Scale Cloud 広瀬好伸|KPI特化型のマネジメントSaaS「Scale Cloud」で実現する事業運営の変革

創業手帳
※このインタビュー内容は2022年08月に行われた取材時点のものです。

KPIマネジメントのスペシャリストが語る、KPIで導く企業のより良い未来


企業の目標達成度合いを数値で示すKPIですが、近年その重要性が高まりつつあります。

そんな中、注目を集めているのが、KPIを活用してビジネスのスケールアップを実現するマネジメントツール「Scale Cloud(スケールクラウド)」です。事業全体として優先すべきKPIを把握するために、必要な情報をリアルタイムに集め、優先的に改善すべき課題がひと目でわかります。

2022年6月、社名変更により自社ブランドと名称を統一したScale Cloudは、2018年に設立した前身のビーワンカレッジ時代から「Scale Cloud」の開発・提供およびコンサルティングを手掛けています。

代表取締役を務める広瀬さんの起業までの経緯や、KPIで変わる事業運営について、創業手帳代表の大久保がインタビューしました。

広瀬 好伸(ひろせ よしのぶ)
株式会社Scale Cloud 代表取締役
2003年京都大学卒業、あずさ監査法人に入社し、公認会計士として従事。2007年起業、CFO/IPO/M&A/企業再生などのコンサルタントとして800社以上の経営をサポート、4社のIPOに携わり、そのうち2社の社外役員も務める。KPIマネジメントのスペシャリストとして、KPIを活用してPDCAをまわし10xな事業成長を手に入れる日本初のKPIプラットフォームSaaS「Scale Cloud」を開発・提供。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計250万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら

※この記事を書いている「創業手帳」ではさらに充実した情報を分厚い「創業手帳・印刷版」でも解説しています。無料でもらえるので取り寄せしてみてください

大手監査法人から、自身の成長を求めて起業を決断

大久保:まずは起業までの経緯についてお聞かせ願えますか。

広瀬:新卒であずさ監査法⼈に⼊社し、公認会計⼠として5年ほど勤務しました。IPO準備や銀⾏監査に従事しながら上場も経験しています。

私の場合は「ゆくゆくは起業したい」という希望を抱いて社会人のキャリアをスタートさせたのですが、具体的な時期までは決めていませんでした。

そんな中、公認会計士業界に内部統制報告制度「J-SOX(ジェイソックス)」のコンサルティング業務が爆発的に増加し、その影響で公認会計士の報酬単価が上がったんですね。とりわけ内部統制のコンサルは、1日の平均報酬単価が10万円以上と一気に上昇しました。

この内部統制コンサルティングの拡大を機に、「監査法人を辞めて独立しよう」と決意し、2007年に起業しました。

大久保:内部統制コンサルティング業務を軸にして起業されたんでしょうか?

広瀬:いえ、起業当初の数年間はIPOやM&A、企業再⽣が中心でした。その理由は、内部統制のコンサルティング業務を増やす公認会計士が多かったからです。

当時は業界的に内部統制コンサルティングがトレンドだったとはいえ、これまで主な業務だったIPO・M&A・企業再生などのコンサルティングがなくなるわけではありません。そこで、「独立した先輩方の多くが内部統制を柱にしている今だからこそ、起業すれば既存の仕事の空きがあるはずだ」と考えたんですね。

大久保:もともと起業の意思があったとはいえ、大手監査法人所属だと仕事も報酬も安定していますよね。退職を躊躇する気持ちにはなりませんでしたか?

広瀬:どちらかというと、「さらに成長したい」という意欲のほうが大きかったです。

退職して起業した2007年当時、私は28歳でしたが、大手企業所属で35歳を迎えた自分と、私自身がずっと思い描いていた「自分がなりたい姿」を比較したとき、「私の場合は起業したほうが良いのではないか?」と思えたんですね。

だからこそ、「このタイミングで起業すれば、さらに成長できる」と自分を信じることができました。

大久保:なるほど。ご自身の中にあった理想像と照らし合わせ、広瀬さんにとっては起業がベストだと判断した結果だったんですね。

広瀬:はい。その先の7年間を指標にして比較したイメージを基に、独立を決断することができました。

KPIマネジメントのプロフェッショナルとして業界を牽引

大久保:先ほど「起業当初の数年間はIPOやM&A、企業再⽣が中心」とお話しいただきましたが、現在に至るまでの事業の変遷をお聞かせいただけますか。

広瀬:最初に主なサービスとして提供していたIPO・M&A・企業再⽣関連のコンサル業務は、報酬単価が高く、個人会計事務所として運営していく分には問題ありませんでした。ただ、事業としての継続を考えたとき、再現性の低さがネックになるかもしれないと危惧したんですね。

そこで再現性が高いビジネスを模索した結果、税理士の案件を増やすことにしました。私は公認会計士と税理士、どちらの資格も保有していましたので、再現性の高さが魅力の税理士業務は最適でしたね。

その後、さらに付加価値の向上を目指し、業界特化型のCFOコンサルティングサービスを開始。業界を絞って再現性を向上させ、同時に付加価値を高めることにも成功しました。

おかげさまで起業後、公認会計⼠・税理⼠として上場企業役員をはじめ、IPOやM&A、企業再⽣、社外CFOなどを通じて600社以上の事業に関わってきています。

大久保:理念を基に、徐々にビジネスを拡大させてきた経緯が見事ですね。現在のScale CloudにつながるKPIを活用した「仕組み化」は、事業としての継続を模索する中で着想を得たのでしょうか?

