生前贈与は早めに考えておこう!やり方や注意点を解説します

資金調達手帳

生前贈与か相続か、資産を把握して承継について考えておこう


お金や事業、不動産などの財産は、いずれ誰かに引き継ぐことになります。
財産の承継について早い段階で考えておくことは、将来の負担やトラブルを減らすためにも重要です。
生前贈与をしておくか、相続にするか、資産を把握してから検討してください。
生前贈与や相続の仕組み、メリット・デメリットを理解しておきましょう。

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相続対策として使われている生前贈与


相続には様々な要素が関係します。
相続に関わる手続きの中でも、負担が大きくなってしまうのが相続税対策です。

相続税対策の目的は、納める税金の額を適正にすることです。
前もって対策をしておくかどうかで、納める税金が大きな差になる場合があります。
相続税は、相続の開始があったことを知った日から10カ月目の日までに原則納めるように決まっています。
どうやって支払うか、十分な支払資金があるかも考えておかなければいけません。

相続税対策は税額計算時の税額控除もありますが、将来の相続に備えて生前から対策も可能です。
生前贈与について紹介します。

生前贈与とは

生前贈与は、個人が自分の財産をほかの誰かに贈与することを言います。
贈与する側が「あげる」、受け取る側が「もらう」となるように双方の合意を得て成立します。

資産を引き継ぐ方法2つ

生前贈与も相続も資産を引き継ぐ手法です。
どちらを選ぶかによって、税金や法律上の扱いもまったく変わります。
それぞれの違いを理解しておきましょう。

1.生前贈与

生前贈与は、相手を選んで自分の資産の一部を贈与する方法を言います。
生前贈与と相続は、財産を引き継ぐ側の意志の点で大きく違います。
資産を引き継ぐ本人がその相手を選べるうえ、受け取る側の意志も確認できる方法です。

財産を早めに引き継ぐことによって、住宅資金や教育資金として相手の人生をサポートもできます。
加えて、銀行口座に残された余剰資金を活用できる点、受け取った側が直接感謝の言葉を伝えられる点がメリットです。

生前贈与は金額によっては受け取った側に贈与税が課税されますが、贈与税の特例や非課税制度を使えば節税可能です。
あらかじめ生前贈与して、相続税を目減りさせておくことによって、相続税額を下げる効果もあります。

2.相続

相続の場合には、亡くなった後に相続人が財産を引き継ぎます。
遺言書がない場合、本人がどう分けたいと生前考えていたかどうかがわかりません。
さらに、遺言書があったとしても相続人の合意によって本人が希望していない分割になる場合もあります。

引き継ぐ財産の金額によっては相続税の対象となるため、財産が目減りしてしまうこともリスクとして起こりえます。
相続税の負担を減らすため、制度の活用を検討しておきましょう。

生前に多額の資金を老後のために温存していたものの、有効活用されない場合もあります。
また、引き継ぐ側にとっても、できればお金が必要なタイミングで受け取りたいと考えるかもしれません。
資金面で困っていなかったとしても、相続時の負担を減らすために生前贈与を選択するケースもあります。

3つの生前贈与の方法


生前贈与と簡単に言っても、そのやり方は大きく3つに分けられます。
それぞれの違いについて紹介します。

1.暦年課税の非課税枠

贈与税の計算は、その年の1月1日から12月31日までの1年間で受け取った額を合計して計算します。
合計から基礎控除額110万円を差し引いて、残りの金額の税率をかけて計算する仕組みです。
税率は最低10%から最大55%まで所定の控除を差し引いて計算します。

贈与税は、基礎控除額の110万円までであれば、非課税で申告も不要です
つまり、この非課税枠を利用すれば、毎年110万円以内で少しずつ贈与できます。

110万円ずつであっても、数年かければまとまった金額を贈与できます。
さらに、贈与する側は誰に対して何人でも贈与できるため、一度に子どもや孫のように複数に贈与すればまとまった金額を贈与可能です。
事前に相続財産を減らしたい時に有効な手段として使われています。

2.相続時精算課税制度

相続時精算課税制度は、原則60歳以上の父母か祖父母から、20歳以上の子又は孫に対し、財産を贈与する時に使う制度です。
贈与税の申告書を提出することで、何回に分けた贈与でも累計2,500万円までは、贈与税が課税されません。
2,500万円を超えると一律20%の税率がかかります。
相続時精算課税制度で2,500万円を超えた時には、贈与税分を相続税から差し引く、もしくは相続税より多い贈与税の還付が受けられます。

