個人事業主は銀行口座を事業用と分けるべき!理由やメリット・デメリットを徹底解説

創業手帳

個人事業主なら事業用口座を別で作ろう!口座を分ける必要があるのはなぜか解説します。


個人事業主が事業を行う時、売上げ・報酬の受取りや経費の支払いのために、銀行口座が必要です。
しかし、プライベート用と事業用の口座を分けていない個人事業主は多いです。

個人事業主が銀行口座を事業用に新たに開設することは、事業そのものだけではなく会計処理といった場合にも役に立ちます。
今回は、個人事業主が事業用口座を別で作ったほうが良い理由について解説します。

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この記事の目次

個人事業主になったら事業用口座を別で作ろう


個人事業主として事業を始めた場合、事業の大小にかかわらず、銀行口座をプライベート用と事業用に分けるべきです。

銀行口座を分けるほうが良い理由

生活費と報酬振込みの混同を防ぐ

個人用の銀行口座を事業用に使用していると、プライベートの生活費と事業での収支の区別がつきにくくなります。
また、銀行口座にある残高について、事業用として運転資金に充てるのか、生活費の捻出に充てるのかの線引きも困難です。

事業のために金融機関から借入れを行っている場合、総合的な残高を見ただけでは事業用の借入金を生活費に使ってしまうケースも予想できます。
そのため、銀行口座はプライベート用と事業用にきちんと分け、事業としての金銭の出入りを独立させるのが得策です。

確定申告の作業が簡便になる

確定申告では、銀行口座の金銭の出入りをすべて記帳する必要があります。
この時、プライベート用に支出や臨時収入があった場合、帳簿上は勘定科目「事業主貸」「事業主借」で処理しなければなりません。
プライベートの細かい終始もすべて上記の勘定科目で記載しなければならず、確定申告にあたり財務諸表を作成する時にも不便です。

その点、銀行口座を事業用で別に作成しておけば、帳簿上でも「事業主貸」「事業主借」の記帳の手間が省け、確定申告にかかる作業が簡便になります。

税務調査でプライベートの収支を見せずに済む

事業主は、個人・法人にかかわらず税務署からの税務調査を受けることがあります。
その際、税務署員は確定申告や財務諸表の内容と、通帳に記載された内容が一致しているかをチェックします。

つまり、プライベート用と事業用の銀行口座を同一にしていると、通帳を税務署員に見せる際にプライベートな収支も確認されてしまうということです。
通帳内のプライベートな収支の部分を公開したくない場合は、事業用口座を別で持つことで上記の事態を回避できます。

事業のみの収支を把握しやすい

事業を進めるにあたり、実際の収益がどれくらいあったか、経費でどれくらい使用したかの算出と比較は重要です。
しかし、プライベート用と事業用の銀行口座が同じ場合、事業のみで発生した金銭の流れがわかりづらく、資金繰りの状況が見えにくくなります。
これにより、赤字運営や資金繰りの問題にも気付きにくく、事業が成功しているかどうかの可視化もできません。

事業運営における全容を把握するためにも、事業用口座は別で作っておくべきでしょう。

税務相談がしやすい

より良い資金繰りの方法のひとつには節税があげられ、節税対策のために税理士に税務相談をすることもあるかもしれません。
この際、事業での金銭の動きが曖昧であると、税理士もどの部分で節税が可能となるか判断が付きづらくなります。

事業用口座を開設することは、いざという時の税務相談もスムーズになり、適切な節税対策のアドバイスを受けやすくなることにつながります。

事業用口座は3つに分けると便利

事業用口座の分け方

・入金専用
事業で生じた報酬、もしくは売上げの入金専用の口座を作ります。
この口座では経費や税金などの支払いは行わず、支出のための金銭は後述する支出専用口座に振込むようにします。

ちなみに、この口座は取引先や顧客に提示する振込先であるため、可能であれば屋号付口座として開設しておくのがおすすめです。

・支出専用
事業において必要な経費などの支出を行う専用の口座です。
あくまで支出しか行わず、入金はないため、支払用の金銭は入金専用口座から振込まれるようにしておきます。

個人事業主の場合、通信費や水道光熱費などはプライベートと共用していることが多いですが、全額を支出専用口座から賄い、確定申告の際に家事按分すれば問題ありません。

・税金支払専用
支出専用口座とは別に、所得税および住民税といった税金を支払う専用口座を別で持つと便利です。
税金支払専用の銀行口座は、多くの場合「納税準備預金」として各金融機関で特別に開設できます。
税金支払専用口座を設ければ、必要な納税額を別途積立ができるほか、普通預金よりも多少利率が高くお得です。

また、利率によって発生する利子は普通預金の場合は課税されますが、「納税準備預金」なら非課税となります。

銀行口座を分ける事業などでのメリット・デメリット


個人事業主が事業用銀行口座を開設すると、事業活動においてもメリットがあります。

メリット2つ

1.従業員に見せても安心できる

個人事業主が従業員を雇用する場合、入出金を従業員に委託することも出てきます。この時、事業用口座が別にあれば、プライベートな収支を見られる心配がありません。

2.会計ソフトを導入する際に便利

記帳や確定申告を会計ソフトで行っている場合、クラウド型のものの多くは金融機関と提携しており、口座情報をソフトに取込むことができます。
取込んだ事業用口座の情報はそのまま記帳にスライドさせることができ、収入と支出の仕訳も簡単です。

