未払費用とは?未払金との違いや管理のポイントなどをわかりやすく解説
未払費用と未払金を区別しよう
決算書類を初めて見た時に、たくさんの聞きなれない用語に戸惑ってしまう人も多いかもしれません。中でも混同しやすい用語のひとつが、未払費用と未払金です。
この2つは、似た用語に思われがちですがそれぞれ違いがあります。それぞれの違いを理解しておくことは大切です。
そして、どのように未払費用と未払金を扱えばいいのか理解してください。
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この記事の目次
未払費用の基本について
貸借対照表や損益計算書では、様々な種類の勘定科目が使われています。費用において、経費が発生したタイミングと支払うタイミングが同じとは限りません。
費用の発生時と支払時がわかれる時に使われる勘定科目のひとつが未払費用です。ここでは、未払費用の定義から紹介します。
未払費用の定義
未払費用は、継続的な役務提供に対する費用の中で未払いのものを指して使います。
会計基準のひとつである「企業会計原則注解」では、以下のように定められています。
もしも貸借対照表の時点で経費の支払いがなくても、未払費用は時間の経過に応じて費用が発生しているものです。
未払費用は、貸借対照表では流動負債、損益計算書上は、適切な費用の勘定に計上します。
未払費用の特徴
未払費用の特徴は、役務が提供されてから支払いが行われる点です。
期末月に役務が提供された場合、すぐに支払い請求をしたとしても代金を支払うのが翌年度になってしまうことがあります。
未払費用をわかりやすくいえば、支払いは後回しにしてサービスだけを受けている状態です。役務に対する対価は、時間の経過とともに当期の費用として発生していると考えます。
貸借対照表日までに支払っていなくても、サービスを受けていればサービスを受けた期間に応じた費用が発生していると考えて処理を行わなければいけません。
未払費用の具体例
未払費用が発生するケースは、いろいろあります。
具体的には、給与や家賃、利息などです。また、未払費用には、未払家賃や未払手数料、未払利息等があります。
上記以外にも、保険サービス料やリース費用、毎月支払っている通信費も決算日をまたいでいて支払いが後回しになるケースがあります。
そういった場合には、すべて未払費用として処理しなければいけません。
例えば、保険料の場合で考えてみてください。6月の初めに契約して翌年の5月末に到来するサービス終了時に年額の12万円を支払うケースです。
このケースで決算日が3月末であれば、6月から3月末までの10カ月間は保険サービスを利用しています。
そのため、10カ月間の保険料に該当する10万円は今期の未払費用として負債に計上することになります。
未払費用と混同しやすい未払金について
未払費用と間違えやすい勘定科目として未払金もあります。この2つを混同して会計処理してしまうことがないように、どのように違うのかを知っておいてください。
初めに未払金の定義と特徴について紹介します。
未払金の定義と特徴
未払金は、物を購入したり役務の提供を受けた時の代金を後から支払う時に使う勘定科目です。
しかし、これだけだと未払費用との違いがわかりにくいかもしれません。
未払金は、単発的な取引きによる未払いの債務時に使う言葉です。
事務用品や消耗品、「備品などを後払いで購入した場合や、広告のデザイン料や修理費用を後払いにした時にも未払金で処理します。
未払金は、1年以内に支払うものは未払金として流動負債、1年を超える場合には長期未払金として固定負債に表示します。
未払費用と未払金の違い
未払費用と未払金の異なる点は、未払費用が役務の提供が終了していない場合に使われているのに対して、未払金は単発ですでに確定した債務である点です。
未払費用と未払金は、どちらも代金の未払いである点は変わりません。しかし、未払費用はまだ支払期日が到来していない、サービスの提供を受けている途中経過の費用です。
未払金は、固定資産や消耗品の購入や修理費用のように商品やサービスの提供が終わっているものに使います。
未払費用は、期間の経過に応じて費用が発生するので、費用に対応しているものの支払っていない部分を未払費用として計上します。
未払費用と未払金の判断基準
未払費用と未払金は、会計上は違う性質の勘定科目です。しかし、実務においては、未払費用にするか、未払金として計上するか判断が難しいケースも想定されます。
未払費用と未払金がを分類する時、実務上は請求書の有無で判断されることがあります。
これは、請求書が期末に届いていなくて債務が未確定のものは未払費用として計上する方法です。
期末にすでに請求書が届いていて債務が確定しているのであれば未払金として計上します。
また、自社の過去の決算において、どのような未払費用や未払金が発生しているのか前期以前の仕訳を確認することも有効な手段です。
未払費用の会計処理と仕訳例
ここでは、実際にどのように未払費用を会計処理をするのか紹介します。
未払費用の会計処理は、費用が発生してから決算時の計上を経て翌期首への振り戻し処理の行程で進みます。
処理し忘れることがないように流れで理解するようにおすすめします。
未払費用が発生した時の仕訳
【例】
3月末決算の会社が2月初めに倉庫の賃貸契約(半年)を結び、利用を開始している。賃貸料は半年後(7月31日)に12万円を支払う。
未払費用を計上するポイントは、計上のタイミングです。
未払費用を計上する時には、決算日にサービス提供分の金額を計上して、翌期首に計上した費用を振り戻す処理を行います。
未払費用にかかわる契約をした時点ではまだ出金もなく会計処理は決算時に行います。
決算時の未払費用計上
未払費用の考え方は、役務の提供時点から決算日までの期間にいくら費用が発生したかを考えることです。
上記の例ではまず、役務が提供された期間は2月1日~3月31日の2カ月です。半年間で12万円の賃貸料を支払う契約になっているため、月当たりの賃貸料は2万円と計算できます。
12万円のうち今期に該当する2カ月分、4万円を前払費用に計上します。