ただし、相続時精算課税制度の場合は、贈与分が相続税の対象となります。
つまり、相続時精算課税制度は税金の支払いを遅らせる目的の制度です。
直接相続税を減らす方法ではありませんが、資産の承継を早めるために使われています。
また、これから価値が上がるとわかっている不動産であれば、相続時精算課税制度を使えば贈与時の時価で計算できるため、節税効果があります。

ただし、相続時精算課税制度を選ぶと、暦年課税の基礎控除枠110万円は使えないため注意が必要です。

3.特例や非課税制度の利用

贈与税は特例や非課税制度を活用して対策可能です。
例えば、「住宅取得等資金の贈与税の非課税」は、直系の父母、祖父母より20歳以上(2022年4月からは18歳以上)の子どもや孫が居住用の住宅取得資金などの援助を受ける場合に非課税の特例が受けられる制度です。
住宅の家屋の種類や受取人の条件もあるため、国税庁のホームページで利用できるかどうか確認してみましょう。

また、夫婦間で居住用の不動産などを贈与する場合にも、基礎控除額110万円とは別に最高で2,000万円まで控除可能です。
以前は、生前贈与した自宅も特別受益として遺産が分割されることがありました。
現在は法改正で相続から除外されるようになり、配偶者に確実に自宅を残したい場合に利用されています。

父母や祖父母などから30歳未満の人が教育資金に充てるお金を受け取った場合にも、最大で1,500万円の贈与税が非課税になります。
特例や非課税枠の制度は適用期間が決まっているものもあるので、必ず条件や期間を確認して利用してください。

生前贈与のメリット


将来のトラブルを避けるため、相続税対策のためのように生前贈与を選ぶ人にはそれぞれ理由があります。
生前贈与することには、どのようなメリットがあるのかまとめました。
生前贈与するかどうかで迷っている人もぜひ参考にしてください。

自分の意志で財産を承継する人を選べる

生前贈与と相続の大きな違いは、贈与する人、つまり財産を持っている人の意志が財産の承継に影響するかどうかです。

相続では、死後に法定相続人によって財産が分割されます。
遺言書があった場合でも法定相続人には、遺留分である最低限の相続の権利が保障されているため、個人の意志が反映されるとは限りません。

一方で生前贈与であれば、贈る相手を自由に選べるため財産を遺す人が自分の意志で財産を承継する人を選択できます。
自分の財産を自分の意志と受け取る相手の合意で引き継ぐことが可能です。
これは、財産を遺す人、受け取る人にとって大きなメリットといえるでしょう。

相続時の相続税を節税できる

生前贈与を検討する人には、相続時の負担を減らしたいと考える人もたくさんいます。
あらかじめ贈与しておくことで、相続財産を減らしておくことが可能です。

特例や制度を活用すれば生前贈与の贈与税も減らせます。
生前贈与を活用できれば、同じ金額を相続した場合の相続税よりも税額を抑えることも可能です
次の世代にできるだけ多くの財産を遺すためにも、生前贈与が活用されています。

贈与する時期を選べる

生前贈与は、相手に財産を引き継ぐタイミングを選択できる点もメリットです。
一般的に、相続はタイミングが選べず、いつ財産が承継できるかわかりません。
例えば、誰かの進学資金や住居資金を支援したいと考えた時、相続では財産が必要になるタイミングと、実際に財産を引き継ぐタイミングがずれてしまいます。

財産を受け取る側に立てば、必要な時にお金を受け取れていたらと考えるかもしれません。
財産を受け取る側にとって、生前贈与でお金を必要なタイミングで受け取れるのは大きなメリットといえます。

相続トラブルを回避できる

相続の手続きにおいては、トラブルが起きることも珍しくありません。
財産が多く残されていることによって、トラブルに発展することもあります。
生前贈与であらかじめ贈与しておくことは、トラブルを事前に回避するためにも効果的です。

例えば、兄弟がいてその中のひとりに土地家屋を残したいと考えた場合、相続ではほかの兄弟が遺留分を請求可能です。
しかし、生前贈与しておくことでほかの兄弟には請求権がなく、分割で争うこともなくなります。
トラブルが予想される場合には、あらかじめ生前贈与として財産を分割しておく方法が有効です。

生前贈与のデメリット


生前贈与には数多くのメリットがありますが、デメリットがまったくないわけではありません。
生前贈与には、どのようなデメリットがあるのかを紹介します。

税務署に生前贈与だと認められないリスクがある

生前贈与では、様々な控除や特例を使用します。
条件をよく確かめてから利用しないと、制度の対象外として税務署から認められないケースがあります。

不動産の贈与には費用がかかる

生前贈与は、特例や控除を使って贈与税を節約できます。
しかし、不動産の贈与の場合には贈与税以外の税金、手数料がかかってしまいます。
税金は、登録免許税と不動産取得税を納めなければいけません。
また、登記にかかる費用もあるため、贈与税がかからなくても出費はあると考えておくと良いでしょう。