広瀬:はい。独立後、10数年かけて多くの企業と数字を通してお付き合いしてきた中で、顧客企業を分析しながら「成長速度の早い会社の共通点」に対する答えを探し求めてきたんですね。

その答えの1つ目が「数字でマネジメントを行っていること」、2つ目は「KPI管理ができていること」でした。

特にKPI管理については、何度か上場に携わった経験を通じてわかったことです。予算管理の精度が上がらないと、年々厳しさを増している上場審査に通らないため、早い段階からKPIを活用した事業運営のセッティングがマストになりつつあります。

一方で、KPIの設計や運用のプロフェッショナル集団があるか?というと、Scale Cloudの前身であるビーワンカレッジの設立に至った2018年当時は存在しませんでした。

それならば、私たちがKPIマネジメントのプロフェッショナルとして業界を牽引しようと。こうした理念や想いが、Scale Cloudのサービスにつながっています。

社内全体で共通認識が持てるKPI特化型システム「Scale Cloud」

大久保:「Scale Cloud」のサービス内容をお聞かせください。

広瀬:「Scale Cloud」は、事業全体として優先すべきKPIがわからないという問題を解決するために、必要な情報をリアルタイムで集約し、優先的に改善すべき課題がひと目でわかるように設計されたクラウドシステムです。社内全体で「共通認識」を持つことを重視しています。

理想のイメージは、戦国時代の軍事会議です。これを現代の経営会議になぞらえて、真ん中に社長、その周りに経営管理部長や営業部長、マーケティング部長、開発部長などが揃う場を構築することができたら、「事業目標に対して、達成できたか?何が問題になっているか?」といった共通認識が持ちやすくなると考えました。

ところが、現在の事業運営はセクショナリズムが強くなり、各部署で自分たちのKPIだけを追いかけているんですね。全体の景色を見ていないため、事業全体の目標が未達成だった場合、原因の認識も各部署によってバラバラです。これでは共通認識を持つことはできません。

まずは全員が同じ景色を見ること。その上で、それぞれのセクションが果たすべき役割を把握すること。こうして共通認識を持ちながら、やるべきことや進捗を管理できるシステムとして開発したのが「Scale Cloud」です。

大久保:なるほど。会社全体を一気通貫で見える化する。ありそうでなかったサービスですよね。

広瀬:はい。セールスやマーケティング、開発など部署ごとの使用管理ツールが異なることが多いため、データ集約が難しかったという側面も影響しています。

弊社の「Scale Cloud」は、GoogleアナリティクスやSalesforceといった多種多様なツールのデータが集約できるだけでなく、財務三表までまとめてKPIの数値とリンクさせることが可能です。

操作性も優れており、誰もが等しく情報に触れることができて、理解しながら会社全体や所属部署の戦略を確認できる仕様にもこだわっています。

大久保:ダッシュボードを見せていただきましたが、確かにわかりやすいですね。ツリー構造になっているので、直感的に把握できます。

広瀬「KPIツリー」と呼んでいるのですが、「Scale Cloud」では1ステップ目にビジネスモデルの設計図を作るところから始めるんですね。次の2ステップ目で、設計図を基にPDCAをまわしていきます。

この2ステップで、KPIを使ってPDCAをまわす仕組みを構築できることや、共通認識を持つためのダッシュボードと、各個人がカスタマイズして利用するダッシュボードの2種類をわけて管理できることが「Scale Cloud」の特長です。

大久保:どの程度の階層が作れるのでしょうか?

