行すれば、投資家から資金提供を受けることもできます。銀行からの融資以外でも資金調達ができるようになるため、資金調達力が向上する点がメリットです。
事業拡大にもつながるでしょう。

知名度や信用力が向上する

IPOによって知名度や信用力の向上も目指せます。
前述したようにIPOのハードルは高いです。日本には350万社を超える会社が存在していますが、その中でも上場会社の割合は約0.1%といわれています。
IPOを行えば、日本でも数が少ない上場企業となるため、会社の知名度アップが期待できます。知名度があれば新規取引の獲得にもつながるでしょう。

また、IPOをするためには厳しい基準をクリアしなければいけません。
そのため、基準をクリアしたことで会社の信用度がアップし、金融機関からの融資も受けやすくなるメリットがあります。効率的に資金調達をしたい場合にも有効です。

従業員のモチベーションアップにつながる

IPOによって知名度や信用度がアップし、企業としての安定性も保たれる傾向にあります。そのため、採用力向上にも期待できます。
既存の従業員が働きやすい環境や、安定した収入、賃金の向上などが期待できれば、モチベーションアップにつなげることが可能です。
従業員のモチベーション維持やアップができれば、サービスの向上や生産力アップにもつながります。企業としても大きなメリットとなるはずです。

内部の管理体制が強化される

上場審査をクリアするためには審査基準に準拠した経営管理体制の構築も必要です。
社内規定やマニュアルの整備、内部監査制度の整備など、様々な準備を実施し実際に運用していくため、経営体制を強化できます。
コンプライアンス意識の向上や不正・不祥事を未然に防止し、安定した企業成長を実施するための体制づくりが可能です。

株式の価値が向上する

企業の業績が上がれば株価も上昇します。企業によっては創業者や従業員が株を保有する可能性もあります。その場合は、株価が上昇すれば利益の確保が可能です。
給与や報酬以外にも資金を得られるようになり、生活が潤うでしょう。

スイングバイIPOを目指すため、M&Aで失敗しないためには?


スイングバイIPOを目指すためにも、M&Aを成功させる必要があります。成功するためのコツをご紹介していくので参考にしてください。

タイミングを見極める

スタートアップのM&Aを成功させるためにはタイミングも重要です。
「売却すべきなのか」「売却先はどうやって選ぶのか」などと迷っているうちに適切なタイミングを逃してしまう可能性もあります。

スタートアップの場合、赤字だからと売却を悩み、売却先を探すことをやめてしまう方もいます。しかし、開業した当初に赤字が続くことは珍しくありません。
赤字でも業績が伸びていれば売却できる可能性は高いです。諦める前に思い切ってM&Aを実行することも大切で、決断力も重要な要素となります。

また、M&Aでは成長しきった企業よりも成長段階の企業のほうが、メリットがあると考える買い手側も多いです。
伸びしろがあるため、対策を加えることで成長する見込みがあると考えるためです。
反対に、伸びしろがなければ固定客にも影響を与えるため、新たなチャレンジを加えることは難しく、買い手側も慎重になってしまいます。
成長する可能性があれば、価格が高くなる可能性もあるため、諦めずに決断することが大切です。
自社が魅力的に見える時期を逃さずに売却先を探してM&Aの成功を目指してください。

シナジーのある企業と提携する

スタートアップが失敗を招く要因のひとつに相性の悪さが考えられます。
買い手側と売り手側にシナジー効果がなければM&Aをしても意味がないため、シナジーのある企業と提携することが重要です。
シナジーとは、複数が協力し合って高い効果を生み出すことを指します。相乗効果となり、単独で活動した時以上の効果が生まれるのです。

例えば、買い手側と売り手側の事業がまったく違う場合、ノウハウがないため互いの成長を阻害する恐れがあります。
双方に与えるメリットはないため、売り手側の技術やアイデアが活かせるような企業とのマッチングが重要となります。

また、相性の良さによってシナジー効果も高まるため、相性の良い企業との提携も大切です。
例えば、アクセサリーの定期サービスとアパレル会社のM&Aは、互いにファッションに関する知識があり、双方のサービスを掛け合わせることで事業の発展も期待できます。
売却先は慎重に見極める必要があるので、互いの企業がより良い効果を生み出すため、シナジー効果が期待できる企業選びをしてM&Aの成功を目指してみてください。

従業員にもきちんと配慮する

M&Aを実施する際には、従業員への配慮も忘れてはいけません。
M&Aの契約が終われば終了ではなく、人事待遇や企業文化、風土やシステムなど、2つの企業の様々な面をすり合わせる必要があります。
M&Aにプラスの印象を持っている従業員もいれば、マイナスな印象を持っている従業員もいるでしょう。
悪い印象を持っている従業員に対して、疑問があれば話を聞き、プラスとなる面を教える必要もあります。
また、不安を抱いている従業員も少なくないため、M&Aに関する詳細な説明をすることが大切です。
売却が決定しても説明がなければ、より不安を抱えてしまいます。不安が多くなれば企業に対しての不信感が高まるため、十分な説明を実施するようにしてください。

また、M&Aを行えば、売り手側には買い手側の企業の文化が入ってくるため、業務の工程も変わり、買い手側に合わせたマニュアルに整備されるケースもあります。
ただし、企業文化に変化が見られることで違和感をおぼえた従業員が離職するケースもあります。
優秀な従業員が離脱してしまえば、企画力や技術力の損失にもつながり、サービスや商品の提供にも影響を与えるでしょう。
スムーズな事業運営の妨げにもなってしまうため、経営統合をする際には従業員に対する適切なケアも必要です。

さらに、M&Aを実施する際には企業同士で交渉が進められます。売り手側は買い手側に対し、待遇面で不利のないよう交渉しなければいけません。
しかし、自社と相手企業の社長の相性が悪ければ、交渉がスムーズに進まず話し合いが難航する恐れがあります。
想定したメリットを得られずに失敗する可能性があるので、マッチングが重要です。
M&Aに臨む際には、丁寧にマッチングを行い、社長同士の相性も考慮して相手先を選ぶことが大切です。

スイングバイIPOを目指して、M&Aも検討してみよう

IPOを達成すれば、企業には様々なメリットがあります。
しかし、事業の継続が難しかったり、資金が足りなかったりすいなど、成長を目指すためには様々な壁もあるでしょう。
そのような時には、スイングバイIPOを目指すためにもM&Aを検討してみてください。
今回ご紹介したソラコムのように、大企業の支援を受けることで事業が発展し、上場を目指せる可能性があります。
スイングバイIPOを達成するためにも、M&Aを成功させるためのコツを参考にして買い手企業選びを行ってください。

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(編集:創業手帳編集部)

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