タイミングによっては相続に加算される

生前贈与をしたとしても、贈与から3年以内に贈与者が亡くなってしまえば贈与された財産が相続財産とみなされてしまいます
生前贈与で節税したとしても、あとから相続税が課せられてしまえば意味がありません。
生前贈与する時には、できるだけ早めに駆け込みにならないように実施するようにしてください。

また、相続や遺贈を受けない人に対する生前贈与であれば3年以内であっても相続財産に加算されません。
贈与の特例で相続財産に加算されないものもあります。
教育資金や住宅資金といった贈与の特例を利用した場合にも、相続税に加算されることはありません。
タイミングを見て、適切な時期に適切な方法で生前贈与するようにしてください。

遺留分減殺請求されることがある

生前贈与するメリットは、財産承継の相手やタイミングを選択できることです。
しかし、生前贈与した財産であっても、相続時にほかの相続人が贈与に不満を持てば遺留分を請求されることがあります

具体的には、贈与者が贈与して1年以内に亡くなっている場合や贈与者と贈与を受けた人の双方が遺留分の侵害を目的に贈与していた場合には、遺留分を請求できるとされています。
例えば、親が兄弟の中でひとりだけに不動産を贈与したり、資金サポートしたりした場合には遺留分トラブルになることがあるようです。

贈与する相手を選択可能なのは生前贈与のメリットですが、それが相続時のトラブルに発展することもあります。
生前贈与するのであれば、財産や相続に関わる関係者に説明しておく、納得してもらうといった下準備も必要です。

生前贈与する時の注意点


生前贈与は相続を見越して、どの制度を使うのか、いつからスタートするのか計画的に進めなければいけません。
計算間違いや申告漏れがあれば、税務署から指摘されたり、相続の手続きが余計に複雑になったりすることもあります。
生前贈与する時には、どのような点に注意すれば良いのかをまとめました。

生前贈与のほうが得になるか必ずシミュレーションする

生前贈与の多くが相続税対策として利用されています。
しかし、生前贈与したほうが特になるかどうかは、財産の額や条件によって違います。

相続は、相続財産が一定金額以下であれば、基礎控除額の範囲内として課税されません。
2022年現在であれば、「3,000万円+法定相続人の数×600万」が基礎控除額のため、例えば、配偶者と子どもで法定相続人が3人の場合には、4,800万円まで非課税です。
基礎控除額までに相続財産が収まるのであれば、相続税の心配は不要です。

生前贈与で負担を減らせるケースは、実はそこまで多くありません。
生前贈与で贈与税が課されてしまうことによって、相続した場合よりも税負担が大きくなってしまう場合もあります。
生前贈与する場合には、相続した場合よりも負担が小さくなるかどうか必ずシミュレーションしてください。

生前贈与が成立しているか確認する

生前贈与が贈与として成立するためには、財産の承継について「あげる」と「もらう」の両方の同意が必要です。
例えば、勝手に口座を作って財産を移したり、受け取った側が自由に使えなかったりすれば贈与にはなりません。
お互いに合意があること、受け取った側が自由に管理して使えること、この2つの条件を満たしているかを確認してください。

定期贈与と思われないようにする

毎年110万円ずつを暦年贈与していく方法は、申告も不要で取り組みやすい生前贈与です。
しかし、暦年贈与で注意して欲しいのが、定期贈与とみなされないかどうかです。
毎年一定額を贈与し続けると、まとまった額の贈与を分割して数年にわたって定期贈与していると判断されることがあります。

贈与した総額に対して贈与税が課されてしまうこともあります。
まとまった贈与とみなされないためには、贈与のたびに契約書を作成して、毎年の贈与が単独の贈与であると証拠を残してください。
また、時期をずらしたり、毎回異なる金額にしたりすることも、定期贈与とみなされないために重要です。

贈与の証拠を残す

生前贈与をする時には、記録として、贈与の契約書を作成するか、銀行の記録を残しておくようにします。
現金で手渡しして贈与してしまうと証拠が残らず、本当に特例や控除が適用されるのか判別できなくなってしまうためです。
生前贈与が成立していることを証拠として残しておいてください

まとめ

将来の負担を減らしたり、財産の処分を自分で決定したりするために生前贈与が活用されています。
しかし、契約書や記録を残していなかったり、控除や特例の条件を満たしていなかったりすると、生前贈与として成立しないケースもあります。
生前贈与にする場合には、条件を満たしているかどうかを確認してください。
また、生前贈与か相続か、資産状況からどちらが適しているかシミュレーションするようにおすすめします。

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(編集:創業手帳編集部)

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