なんとなく雇用して、失敗しないための採用方法
多様な人材を活用しよう。短時間正社員制度の導入のすすめ
事業を開始すれば大半の経営者が、会社を大きくしたいと思います。そのためには、自分一人の力では無理です。そこで、人材採用の問題が発生しますが、漫然と採用していては大きな落とし穴が待っています。
失敗しない人材採用について、ここでは解説します。ポイントは、人を採用することでアップするコストを計算することと、求めている人物像を明確にすることです。
この記事の目次
- 人を雇うのは給料×1.5倍と考えておこう
- 採用を始める前に、理想の社員像を決めよう
- ベンチャー企業なら、会社のPRをしっかりしよう
- 短時間正社員制度という雇用形態を考える
- 短時間正社員制度を導入する
- (1)短時間正社員制度導入の目的を明確にする
- (2)短時間正社員に対する役割(職務内容、適用期間、労働時間)を検討する
- (3)短時間正社員の労働条件(人事評価、賃金、教育訓練)について検討する
- (4)助成金を活用して、将来的なフルタイム正社員への転換について検討する
- (5)短時間正社員制度を導入し、周知する
- まとめ
人を雇うのは給料×1.5倍と考えておこう
事業を開始し、軌道に乗ると「会社を大きくしたい」「たくさんの仕事を受注したい」などと夢が膨らんできます。そして、いよいよ社員の採用を検討することになります。
しかし、ここで注意が必要になります。事業を起こそうと考える人は、会社員時代に優秀な人が多いのですが、人を雇う経験はほとんどなく、いざ人を雇おうとしてつまずく人が多いようです。
大手企業にいれば、人事部が面接を行い、優秀な人が各部署に配属されます。その人材を育てれば良かったのです。しかし、ベンチャー企業に大手企業に入ってくるような優秀な人が応募してくるわけではありません。応募してくる人をどのように選別して良いかも経験がありません。
さらに、せっかく人を雇っても、思ったように働いてくれない、すぐやめると言われる。そんなことが日常茶飯事です。
もうひとつの問題は、コストの計算です。人を雇用すると、給料を払うというのは考えられますが、それ以外にもコストはかかります。その人を雇うことで、どれだけの売り上げや利益を得られるかということを考えて、採用をしなければなりません。そのコスト計算をしっかりできないと、採用しても赤字ということになってしまいます。
例えば、月収20万円、ボーナス30万円×夏・冬2回 の場合
給与 | 年間 300万円 |
社会保険料・雇用保険料 会社負担分 | 年間 約35万円 |
残業代 | 年間 約35万円 |
事務用品費 | 年間 約10万円 |
福利厚生費 | 年間 約10万円 |
その他 | 年間 約10万円 |
計 | 年間 400万円 |
人を雇うということは、給料プラスαを考えないとすぐつまずいてしまいます。詳細な金額を計算するのが面倒であれば、払う給料×1.5がコストになると考えておくと失敗はないでしょう。
採用を始める前に、理想の社員像を決めよう
いよいよ人を雇う前に決めなければいけないことがあります。この会社をどの様な会社にして、そのためには、いつ頃までに、売り上げをいくらにして、何名程度の会社とするかという計画を立てなくてはいけません。
人を雇用するときに、「ただ、今が忙しいから人を雇う」という考えでは、必ず失敗します。
ここで、大切なことは、雇用する人材について「どのような人を」ということ、理想の社員像を決めることです。
それが決まっていれば、今まで人材採用の経験がなくても、採用の募集をして面接試験の段階になっても意思決定をすることができます。また、理想の社員像を決めることによって、組織や労働条件も自然と決められてきます。
自分の経験ばかりでなく、できるだけ長く会社に貢献してもらうためには、社員が仕事あるいは会社に対してどのような考えを持っているか考えることも大切です。
日本生産性本部が平成26 年度新入社員「働くことの意識」調査結果を発表しています。これを参考に、理想の社員像を描いてみましょう。
【関連サイト】平成26 年度新入社員「働くことの意識」調査結果
ベンチャー企業なら、会社のPRをしっかりしよう
理想の社員像が決まり、採用の募集を開始するために、給料以外に条件を決める必要があります。
下記の項目を参考にして、一つひとつ決めていきましょう。
- 職種・仕事の具体的な内容
- 契約期間
- 勤務地
- 勤務時間・残業の有無
- 転勤の可能性があるか
- 年齢制限(年齢制限は法律的に制限されています)
- 社会保険への加入の有無(ほとんどの会社が、強制的に加入が義務化されています)
- 給与・手当等
- 昇給・賞与・退職金の有無
- 賃金締切日・支払日
- 採用試験の方法
