小売・飲食業必見 レジ/システム導入費用を一部補助する「軽減税率対策補助金」

飲食開業手帳

気になる補助金制度の内容を解説します

(2019/05/07更新)

政府は、2019年10月1日から消費税を8%から10%に増税することを発表しました。それと同時に始まるのが、特定商品の消費税率を一般的な消費税率より低く設定する「消費税軽減税率制度」という制度です。
これにより、早急な対応が必要となるのが、特定商品を扱う小売店や飲食店、新聞関連業です。価格表示やレジの処理などをそれぞれの税率に対応させなければならないのです。

ですが、「導入したいけど、そのための費用を捻出することができない…」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか?
そんな方にぜひ利用して欲しいのが、2019年9月30日までに導入し支払いが完了したレジ/システムの費用の一部を補助してくれる「軽減税率対策補助金」です。

そこで今回は、

  • そもそも消費税軽減税率制度とは
  • 軽減税率制度の対象品目と対応方法
  • 軽減税率対策補助金の種類と申請方法

について解説します。

小売店や飲食業、新聞関連業など、関わりのある事業者の方はぜひチェックしてください。

消費税軽減税率制度とは?

まずは、「消費税軽減税率制度」について解説します。

政府は消費増税法と消費増税延期法により、2019年10月から消費税を8%から10%に増税することを決定しました。
それに伴い、低所得者への配慮から「生活必需品にかける消費税は8%に据え置きましょう」としたのが「消費税軽減税率制度」です。「軽減税率」とは、標準税率が10%になるところ、それより抑えた8%のままになるという意味です。

「消費税軽減税率制度」は、消費税の10%への増税と同じ、2019年10月1日から施行されます。

軽減税率制度の影響を受ける人は?

では、この制度が始まることで、具体的にどのような人が影響を受けるのでしょうか?

軽減税率制度の対象品目

誰に影響が出るのかを考えるために、制度の対象となる品目を確認しておきましょう。
軽減税率は以下の品目について適用されます。

  • 酒類・外食を除く飲食料品
  • 週2回以上発行される新聞(定期購読契約に基づくもの)

上記の商品に関しては、税率8%のまま据え置かれるということです。
特に「飲食料品」は少し複雑ですが、次のような対応になります。

  • 外食(飲食営業者が飲食に用いられる設備のある場所で行う食事の提供)
    →軽減税率対象「外」=10%
  • ケータリング(注文に応じて指定された場所で調理や給仕を行うもの)
    →軽減税率対象「外」=10%
  • テイクアウト・宅配
    軽減税率対象=8%(ただしイートインスペースで飲食する場合は対象外=10%)
  • おまけ付きのお菓子など
    →「食べ物と食べ物以外全体にのみ価格が提示されている」「税抜1万円以下」「食べ物の価額が占める割合が2/3以上」のすべてを満たせば軽減税率対象=8%
  • 医薬品・医薬部外品など
    →軽減税率対象「外」=10%

なお、有料の老人ホームなどで提供される飲食料品は軽減税率対象=8%となります。

軽減税率制度に関係のある事業者とは

軽減税率制度が施行されると、次のような事業者に影響が出ると考えられます。

飲食・食品業

仕入れる食材には軽減税率の8%が適用されます。
しかし、調理や提供の過程で使う酒やラップ、割り箸、レジ袋などにはすべて標準税率の10%が適用されます。このため、2つの税率をそれぞれ区分して値付けや帳簿への記帳を行う必要があります。

新聞関連業

新聞は、週2回以上発行されている定期購読の新聞に限り8%据え置きとなります。
コンビニやキオスクで売られている新聞や電子新聞は10%の標準税率が課せられます。

その他

食料品や新聞を扱う業者以外でも、軽減税率と無関係ではありません。

仕入れや経費で軽減税率対象品を購入している場合は、会計ソフトを複数税率対応のものにバージョンアップする必要があります。たとえば、来社したお客様に出すお茶やお菓子は8%据え置きとなるため、食料品や新聞を扱わなくても軽減税率と標準税率の両方に対応することになります。

事業者はどのような対応が必要?

このように、軽減税率制度は多くの人や事業に様々な影響をもたらします。では、事業者はどのような対応をすればよいのでしょうか?

