小規模企業共済で掛金変更は可能?増額・減額の手続きについて解説

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小規模企業共済の掛金変更は増額も減額も可能!


小規模企業共済は、中小機構が運営する個人事業主や経営者などのための退職金制度です。掛金を積み立てることで、退職や廃業する際に共済金を受け取ることができます。
そのような小規模企業共済の掛金の金額を状況に合わせて、増減・減額したいと考えることもあるでしょう。

そこで今回は、掛金変更の詳細、増減・減額の手続きやポイントなどについてご紹介します。

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小規模企業共済の掛金について


小規模企業共済に加入して共済金を受け取るためには、掛金の積み立てが必要です。掛金は加入時に設定することになります。まずは、掛金の概要からご紹介します。

掛金月額は500円単位で設定可能

小規模企業共済の掛金は、月額1,000円~最高70,000円の範囲内となっており、500円単位で任意の金額に設定することが可能です。
支払方法は月払いだけではなく、届け出た月に12カ月分を一括で納める年払い、または6カ月分を納める半年払い(年2回払い)を選択できます。

納付方法は、口座振替です。契約者本人の名義の預金口座のみ引き落とし口座として指定できます。
振替日は毎月18日で、土日や祝日の場合は翌営業日に引き落としされます。

掛金は全額所得から控除できる

掛金の全額を小規模企業共済等掛金控除によって所得から控除できるので、節税効果を得られるのも小規模企業共済に加入するメリットです。
小規模企業共済等掛金控除は、1年以内の前納掛金も対象です。
どのくらい節税されるのかは、課税所得の金額や掛金によって異なります。
基礎控除や扶養控除などの各種所得控除後の課税所得金額が1,000万円で、加入前の所得税が180万円程、住民税が100万円程だと仮定します。

このケースでの掛金月額ごとの節税額例は以下のとおりです。

掛金月額 節税額
1万円 約52,000円
3万円 約157,000円
5万円 約262,000円
7万円 約367,000円

課税所得が多いほど、税金の負担は大きくなります。そのため、小規模企業共済への加入によって節税効果を得られることは大きなメリットです。
小規模企業共済のホームページにて、将来受け取れる共済金と節税額の試算ができるシミュレーションがあるので、掛金を検討する際に活用してみてください。

小規模企業共済の掛金変更で増額する方法とポイント


掛金は加入時に設定しますが、加入後も増減または減額することが可能です。ここで、掛金変更で増額する方法とポイントをご紹介します。

掛金の増額だけ行いたい場合の手続き方法

月払いで前納せずに増額だけしたい場合、書類またはオンラインから手続き可能です。いずれも増額手続きの締め切りは毎月月末までとなっています。

【書類の場合】
1.プッシュホン電話の「定型書類の自動発送サービス」を利用して「掛金月額変更(増額・減額)申込書(様式小102-1)」を取り寄せる
2.申込書の「増額申込欄」などに必要事項を記入する
3.委託機関(中小機構と連携する団体や金融機関)の窓口、または中小機構に直接送付して提出する

申請書の「増額申込欄」に「①現金あり」と「②現金なし」の項目があり、どちらかの数字を丸で囲むことになります。
「現金あり」を選択した場合、増額申込月の差額分を申込時に現金で納付しなければなりません。また、委託機関の窓口での手続きが必須となります。
「現金なし」の場合は、差額分を口座振替で納付します。この場合は、中小機構に郵送で書類を提出しても構いません。

【オンラインの場合】
1.小規模企業共済オンライン手続きポータルに登録(未登録の場合)
2.マイナンバーカードを読み取ってログインする
3.「契約保全」→「掛金月額変更」で必要事項を入力する
4.入力内容を確認して「申請」ボタンを押す
5.契約者控えとなるPDFをダウンロードする

小規模企業共済オンライン手続きポータルに登録した直後は、パソコン+ICカードリーダーライタまたはICチップ読み取り機能があるスマートフォンから、マイナンバーカードを読み取ってください。
読み取りの際には、4桁の数字の「利用者証明用電子証明書パスワード」と「券面事項入力補助用パスワード」も必要です。

掛金の増額と同時に前納も行いたい場合の手続き方法

月払いの掛金増額と同時に前納も行いたい場合、書類での手続きが必要です。こちらも手続きの締め切りは毎月月末となっています。
手続きの流れは以下のとおりです。

1.プッシュホン電話の「定型書類の自動発送サービス」を利用して「掛金月額変更(増額・減額)申込書(様式小102-1)」を取り寄せる
2.申込書の「増額申込欄」などに必要事項を記入する
3.委託機関の窓口で申請書の提出・現金納付

前納もする場合、申込書を記入する際に「①現金あり」の横にある①を丸で囲んでください。
「今回増額する掛金月額」と「増額時の前納掛金」を足した「今回払込額合計」が前納する金額になります。
現金での納付が必要となるため、書類の提出及び納付先は委託機関の窓口です。

