注目のスタートアップ

AironWorks株式会社 寺田彼日|サイバー攻撃に対して防御力を高める訓練プラットフォームの事業開発が注目の企業

サイバー攻撃に対して防御力を高める訓練プラットフォームの事業展開で注目なのが、寺田彼日さんが2021年8月に創業したAironWorks株式会社です。

2021年に発生し、社会的に影響が大きかったと考えられる事案を、情報処理推進機構がランキングした「情報セキュリティ10大脅威2022」によると、組織に対する脅威の第1位は「ランサムウェアによる被害」、第2位は「標的型攻撃による機密情報の窃取」、第3位は「サプライチェーンの弱点を悪用した攻撃」となっています。

つい先日には、某自動車大手メーカーの協力企業がサイバー攻撃を受け、28の工場生産ラインが止まる事態に追い込まれたことは記憶に新しく、サイバー攻撃の脅威から企業活動を守るために不可欠な「組織のセキュリティリテラシーのアップデート」と「企業のセキュリティ対策への投資」の必然性に改めて注目が集まっています。

AironWorks株式会社の、サイバー攻撃に対して防御力を高める訓練プラットフォームの特徴は、イスラエル国防軍でサイバー攻撃・防御を任務とする超精鋭部隊Unit 8200出身の開発者が中心となり、本物さながらの実践的なサイバーセキュリティ訓練をクライアント企業に提供する、という点です。

AironWorks株式会社の寺田彼日さんに、事業の特徴や今後の課題についてお話をお聞きしました。

・このプロダクトを開発するに至った経緯について教えてください。

私は、もともとイスラエルでインキュベーション事業を起業をしていましたが、そこからスピンオフしてAironWorksを創業しました。
起業の動機は、イスラエルのテクノロジーの優位性と社会的な課題を掛け合わせて、新たなサービスを提供したいと思ったからです。

新型コロナウイルス感染症の影響等でリモートワークが普及し、それによってセキュリティの脆弱性をつかれたり、その他にも企業が標的型攻撃を受けたり、個人がフィッシング被害に遭うといったことが急増しています。

私たちはそのような社会的課題を解決するために、イスラエル国防軍の技術を用いた訓練システムをクライアントに提供して、サイバー攻撃に対する防御力の向上に貢献したいと考えています。

・このプロダクトの特徴は何ですか?

まずプロダクトの開発者が、イスラエル国防軍でサイバー攻撃・防御を任務とする超精鋭部隊Unit 8200の出身であることです。彼ほどサイバー攻撃に詳しく、実践経験を積んだエンジニアが開発しているサービスは、世界的にもありません。

また、訓練用の疑似的な攻撃の生成にAIを用いているのも特徴です。クライアント企業の情報をリアルタイムでAIが収集・分析しているので、ハッカーが企業に仕掛けるであろう攻撃を予測して生成し、それぞれの企業に最適化した訓練を提供します。

さらに、訓練終了後には教育プログラムの配信をしています。例えば、攻撃を受ける側としてだけでなく、ハッカーの目線になって考えていただくなど、コンテンツに工夫をこらし、セキュリティの専門用語を知らない方でも、ゲーム感覚で学べるような内容としています。

・このサービスが解決する社会課題はなんですか?

ハッカーの攻撃によって、実ビジネスに大きな損害を与える事件が後を絶ちません。我々の「サイバーセキュリティ訓練プラットフォーム」によって、サイバー攻撃に対する防御力を高め、皆様が安心して経済活動や新しい価値創造に取り組める社会の実現を目指しています。

現在は、サイバー攻撃を受けるリスクの高いエンタープライズを中心に提供を進めており、銀行やグローバルに工場を持つメーカー、開発チームがグローバルに点在しているIT企業などに提供しています。

一方、小規模な事業体、例えば地方の病院が狙われるような事件も増加していますので、業界・業種・規模を問わず、皆様のサイバーセキュリティリテラシーを、我々の訓練プラットフォームや教育プログラムを通して高めていただくことは、今日においては必須であると認識しています。

・創業期に大変だったことは何でしょう?またどうやって乗り越えましたか?

