ネスレ日本 竹内 雄二|コーヒーサブスクリプション「ネスカフェ アンバサダー プログラム」で日本の職場に「笑顔とくつろぎ」を!

創業手帳

業界で先駆けて「オフィスに定期便でコーヒーを届ける」という考えに至った経緯と時は?


日本には約600万箇所もの職場があると言われています。しかし、一言で「職場」と言っても、業種によって、職場の雰囲気も、その場にいる人の属性も様々です。

このように多種多様な「職場」に「ネスカフェ アンバサダー プログラム」で、「笑顔とくつろぎ」を届けているのが、ネスレ日本の竹内さんです。

サブスクリプションという考え方がまだ日本に普及していなかった時代に「『ネスカフェ アンバサダー プログラム』を成功に導いた裏側」や、グローバル企業でありながら「日本文化に寄り添った新サービスを提供できるコツ」について、創業手帳の大久保が聞きました。

竹内 雄二(たけうち ゆうじ)
ネスレ日本株式会社 デジタル&Eコマース本部 D2Cビジネスグループ部長
大学卒業後、1995年にネスレ マッキントッシュへ新卒入社。「キットカット」をはじめとするお菓子の営業&マーケティング、ペットケア・ドッグフードのマーケティング、eコマースなど幅広い分野での経験を経て、現在はデジタル&Eコマース本部 D2Cビジネスグループ部の部長を務める。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計250万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら

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業界初!?コーヒーの定期便「ネスカフェ アンバサダー プログラム」が成功した「3つの理由」

大久保:「ネスカフェ アンバサダー プログラム」が成功した理由は何だと考えられていますか?

竹内:「ネスカフェ アンバサダー プログラム」が成功した理由は3つあると思っています。

まず、成功した1つ目の理由として、ネスレ日本がEコマースに早くから着目し、2010年からネスレ通販というオンラインストアをスタートさせたことです。

それに続き、2つ目の理由として、世の中で「サブスクリプション」と呼ばれているサービスが一般化していない時に、「コーヒー×サブスクリプション」という掛け合わせでスタートさせたのも大きな理由ですね。

今では、サブスクは当たり前の時代ですが、当時は未開の地であり、「ネスカフェ アンバサダー プログラム」が普及した大きな要因と考えています。

大久保:オンライン販売を開始したのも早かったんですね。

竹内:そして、成功した3つ目の理由として、ネスレに本社内で「OOH(アウトオブフォーム)」と呼んでいる「家庭外消費」の開拓を目指したからです。

「ネスカフェ アンバサダー プログラム」で使用する「ネスカフェ ドルチェグスト」「ネスカフェ ゴールドブレンド バリスタ」は、当初家庭で使用していただくことを前提に作られたコーヒーメーカーでした。

しかし、ネスレに本社内で「OOH(アウトオブフォーム)」と呼んでいる「家庭外消費」で活用できないかと考えると、そこに大きな機会があるのではという風に考えました。

そこで、職場に着目して、「定期お届け便」×「コーヒーメーカーをレンタルする」という方法で、アイディアを見出しました。

ココ重要!「ネスカフェ アンバサダー プログラム」が成功した3つの理由
  • 理由1:業界で先駆けてECサイトをスタート
  • 理由2:サブスクが普及する前に定期配達サービスに着手
  • 理由3:それまでの主戦場だった「家」以外の市場開拓

誰もが知るグローバル企業でありながら「日本文化に寄り添う理由」

大久保:ネスレは多国籍企業にも関わらず、日本の文化にフィットさせて施策をヒットさせているイメージがありますが、その点に関して、どのようにお考えでしょうか?

竹内:ネスレは、「食の分野」の企業として世界中でビジネスをしています。

「食」に関しては、その国や地域にしかない固有の文化や嗜好が色濃く反映される分野だと思っています。

なので、プロモーションや味の開発は、現地で生活している方々の好みに合わせて変えるべきとネスレは考えています。

特に日本は島国で、特有の文化があります。それは、スイスの本社から見ても、特殊だと認識してくれているので、ネスレ日本としては動きやすい部分があったかもしれません。

「ネスカフェ アンバサダー プログラム」は「日本独自の戦略」

大久保:「ネスカフェ アンバサダー プログラム」事業は海外でもやっているのでしょうか?