小規模企業共済の掛金変更で増額する時のポイント

小規模企業共済の掛金変更で増額する場合、注意したいポイントがあります。そのポイントは以下のとおりです。

増額分は新規加入と同様に運用される

掛金を増額した場合、増額分は新規加入と同じように運用される特徴があります。
もともとの契約に増額分の契約をひとつ追加し、2つのプランを資産運用しているイメージです。

例えば、月額3万円の掛金で契約していたところ、月額2万円増額したとします。
この場合、月額5万円で運用しているのではなく、月額3万円の契約+月額2万円の契約で運用していることになります。
そのため、将来受け取る共済金は、月額3万円の掛金を納めた場合の運用益を月額2万円の掛金を納めた場合の運用益を合算した金額となるのです。

増額分の請求は原則翌々月から開始

掛金変更の申請後、増額した金額で掛金が請求されるのは翌々月からが原則です。
例えば、4月に申し込んだ場合、その月と翌日5月までは増額前の金額ですが、翌々月の6月から増額した金額が適用されます。
3万円の掛金に2万円を増額した場合(現金なし)の納付イメージは以下のとおりです。

4月(申込月) 3万円
5月 3万円
6月 9万円
(増額後の掛金5万円+4月の増額分2万円+5月の増額分2万円)
7月以降 5万円

なお、書面での手続きで「①現金あり」とした場合、申込時に申込月と翌月の増額分を現金で支払います。
そのため、申込月の翌々月に申込月と翌月の差額分を支払う必要はなく、増額後の掛金のみが銀行口座から引き落とされます。
また、オンラインで手続きした場合、締め切りの月末の24時前に手続きが完了すると、その月から増額です。

小規模企業共済の掛金変更で減額する方法とポイント


収入の減少や生活費などの増加といった理由で負担を軽減するために、小規模企業共済の掛金の減額が必要になることがあります。
その場合の手続きと減額時のポイントをご紹介します。

前納掛金なしで減額したい場合の手続き方法

月払いで前納掛金なしで減額したい場合、書類とオンラインから手続き可能です。
減額の場合、手続きの締め切り日が月ごとに異なるため、事前に小規模企業共済のホームページで確認してください。

【書類の場合】
1.プッシュホン電話の「定型書類の自動発送サービス」を利用して「掛金月額変更(増額・減額)申込書(様式小102-1)」を取り寄せる
2.申請書の「減額申込欄」などに必要事項を記入する
3.中小機構に直接書類を送付する

申請書の「減額申込欄」は、「現在の掛金月額」と「減額後の掛金月額」を記入します。
書類を作成したら中小機構に郵送で送ってください。封筒や切手代とった郵送費は自己負担です。

【オンラインの場合】
1.小規模企業共済オンライン手続きポータルに登録(未登録の場合)
2.マイナンバーカードを読み取ってログインする
3.「契約保全」→「掛金月額変更」で必要事項を入力する
4.入力内容を確認して「申請」ボタンを押す
5.契約者控えとなるPDFをダウンロードする

オンラインでの手続きの流れは、増額の時とほぼ同じです。掛金月額変更内容の項目で「②減額」にチェックを入れて、「現在の掛金月額」と「変更後の掛金額」を入力してください。

前納掛金がある状態で減額したい場合の手続き方法

月払いで前納掛金がある人も減額は可能です。ただし、前納している期間中の掛金は減額できず、前期充当が終わった翌月分から減額が適用されます。
掛金変更は、書類とオンラインから手続きができます。手続きの流れは「前納掛金なしで減額する」ケースと同じなので、上記を参考にしてください。

小規模企業共済の掛金変更で減額する時のポイント

小規模企業共済の掛金を減額すると、将来受け取る共済金に大きな影響を与えるので慎重に検討してください。ここで、減額する際に注意したいポイントをご紹介します。

減額すると元本割れのリスクが高くなる

小規模企業共済の掛金を納め続けることで、予定利率1%で増えていきます。
しかし、減額すると減額前に積み立てた掛金の差額分が運用されず、減額の金額や契約期間によっては元本割れを起こす可能性があるので注意してください。

例えば、もともと月額5万円だったところ、5年目に3万円を減額して月額2万円で掛金を払うとします。
減額すると、加入した年から5年目まで支払っていた掛金の差額分(3万円分)の運用がストップしてしまいます。差額分を金額に換算すると以下のとおりです。

月額3万円×12カ月×5年間=180万円

上記の例だと180万円分に金利がつかずに放置され、解約しない限り引き出せません。

そして、自己都合で解約して解約手付金を受け取る場合、返戻率が低くなる点にも注意が必要です。
掛金総額100%で解約手付金を受け取るには、掛金を20年間支払わなければなりません。つまり20年以下で解約すると、解約手付金は掛金総額を下回る可能性があります。

