開業資金をどう集める?自己資金・融資・補助金を賢く組み合わせることがポイント

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資金計画を立てることが失敗しないコツ


お店や事業をはじめたいと思っても、最初のハードルになる課題が開業資金を集める手段です。
自己資金でまかなえれば理想的ですが、自己資金だけで足りるケースは少なく、多くの開業者が融資や補助金を組み合わせて資金を捻出しています。

この記事では、開業資金の主な集め方と、失敗しないための資金計画の立て方をわかりやすく解説します。これから開業を考えている人もぜひ参考にしてください。

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開業資金の内訳を知ろう


開業にあたって、そもそも開業にどの程度の費用がかかるのか考えたことはありますか。ここでは開業資金の内訳を紹介しています。
どの程度の費用になるのか実際に書き出して計算してみてください。

1. 初期費用(設備・内装・仕入れなど)

開業費用は、どういった事業をはじめるかによって違います。同じ販売であってもオンラインショップなのか実店舗なのか、扱う商品によっても異なるでしょう。
実店舗を構えて開業する場合、初期費用は開業に必要な設備購入や内装工事、店舗の保証金などが含まれます。
これらの全体の資金計画の約半分を占めることが多く、どの部分でコストダウンするか頭を悩ませるポイントです。

2024年度新規開業実態調査(2023年11月27日)によると、500万~1,000万円未満の割合が最も多く3割以上を占めます。
初期費用は金額も大きく、用意した資金ギリギリになってしまうケースは少なくありません。

開業直後は予想外の出費が発生しやすいので余裕をもっておくようにおすすめします。
大雑把に計算するのではなく見積書を複数取り比較しながら、費用を明確に管理するようにしてください。

2. 運転資金(家賃・人件費・広告費など)

開業するには、店舗や商品を準備するだけでなく、営業し続けるための資金も必要です。
開業してすぐに利益が出るとは限りません。赤字の期間を支えるためにも運転資金は開業後3〜6カ月分を確保しておくことが推奨されています。
運転資金は固定費と変動費に分けられます。家賃や人件費、仕入れ代金など固定的に発生する支出は月ごとに算出して現金の流れを把握しておいてください。

売上が伸びてくれば、材料費や仕入費といった変動費も必要になります。
開業初期は売上予測が不安定なため、過大な出費を避けるのが基本です。広告や販促費については、効果があるものに絞って活用することが資金繰り安定の鍵といえます。

3. 予備資金(想定外の支出に備える)

予備資金は急な修繕や想定外のトラブルに対応するために必要な資金です。
融資や補助金の入金が遅れるケースもあるため、手元資金を十分に持つことが事業継続のリスク回避につながります。

また、忘れがちですが、開業して利益が出ない間でも自分の生活を維持するための費用は発生します。
ケガや病気などで一時的に働けなくなった場合のカバーも考えておかなければいけません。

予備資金が有るかないかによって事業の安定性が大きく影響されます。予備費は運転資金とは別に明確に区分して管理しておいたほうが良いでしょう。

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開業資金を集める主な方法


開業資金を集める方法にはいろいろあります。開業する人をサポートする制度、取組みもあるので積極的に活用してください。
開業資金を集める方法をまとめました。

1. 自己資金でまかなう

開業資金の基本としてまず自己資金があります。
貯金や投資している商品などを原資として事業をスタートしてください。さらに自己資金には貯蓄・退職金・親族からの援助などが含まれます。

自己資金が融資を受ける金融機関から信頼を得る上でも重要な基盤となるため、自己資金がまったくない状態での開業はおすすめできません。
具体的には、日本政策金融公庫の創業融資では、総資金の2〜3割程度の自己資金を保有していることが審査の目安とされています。
自己資金を貯めるためには、生活資金と事業資金を明確に分けて資金準備してください。

通帳を分けて管理しておくと、資金の使途がわかりやすく事業への意欲をアピールできます。

2. 銀行・日本政策金融公庫などから融資を受ける

創業期の代表的な融資制度には、日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」や自治体を通じた信用保証協会付き融資があります。
新創業融資制度は、低金利でありながら融資上限額が大きく、返済期間が長い点が魅力です。新規開業資金のほか、女性、若者、シニア起業家の支援も実施しています。