竹内:「ネスカフェ アンバサダー プログラム」は、日本だけで行っているビジネスです。

各国も「ネスカフェ」の消費を広げるために、様々なアプローチをしておりますが、職場に入り込み、問屋や小売りを介さず直接定期便で商品を届けるというのは、日本独自の仕組みです。

大久保:「ネスカフェ アンバサダー プログラム」は全国一斉にリリースしたのでしょうか?

竹内:ネスレ日本では、新商品や新サービスをリリースする際には、小規模の事前テストをすることが多いです。

2012年に「ネスカフェ アンバサダー プログラム」をスタートさせる際も、北海道でまずテスト的に実施し、その結果を分析して、日本全体での実施に至っています。

全く新しいアイディアが浮かぶコツは「逆張りする思想」

大久保:新サービスを考える上で、どのようにマーケティングを実施していますか?考え方のコツなどあれば、教えていただきたいです。

竹内:私は、2つのポイントの掛け合わせを意識しています。

1つ目のポイントは「暗黙知」です。この暗黙知は、AIに代替できない領域だと考えています。

私が50年生きてきて、見聞きしたり、経験したりしたことにより、自分の中に構築されている引き出しが無数にあり、それが暗黙知として私の強みになっていると考えています。

この暗黙知は私にしか思いつかない発想の源だと思っており、他の方が新サービスを考える際にも、「自分ならどう発案するか?」を考えるベースになると思います。

2つ目のポイントは「逆張りする思想」です。

「今あるサービスの真逆の考えはどうだろう?」「今この商品を買ってくれている人ではない人に買ってもらうにはどうしたらよいか?」というように、常に常識の逆を考えることを意識していますね。

つまり、私が新サービスを考える時には、「暗黙知」と「逆張り」を掛け合わせて、考えることで、教科書通りではない、全く新しいアイディアを考えようとしています。

ネスレ流!新サービスをヒットさせる秘訣

大久保:新サービスをヒットさせるために、大切にしているポイントについて教えていただけますでしょうか?

竹内:自分の直感を大切にしながらも、第三者の意見を大切にすることです。

食品業界では「千三つ(センミツ)」とも言われる考え方があり、「開発する1000品のうちヒットするのはせいぜい3品ほど」という風に言われています。

そこで、個人的な意見としては、新商品や新サービスを考える際には、「人に聞いて反応を見る」ことが大切だと考えています。

というのも、新しいことを思いついた時点では、誰しも「すごいことを思いついた」と思い上がっています。そういう時に、後から振り返ってみると、論理が飛躍してしまっている時が多々あります。

新しいアイディアについて人に話すことで、足りない部分に気づけたり、アイディアを整理できたりします。

これが、新サービスを成功させる打率を上げていく唯一の方法だと考えています。

食品メーカーでは異色!揺り籠から墓場まで「ビジネスを一括担当」

大久保:ネスレ日本の社内における竹内さんのポジションは、マーケターになるのでしょうか?

竹内:私はマーケティングだけでなく、担当するビジネスを包括的に管理しています。

他社のお話を聞くと、ブランドブランドマーケッター制という体制のところもありますが、開発から製造、売れなかった時の対処など、つまり揺り籠から墓場までというレベルでビジネスの担当者が見ていく、という体制になっているところが、ネスレの特徴です。

日本の会社では、商品開発や営業、宣伝など、きっちり役割分担しているところが多いため、私からすると「自分が作った商品をなぜ人に任せるんだろう?」という感覚がありますね。

大久保:プロダクトオーナーという感じでしょうか?

竹内:担当するビジネスの社長というような気概で、売上や利益まで、オーナーシップを持って担当しています。

それがネスレの特徴であり、私自身が好きなところでもあります。

成功するチームの特徴とは?その鍵はメンバーの「パッション」

大久保:チーム運営についてはどのようにお考えですか?

竹内:チームメンバーには、どんどん新しいことにチャレンジしてほしいと思っています。

しかし、思いつきではなく、数値的根拠や設計を明確にして、やりっぱなしにならないように進めています。

組織の中にあるチームである以上、会社としてのコンセンサスを得るために、きちんと説得材料を事前に準備する必要性を伝えています。

大久保:成功するチームとは、どのようなチームだとお考えですか?