減額は申し込みがあった月から適用

掛金を減額する場合、申し込みをした月から減額が適用されます。ただし、申込月に引き落としされるのは減額前の掛金であり、差額分は翌月以降に掛金が当てられます。
例えば、4月に月額5万円から月額2万円に減額した場合の支払いシミュレーションは以下のとおりです。

期間 納める掛金の金額
4月(申込月) 5万円
5月 0円
(4月に支払った超過分の2万円を充当)
6月 1万円
(4月に支払った超過分の1万円を充当)
7月以降 2万円

掛金の支払いが難しい時は「掛止め」を検討する


経済的な事情などから掛金の支払いが難しくなることがあります。それが一時的なものであれば、解約ではなく掛止めを検討するのがおすすめです。
掛止めは、一定の条件を満たすことで掛金の払い込みを止められる制度です。ここで、掛止めの条件・期間やチェックポイントをご紹介します。

掛止めを行う条件・期間

掛止めでは、6カ月または12カ月の間、掛金の納付をストップできます。掛止めは、以下いずれかの理由に当てはまる場合に利用可能です。

  • 所得がなく、掛金を支払えない時
  • 災害の遭遇や入院によって掛金が支払えない時

また、掛金総額が掛金月額の40倍に到達していることも条件です。例えば、掛金月額5万円であれば、掛金総額が200万円であれば条件を満たしていることになります。

40倍に達していない場合、現在の掛金総額の40分の1以下に掛金を減額すれば掛止めが可能です。

掛止めをする前にチェックしたいこと

掛止めをすれば一時的に掛金の納付をストップできますが、リスクがあることも理解しておいてください。掛止めでチェックしておきたいことは以下のとおりです。

  • 掛止め期間中は、共済金を計算するための共済契約期間に通算されない
  • 掛止め期間中は、共済金の退職所得控除額を計算するための共済契約期間(勤続年数)に通算されない
  • 掛止め期間中の掛金を、期間超過後に納付することはできない

掛止め期間中は共済契約期間に通算されないので、払込期間によっては解約手付金が元本割れする恐れがあります。
さらに、退職所得控除額を計算するための勤続年数にも通算されないので、解約時に所得税が増えるケースもあります。
また、納付再開後に、本来掛止め期間中に発生する掛金を納付することもできないので注意してください。

掛止めを再開する方法

掛止めから納付を再開する場合、コールセンターに問い合わせることで手続きができます。手続きする際は、共済手帳など共済契約者番号のわかる書類を準備してください。
コールセンターの対応時間は、平日の9時~18時までとなっています。時間が取れない場合は問い合わせフォームで連絡すると、後日営業時間中に電話で連絡がきます。
なお、掛金総額が上限の800万円に達していると納付を再開できないので注意してください。

小規模企業共済の掛金に関するよくある質問


最後に、小規模企業共済の掛金に関するよくある質問に答えていきます。

現在の掛金総額・残高を知るには?

現在までに支払った掛金の総額・残高は、毎年3月下旬~4月に届く「掛金納付状況及び貸付限度額等のお知らせ(様式小358)」から確認できます。
「掛金納付状況及び貸付限度額等のお知らせ」では、毎年12月末現在の掛金の払込状況を確認することが可能です。

もしも紛失した場合、共済相談室に問い合わせることで再発行できます。
なお、2024年6月時点で小規模企業共済オンライン手続きポータルなどのオンラインから掛金の払込情報は確認できませんが、2025年中に対応する予定となっています。

払い込みが難しい場合に減額以外の方法はある?

例えば、事業維持のために経営者個人の資金を出すことになり、それによって掛金の払い込みが難しくなることがあるかもしれません。
その場合、掛金の範囲内で利用できる「共済契約者貸付(一般貸付)」を利用することで、事業関連の資金を調達できます。

経営者個人の資金を投入する必要がなくなり、掛金が払えない事態を回避することが可能です。
所得がない、災害に遭遇、入院という理由で掛金の支払いが厳しい時は、上記でご紹介した掛止めを検討してみてください。

小規模企業共済の掛金変更で増額・減額するなら無理のない掛金で納付しよう

小規模企業共済に加入すれば、掛金や運用期間に応じて個人事業主や経営者なども退職金を確保できます。
個人事業主や経営者は、退職金を用意していないケースが珍しくありません。しかし、退職・廃業した後の生活を豊かなものにするためにも、加入はおすすめです。
加入後も掛金変更は可能ですが、頻繁に増減や減額するのを避けるために、今の生活に考慮した無理のない掛金を設定するようにしてください。

創業手帳(冊子版)では、個人事業主や経営者に役立つビジネスに関する情報をお届けしています。開業・起業の際の参考にご活用ください。

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(編集:創業手帳編集部)

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