シェアキッチンとは?飲食店開業で活用するメリット・デメリットを解説

飲食開業手帳

シェアキッチンは複数人が共同でシェアできるキッチン施設


飲食店と聞くと、自分の店舗を持ち飲食業を営む形態を思い浮かべる方も多いかもしれません。
しかし、近年は新しい形態としてシェアキッチンを活用して事業を行う方も増えています。
飲食業を営むにあたり、シェアキッチンを選択肢に入れるためにも、どういった仕組みなのか詳しく理解することが大切です。

そこで今回は、シェアキッチンの特徴や料金形態を解説すると共に、活用例やシェアキッチンを使うメリット、注意点などをご紹介していきます。
シェアキッチンで飲食店を開業するために必要な資格や許可についてもお伝えしていくので、シェアキッチンでの開業を考えている方は参考にしてください。

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シェアキッチンの特徴・料金形態など


複数の人で共有するキッチンをシェアキッチンといいます。調理台やガスコンロ、シンクや冷蔵庫、フライヤーといった調理に必要な機材や設備が一通り用意されています。
機材や設備を利用しながら事業を行っていき、時間や日単位で借りることが可能です。

シェアキッチンを利用したい場合は、一般的にインターネット上で申し込みを行い、料金を支払うことでサービスを利用できます。
そのようなシェアキッチンには、いくつかのタイプがあるので、特徴や料金相場をご紹介していきます。

【タイプ別】各シェアキッチンの特徴や料金相場タイプ


シェアキッチンには、単独タイプ・共有タイプ・店舗シェアタイプといった種類があります。
それぞれで仕組みが異なりますが、料金形態としては時間単位もしくは日単位で契約できるサービスが一般的です。
利用料金の相場としては、1,500円~3,000円が一般的で、そのほかに初期登録料がかかります。

また、中には月額利用料を支払うことで指定の時間帯や曜日にキッチンを借りられるタイプもあります。
入会金として数万円~数十万円を支払い、月額30,000円程度で施設を使用できる仕組みです。
提供している会社によって形態が異なるので、あらかじめ確認しておき、比較をしてから契約するサービスを選んでみてください。
下記では、シェアキッチンのタイプ別の特徴を解説していきます。

単独タイプ

キッチンとダイニングがあるお店を一棟丸ごと貸してくれるシェアキッチンを単独タイプといいます。
一定の日、一定の時間飲食店を開業でき、実際にお客様から来店してもらって営業できるため、期間限定のお店をオープンしたり新商品の反応を知るために営業を行ったりと、様々な使い方ができる点が魅力です。
お客様のリアルな反応を確認できるので、今後飲食店の開業を目指している方は、お店をオープンさせた時のイメージがしやすくなります。

共有タイプ

キッチンやフロア、調理で使う機材などを複数人でシェアするタイプが共有タイプです。
ひとつのお店で複数のお店が営業するため、月曜日はパスタのお店、火曜日は中華料理店、水曜日はスイーツ店など、曜日によって営業しているお店が異なる点が特徴です。
毎回違う料理が食べられるので、リピート率が高く顧客を集めやすい点がメリットとなります。

施設の特徴としては、ダイニングスペースが用意されている施設もあれば、キッチンのみ提供している施設もあります。
イートインができるお店、テイクアウトのみで開業しているお店など、希望する形態に合わせての開業が可能です。

店舗シェアタイプ

実際の飲食店の店舗を間借りして開業するタイプを店舗シェアタイプといいます。
ランチタイムのみ営業を行っているお弁当屋のキッチンを夜間のみ間借りして、デリバリー専門店を開業したり、夜間のみ営業しているバーのキッチンを昼の間のみ間借りしてランチタイムのみ営業する飲食店を開業したりするなど、様々な使い方が可能です。

シェアキッチンと似ている施設との違い


シェアキッチンのように、実店舗を持たない形態を取り入れる飲食店として、ゴーストキッチン・バーチャルレストラン・クラウドキッチン・キッチン付きレンタルスペースなどがあります。
それぞれとの違いを知るためにも、どういった施設なのか解説していきます。

ゴーストキッチンとの違い

お店の中にイートインスペースを持たない特徴に加えて店舗のスタッフによるデリバリーを実施しないタイプの飲食店がゴーストキッチンです。
デリバリーによる飲食物の販売が中心となり、UberEATSといったデリバリーサービスを活用して営業していきます。
実店舗を持たないため、見えない存在という意味でゴーストキッチンと呼ばれています。

