はじめての「年末調整のしかた」ガイド(実践編)

資金調達手帳

具体的に何をすればいいか、要点をまとめました!

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(執筆:”マンガ税理士”こと上村大輔税理士)

(2015/11/16更新)

前回は、年末調整の「基礎」について説明しました。まだ読まれてない方は、ぜひお読みください。さて年末調整の実践です。詳しい書類の書き方などは、国税庁の「年末調整のしかた」や過去の創業手帳の記事を参考にしていただくとして、今回は、年末調整の「仕組み」、具体的には提出書類や対象となる控除、必要な添付書類について説明していきたいと思います。

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1.年末調整説明会の案内が来たけど……?

源泉徴収義務者(給料を支払っている会社、個人事業主など)には毎年10月後半ごろに、年末調整関係の書類が厚めの封筒に入って届きます。

そしてその中にあるのが「年末調整説明会」のご案内。全国各地で、11月中に開催されています。

これ、義務ではないので、都合が付かない場合は無理に参加する必要はありません。

でも初めてだと、参加した方が良いかどうか…迷いますよね。

でもこれは、どちらかというと毎年年末調整をしている会社の担当者さん向けに、改正点を中心にお話をする趣旨で開催する場合が多いようですので、はじめて年末調整をする方が行っても、少し難しいかも……という印象です。

ですので、まずは、この封筒に入っている「平成27年分 年末調整のしかた」の冊子を、しばらくの期間、愛読書にしてみることをオススメします

毎年発行されているだけに、無駄が省かれた分かりやすい冊子になっています(初めて見る場合はそうは思わないかもしれないけど……)。

それもちょっと厳しいかも苦手という方には……国税庁で用意している動画ならどうでしょう。

40分弱に収まっているので、空き時間にスマホなどでも見ても良いかもしれませんね。

【参考】国税庁 インターネット番組 「Web-TAX-TV」年末調整のしかた(外部リンク)

2.年末調整のスタートはこの2枚から

さて、年末調整といえば、2枚の書類を社員の皆様に記入してもらい回収するところから始まります。

すなわち
1.「給与所得者の保険料控除申告書 兼 給与所得者の配偶者特別控除申告書」
2.「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」です。

1はその年の分の用紙を年末調整の時にもらう(今回であれば平成27年分)のに対し、2は来年分の用紙をもらいます(今回であれば平成28年分)。

これは、2はその年の最初の給与を支払う前日までにもらわなくてはいけないというルールがあり、便宜上、毎年この年末調整の時期に来年分を回収することになっているためです。

先に出す性質上、内容に変更が生じることもあるので、その場合は再度こちらの2を出すことになります。

また、本年分の2をまだもらっていなかった場合は早急にもらうようにしましょう。

3.年末調整で受けられる控除と受けられない控除

前回、年末調整とは「サラリーマン版・確定申告」ともいえる……とお伝えしましたが、年末調整のしくみを理解するためには、確定申告に対する基礎知識が必要になってきます。

ごくごく簡単に言うと、確定申告とは、1年間(1月~12月)の収入を確定させた後、各人の家族状況、生活状況などにより受けられる控除を引いた額に、金額に応じた税率をかけて所得税額を自分自身で計算して、税務署に申告する(そして納付もする)という制度です。

年末調整の場合は、本来は社員ひとりひとりがやらなくてはならない確定申告の業務を、会社が代行して行う形になります。

そして年末調整だけで税金計算が済む社員は、確定申告が不要になるのです。

考えてみると少し不思議な制度ですが、戦後の税務署職員不足などの経緯からこのような仕組みが定着したという説があります。

さて、この年末調整では、まず収入はその会社が支払っている給与だけになります。

そして控除については、先述の2枚の用紙を使って社員から連絡してもらう形になります。

どんな控除があるのか、見ていきましょう。

控除の種類 関係する用紙
配偶者控除、扶養控除、障害者控除、寡婦控除、寡夫控除、勤労学生控除、基礎控除 1.「給与所得者の保険料控除申告書 兼 給与所得者の配偶者特別控除申告書」
配偶者特別控除、生命保険料控除、地震保険料控除、社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除 2.「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」
(特定増改築等)住宅借入金等特別控除 給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書

