2025年より新設!中小企業新事業進出補助金の最新情報を解説
新事業を検討している中小企業は中小企業新事業進出補助金を活用しよう
2025年より、中小企業新事業進出補助金という補助金が新設されます。中小企業が、新しい領域の事業へ進出する際の投資を後押しするための補助金制度です。
事業再構築補助金の後継制度となる補助金といわれており、最新の資料では1,500億円の予算が盛り込まれています。事業の拡大を検討している事業主の方は、中小企業新事業進出補助金の活用を検討するとよいでしょう。
今回は、中小企業新事業進出補助金の基本的な情報や、事業再構築補助金との違いなどを解説します。
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この記事の目次
中小企業新事業進出補助金とは
中小企業新事業進出補助金とは、既存事業と異なる事業への挑戦を後押しするための制度です。新市場・⾼付加価値事業への進出を後押して中⼩企業の⽣産性・収益の向上を図りつつ、従業員の賃上げにつなげていくことを⽬的としています。
補助対象者
補助対象者は「事業の成長・拡大に向けた新規事業への挑戦を行う中小企業等」です。企業だけでなく、個人事業主も補助対象となります。
補助を受けるための基本要件
中小企業新事業進出補助金の趣旨は、中小企業等の新事業の拡大を後押しすることです。採択されるためには、企業の成長・拡大に向けた新規事業への挑戦を行い、以下の基本要件を全て満たす3~5年の事業計画に取り組む必要があります。
- 付加価値額の年平均成長率が+4.0%以上増加
- 1人あたり給与支給総額の年平均成長率が、事業実施都道府県における最低賃金の直近5年間の年平均成長率以上、又は給与支給総額の年平均成長率+2.5%以上増加
- 事業所内最低賃金が事業実施都道府県における地域別最低賃金+30円以上の水準
- 次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を公表等
事業の成長だけでなく、従業員の賃上げも求められていることがわかります。
昨今は物価の上昇や社会保険料負担の増大により、実質賃金のマイナスが続いている状況です。消費が停滞すると経済が悪化してしまうため、政府としては企業に対して「積極的に賃上げをしてほしい」という思惑があります。
中小企業新事業進出補助金に限った話ではありませんが、今後は補助金が採択されるためには賃上げが避けて通れない、という点を抑えておくとよいでしょう。
大幅賃上げ特例適用事業者について
「大幅賃上げ特例適用事業者」に該当すると、受け取れる補助金が多くなるメリットがあります。大幅賃上げ特例適用事業者に該当する要件は以下のとおりです。
- 事業終了時点で事業場内最低賃金が50円上昇している
- 事業終了時点で給与支給総額が6%上昇している
政府としては、従業員の賃上げを積極的に行い、経済を活性化させたり国力を高めたりしたい意向があります。そのため、積極的な賃上げを行っている中小企業や個人事業主を優遇する枠組みとなっているのです。
補助上限額と補助率
補助上限額は、従業員数に応じて以下のように決まっています(補助下限は750万円)。
従業員数20人以下 | 2,500万円(3,000万円)※ |
従業員数21~50人 | 4,000万円(5,000万円)※ |
従業員数51~100人 | 5,500万円(7,000万円)※ |
従業員数101人以上 | 7,000万円(9,000万円)※ |
なお、補助率は1/2です。設備投資に要した金額の半分が補助対象となります。
補助対象経費
補助対象経費は以下のとおりです。
- 建物費
- 構築物費
- 機械装置・システム構築費
- 技術導⼊費
- 専⾨家経費
- 運搬費
- クラウドサービス利⽤費
- 外注費
- 知的財産権等関連経費
- 広告宣伝・販売促進費
設備投資をする際やDX化を進める際の経費など、幅広い支出が対象です。
補助予定件数
補助予定件数に関して、2025(令和8年)度末までに公募回数は4回程度、採択予定件数は6,000件程度が予定されています。ただし、1件当たりの補助申請額によっては、予定件数が増減する場合があります。
スケジュール
2025年1月現在、中小企業新事業進出補助金の具体的なスケジュールは決まっていません。あくまでも想定ですが、1回目の公募は4月から始まり、その後2ヶ月スパンで2回目~4回目の公募が続くと考えられます。
なお、全体的な事業スキームは以下のとおりです。
1.事前準備 | ・新規事業の検討 ・計画の策定 |
2. 公募開始~交付候補者決定 | ・申請受付開始 ・公募締切 ・審査 ・交付候補者決定 |
3.交付決定~補助事業実施 | ・交付申請、決定 ・補助事業開始 ・確定検査 ・補助額の確定 ・補助金の請求 ・補助金の支払い |
4.補助事業終了後 | ・事業化状況報告 ・知的財産等報告 |
補助金を申請する際には、「GビズIDプライムアカウント」の取得が必要です。まだ取得が済んでいない方は、あらかじめGビズIDプライムアカウントを取得しておくとよいでしょう。
返還を求められるケース
中小企業新事業進出補助金に、収益納付は求められていません。
しかし、補助を受けるための基本要件のうち、「1人あたり給与支給総額の年平均成長率が、事業実施都道府県における最低賃金の直近5年間の年平均成長率以上、又は給与支給総額の年平均成長率+2.5%以上増加」「事業所内最低賃金が事業実施都道府県における地域別最低賃金+30円以上の水準」が未達の場合、未達成率に応じて補助金の返還を求められます。
賃上げ要件をクリアできない場合、補助金が採択されても返還を求められる点に注意しましょう。ただし、付加価値が増加しておらず、さらに企業全体として営業利益が赤字の場合や、天災など事業者の責めに帰さない理由がある場合は返還が免除されます。