事業用クレジットカード情報とも連携できれば、さらに便利です。

デメリット2つ

1.個人では事業用口座が作れないことがある

口座を開設する金融機関によって対応が異なりますが、機関によっては個人で開設した口座を事業用として使用できないことがあります。
このような規定のある金融機関では、銀行口座を事業用に供していることが発覚した場合、口座の使用を差し止められる場合もあるため、事前に調べておくことが得策です。

2.収支の確認のために都度記帳が必要

前述したように、売上げや報酬の入金、経費の支出、税金といった支払いの状況を把握するために、こまめに通帳記入することが求められます。
また、税務調査の際にも通帳が必要であるため、記帳は怠らずに金銭の流れが生じるたびに行うようにします。

事業用口座を作れる金融機関の種類


事業用の銀行口座を開設するにあたり、以下のような金融機関に申込むことができます。

全国に店舗がある都市銀行

都市銀行は、全国各地の都市に多くの支店があります。
特に、メガバンクに分類される大手都市銀行は、知名度はもちろん信用度も高く、安心して取引きすることができます。

取引先にも安心感を与えられるほか、各種手続きが最寄りの支店で行えることがメリットです。

地域密着型の地方銀行

地方銀行は、それぞれの地域にのみに拠点を構え、地域密着型の営業を行っている金融機関です。
事業を展開している所在地の近くに地方銀行の支店があれば、便利に利用できます。

また、機関にもよりますが、預金や借入れなどの相談にも多少の融通が利く場合があります。

インターネットで取引きを行うネット銀行

インターネット経由で、実店舗に出向くことなく各種手続きが行えるのが、ネット銀行です。
銀行口座開設もインターネットで行えるほか、各種手数料が安価で済み気軽に利用できます。
信用度に関しては都市銀行や地方銀行よりも多少劣りますが、自宅にいながらにして様々なサービスを受けられます。

信託業務と並行している信託銀行

信託業務とは、現預金や不動産など、また相続したものも含めた財産運用を受託し、生かす業務を指します。この業務と銀行業務を並行して行っているのが、信託銀行です。
信託銀行に事業用口座を開設すれば、各種資産運用や財産の相続についても相談することができます。

個人口座と法人口座のどちらが良いか


個人事業主が事業用口座を開設する時、屋号付き個人口座か法人口座かを選ぶこともできます。

屋号付き個人口座と法人口座の違い

屋号付き個人口座は屋号+個人名

屋号付き口座とは、個人単位で銀行口座を開設する際、事業を行っている屋号を名義に付けることができる仕組みです。
名義の正式な表記は、多くの場合は屋号+個人名であり、個人事業主として事業を展開するのであれば一般的です。
開設の際には、開業届もしくは屋号を使用して事業を行っていると証明できる書類が必要となります。

法人口座は法人名のみでの登録

法人口座は、法人単位で開設する口座であり、名義は会社名のみです。法人口座を開設するには、法人としての商業登記などの手続きが必要です。
利便性で考えると、事業用口座として完全に独立させることができるため、事業における資金繰りをより明確にできます。

個人の屋号付き口座と法人口座のメリット

個人の屋号付き口座のメリット

・社会的信用を上げる
個人事業主が取引先とビジネスを行う際、先方は銀行口座の名義が個人名であると、少なからず信用を疑う可能性があります。
しかし、屋号が付いている口座であれば自身の事業への信用を獲得でき、社会的にも信用度が上がります。

・顧客が安心して取引きできる
顧客に商品を販売している場合、支払いを銀行振込みとすることも多いです。その際、振込先口座に屋号が入っていなければ、顧客は入金をためらうかもしれません。
振込先口座に屋号を付けておくと顧客の不安感も消え、安心して商品を購入してもらえるでしょう。

・事業が複数にわたるときに扱いが楽
異なる事業を複数行っている場合は、事業ごとに銀行口座を分けておけばそれぞれの売上げや報酬が把握しやすくなります
銀行口座を事業別にする時は、口座ごとに屋号を付ければ区別が付きやすく便利です。

・取引先への入出金の際に判別しやすい
取引先や顧客との金銭の入出金を行う場合、振込先が実際に取引きをしている事業主なのかを周知させるためにも役立ちます。
屋号を使用して取引きをするのであれば、銀行口座に屋号を付けたほうが、先方が理解しやすくスムーズに入出金が行えます。

・事業への取組みに対する姿勢を計れる
取引先や金融機関と取引きをする際、個人事業主が事業にどれだけ真剣に取組んでいるかを計る指針にもなりえます。
事業をしっかり行っていることが先方に伝われば、双方にとって安心かつ安全な取引きを行うことにつながります。

法人口座のメリット

・社会的信用度をさらに強化できる
個人事業主における屋号付き口座でも、ある程度社会的信用を得ることができますが、法人口座ではその信用度をさらに強化できます。
法人用口座は、前述のように法人としての財産を完全に独立させることができるため、事業全体の信用度につながります。