給料を高くすれば、それだけ優秀な人材が応募してくる可能性は高いです。しかし、ベンチャー企業はそのコストが命取りになりかねません。優秀な人の中には、給料は世間相場であれば十分で、給与以外の仕事内容や会社の魅力にひかれ、会社を大きくしていきたいと思う人もいます。
仕事内容や会社のPRをしていきましょう。それを考える際に、理想の社員像というのも参考になると思います。小さくても働きやすい点を強調していきましょう。
短時間正社員制度という雇用形態を考える
人を雇うというと正社員の採用を考えてしまいますが、会社の実情に合わせて様々な雇用形態を検討した方が良いです。正社員・パートタイマー・契約社員・アルバイト・嘱託社員・派遣社員・業務委託・請負社員など、最近はいろいろな働き方があります。
それぞれの働き方の詳細の説明は省略しますが、基本的に派遣社員・業務委託・請負社員などは社外の人で、それ以外は社内の人と分けられます。当然、労務時間管理、有給休暇の付与、最低賃金法の適用、安全管理などの義務は、働き方の違いにより変わってきます。
正社員以外でも、育児や介護などの理由で短時間勤務を望む人も多くなっているのが狙い目です。そこで注目したいのが、短時間正社員制度です。
通常の社員は、フルタイム勤務(1日8時間、週40時間勤務)が多いですが、正社員だからといってフルタイム勤務を導入する必要はありません。近年、フルタイム正社員と同等もしくはそれ以上の能力や意欲があるのですが、育児や介護その他の理由により長い時間は働けない人材が増えています。
そうした人材を活用できる一つの雇用形態が短時間正社員です。つまり、短時間正社員とは、フルタイム正社員と比較して、1週間の所定労働時間が短い正規型の社員であって、次のいずれにも該当する社員のことを言います。
短時間正社員制度のメリット
- 諸事情によりフルタイム勤務では活躍できなかった意欲・能力の高い人材を確保・活用できる。
- 職場マネジメントの改善により業務の効率化、生産性の向上が期待できる。
- 意欲・能力の高いパートタイマー労働者のモチベーションの向上と定着が促せる。
- 社員の満足度向上により、会社への定着が改善される。
- 労働者にとって、ワークライフバランスの実現が可能になる。
- 正社員登用を通じたキャリア形成の実現
- 職場全体の長時間労働の解消
- 仕事と子育て・介護等の両立の実現で少子高齢化への対応
- 労働力人口の減少への対応
短時間正社員制度を導入する
フルタイムの正社員が良いのか、短時間正社員が良いのかは、企業が置かれている状況によって異なります。短時間正社員制度を導入する前に、以下のことを考えてメリットが得られるかを確認しましょう。
(1)短時間正社員制度導入の目的を明確にする
各企業の人材活用上の課題によって、短時間正社員制度導入の目的は異なります。
自社の現状及び将来の課題を解決するために、短時間正社員制度の下記のメリットのどれにあてはまるかを検討します。
(2)短時間正社員に対する役割(職務内容、適用期間、労働時間)を検討する。
短時間正社員にどのような役割を期待するのかを明確にする
- 新たな正社員の確保のため
- パートタイム労働者の活用のため
- 育児又は介護支援、自己啓発・ボランティア支援のため
- 心身の健康不全対策のため
- 高齢者雇用のため
(3)短時間正社員の労働条件(人事評価、賃金、教育訓練)について検討する
- 人事評価の考え方は、成果目標による評価か、能力・行動等に対する評価によって異なります。
- 賃金については、月例給与のうち基本給については、同じ職場・職位のフルタイム正社員への支給額を労働時間に比例して減額します。
- 教育訓練については、同じ職場・職位のフルタイム正社員がいる場合は、同等の教育訓練の機会を与えることが重要です。
(4)助成金を活用して、将来的なフルタイム正社員への転換について検討する
フルタイム正社員への転換については、短時間正社員制度の導入目的によって変わります。
短時間正社員を、正社員に転換したり、週/30時間以上勤務とし、社会保険を適用した場合など、助成金がもらえることもあります。詳しくはこちらのキャリアアップ助成金をご確認ください。
(5)短時間正社員制度を導入し、周知する
メリットを考えて、短時間正社員制度を導入したら、それを周知しましょう。採用に際して、雇用の形態を選べることで、より多くの応募者を得られることができます。
まとめ
社員の雇用の成否は、今後の会社の発展に大きく影響します。そのため、雇用する際には、事業計画や、理想の社員像などを決めていかなければなりません。
そして、その中から最適な雇用形態を選んでください。どうしても採用というとフルタイムの正社員採用と考えがちですが、採用する社員像や、目的などから短時間正社員という雇用形態という手が有効となる場合もあります。
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