「芸人のセカンドキャリアを応援したい」時代の流れを読み解き、起業の道を選択した元ザブングル松尾氏が見た現実と起業への想いを語る

創業手帳

株式会社OMATSURI松尾陽介氏に「芸人」という仕事について感じることや起業のきっかけについて創業手帳代表の大久保がインタビュー

どんな起業家にも、最初に起業に踏み出すきっかけとなる環境や時機があるのではないでしょうか。

今回は、芸人としてブレイクした経験を持ち、24年の芸能界生活で培われたものを活かして起業を実現した、芸人のセカンドキャリアをサポートする株式会社OMATSURIの松尾氏にスポットライトを当てます。

芸人から起業家というキャリアを選択した同氏に、起業を決断したきっかけや起業に役立ったこと、またこれから目指すことについて、創業手帳株式会社創業者の大久保が聞きました。

松尾 陽介(まつお ようすけ)株式会社OMATSURI代表取締役 
1977年愛知県名古屋市生まれ。1997年の大学在学中に名古屋吉本NSCに入学。1998年にお笑いコンビ「ザブングル」を結成、それに伴い大学を中退。1999年より東京へ進出し「ワタナベエンターテインメント」に所属。2007年のM-1グランプリにおいてファイナリストになる。2008-2014年、キングオブコント準決勝進出。2021年「アメトーーク」の「さよならガチ王」(2021年4月1日放送)をもってザブングルを解散し、芸能界を引退。同月からマーケティング支援や案件仲介などを展開する株式会社OMATSURIを創業し、同会社の代表取締役社長に就任。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計150万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら

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芸人から起業家へ。その選択を生んだものは、たくさんの出会いの中から生まれた会話だった

大久保:本日はよろしくお願いします。はじめに、芸人を引退し、起業という道を選んだ理由について教えてください。

松尾:まずは、芸人を辞めると言う決断が先でしたが、それ以降何をやるかというのはそこまで深く考えていませんでした。

芸能事務所との契約上の理由で「辞める」と決めてからも約1年くらいは、芸人を続けていましたので。

ただその期間に、1年限定でバーの店長もやらせてもらってました。というのも、行きつけだったバーがあるんですが、そこの店長さんがたまたまその時期に辞められると聞き、仲良くさせてもらっていたので「社会勉強も兼ねて、僕に1年だけ限定で店長をやらせてもらえないですか?」とお願いしたら、快くOKしていただいたという経緯があります。

「1年限定」としたのは、「芸人のお仕事をやりながらも、毎日お店には必ず立とう」ということを決めていたので、ゴールを決めて挑戦してみました。いざやってみると、昔から交友関係が広かったこともあり、いつも飲みに誘ってくれる方達がお店に来て頂いて、わりと忙しくさせてもらってました。その席では芸人を辞めることなども伝えていたので、すごくありがたいことに「一緒に仕事したい」といろいろな提案をしてくださる方も多かったです。

最終的に、現在共同代表の藤本から「一緒に会社やりませんか?僕の良いところと、松尾さんの良いところを出し合うことで会社を成立させましょう」という提案をもらったのが、起業をしたきっかけです。

大久保:なるほど。出会いが生んだ起業だったわけですね。起業で大変だったことはありますか?

松尾:よく「何をやってる会社なの?」と聞かれるんですけど、その答えを言葉で表現しづらいところですかね。現段階では「こんなこと出来ませんか?」に対して、アイディアを提供して、その企業さんと擦り合わせてカタチにしていっている感じなので。

大久保:この起業で達成したいことは何ですか?

松尾:今は「やれることは全てやりたい」という気持ちがベースにあります。ただ、その先に「芸人さんのセカンドキャリアを支えたい」というのが達成したいことですね。

「株式会社OMATSURI」の社名やロゴに込めた元芸人らしい遊び心のある思いについて

大久保:社名やロゴはどのように決められたのでしょうか?

松尾:株式会社OMATSURIの社名は、「松尾(MATSUO)」が入っているのと、共同代表の藤本隆太郎の「リ」で全部入っているから良いんじゃないかと、色々出し合ったなかで決めました。藤本ほとんど入ってませんが。

大久保:「お祭り感を出していきたい」といった気持ちもあったのでしょうか?

松尾:元芸人ということにちょっと当てはまるかな、というのはありますかね。とにかく明るくいきたいという思いはあります。

あと、ロゴは落書きっぽいのがいいな、と思って僕が描いたものです。

大久保:ご自身の特技であるイラストや経験を事業にすることのメリットはどんなことですか?