価格表示の確認と変更

小売店の場合は、自社・自店で扱う全商品について、標準税率(10%)と軽減税率(8%)のどちらが適用されるのか確認する必要があります。その上で、2019年10月1日には店頭商品の価格表示を一斉に変更することになります。

特に食料品は「テイクアウトは8%、イートインスペースで食べる場合は10%」など複雑な点も多いため、事前によく確認の上、店内にもお客様向けの周知ポスターなどを用意したほうがいいかもしれません。

帳簿・請求書の記載方式の変更

軽減税率の対象品目の売り上げや仕入れがある事業者の場合は、「区分記載請求書」という請求書の発行や記帳などの経理(区分経理)が必要になります。「区分記載請求書」とは、標準税率(10%)対象の品目と軽減税率(8%)対象の品目とを別々に記載する請求書のことです。

課税事業者は、仕入税額控除のために帳簿と区分記載請求書等の保存が必要になります。また、免税事業者の場合も、課税事業者と取引する場合に区分記載請求書等の発行が必要になることがあります。

複数税率対応のレジ・システムの導入

10%と8%の税率が併存するようになると、従来のレジやPOSシステムでは対応ができなくなってしまいます。そこで、複数税率に対応したレジやシステムに改修する必要が出てきます。

とはいえ、新しいレジやシステムの導入にはお金がかかるもの。そこで国は、複数税率対応のためのレジやシステム導入に際して補助金制度(軽減税率対策補助金)を設けています。ぜひこれを利用しましょう。

補助金を利用しよう

「軽減税率対策補助金」は、大きく3つに分かれます。

  • 「A型」:複数税率対応レジの導入等支援
  • 「B型」:受発注システムの改修等支援
  • 「C型」:請求書管理システムの改修等支援

2016年3月29日から2019年9月30日までに上記の導入又は改修等を行い、支払いが完了したものが補助金の対象となります。
なお、後述するA-5型、A-6型、C型においては、2019年1月1日から2019年9月30日までに導入又は改修し、支払いが完了したものが支援対象となります。

では、3つの申請類型を、順を追って確認していきましょう。

A型:複数税率対応レジの導入等支援

A型は、主に軽減税率に対応したレジや券売機を導入・改修しようと考えている小売店・飲食店などが対象となる補助金です。
レジの種類や複数税率への対応方法(導入か改修か)によって、合計6種類の申請方法に分かれています。

  • 「A-1型」レジ・導入型
    補助対象:複数税率対応機能のある、POS機能のないレジの導入費用
  • 「A-2型」レジ・改修型
    補助対象:複数税率非対応のレジを、対応レジに改修する場合の費用
  • 「A-3型」モバイルPOSレジシステム
    補助対象:複数税率に対応した継続的なレジ機能サービスを、タブレット・PC・スマートフォンを用いて利用し、レシートプリンタを含む付属機器を組み合わせてレジとして新たに導入するもの
  • 「A-4型」POSレジシステム
    補助対象:POSレジシステムを、複数税率に対応するように改修又は導入する場合の費用
  • 「A-5型」券売機
    補助対象:券売機を、区分記載請求書等保存方式に対応するように改修又は導入する場合の費用
  • 「A-6型」商品マスタの設定
    補助対象:軽減税率制度の実施前に、複数税率対応レジ等の商品マスタ設定をする場合の費用

A型の補助率(※1)は基本的に3/4となります。ただし、

  • レジ1台のみ機器導入を行う場合で、かつ導入費用が3万円未満の機器:補助率4/5
  • タブレット等の汎用端末:補助率1/2

など一部例外もありますので、詳しくは軽減税率対策補助金の公式サイトをご確認ください。

なお、いずれの場合も補助金額はレジ1台あたり上限20万円となります。

※1 補助率:総事業費(事業によって支出した経費)のうち補助金が占める比率(割合)のこと。

申請方法

申請サポートが充実しており、メーカーや販売店・ベンダーなどの協力による代理申請が利用できます。

「A-2型」「A-5型」は代理申請が原則、「A-4型」は代理申請または共同申請が必須、「A-6型」は代理申請が必須となっています。
詳しくはこちらをご確認ください。

補助金が適用されるレジの例

Airレジ

リクルートライフスタイルが提供するPOSレジアプリ「Airレジ」は、「専用機並みのレジ機能」を「0円で使える」ことで、現在新規開業者を中心に利用店舗数を急速に伸ばしているPOSレジアプリの一つです。

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スマレジ

CAT/CCT端末(※2、3)に対応したクラウドPOSレジ「スマレジ」も補助金が適用されるレジの一つ。
主要なクレジットカード、電子マネー、Apple PayやGoogle Payが利用できるサービス「JMSおまかせサービス」と組み合わせることで、豊富なクレジットカードを取り扱うことも可能です。

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※2 CAT端末:クレジットカードの有効性を確認し、与信照会を行うセンターなどに問い合わせて決済する装置。
※3 CCT端末:クレジットカードの信用照会端末の一種。売上データ収集機能付が付いているのが特徴。

LOYVERSE(ロイバース)