竹内:チームが盛り上がっている状態、つまり、商品を作る側のパッションが満ちている状態という点は特に大事だと思っています。

メーカーという仕事において、正解はお客様が持っています。

それに近づくためには、パッションがないと無理だと思います。

一般的には「これくらいで十分だ。」と考えられているところを、「もっとよくできるところはないか?」と、自分たちでより良いアイディアを深堀って考えられるのが成功するチームだと思いますね。

ココ重要!成功するチームの特徴とは?
  • 成功するチームには「パッション」が大切!お客様のために「さらに改善しよう」という熱意あるメンバーが増えると、より良いアイディアが出てくる!

顧客満足度を高めるために「お客様の声」を毎日熟読する

大久保:「ネスカフェ アンバサダー プログラム」を運営する上で、難しいことはどのようなことがありますか?

竹内:「ネスカフェ アンバサダー プログラム」は、職場をターゲットにしたサービスですが、一言で「職場」と言っても多種多様です。

若い人が多い職場、年齢層の高い職場、学校、病院など、それぞれの職場にそれぞれのニーズがあるんですよ。

難易度の高いマーケティング戦略が求められますが、あえてポジティブに捉えて、楽しみながらやっています。

大久保:多種多様なユーザー全体の満足度を高めるために、工夫していることはありますか?

竹内:お客様からカスタマーセンターに届いた声を、毎日隅々まで見ています。

お客様から届くご意見の多くは、辛辣な内容や改善要望なのですが、それに向き合うことで、お客様の顔が見えるようになってきます。

これは、私にとってプライオリティがかなり高い業務です。

大久保:お客様の声を大切にしているのですね。

竹内:お客様の声を毎日読むことで、将来に繋がるものや成功事例に繋がるものなどの嗅覚が、読めば読むほどに研ぎ澄まされていくような感覚があります。

また、サイト内にも掲示板を設けており、そこには電話ではおっしゃらないような意見を多くいただいています。

その中に、お褒めの言葉があったりすると、我々としても嬉しく、モチベーションに繋がります。

「ネスカフェ」とともに、日本の職場に「笑顔とくつろぎ」を届ける

大久保:「ネスカフェ アンバサダー プログラム」では、コーヒーなどの飲料を提供していますが、導入している職場に対して何か良い影響を与えた事例はありますか?

竹内:導入していただいた多くのお客様から、「みんなの会話が増えた」「仲良くなった」「一緒に働く他の人のことを知ることができた」というポジティブなご意見を頂くことが圧倒的に多いです。

我々は、「ネスカフェ」などの飲料を販売していますが、それ以上に、お客様に「笑顔とくつろぎ」を届けているという自負があります。

大久保:今後の展望などあれば伺えますでしょうか?

竹内:日本には600万ほどのオフィスがあり、そのうちの85%ほどが「20人以下の職場」です。

現在、「ネスカフェ アンバサダー プログラム」に参加していただいている職場の数をさらに拡大させ、「ネスカフェ アンバサダー プログラム」をハブにして、それぞれの職場と人と人とをつなぎ、大きなネットワークにしていきたいと考えています。

「ネスカフェ アンバサダー プログラム」を、職場同士を繋ぐプラットフォームとして構築することで、働くことへのポジティブな連鎖を産み、そして、その先には日本を前に動かしていくほどのパワーになるポテンシャルを感じています。

企業の規模に関わらず起業家がやるべきことは同じ

大久保:最後に、起業家に向けてのメッセージをお願いします。

竹内:「ネスカフェ」「キットカット」という有名なブランドだから、新しいことを始めるのも上手くいくと思われている方もいらっしゃるかもしれません。

ですが実際は、地道に自分たちで調べて、テストを繰り返すなど、小さな積み重ねの上に、大きな成功があると考えています。

創業される方も、同じステップを踏まれると思うので、恐れずに進んでください。

今後、良いことも悪いこともいっぱい起きると思います。

「小さくテストすること」と「お客様の声を聞くこと」は、大きい会社も小さい会社も同じですので、参考にしてみてください。

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(取材協力: ネスレ日本株式会社 デジタル&Eコマース本部 D2Cビジネスグループ部長 竹内 雄二
(編集: 創業手帳編集部)

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