融資審査では、自己資金比率・経営経験・事業計画の具体性が重視され、特に計画の実現性がポイントです。
創業計画書は、事業の目的・収支計画・市場分析を根拠付きで示し、面談では信頼性と熱意を伝えるようにしてください。

3. 補助金・助成金を活用する

開業資金を調達するには、補助金や助成金も調べてみてください。
開業時に利用可能な代表的制度には「小規模事業者持続化補助金」や「創業支援等事業費補助金」などがあります。

多くの補助金は後払い型になっていて、採択後に支出した経費の一部が返還される仕組みのため事前資金が必要です。
補助金や助成金を申請するには事業計画書・見積書・収支計画などが求められます。採択率を上げるには専門家や商工会議所のサポートを活用してください。

4. その他の調達方法(民間・個人支援)

クラウドファンディングは、不特定多数のサポーターから資金を集める方法です。
個人や法人といった指定はなくCAMPFIREやMakuakeなどのクラウドファンディンサイト通じて資金を募ることが可能です。
資金支援を受ける代わりに商品やサービスを提供するほか、社会的意義が大きい事業のように支援者からの共感を得る調達方法で多くの団体が資金を集めています。

また、自治体や民間企業が主催するビジネスコンテストでは、入賞により資金提供や専門家支援を受けられる場合があります。
親族・知人からの借入れや出資を受けることも資金調達手段ではありますが、後々のトラブル防止のために契約書は必ず作成してください。
関係性を悪くしないためにも、返済条件を明確にしておくことが重要です。

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資金調達を成功させるための3つのポイント


資金調達がうまくいくかによって、その後の事業は大きく変わります。ここでは、資金調達を成功させるために知っておきたいポイントを3つ厳選して紹介します。

1.開業目的と収支計画を明確にする

開業にあたって、資金を集めるために動き出す時には、まず置かれている状態を整理してください。
開業目的と現状での収支計画が明確になっていなければ、適切な資金調達はできません。
焦って融資を申し込んでも計画が練られていないと判断されてしまいます。

融資担当者は、融資の審査に当たって「資金の使い道」と「返済の見通し」を重視しています。そのため、開業目的と収支計画を明確に示すことが不可欠です。
収支計画では、できるだけ正確なシミュレーションが求められます。
売上予測や経費見積りを根拠データとともに提示し、現実的なシミュレーションを行うことで説得力を高めるようにしてください。

日本政策金融公庫や中小企業庁では開業に関わるテンプレートを公開しています。審査で事業の魅力や収支計画が伝わる計画書を作成するために利用してみてください。

2.根拠のある数値で融資担当者を納得させる

融資審査では「なぜその金額が必要なのか」を数字で説明することが求められます。なんとなくで作成した感覚的な計画では審査を通過できません。
同業種の平均データや業界統計を参照して、売上・経費・利益の根拠を客観的に示すことでより説得力があるアピールができるようになります。

融資担当者に計画の裏付けを知ってもらうために、創業計画書には、裏付けのデータを添付してください。
融資担当者の理解が深まれば、その後の審査がスムーズに進めやすくなります。

3.複数の資金源を組み合わせる

資金調達手段をひとつだけに決める必要はありません。自己資金・融資・補助金をバランス良く組み合わせることで、返済リスクを抑えつつ必要資金を確保可能です。
資金調達がスムーズに進む計画にしていても、実際には何が起きるかわかりません。

ひとつの資金源に依存せず、タイミングや条件に応じて複数の手段を使い分けるのが現実的な資金戦略です。
補助金の採択時期や融資実行には、タイムラグがあります。それぞれの時期をスケジュールに落としこみ、資金の流れを時系列で管理するようにしてください。

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開業資金を集める前にやっておくべき準備


開業資金を集める前の準備は、多方面にわたります。どういった準備が必要になるのか以下で紹介します。

開業計画書・事業計画書を作成

開業すると決めた時に、早い段階で着手すべきなのは開業計画書、事業計画書の作成です。
開業計画書は融資審査や補助金申請には必須の書類です。
事業の目的・収益モデル・市場分析を具体的に記載することになるので、事業の方向性やビジョンを見定めるためにも重要な意味を持ちます。

日本政策金融公庫の公式サイトでは、業種別の創業計画書のテンプレートが提供されていて、初めてでもスムーズに作成可能です。
根拠のある数値と実現可能な計画を示すことで、金融機関の信頼を得て融資審査を有利に進められます。