広瀬階層の制限はありません。事業ごとの設定も可能です。

たとえば「リード」のチャネルに「テレアポ」「WEB」を設定し、さらに「テレアポ」の下層に「コール数」「アポ獲得率」、「WEB」の下層に「クリック数」「コンバーション率」といったように好きな項目を作ることができます。

また、下層の2つの項目を掛け算し、上層の数値を割り出す計算ロジックを仕込んでいるため、未達成項目の原因究明を行いやすいのが強みです。

各部署ごとのKPIと財務上の目標数値を紐付けさせ、因果関係が把握できるだけでなく、全体戦略と個々がやるべきことまで理解できます。他には無いフレームワークを目指しました。

大久保:ディスカッション履歴を残すこともできるんですね。

広瀬:はい。KPIごとに履歴を残せるだけでなく、KPI数値に対するアクションの進捗や、分析の経過なども集約できます。共通認識を持ちながらディスカッションし、PDCAがまわしやすくなる仕様にこだわりました。

きめ細やかなサポート体制と、良心的なサービス価格で企業支援

大久保:「Scale Cloud」と一緒に提供されているカスタマーサクセス支援のサービス内容をお聞かせください。

広瀬:主なサービスは、「導入支援プログラム」「運用支援プログラム」です。

導入支援プログラムは、「Scale Cloud」のスムーズな導入と、導入効果を最大化するための支援サービスで、専属のカスタマーサクセス担当者が企業ごとのベストなKPIツリーの設計をお手伝いします。

一方の運営支援プログラムは、「Scale Cloud」導入後の導入効果と効率を最大化するための支援サービスです。設計したKPIツリーに基づいたPDCAを組織に定着させていくサービスで、導入目的や組織構成、業績目標などに基づいてカスタマイズしたアシスタントプランを提案しています。

大久保:サービス価格をお教えください。

広瀬:「Scale Cloud」は、3IDまで月額5万円。4ID目以降、1IDごとに月額5,000円となっています。たとえば5IDのご契約ですと、3ID分の5万円に追加の2ID分1万円が加算され、月額6万円です。

支援サービスは、KPI設計サービスが一式で30万円。同サービスをコンサルティング会社に依頼すると、およそ300万円かかる内容です。専属担当者が一緒にPDCAをまわすサポートサービスは月額15万円で、コンサル会社の3分の1以下という破格で提供しています。

KPIとは「未来を予測しながら、具体的に把握できる言語」

大久保:KPIマネジメントのスペシャリストである広瀬さんから見て、KPIとは一言で言うとなんでしょうか?

広瀬「未来を予測しながら、具体的に把握できる言語」だと捉えています。

弊社のKPIツリーでご説明すると、チャネルの下層の実績が悪くなると、下から上に流れていくので上層も悪化していくんですね。構造から先々を予測できるため、初期の段階で「どういうアクションで売上を増やそうか?」などの改善ステップを踏むことができます。

それからなぜ言語なのかについては、共通認識を持ちながら事業を進めていくにあたってKPIが欠かせないからです。この共通認識を持つためには、事業をリアルタイムで視覚化し、全員が現在の状況を把握しながら言語として通じるようにする必要があります。

KPI以外のシステムで「今月の売上が悪い」といっても、具体的に何が悪いのかわかりません。一方、KPIツリーなら「テレアポのコール数が少ないから、このままだと売上悪化につながってしまう」という因果関係まで理解できます。

つまりKPIを活用すれば、未来の予測だけでなく、具体的に現状を認識する言語を手に入れることができるんですね。

大久保:なるほど。合理的な会話も可能になりますね。

広瀬:はい。それから「合理性だけに走るのは駄目」ということも大切です。顧客企業には、合理的な論理に傾きすぎないように注意してほしいとお話ししています。

数字の世界は左脳にカテゴライズされますが、人間は左脳だけでは動かない感情の生き物です。どちらかといえば、右脳が優位なんですね。

あくまでも右脳が主で、左脳が従です。人間には感情があることが前提で、そのフォローをするのが数字やロジックですので、決して左脳が主で右脳が従にはなりません。

そのため、数字は事実を詰めるために活用するのであって、人を責める目的で使ってはいけないということをお伝えしています。

大久保:確かに誤った合理性による経験を通して、数字が絡む話をマイナスに捉えている方も少なくないですよね。

広瀬:個人的に「KPIは何色だと思う?」という質問をよくするのですが、経営者は「黒」、従業員は「青」と答える方が多いんですね。いずれも冷たい印象の色です。

さらにその理由を聞くと、「詰められるから嫌だ」という非常にネガティブな感情が返ってくるんですよ(笑)。

だから私は、KPIのイメージをオレンジに変えたい。本来のKPIはもっと温かく、活動を抑制するのではなく促進する指標であり、未来に対して明るく活用できるものです。誰もが自然と、エネルギーカラーのオレンジをイメージできるようにしていきたいですね。

関連記事
KPIとは?KGIとの違いや起業独立にも大切な目標設定のコツを解説
マンダラートとは?目標達成のためのアイデア発想法

(編集:創業手帳編集部)

創業手帳冊子版は毎月アップデートしており、起業家や経営者の方に今知っておいてほしい最新の情報をお届けしています。無料でお取り寄せ可能となっています。

(取材協力: 株式会社Scale Cloud 代表取締役 広瀬 好伸
(編集: 創業手帳編集部)



創業手帳
この記事に関連するタグ
創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら
創業時に役立つサービス特集
このカテゴリーでみんなが読んでいる記事
カテゴリーから記事を探す