バーチャルレストランとの違い

実店舗とは異なる業態のお店をフードデリバリー専門店として展開するタイプがバーチャルレストランです。
例えば、イタリアンレストランを経営するお店が、デリバリー専門でドーナツ店を開業するといった場合に該当します。
実店舗の設備を活かしながら空いた時間を活用して副業として売上げが伸ばせる点が魅力です。

クラウドキッチン・クラウドレストランとの違い

イートインスペースのないキッチンのみの施設をクラウドキッチン・クラウドレストランといいます。
インターネット注文を受けたメニューを施設内の設備を使って調理をしてデリバリーサービスを活用して提供する仕組みです。

ゴーストキッチンと混同してしまう方もいますが、クラウドキッチンはキッチンを複数人でシェアするタイプです。
ひとつの施設に別業態のお店が複数運営するほか、複数の料理人がひとつのお店を運営するケースもあります。
ゴーストキッチンは無店舗型の飲食店の総称、クラウドキッチンはシェアリング型の店舗業態として分けることができます。

キッチン付きレンタルスペースとの違い

キッチン設備を貸し出しているスペースをキッチン付きレンタルスペースといいます。
飲食店営業や菓子製造業の許可を取得した設備がないケースが多いため、販売用の料理を作ることができない仕組みです。
そのため、食べ物に関するワークショップの運営や食べ物の撮影などで活用されるケースが一般的です。

シェアキッチンの活用例


シェアキッチンには様々なタイプがあります。
それぞれに、どういった活用法があるのかご紹介していくので、使い方について知りたい方は参考にしてください。

デリバリー専門店の調理場

シェアキッチンを活用してフードデリバリー専門店を開業する方も増えています。
「調理技術を活かせる仕事がしたいけど接客をしたくない」「接客技術に不安がある」といった方は、デリバリー専門店を選ぶと顧客との関わりを最小限に抑えながらの開業が可能です。

実店舗を持つとなれば物件の取得費用や設備の購入費用がかかります。
しかし、シェアキッチンを活用すれば初期投資を抑えてデリバリー専門店をオープンすることが可能です。
ただし、シェアキッチンのすべてがデリバリー業を得意とするスタイルになっているわけではありません。
前述したゴーストキッチンやクラウドキッチンを活用しての開業を目指すことで、デリバリーに特化した専門店を営むことができます。

キッチンカーの仕込み場所

調理設備を備えた車両をキッチンカーといいます。商品を売るだけではなく、車内で調理したものを販売することが可能です。
オフィス街や公園、イベント時など、様々なシーンでキッチンカーが活用されていますが、調理したメニューを販売するためには仕込み作業が必須です。

しかし、キッチンカー内は狭く、食材の仕込みを効率良く行える場所を確保することが難しいです。
そのような時でもシェアキッチンを活用すれば、効率的に仕込みができます。
仕込み以外にも、メニューの開発や試作作業にも使えるので、キッチンカーによる開業を目指している方は、シェアキッチンの活用も検討してみてください。

YouTube・InstagramなどSNS用の料理動画の撮影場所

YouTubeやInstagramといったSNSを活用して料理動画をアップロードする方もいます。収益化を目指せるので、多くのユーザーに共感や共有されることが肝心です。
料理動画を撮影する場合、自宅でも調理は可能ですが、シェアキッチンを活用すればプロ用の設備を使用しての調理も可能です。
自宅よりも広さがあるので、撮影用の機材を設置しても邪魔にならずに調理することができます。

料理動画撮影用のシェアキッチンであれば、ダイニングのない施設でも問題ありません。
ひとつのテナントのみ利用できるタイプであれば、機材の設置や声を出しての撮影も心置きなくできるはずです。

シェアキッチンを活用するメリット


ここからは、シェアキッチンを活用するメリットを解説していきます。

飲食店を開業するハードルが低い

飲食店を開業するにあたって問題となるのが費用です。
開業するお店となる物件の確保や調理設備の導入だけでも900万円ほどの資金が必要となります。店舗の内装にこだわれば、より高い資金が必要です。

しかし、シェアキッチンであれば抑えた費用での開業が可能です。物件だけではなく調理に必要な機材も揃っているため、初期投資を抑えられます。
また、テイクアウトやデリバリー専門店を開業すれば、接客担当の人材を確保する必要もないため、人件費の削減も可能です。
ハードルが低くなるので、費用の問題から開業を躊躇していた人でも夢の開業を目指すことができます。

最初から本格的な設備が揃っている

シェアキッチンであれば、本格的な設備を利用した開業が可能です。最初から調理道具や設備が揃っているため、自分で用意する必要がありません。
ガスレンジも自宅用とは異なり火力が強い本格的なタイプです。