松尾特技を仕事にできることは単純に楽しいですね。なので、イラストなんかは特に推し出してる分野では無いんですが、依頼していただける方がいらっしゃるなら、というところで加えています。

あと、経験なんかは形にするのが難しいので、何でもやっていく内に対応可能な仕事を増やしていき、新しい形が出来ていったら面白いなと思っています。

大久保:依頼の実績があるのは強みですね。イラストはなにか勉強をされたのですか?

松尾:全く勉強はしていなくて、小さい時から絵を描くことが好きだったんです。LINEスタンプを芸人時代から描いていたり、知り合いから頼まれてTシャツのデザインなども結構してたので、その延長線上ですね。

芸人のセカンドキャリアの「新しいカタチ」のモデルになる

実はあまりいない?「芸人引退します」宣言

大久保:芸人のセカンドキャリアについて、Youtuberや事業家になられた方、海外に行かれた方などさまざまなかたちがあると感じていますが、松尾さんは芸人のセカンドキャリアについてどのように考えていますか?

松尾:自分が24年間芸人をやってきて感じたことは、始めたての頃は夢に溢れていたので、絶対に成功すると思っていたんですが、途中からは時代もあってなかなか難しくなってきたなとは感じてました。20代30代の方は考えなくていいと思うんですが、僕は今40半ばなので僕と同世代の芸人も「実際、何歳までこの仕事ができるのかな?」と考え出して、先が見えなくなる年齢だと思うんですよ

事業家やYoutuberは、芸人を続けながらやってらっしゃる方も多いですが、どちらかというと僕は「芸人を辞める」という思い切った選択肢もあるということを伝えたかったかもしれないですね。僕と同じような状況の芸人さんにも、芸人を辞めるという選択肢があること、その上で、辞めた後はこんなキャリアもあるよと選択肢を増やしてあげられると良いなと思ってます。

大久保:「引退します」と宣言される方ってあまりいらっしゃらないんですか?

松尾:よく考えたらいないな、と思います。ここまでニュースに取り上げられるとは思わなかったです。

そのニュースの後に、ヒロミさんから運転手になるオファーもありました(笑)。僕はお酒を飲むのが好きなので運転手は無理だと思うんですが、話題にして頂いてありがたかったですね。

「辞め時」が難しい芸人の世界

大久保:この先のことを考えたときに業界の潮目というのがあると個人的に感じていて、伸びていく業界と落ちていく業界があると感じますが、今回の起業に関しては、松尾さんの中でそのような時代の流れを感じていたところはあるのでしょうか?

松尾:それが一番大きいですね。僕は今年45歳なんですけど、5~6年前までは芸人を辞めるなんて考えてもいなかったんですよ。

5年くらい前までは正直「芸人がYouTubeなんて」とか思ってました。だけど、今では芸人さんがYouTuberになるなんて、ごく普通のことになったじゃないですか。そういう時代の流れを感じた時に、いま20代30代の芸人さんだったら対応できると思うんですけど、「舞台とか客前に立つことこそ美学」と考えている40代の芸人は、パソコンすら扱えないですし、今から学ぶにも結構な労力が必要で大変だと思います。

そうなったときに、それこそ僕ら「オンバト世代」とかで、じゃあ今から急にテレビのゴールデンタイムの冠番組を持てるかと言ったら、一生持てない確率の方が高いなと感じたんです。

冠番組も無理、YouTubeやSNSも無理、と考えたときに、やはり相当な危機感を覚えました。僕の場合、人付き合いが得意だったので、それを活かした方が今後のためになるんじゃないかなと。芸人としての経験も役に立つんじゃないかなと感じましたしね。

芸人の仕事は、極論ですが一生続けることが出来るので、辞め時が難しいんですよね。ただ、僕としては今回この起業は、体力があるうちに別のことをした方がいいんじゃないかと思い踏み切りました。

今の時代、起業って誰でも出来ますし、そういったプラットフォームがあることで色んな人や企業から声をかけてもらえたり、今まで思い付かなかったことにも挑戦しやすいんじゃないかと思います。「僕に何ができるかな?」「もっと面白いことがしたいな」というための箱だという風に思ってます。

大久保:他の業界を見ていて、人気があり、チャレンジする人が多い業界って才能ある人が集まってくるので過当競争になって、相当上にいかないと成功できないという傾向があると感じてますが、芸人業界も当てはまりますか?