借方 | 貸方 | ||
賃貸料 | 4万円 | 未払費用 | 4万円 |
翌期首の振り戻し処理
未払費用は、計上して終わりではありません。決算日で負債として計上した未払費用を翌期首に振り戻す仕訳を行います。
以下の仕訳です。
借方 | 貸方 | ||
未払費用 | 4万円 | 賃貸料 | 4万円 |
この仕訳をしておかないと、未払費用を支払った時に費用を重複して計上することになります。
費用の支払い時の処理
役務提供を終了し支払期日の時点で、今までの料金を計上します。
借方 | 貸方 | ||
賃借料 | 12万円 | 普通預金 | 12万円 |
実際に金銭のやり取りが発生するのはこの時点です。期首に賃借料4万円を貸方に計上しているため、相殺されこの期の費用として4カ月分の8万円が計上されます。
未払費用は計上しないと損!節税の秘訣
未払費用は、ほかの費用とは違う会計処理があるため、計上も面倒に感じるかもしれません。
しかし、未払費用は節税のために有効な手段でもあります。未払費用の節税効果についてまとめました。
未払費用の節税効果
未払費用は、損金であり適切に計上することで、課税所得が減少し節税につながります。
未払費用を使えば、決算日時点で支払いは終わっていない費用であっても、債務が確定していれば決算時に損金算入が可能です。
企業が未払費用を計上すれば、利益を圧縮することになり法人税の節約になります。
また、未払費用を活用すれば今期発生した費用を漏れなく損金計上できるのでより正確に損益計算できます。
正確に企業の損益を把握するためにも、どの費用が未払費用になるのかを把握して正しく処理しなければいけません。
損金算入の要件
未払費用を損金として計上するには債務が確定していなければいけません。債務が確定しているかどうかの判定は、以下の3つの基準を満たす必要があります。
・債務の確定
決算日までに支払い義務が確定している
・原因事実の発生
決算日までに費用が発生している
・金額の合理性
金額を明確に算出できる
つまり、決算日までに役務の提供を受けて、契約書や請求書で契約に事実と金額が明らかであれば未払費用として計上できます。
未払費用に関連するほかの勘定科目
未払費用は、後払いで代金を支払う時に発生する費用ではありますが、後払いであればすべて未払費用になるわけではありません。
ここでは未払費用に関連するほかの勘定科目もまとめました。
買掛金との違い
買掛金は、後から代金を支払うことを約束して商品や原材料を仕入れた時に使う勘定科目です。
飲食店の食材や小売店の販売商品などは、その都度支払うのではなく、後からまとめて支払うケースもよくあります。そういった場合には、買掛金として処理をおこないます。
買掛金も未払金と同じように後払いの費用ですが、買掛金は仕入に対する債務である点が違います。
未払費用は仕入には関係ない費用に使うため、同じように未払になっていても未払費用と買掛金は別物として区別しなければいけません。
以下では、買掛金で仕入れをした時の仕訳を紹介します。
【例】取引先から12万円で商品を仕入れた。商品の支払いは掛けとする。
借方 | 貸方 | ||
仕入 | 12万円 | 買掛金 | 12万円 |
取引時に上記の仕分けをして買掛金を支払った時には、その仕訳を行います。
【例】
買掛金12万円を当座預金から支払った。
借方 | 貸方 | ||
買掛金 | 12万円 | 当座預金 | 12万円 |
前払費用との違い
前払費用は、未払費用と同じように費用発生と支払いのタイミングがずれた時に使用する経過勘定です。
ただし、前払費用は、まだ発生していない費用を支払った時に使います。
未払費用はすでに発生した費用に概して将来支払う債務なので負債です。一方で、前払費用は、すでに支払っていて将来発生した時に支払う必要がないため資産となります。
未払費用の管理ポイント
未払費用を適切に処理するためには、いつ発生した費用で支払いをいつ行うのか、正確に管理しなければいけません。未払費用の管理ポイントをまとめました。
発生状況を正確に確認する
未払費用として計上して損金算入するには、債務確定基準を満たさなければいけません。
債務確定基準を満たさないものを未払費用として計上すれば、法人税が過少となって後から税務調査で指摘される可能性もあります。
未払費用の発生状況を正確に確認するには、客観的に発生を把握できるように書面で記録してください。
契約書や納品書など日付がわかるものは、後から確認するためにまとめておくようおすすめします。
漏れなく計上する
未払費用や未払金は、当期中に支払いは終わっていません。計上しなくても現金の差異が発生しないので、決算でうっかり存在を見落としてしまう可能性があります。
もしも未払費用を計上しなければ、その期の費用を計上しないこととなり、法人税の負担が多くなってしまいます。
未払金や未払費用は計上漏れがないように会計処理を徹底します。決算時には計上していない未払いがないかどうかチェックするようにしてください。
未払金と未払費用の使い分け
上記で説明したように未払金と未払費用は混同しやすい勘定科目です。しかし、実務上はどちらの勘定科目を使用しても大きな問題にはなりません。
未払金でも未払費用でも経費計上できるので、税金の計算にも違いは発生しませんが、会計処理は今まで発生していた経費がどのように推移しているのか知るためにも連続性を保つ必要性があります。
未払金と未払費用のどちらを使用してきたのか、請求書や前期以前の仕訳を確認するようおすすめします。
まとめ・未払費用を適切に仕訳しよう
未払費用と未払金は、ものやサービスの提供を受けながら支払いが終わっていない費用に使う勘定科目です。
代金は未払いですが、今期の経費として計上することで利益を圧縮して税負担を少なくできます。
未払費用を適切に仕訳することによって、財務諸表の信頼性向上と適切な経営判断へ貢献します。未払費用を適切に仕訳するようにしてください。
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(編集:創業手帳編集部)