飲食店の開業資金はいくら?スケジュールを把握して動きはじめよう
飲食店の開業資金を調達する方法や相場を知っておこう
開業資金は、物件取得費や設備投資、運転資金まで含めて計画しなければなりません。
また、工事や設備にかかる費用の相場や、自己資金だけでは足りない部分をどのように調達するかも考えておく必要があります。
飲食店は業態によって利益を出すためのコストのかけ方やビジネスモデルが違います。
自分が開業するお店が安定して利益を出すまでの道筋を、事業計画書に落とし込んでみてください。
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この記事の目次
飲食店の開業資金はいくらかかる?
レストラン経営が昔からの夢だった人や、独立して自分の飲食店を持ちたいという願望を持つ人は少なくありません。
しかし、ぼんやりと願望を持つだけでは実現は困難です。
飲食店をスタートするための第一歩として開業資金がどのくらいかかるのか、どのように調達するのかを考えなければなりません。
開業資金の相場やその内訳を紹介します。
開業資金の相場
日本政策金融公庫総合研究所による「2021年度新規開業実態調査」によると、2021年度の開業資金平均は941万円。
ただし、中央値は580万円で、分布をみると「500万円未満」の割合が42.1%で最も高く、「500万円~1,000万円未満」の30.2%が続きます。
開業資金は全体の傾向として低くなっており、500万円未満の開業資金で開業する割合は増加しています。
開業資金の内訳
飲食店を開業するには、手続きだけでなく様々な準備が必要です。また、準備に伴って多くの費用が発生します。
開業資金総額を計算するために、どのような費用が発生するのかを知っておきましょう。
開業資金には、どのようなものがあるのか開業資金の内訳を紹介します。
設備資金
飲食店を始めるためには、店舗などの設備が必要です。
具体的には物件取得費と、店舗投資があり、物件取得費は物件を契約するための補償金や礼金、仲介手数料等を含みます。
物件を購入した場合には購入費用が物件取得費です。
物件を借りた場合には、保証金として家賃の3~12ヵ月分程度が発生するため、想定しているよりも初期費用が大きくなることがあります。
また、物件を契約してからも店舗にするための費用として、内外装費や備品の購入費がかかります。
飲食店の形態によっては、内装費や厨房の設置費用が大きくなるかもしれません。
内外装費の相場は1坪あたり50~100万円程度。
しかし、どれだけこだわるかによって大きく変動する費用です。
設備資金にどれだけの費用をかけられるのか、あらかじめ予算を立てておく必要があります。
運転資金
運転資金は、飲食店として経営を続けるために必要な費用です。
手元にお金がなければ食材の仕入れもできず、人を雇うこともできません。
開業してすぐに安定した利益が出せるようであれば、資金難の心配はないかもしれません。
しかし、事業が軌道に乗るまでには時間がかかり、計画していたよりも売上が低くなることも考えられます。
また、うっかり忘れがちですが事業者の生活費も考えなければなりません。
開業して利益がないことは、無収入を意味します。
収入がなくても生活するために必要な資金は準備しておく必要があります。
具体的には、家賃や食費、光熱費や教育費などが必要です。
また、開業に合わせて引越しをする時にはその引越し費用もかかります。
開業して赤字が出ても問題なく経営し続けられるように半年~1年分の運転資金は用意しておくようにおすすめします。
業態ごとのコスト配分も知っておこう
飲食店と簡単に言っても、その内容は様々です。
ラーメン店、居酒屋、バイキングやファーストフードなど、多様な飲食店があります。
飲食店は、業態によって多くのコスト配分のパターンがあります。
以下では、大きく3つに区分したコスト配分について紹介しているので、自分が開業する飲食店がどれに該当するのか考えてみてください。
フード重視型
フード重視型のコスト配分は、原材料費に費用をかけてサービスのコストを減らした業態を言います。
例えば、バイキングやテイクアウトのお店が該当します。
サービスをコストカットするため、食材や料理のコストを増やしてリーズナブルに提供できる点がメリットです。