・融資を受ける際に有利
法人口座を開設することで、社会的信用が上がれば、融資を受ける際にも有利です。法人として実態が認められれば、大口の融資を受けることも可能です。
また、金融機関によっては法人専用の窓口があるため、事業における資金繰りの相談に親身になってアドバイスをもらえることもあります。

・銀行での各種手数料に融通が利く
法人口座で発生する各種手数料について、金融機関によっては減額等の対応を相談することができる場合があります。
この場合、一定期間その金融機関で入出金の取引きを行い、つながりを深くしておくことが必要です。

・ペイオフ(預金保険制度)が適用できる
ペイオフ(預金保険制度)とは、万が一金融機関が倒産した際に預金額を保護されるものです。通常、普通預金であれば保護されるのは1,000万円までと利息のみです。
ただし、各種手形や小切手の決済に使用される当座預金・決済用預金に関しては、決済に使用する・払戻し可能・無利息の条件を満たしていれば全額保護されます。

・事業用クレジットカードを作成しやすい
法人として事業用クレジットカードを作ると、経費などの支出の際に便利です。
事業用クレジットカードは、個人事業主の場合だと実績の不安定さや事業用固定電話の有無で審査に通りづらくなっています。

法人であればこれらの条件をクリアしていることが多く、信用度が上がり個人事業主よりも審査を通過できる可能性が高いです。

個人の屋号付き口座と法人口座の作り方の違い

上記で説明した限りでは、法人口座のほうがメリットが多いことがわかりますが、銀行口座の作り方には大きな違いがあるため、注意しなければなりません。

個人の屋号付き口座

個人で屋号付き口座を開設する際、まずは屋号を登録するために開業届を税務署に提出します。
そして、その屋号で事業を行っていることを証明するため、以下のような書類を金融機関に提出します。

  • 本人確認書類
  • 開業届や確定申告書の控えなど
  • 事業の実態がわかるチラシやホームページのURL(屋号と個人名が確認できるもの)
  • 納品書や請求書など、事業の実態がわかるもの

銀行口座開設のためには、事業所の最寄りにある各金融機関の窓口に出向く必要があります。
しかし、上記の準備だけで申込みをすることが可能なので、それほど手間はかかりません。

法人口座

法人口座を開設する際、そもそも法人としての商業登記を行わなければならず、登記手続きには以下の手順を踏む必要があります。

  • 登記申請書を作成する
  • 定款を作成する
  • 取締役の就任承諾書などを作成する
  • 代表者の印鑑証明、法人の印鑑届出を行う
  • 出資金を代表者個人の銀行口座に払込み、証明書を発行する
  • 上記や代表者の本人確認書類などを含めた各書類を法務省に提出する
  • 不備がなければ登記終了

 

これらの書類をそろえる手順だけでも、かなりの手間を要することがわかります。
上記の商業登記を終え、さらに法人口座を開設する際には、上記の書類とほぼ同じものと、事業運営の実態が把握できる書類を要します。

・必要書類をそろえても口座を作れないことがある
上記のように、商業登記を行った後に法人口座開設の手続きを行いますが、必要書類をしっかりそろえても口座開設を断られるケースがあります。
口座開設ができない主な理由には、以下のようなものがあります。

  • 資本金の額が少額である
  • 事業用固定電話を引いていない
  • レンタルオフィスなどを利用している
  • 実際の事業運営の実態が確認できない
  • など

もちろん、金融機関によって審査基準が異なるため、これらの条件に当てはまっても法人口座を開設できる可能性もあります。

事業用口座を作る場合の注意点


個人事業主が屋号付き口座を開設する際には、以下のような点に注意してください。

個人用口座より審査が厳しい

個人のプライベート用に銀行口座を開設する場合、簡単な収入証明書や本人確認書類などの提示のみで申込みが可能です。
しかし、事業用の銀行口座の場合は、事業の実態が確認できる各種書類を提出したとしても、そこから審査が行われ、場合によっては審査に通過しないケースもあります。

開設までに時間がかかる

個人で事業用口座を開設する際、前述のように審査に通過する必要があります。審査にはおよそ2週間~3週間ほどかかるのが一般的です。
そのため、審査の期間中は、やむを得ずプライベート用の口座を使用しなければならないことは、頭に留めておきましょう。

これまでに取引きがある銀行のほうが作りやすい

事業用口座開設の審査に通過するためには、開設者が信用に値するかの基準を満たしていることが第一です。
そのため、事業用口座を開設するなら、すでにプライベート用の個人口座を開設して取引きを行い、ある程度の信用を得ている金融機関にするのがおすすめです。

まとめ

個人事業主になったら、事業用口座を別に作ることで様々なメリットを享受できます。屋号付き口座にすれば、事業をさらに有利に進められます。
屋号付き個人口座か法人口座かについては、法人口座のほうが取引きにおけるメリットが多いですが、同時に難易度が高いことは覚えておいてください。

自分の事業規模に合わせて、どのような事業用口座を開設するかを決めておきましょう。

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(編集:創業手帳編集部)

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