プロダクトを作る上で、クライアント企業が抱える本当の課題を探る段階が最も困難でした。本当の課題を見出すまで、お客様候補の40社以上にヒアリングさせていただきながら、半年近くかけてプロダクト開発を行いました。

また採用においては、まだプロダクトが立ち上がっていない中で、どうやってともに働く仲間を集めて巻き込んでいくかが、もう一つの大変だったところかなと思います。

コアとなる開発はイスラエルで行いたいと考えており、イスラエル国防軍の出身者は人のつながりを通じて採用することができました。イスラエルのスーパーエンジニアの給与は非常に高騰していまして、人のつながり、ミッションへの共感のある仲間を集めるのは、非常に重要かつ難しいところだと思っています。

・どういう会社、サービスに今後していきたいですか?

我々は本社を日本に登記していますので、日本発のソフトウェア企業として、グローバルでナンバーワンを獲っていきたいと思います。特に、セキュリティ・アウェアネスの訓練・教育の部分で、まずはナンバーワンのプラットフォームを作り、「サイバーセキュリティといえば、AironWorks」と言っていただけるような企業になっていきたいと思います。

そのためには、信頼していただけるプロダクトを提供して、米国、欧州、アジアなど、世界中の多くの方々に使っていただけるサービスにしていきたいと思っています。

また、訓練・教育のアップデートをAIを使って完全自動化することや、フィッシング、メール詐欺に対する検知・防御システムの開発を進めています。

ダークウェブで流通している犯罪情報、秘密情報、直近で発生した脆弱性リスク情報を収集して、企業のセキュリティ担当者やIT担当者向けに提示していくシステムも開発しており、「訓練・教育システム」「検知・防御システム」「未来のリスクに対する予測・検知」の3本柱で、製品をラインナップしていきたいと思います。

現在はエンタープライズ向けの提供が中心ですが、小規模、中規模の事業体向けや、スタートアップ向けパッケージもご提案したいと準備を進めています。

・今の課題はなんですか?

1つ目に、市場の需要が非常に大きくて、一気に事業を展開していきたいのですが、やはり採用に苦労するところです。優秀な方々に、いかに早くジョインしていただくか、組織の中で活躍していただくかが重要と考えています。

2つ目に、グローバルに展開していく上では、複数の市場で同時に展開しなければいけません。現在は日本市場に注力していますが、並行して米国やアジアの市場でもポテンシャルを掘り下げながら活動しています。そういう意味では全く人手が足りず、かつ、かなり難易度の高い活動に取り組んでいるため、難しいポイントだなと日々感じています。

課題解決のためには、しっかりと資本注入をして成長していく必要があり、資金調達を進め、良い仲間を集めて、さらに前進していこうとしています。

・読者にメッセージをお願いします。

イスラエルで起業して感じたのは、イスラエルは人口が少ないため国内市場が小さく、起業家は非常に外向きなマインドを持っており、「グローバルで勝てるサービスを作る」という思いがとても強いということです。

私は8年前に片道切符でイスラエルに渡りました。日本でも海外でも起業は非常に大変ですが、一つ視座を上げて、グローバルの市場を狙っていく日本人起業家が1人でも増えれば、日本の経済や社会の発展に寄与しうると思います。

ぜひグローバルへの視野を広げていただき、新しい発見や可能性を見い出していただければと思います。

会社名 AironWorks株式会社
代表者名 寺田彼日
創業年 2021年
資本金 9,104万円 (資本準備金含む)
事業内容 イスラエル発テクノロジーで、企業・組織の本質的なセキュリティレベル向上を実現する、実践型サイバーセキュリティ訓練プラットフォームを提供。
サービス名 AironWorks
所在地 東京都港区虎ノ門4-3-1
代表者プロフィール 京都大学在学中にSloganの京都支社起ち上げ、トルコKoç Universityへの研究者派遣留学を経て、Benesse Corporationにてデジタルマーケティング及び社内新規事業に携わる。2014年イスラエルに渡りAniwoを創業。日本 – イスラエル間のオープンイノベーション推進、イノベーション人材の育成・採用サービス運営を行う。2021年サイバーセキュリティ領域に特化したプラットフォームを開発・提供するAironWorksを創業。京都大学経営管理大学院修了(MBA)、大阪大学経済学部卒。
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