収支シミュレーションを立てる

収支シミュレーションは、予想できる範囲で売上と経費を現実的に設定してください。
開業後の売上・経費・利益を月単位で試算して資金繰り表を作成すれば、必要な運転資金を明確にできます。

中小機構が提供する「儲かる経営 キヅク君」を活用すれば、収支状況やコスト情報を把握可能です。
想定より売上が低いケースを想定した悲観シナリオも作成し、リスク対応策を検討しておくようにしてください。

信用情報(クレジット・税金・公共料金)を確認

融資審査では、過去のクレジット履歴や税金・公共料金の支払い状況も確認されます。開業する前に、各種支払いの未納は事前に解消しておかなければいけません
個人信用情報はJICCやCICなどの公式機関で開示請求が可能です。自分では忘れてしまっていることもあるので、自己で確認をしておくことを推奨します。

信用情報に問題があると融資が否決される可能性もあります。将来開業を目指す計画の段階から、支払い管理を徹底するようにしてください。

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開業資金におけるよくある失敗例と注意点


開業資金は、単純に資金を多く集めれば良いというわけではありません。ここでは開業資金の調達で発生しやすい失敗例や注意点をまとめました。

運転資金を確保せずに開業してしまう

多くの起業家が初期費用に資金を集中させ、開業後の運転資金を確保できずに資金ショートしています。
開業してから売上が安定するまでには通常3〜6カ月かかるため、その間の家賃・人件費・仕入れ費を見込んで資金を残しておかなければいけません

売上が計画通りに増えない場合や予期しない支出が発生することも考えて、運転資金は別に用意します。
運転資金を確保するためには、事業計画書に資金繰り計画表を組み込み、現金の流れを定量的に管理するようにしてください。

補助金をあてにしすぎて資金計画が崩れる

補助金は申請しても必ず採択されるわけではなく、採択率が30〜50%程度の制度も多いため、過信は禁物です。
中には、補助金がでるから開業するといった本末転倒なケースも散見されます。

採択されてからも補助金は原則「後払い方式」で支給されるため、先に自己資金や融資で支出を立替えなければいけません。
補助金に依存せず、まずは自己資金と融資で資金計画を成立させ、採択されればプラスに活用するのが安全な方法です。

自己資金ゼロでの開業を目指して信用を失う

自己資金がまったくない状態での開業は、金融機関から事業への覚悟が足りないと判断され、融資が通りにくくなってしまいます。
全額借入れに頼ると、後から返済負担が重くなってしまう点もデメリットです。

初年度からキャッシュフローが悪化するリスクを減らすためにも、少額でも自己資金を貯めてから開業するようにおすすめします。
自己資金があることで、金融機関からの信頼を得やすく、資金調達条件も有利にする効果が期待できます。

計画を曖昧なまま申請や融資に臨む

事業計画の内容が曖昧なまま融資面談や補助金申請を行うと、根拠不足として評価が下がり資金調達できないことがあります。
事業計画を立てる時には、具体的な市場データや競合分析を示すようにしてください。
客観的なデータがあることで計画の信頼性が高まり、審査担当者に事業の実現性を伝えやすくなります。

作成した計画書は専門家(中小企業診断士や商工会議所職員)にチェックしてもらい、客観的な改善を重ねると万全です。

借入条件や返済計画を十分に確認しない

収支計画と同じように返済計画も大切です。金利・返済期間・据置期間などの融資条件を十分に理解せず契約すると、後に返済負担が重くなる恐れがあります。
融資を受ける時には、複数の金融機関を比較し、自社の資金繰りに適した返済条件を選定することが安定経営のポイントです。
返済が厳しいと感じた場合は、早めに金融機関へ相談し、リスケジュール(返済計画の見直し)を検討してください。

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まとめ:複数の資金源を組み合わせて、無理のない開業を

開業資金は「自己資金+融資+補助金」の組み合わせが基本であり、各制度の特徴を理解して活用することが重要です。
借りすぎず・焦らず、現実的な計画で進めることで、開業からの資金繰りに余裕が生まれます。
資金調達の知識を持つことで、事業のスタートを安定させ、持続的な経営につなげてください。


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(編集:創業手帳編集部)

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