松尾:芸人業界も時代の流れとともに変化していますが、例えば僕が20代の頃は30代で売れてない芸人はもう厳しいんじゃないか。という風潮でしたが、最近になると40代50代から売れ出す芸人さんが出てきて、素晴らしいことではあるんですが、辞め時はどんどん難しくなってるんですよね。ただ、長く続けても成功できるのは更にほんの一握りなので。

一方で、お笑い人気も高まって優秀な若手がどんどん増えていて、上には「抜けない大御所」、下には「増える若手」で今の40代50代の芸人はかなり大変な立場にいると思います。

なので、僕がセカンドキャリアを応援したいのは主にそういった40代50代の、辞める選択肢が無くなってる芸人さんですかね。

大久保:同じ業界にずっといると、なかなか他の道が見えないこともありますよね。

松尾:確かにそうかもしれませんね。

僕、ずっと同期の芸人さんとかとばっかり飲みに行ってたんです。めちゃくちゃ楽しかったので。ただ、30歳くらいからなんとなく、全くジャンルが異なる人たちとも飲みに行くようにしてみたんです。そしたら、僕の知らないことを沢山知っている人達ばかりで、それが超面白くて!そこから、色んなジャンルの人と交流するようになったので、僕がいま持っている発想は、そういった人たちの影響を受けてるのかなと思います。

僕としては、芸人さんのセカンドキャリアを応援するからには、僕がまずモデルケースにならなきゃとも感じていますね。とにかく自分の興味を持ったことに挑戦して「死ぬまで楽しく生きたい」という思いでやっていきます。

芸人を辞めて、大学卒業資格を取る?

大久保:松尾さんとして、芸人のセカンドキャリアは具体的にどんな道があると考えていますか?

松尾:現段階で進めているプランがいくつかあるんですが、例えば通信系の大学と提携しまして、そこで単位を取れば大学卒業資格をもらえます。ただ、その中で芸人さん(芸能)に特化したコースを作りましょうよ!と提案して頂いたりしています。そこから企業につながる線も、他の会社からは事業の提案もいくつか頂いています。

40代の芸人さんにとって、資格を取ることも選択肢のひとつですが、それだけではなくひとりひとり違う特技を活かした道を選んでもらうために、今はいろんなプランを練っています。

大久保:「イラスト」や「芸人さんのセカンドキャリア」以外で、既に活動されてることはありますか?

松尾:実際にいま動いてる活動としましては、例えば企業がYouTube広告を使って宣伝をするにあたり、どんな企画がいいのかとか、タレントのブッキングの仕方がわからない、といった相談がよくあります。僕としては、ワタナベエンターテインメントさんとも円満に退社させて頂いてますし、ある意味そちらの分野では顔が広いということもあり、ブッキング面はいろいろとやらせて頂いてます。企画・制作に関しても、企画会議に参加させてもらったりしています。

今まで培った、人や経験値が活かせるので、こういった依頼は問題なく対応させて頂いてます。

基本的に出来るサポートは全部やろうと考えてます。IT関係のことは全然分からないので、藤本に全て任せてます!それ以外も、いろんな人たちと繋がって、様々なサービスが出来るようになればと思っています。

共同代表・藤本氏に今回の起業への思いを聞いてみました

大久保:共同代表取締役である藤本さんにもインタビューさせてください。一緒に事業を進めるパートナーを選ぶのは大きな決断だと思いますが、松尾さんと組もうと思った時の心境はどんなものでしたか?

藤本:元々松尾さんとは飲み友達からスタートしていて、松尾さんから芸人を辞めることを聞いた後に、僕がマーケティング系の会社を立ち上げたいと考えたんです。その時に松尾さんと組んだらいい方向に行きそうだな、と感じました。

松尾さんの人脈の広さと周りからの信頼の厚さもあり、営業をする時に最初のアイスブレイクがいらない状態なので、その松尾さんの強みを活かしたいと思いましたね。

大久保:「一緒に起業したい」と思わせる人は、藤本さんの観点ではどんな要素がありますか?

藤本:お金や物事に対してプライドがある方ですかね。「お金を貰えればそれでいい」という考えよりも、「こっちの方がかっこいい」とか「こっちの方が素敵じゃない?」というような、ある意味、体裁を気にしながら動ける人の方が僕個人的には組みやすいです。

まさに松尾さんは、ヒューマンビジネスとも捉えられる芸人界に長くいたので、人との距離感の測り方やお金の取りに行く姿勢とか、ある意味「品が良い」距離感を保つことができるところが、僕にはない部分で学びながら一緒にやっています。

大久保:本日はおふたりともありがとうございました。走り出したばかりの株式会社OMATSURIの今後を、楽しみにしています!

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(取材協力: 株式会社OMATSURI代表取締役 松尾陽介
(編集: 創業手帳編集部)

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