事業再構築補助金との違い
事業再構築補助金の後継制度である中小企業新事業進出補助金は、異なる点がいくつかあります。2025年1月現在でわかっている情報と、事業再構築補助金第12回を比較したときの主な違いは、以下のとおりです。
事業再構築補助金 | 新事業進出補助金 | |
目的 | ウィズコロナ・ポストコロナ時代の経済環境の変化に対応するために、中小企業等の新分野展開や業態転換をはじめとした事業の再構築を支援すること | 中小企業等の新市場・高付加価値事業への進出にかかる設備投資等を支援すること |
補助対象者 | 年平均成長率3.0~5.0%(事業類型により異なる) | 年平均成長率4.0%以上の増加 |
補助金額の下限額 | 100万円 | 750万円 |
対象経費について | 研修費、廃業費が含まれる | 研修費、廃業費が含まれない |
事業再構築補助金と中小企業新事業進出補助金は、別物の制度であるという前提を理解しましょう。今後、新事業進出補助金に関する新しい情報が公表されたら、内容をチェックしてみてください。
中小企業成長加速化補助金との違い
中小企業の事業投資を後押しする補助金制度に、「中小企業成長加速化補助金」もあります。売上高100億円を目指す中小企業の成長を支援するための制度で、補助対象者となるのは年商数十億円程度の、比較的規模が大きい中小企業です。
中小企業成長加速化補助金を申請するためには、売上高100億円を目指すための計画を立て、1億円以上の設備投資を行う必要があります。補助上限額は最大で5億円となっており、大規模な事業投資を行う事業者向けの補助金制度といえるでしょう。
補助金の採択率をあげるためのポイント
補助金は、申請すれば誰でも受け取れるわけではありません。審査を経て、事務局から採択される必要があります。
以下で、補助金の採択率を上げるために、事業主が行うべき対策を解説します。
自分の言葉でわかりやすく記載する
補助金を申請する際には、申請理由や将来のビジョンを記載する必要があります。「補助金を有効活用して生産性の向上や賃上げを目指している」という熱意を、事業主自身が自分の言葉でわかりやすく伝えましょう。
書面の審査のあとに、口頭審査が行われる可能性もあります。口頭審査では、事業主自身が検討している新事業のビジョンや設備投資の内容を言語化したうえで、わかりやすく伝えなければなりません。
テンプレートを使用していたり、違う補助金へ申請したときの内容を使い回したりしていると、事務局に熱意を伝えられません。そのため、「なぜこの投資が必要なのか」「新事業の計画をどのように進めるべきか」を、自分の頭で考えて言語化しましょう。
独自性を出す
他社と被らないような独自性を出すことも、採択率を高めるうえで効果的となる可能性があります。自社の強みを明確にしたうえで「自社でなければできない新事業」を考え、設備投資を行う意義を伝えましょう。
過去の成功事例や独自技術を挙げたり、自社が補助金を活用することで、どのような成果が期待できるかを具体的に示したりするとよいでしょう。明確なビジョンやストーリーを描くことで、事務局に対して自社の意義や必要性を伝えられます。
自社の事業を一番理解しているのは、事業主自身のはずです。自社ならではの強みや実績を整理し、オリジナリティに富んだ事業計画を考えてみてください。
公募要領を詳細に理解する
補助金には公募要領があり、申請に必要な情報や審査基準が記載されています。自社の事業が要件を満たしているか、計画している事業投資が趣旨に合っているかを確認しましょう。
たとえば、中小企業新事業進出補助金の趣旨は「新規事業への挑戦を目指す中小企業の設備投資を促進すること」です。補助金の目的や趣旨に沿った事業計画を作成すれば、採択率が高まると考えられます。
あわせて、審査基準を確認して、基準に応じた事業計画書を作成することも大切です。申請書や計画書を作成する際には、「目的や趣旨に合致しているか」「投資する意義やメリットがわかりやすく記載されているか」を確認しましょう。
専門家に相談する
補助金申請の際に、中小企業診断士や税理士、公認会計士など専門家の意見を取り入れることも効果的です。補助金制度に精通している専門家であれば、最新情報や過去の成功事例を知っているため、有益なアドバイスを提供してくれるでしょう。
専門家に相談すれば、魅力的な書類作成をサポートしてもらえることに加えて、書類の不備や漏れを防げます。補助金の申請にあたっては専門的な内容の記載が求められたり、多くの書類を準備したりする必要がありますが、専門家に相談すればスムーズに進むでしょう。
これにより、効率的に申請準備を進められます。公募開始となってからスムーズに申請できるように備えておけば、審査のうえでも有利でしょう。
創業手帳では、補助金や助成金の申請について専門家のご紹介も行っております。どのような専門家がよいのかよくわからないという方はお気軽にご相談ください。
まとめ
既存事業とは異なる新市場や高付加価値事業への進出を検討している中小企業事業主の方にって、新事業進出補助金は有効活用できる補助金制度です。事業投資額の1/2、最大で9,000万円の補助金を受け取れるため、資金繰りに影響を与えるでしょう。
なお、中小企業新事業進出補助金は、中小企業の持続的な成長と賃上げの実現を主な目的としています。事業投資だけでなく、賃上げを実現するための工夫も検討しましょう。創業手帳の「補助金ガイド」では、補助金・助成金の最新情報をお届けしています。採択されるためのポイントやコツも紹介しておりますので、ぜひご活用ください。
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