上記の一つ一つの控除の内容については、国税庁のHPで分かりやすくまとまっていますのでご参照ください。

【参考】国税庁タックスアンサー(所得税)所得金額から差し引かれる金額(所得控除)(外部リンク)
【参考】国税庁タックスアンサー(所得税)住宅を新築又は新築住宅を取得した場合(住宅借入金等特別控除)(外部リンク)

また、各控除を受けるにあたっては、対象などの注意点や控除の上限額等が結構細かく決められているので、誤って適用させてしまわないように十分確認しましょう。

特に生命保険料控除については、支払った保険料の種類と金額をもとに、控除額を計算する必要があり手間がかかるところです。

【参考】国税庁 平成27年分 年末調整のしかた 各種控除額の確認(外部リンク)

なお、年末調整では、「雑損控除」「寄附金控除」「医療費控除」の3つは受けられないことになっており、これらの控除がある方は、年末調整を終えた後に、ご自身で確定申告をする必要があります。

また、住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)について、1年目(購入年)はご自身で確定申告をしないと受けられないのですが、2年目以降の控除は年末調整で受けることができます。

該当する方がいる場合は、前述の2つの書類の他に、「平成27年分 給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」を出してもらう必要があります。

4.年末調整に必要な添付書類

年末調整では、先述の2枚(住宅ローン控除がある方は3枚)の用紙を出してもらう際、添付書類としてもらう必要がある書類があります。その場合と必要書類は下記の通り。

  • 生命保険料控除を受ける場合…生命保険料控除証明書
  • 地震保険料控除を受ける場合…地震保険料控除証明書
  • 勤労学生控除を受ける場合…
  • (1)その人の学校が控除対象に該当していることの証明書(文部科学大臣あるいは厚生労働大臣発行のもの)の写し
    (2)その人の在学証明書

  • 国民年金を払っていた場合…社会保険料控除証明書(あるいは納付の際の領収書)
  • 小規模企業共済等掛金控除…掛金払込証明書
  • 住宅ローン控除…金融機関発行の借入金残高証明書

このほか、年の途中で入社した方で、入社前に他の会社で勤めていた方は前職の源泉徴収票(本来は入社時にもらうがまだもらっていない場合)が必要です。

扶養関係の控除には、配偶者や親族の所得制限が定められているのにも関わらず、所得を証明する書類の提出は必要ありません。

これは、年末調整書類を11月頃から回収し、年内に処理を終わらせてしまうため、年間所得がまだ確定していないという関係もあるかもしれませんが、結果的に、自己申告制で済んでしまう状況でした。

ただし来年分からは、マイナンバーを提出することにより配偶者や親族の所得が今までより容易に課税当局に把握されることになるため、年末調整では控除を受けられても、後で控除の取消になる事例も発生する可能性があるでしょう。

5.税額の計算

控除額が確定した後は、いよいよ年税額を計算します。

そしてその年税額と、毎月の給料から天引きしていた税額(+12月給料分の税額)の合計を照らし合わせて、差額を12月分の給料で調整します。

これらの計算は、結構手間がかかり、またご自身でやるのはミスのもとなので基本的には専用ソフトを使うことがおススメです。

給料計算ソフトを月々で使っている場合はそのソフトと連携している年末調整機能を使って、月々はエクセルで管理しているような方でも年末調整だけのソフトもあるのでぜひ試してください。

あるいは、忙しいなどで社内でやることが難しい場合は、税理士事務所などの専門家に委託することも選択肢の一つです。

6.まとめ

いかがでしたでしょうか。

簡単にですが、年末調整の仕組みを見てまいりまいた。

今回のシリーズでは、具体的な書類の書き方などではなく、年末調整の考え方的なところにスポットをあてています。

詳しい書類の書き方などは、国税庁の「年末調整のしかた」や過去の創業手帳の記事もご参照ください。

【参考】国税庁「平成27年分 年末調整のしかた」(外部リンク)
【参考】創業手帳Web「年末調整とは? 必見…というほどでもないザックリとしたまとめ」

年末調整、これで終わり…と思いきや、実は1月にも業務があります。

長くなってしまうので、それはまた次回に。お楽しみに!

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前回のおさらいはこちらから
はじめての「年末調整のしかた」ガイド(基礎知識編)
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(監修:かみむら会計事務所 上村 大輔(かみむらだいすけ)税理士
(編集:創業手帳編集部)

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