電気圧力鍋や大型の寸胴鍋、オーブンレンジなど、そのどれもが家庭では気軽に購入できない高額なアイテムです。
最新の設備が揃っている施設もあるため、設備の充実度でシェアキッチン選びをするのもおすすめです。

同業者との出会いが増える

シェアキッチンのタイプによっては、複数の同業者とキッチンをシェアするケースもあります。
同じ空間を利用するため、コミュニケーションする機会も自然と増えていくはずです。

開業に向けての情報交換やアイデアを一緒に考えるほか、イベントへの共同出店など、あらゆる策を考えるためにも有効です。
コラボレーションによって新たな顧客へのアピールができるので、顧客を増やすことにつながります。

1日単位・数時間単位でお店を出せる

シェアキッチンは、1日単位、数時間単位での開業が可能です。
お店を開業したくても「毎日営業するのは難しい」「体力的に1日を通しての営業は無理」などと考える方もいるでしょう。

そのような時でも、シェアキッチンであれば自分の好きな時間のみお店を営業できます。
「1日限定」や「週末のみ」「ランチの時間帯のみ」など、体力や都合の良い時間帯だけお店を出せる点もメリットです。

シェアキッチンを活用するデメリット・問題点


シェアキッチンでの開業は様々なメリットがあります。しかし、活用するにはデメリットもあるため、前もって把握しておかないと後悔を招く恐れがあります。
注意点を理解してから活用を検討してみてください。

設備・スペース・営業時間に制限がある

シェアキッチンは、利用できる時間やスペース、設備に限りがあります。
時間単位での利用となれば、ほかの利用者がお店を使っていれば自分は仕込みや営業ができないため、お金を稼ぐことは不可能です。
また、次の利用者を考えて時間内での片付けや清掃も実施しなければいけません。

スペースも限られているため、食品や消耗品といったお店をオープンさせるために必要な道具を保管するスペースも十分に与えられない可能性があります。
その場合は、別の場所で保管する必要があり、営業するごとに持参しなければいけません。
営業時間や営業できる日数を増やしたい場合には、シェアキッチンと実店舗どちらのメリットが多いのか、比較をする必要があります。

店の内装などは変えにくい

シェアキッチンはスペースを借りて営業を行うため、自分好みのお店にしにくい点がデメリットです。
自分が調理しやすいように設備の位置を変えたり、調理道具の保管場所を変えたりすることはできません。
前もってどういった機材を使用しているのか、動線や使い勝手、お店の雰囲気などを確認してから契約をすることが大切です。

予約が取れない場合もある

シェアキッチンでは、基本的にひとつのキッチンを複数の人がシェアをして利用します。
立地が良い・設備が充実しているなど、魅力的なシェアキッチンであれば、同じように利用したいと考える方は多いはずです。そのため、予約がとりにくい施設もあります。

利用者同士でトラブルに発展する可能性もある

ひとつのもの、ひとつの場所を共有するシェアキッチンでは、利用者同士でのトラブルにも注意が必要です。
使い方や片付けなどでトラブルに発展するほか、火災や食中毒といったトラブルが発生するケースもあります。
金銭トラブルが発生する可能性もあるため、トラブルをなくすためにも管理については事前に確認することが大切です。
シェアキッチンの提供者による管理が徹底しているサービスを選択すればリスクを防げるでしょう。

シェアキッチンで飲食店を開業するために必要な資格・許可


最後にシェアキッチンで飲食店を開業する際に必要となる資格や免許をご紹介していきます。

飲食店営業許可

ひとつ目に必要となる資格・営業許可が飲食店営業許可です。申請は、各自治体の保健所です。
過去に食品衛生法違反で処分を受けている、食品衛生法違反による処分から2年を経過していない、店舗の営業許可の取消から2年経過していない場合は、営業許可を取得できないため注意してください。

食品衛生責任者の資格

2つ目に必要となる資格・営業許可が食品衛生責任者です。
食品の提供を衛生的に実施できるよう、調理や管理が行える人材を食品衛生責任者といいます。設置していれば調理師資格の有無に問わず販売が行えます。

食品衛生責任者がいなければ食品販売ができないだけではなく、営業許可申請もできません。
資格を取得するためには自治体による講習を受ける必要があるため、講習時間や受講料、受講資格などをあらかじめ確認しておいてください。

シェアキッチンを活用して飲食店開業にチャレンジ!

初期投資を抑えて開業ができるため、飲食店の開業を考える方にとっておすすめできる方法です。
様々なメリットがありますが、デメリットや注意点もあるので、後悔のない開業を目指すためにも、前もってそれぞれのタイプや仕組み、特徴を把握しておくことが肝心です。

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(編集:創業手帳編集部)

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