フード重視型で成功するためには、いかに効率的に営業を進めるのか、少人数で店舗を回すかを工夫する必要があります。
サービス重視型
サービス重視型は、サービス、人件費にコストをかけてフードのコストを抑えた業態を言います。
具体的には、バーやスナックが該当し、質が高いサービスの提供を徹底している業態です。
サービス重視型では、お店の雰囲気や居心地の良さを重視している人がターゲットです。
フードメニューは利益を確保できる価格設定にしつつ顧客に不満を持たせないように注意してください。
立地・利便性重視型
立地・利便性重視型は、家賃、つまり立地にコストをかけてフードやサービスのコストをカットしている業態をいいます。
駅近くにあるコーヒーチェーン店などが該当します。
立地や利便性で集客を図る形態で、駅や商業施設などの利用者がターゲットです。
立地・利便性重視型は、固定費負担が大きくなるため、集客できないの時のリスクは高くなる可能性があります。
ある程度集客の見込みがあるか、資本に余裕がある場合におすすめの業態です。
開業資金の調達方法
前述の「2021年度新規開業実態調査」によると、開業時の平均資金調達額は1,177万円です。
資金調達先としては、「金融機関等からの借入」が平均803万円で、自己資金が平均282万円でした。
できる限り自己資金で開業したいと考えるかもしれませんが、現実的には難しいケースもあるでしょう。
開業計画を立てる時には、どこからいくらの開業資金を調達するかを事前に考えておかなければなりません。
開業資金の調達方法についてまとめました。
金融機関からの融資
資金調達の手段として、まず思い浮かびやすいのが金融機関からの融資です。
しかし、大手銀行の場合には特に実績を重視するため、新規開業で付き合いがない金融機関に出向いても融資を受けるのは難しいかもしれません。
銀行から融資を受けられない場合には、信用金庫や事業創出、地域活性化を目的としている日本政策金融公庫から融資を受けることも検討してください。
日本政策金融公庫では、新規創業融資制度や女性・若者/シニア起業家支援資金といった融資制度を提供しているほか、経営上の課題に対するコンサルティングや財務評価を提供しています。
補助金・助成金
開業資金を調達するにあたって使える補助金や助成金もチェックしてください。
国や地方自治体の制度を調べて、創業者向け、飲食店をサポートする目的の制度がないか調べてみましょう。
例えば、正社員を雇用することで受け取れるキャリアアップ助成金もあります。
補助金や助成金によっては、条件が決まっていたり公募期間が決まってたりするものもあるので、こまめに情報を探すようにしておいてください。
また、補助金や助成金は申請してから受け取るまでに時間がかかる点にも留意してください。
自己資金
飲食店を開業する時に、少しでも多く用意してほしいのが自己資金です。
自己資金が少なくても開業できるといった話も聞かれますが、少額の自己資金では開業するための設備だけで資金が尽きてしまうことがあります。
開業してすぐはなかなか利益が安定しません。
一方で、支払わなければならない家賃や仕入れ費用は容赦なく発生し続けます。
そのため、資金面の余裕がなければ利益が安定する前にキャッシュフローの悪化で廃業してしまう可能性があります。
開業する際には、早く経営を軌道のせるような集客を意識すること、そして安定するまでのキャッシュフローを維持するための自己資金を貯めておくことを忘れないようにしてください。
開業までの流れ
開業するまでには、多くのステップを介することになります。
事業計画を立てる時には、どのような工程があるのかを書き出して抜けがないようにしてください。
開業までの流れをおおまかに紹介します。
1.事業計画の立案
飲食店を開業するために、すぐにでも始められるのが事業計画の立案です。
事業計画の内容は、大きく事業の概要とコンセプト、サービスの内容や販売戦略、体制は人員計画です。
まずはコンセプトや概要を作成して、それに沿うように計画を立てていきます。
作成した事業計画書は金融機関からの資金調達にも使われます。
事業計画を立てる上で意識しておきたいのが実現可能性です。
その事業が、第三者にもわかりやすい魅力的なものなのか、資金をどのように活用して利益を出すかを細かく記載することで、実現可能な事業であるとアピールできるようにします。