「LOYVERSE(ロイバース)」は、世界180カ国以上のカフェやレストランで愛用されている高機能モバイルPOSです。
無料のアプリをインストールするだけで、タブレット端末が本格的なPOSレジに早変わりします。

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B型:受発注システムの改修等支援

B型は、主に軽減税率の対象商品を取り扱っている事業者が対象となる補助金で、対象商品を取り扱うために電子的受発注システムの改修・入替を行う場合に使うことができるものです。

改修を、①指定業者に依頼するか、②自分で行うかで申請方法が2つに分かれます。

  • 「B-1型」受発注システム・指定業者改修型
    補助対象:システムベンダー等に発注して、電子的な受発注システムを改修・入替する場合の費用
  • 「B-2型」受発注システム・自己導入型
    補助対象:中小企業・小規模事業者等が自身でパッケージ製品・サービスを購入・導入して受発注システムを改修・入替する場合の費用

B型は原則的に、すでにEDI/EOS(※4、5)等の電子的受発注を利用している事業者が対象となります。

※4 EDI:商取引に関する情報を標準的な書式に統一し、企業間で電子的に交換する仕組みのこと。
※5 EOS:ネットワーク上での受発注システムのこと。スーパーマーケットなどの小売店舗の受発注業務の効率化などに使われる。

申請方法

「B-1型」「B-2型」どちらも指定事業者が代理申請を行います。

「B-1型」は改修・入替に着手する前の「交付申請」と、改修・入替が完了した後の「完了報告」という2段階の申請が必要です。交付決定以前に作業に着手してしまうと補助対象から外れてしまうので注意してください。

「B-2型」は、事務局に登録されたパッケージ製品・サービスが対象であり、申請は改修・入替後に行います。

詳しくはこちらでご確認ください。

C型:請求書管理システムの改修等支援

C型は、主に軽減税率の対象品目の売り上げや仕入れがある事業者が対象となる補助金です。
軽減税率に対応するために、前述した「区分記載請求書等保存方式」に対応した請求書管理システムの改修・導入を行う場合に使うことができます。

①指定事業者にシステムの改修等を依頼するか、②事業者自身でパッケージ製品を購入し導入するか、③請求書発行の専用事務機器を改修・導入するかで3種類の申請方式に分かれています。

  • 「C-1型」請求書管理システム(指定事業者改修・導入型)
    補助対象:システムベンダー等に発注して、請求書管理システムを改修・導入する場合の費用
  • 「C-2型」請求書管理システム(ソフトウェア自己導入型)
    補助対象:中小企業・小規模事業者等が自らパッケージ製品およびサービスを購入・導入して請求書管理システムを改修・入替する場合の費用
  • 「C-3型」請求書管理システム(事務機器改修・導入型)
    補助対象:ハードウェアと一体化した請求書管理システム・事務機器を改修・導入する場合の費用

C型の補助率は基本的に3/4です。ただし、請求書発行に必要なプリンターやパソコン等の汎用端末の補助率は1/2となります。

なお、1事業者あたりの補助金は上限150万円とされています(ハードウェアは上限10万円)。

申請方法

「C-1型」は専門知識の必要なシステムの改修・導入であるため、システムベンダー等の指定事業者による代理申請が原則となります。

「C-2型」は中小企業・小規模事業者等が自ら申請します。

「C-3型」は代理申請または共同申請が必須で、メーカーや販売店等による代理申請等が利用できます。

詳しくはこちらをご確認ください。

申請期限・問い合わせ窓口

申請期限は、以下の通りです。

A型、B-2型、C型 2019年12月16日まで申請(事後申請)
B-1型 2019年9月30日までに事業を完了することを前提に、2019年6月28日までに交付申請。
完了報告書は2019年12月16日までに提出。

A型・B型・C型いずれも下記の申請者専用回線から申請や問い合わせをすることができます。

【軽減税率対策補助金事務局 申請窓口】受付時間:9:00〜17:00(土日祝除く)
0120-398-111(フリーダイヤル)
または
0570-081-222(通話料がかかります)
※IP電話からの場合:03-6627-1317

【申請書類送付先】
〒115-8691
赤羽郵便局私書箱4号
軽減税率対策補助金事務局 申請係

まとめ

2019年10月1日から施行される消費税軽減税率制度と、それに伴って申請することのできる軽減税率対策補助金について解説しました。

軽減税率対象の品目や補助金の対象・申請方法はやや複雑ですので、あらかじめ確認して不明点をなくしておくようにしましょう。やるべきことをリスト化しておくのもおすすめです。

補助金などを上手に活用しながら、新しい消費税制度にスムーズに対応できるようにしましょう。

(編集:創業手帳編集部)

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