2.物件の選定、契約
事業計画が立案できたら、いよいよ物件を探し始めます。
事業計画書と照らし合わせて、ターゲット層や集客計画に合う物件を探してください。
めぼしい物件やエリアを見つけたら、実際に足を運んで、通行人の人数や時間帯ごとの人の流れを下見します。
良さそうな物件があれば内見へ行きます。
内見する際は、余すことなくチェックできるように作成しておいたチェックシートやメモ帳、カメラを持参するのがおすすめです。
物件が決まったら、申込をして審査に進みます。
審査では事業計画書の提出が求められることもあります。
審査を通過して契約する時には、契約書を必ず確認して不明点がないようにしてください。
3.資格取得や届け出
飲食店を開業する時には、必要に応じた資格を取得しなければなりません。
飲食店開業で必要な資格は、食品衛生責任者と防火管理者です。
食品衛生責任者は、食品衛生学などに関する講義を受講することで取得できます。
防火管理者は、30名以上の収容人数の飲食店を開業する際に必要な資格。防火管理者の資格を取得するには、都道府県知事や消防長が行なう防火管理講習を受講してください。
また、開業に当たって管轄する機関への届け出が必要です。
食品営業許可は保健所に提出し、火管理者選任届と、火を使用する設備などの設置届け出書は消防署に提出します。
また、人を雇用する場合には、労災保険加入の手続きを労働基準監督署、雇用保険加入手続きを公共職超安定所で行います。
上記に加えて、開業届や青色申告承認申請書の手続きは税務署で行ってください。
飲食店開業で必要となる届け出や手続きは飲食店の規模や業態によっても違います。
開業する前にはどのような手続きが必要になるのか確認しておいてください。
開業資金を用意するために今からスタートできること
開業はしたいけれど現実的に難しいと考える人の多くにとって、開業資金の捻出が課題となっています。
開業資金を用意するためにできることをまとめました。
経験を積む
飲食店開業は、経験がなければできないと決まっているわけではありません。
しかし、調理の経験や店舗経営を習得するためには実際に飲食店で働いてみることをおすすめします。
経験を積むことで事業者がどのような工夫をしているのかや、人を雇う時に注意したい点が見えてくるはずです。
融資や物件を借りる時の審査でも、今までどのようなことをしてきたかを尋ねられます。
飲食店での勤務経験は、開業するためにも強い武器になるはずです。
自己資金を用意する
開業を志した時から、スタートして欲しいのが自己資金の準備です。
資金管理は、事業者としても不可欠な能力。
金融機関が融資の可否を判断する時にも、計画性や金銭管理の能力があるかどうかをチェックします。
また、開業したいという意思を目に見える形にするためにも自己資金は重要です。
少しずつでも目標に向かってお金を貯めていく習慣を身につけるようにしてください。
日々の支払いは確実に
開業を思い立ったら貯蓄をスタートするとともに、日々の支払いを怠らないようにしてください。
公共料金や家賃、住宅ローンの支払いの状況は、返済能力を評価する時の基準となることがあります。
支払いが遅れることによって信用力が下がり、融資を受けにくくなる可能性もあります。
日々の支払いを忘れないように引き落としにしておき、毎月いくらの引き落とし額になるかも把握するようにしてください。
使える補助金や助成金を調べておく
飲食店を開業するにあたって、利用できる融資制度や補助金、助成金はいろいろあります。
事業計画の段階でどのような制度があるのか、利用するためにはどうすればいいのか調べておきましょう。
開業が近くなると、様々な手続きで制度を調べたり申請したりする時間も足りなくなります。
時間に余裕があるうちに、制度の概要や要項をチェックしてスケジュールを立てておいてください。
まとめ
開業資金の準備や事業計画は、想定していたままスムーズ進むとは限りません。
思ったよりも費用がかかってしまったり、考えていたビジネスプランが使えなくなったりすることもあります。
開業資金や事業の計画は見直しがあるものと考えて問題ありません。
再検討を繰り返して、自分にとって最適な飲食店開業を目指してください。
(編集:創業手帳編集部)