LLPを知っていますか 出資のリスクが低く、自由に運営できる起業の形

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LLP設立に必要なポイントを解説します

(2020/07/11更新)

LLP(有限責任事業組合)をご存知でしょうか。日本では2005年から設立できるようになった、比較的新しい事業体です。法人格がなく、民法上では組合の扱いとなります。

LLPは個人や法人の優れた技術・ノウハウを尊重しながら自由に運営できるため、ベンチャービジネスや業務連携といった領域で相性が良いとされています。LLPの概要と、どんな事業に向いているのか、設立する際の注意点などを解説します。

無料で利用できる創業手帳の冊子版では、会社設立の形態をまとめて解説しているほか、経営に必要なノウハウを紹介しています。記事とあわせて参考にしてみてください。

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LLPの主な特徴

LLPの主な特徴を表でまとめました。

株式会社 合同会社 LLP
法人格 あり あり なし
意思決定 取締役会・株主総会 定款で自由に定める 内部自治
責任 有限 有限 有限
最低人数 1人以上 1人以上 2人以上
最低資本金 1円以上 1円以上 2円以上
課税 法人税 法人税 構成員課税
株式会社への変更 可能 不可能

有限責任制

LLPは有限責任制をとっているため、事業で赤字や借金が発生してしまったときも、出資者は出資した額までしか責任を追う必要がありません。例えば、100万円の出資をしたLLPが1000万円の負債を抱えたとき、出資者の損失は100万円まで済むのです。出資のリスクが低く、参加しやすい点が特徴です。

意思決定は内部自治

株式会社は、出資した額によって、事業の意思決定や利益の分配をする際の影響力が変わります。対して、LLPの意思決定は、構成員による内部自治が原則です。例えば、出資した額が少なくても、組合に対して貢献度の高いスキルや価値を提供できる人材には大きな利益を分配したり、権限を与えたりするといった柔軟なマネジメントが可能になります。また、株式会社のように取締役や監査役を設置する必要もないため、事業の意思決定をスムーズに行うことができます。

一方で、LLPの業務の中核に関わる重要な業務執行は、原則として組合員全員の一致で行う必要があります。業務執行の例としては、対外的な契約締結などLLPの営業に関する行為や、契約締結のための交渉、具体的な研究開発計画の策定などが挙げられます。また、重要な財産の処分や譲渡、多額の借財については全員の一致もしくは組合員の3分の2以上の同意が必要です。

構成員課税

LLPは、出資者に直接課税する構成員課税の形を取ります。法人税のように、団体全体にかかる税金はありません。出資者に配分した利益に対して個別に課税されるのです。

株式会社や合同会社と違って、組織と出資者に二重課税されることがない点で、税制上有利と言えるでしょう。また、LLPの事業で損失がでた場合、出資者は、他の事業で得た所得と損益通算することができます

LLPはどんな事業に向いているのか

LLPは、内部自治、有限責任、構成員課税という3つの特徴から、「個人×個人」「法人×法人」「法人×個人」といった、様々な属性をもつ出資者が共同で事業を行う場合に動きやすい形と言えます。大企業と中小企業による共同事業や、産学連携、ベンチャー事業、領域の異なる専門人材どうしが集まって事業を行う場合などに向いています。

LLP設立のステップ

LLPを設立するまでの大まかな流れは以下のとおりです。

  • 組合員による組合契約書(株式会社における定款)を作成
  • 出資金の払い込み、現物出資の給付※
  • 法務局に組合契約を登記申請
  • 組合契約の登記の完了

※出資は現金だけでなく、現物資産(動産、不動産、有価証券など)でも出資できます。

組合の名称は、同じ事業を行っている組合と同じ名称をつけることができません。株式会社などと同様に、登記申請をする前に名称調査を行う必要があります。設立にかかる時間は、おおむね10日程度です。

設立にかかる費用

LLPの設立に必要な費用は、登録免許税6万円のみです。公証人役場で定款の認証を受ける必要もないため、認証の手数料などあわせて25万円程度かかる株式会社に比べて、設立にかかるコストを抑えることができます

LLPの注意点

LLPで経営を行う場合の注意点も解説します。

団体名義の契約ができない

LLPは法人格を持たないので、団体名で事業場の契約をすることができません。取引先などと契約するときは、組合の肩書がついた個人の名義を使う必要があります。

株式会社への切り替えができない

LLPは、合同会社と違って、株式会社への切り替えができません。事業をすすめる中で、法人形態を株式会社に変更したいと考えた場合は、LLPを解散して新たに株式会社を立ち上げる必要があります。

解散する場合は、財産の分配や、債務の処理などを考えなければならないので、一定以上の手間がかかることを覚えておきましょう。

事業の終わりを定める必要がある

LLPは、株式会社や合同会社と異なり、事業の存続期間を定める必要があります。設立時に定めた存続期間から延長したい場合は、有限責任事業組合契約の変更の手続きを行う形です。

組合員の新規加入・脱退がカンタンにできない

LLPは、構成員課税の形をとるため、新規に組合員が加入する場合や、脱退するときは、その都度全員の意思決定に基づく組合契約の変更と登記、損益の再計算が必要になります。
新規加入・脱退に一定以上のコストがかかるので、人がめまぐるしく入れ替わる事業の場合は注意しましょう。

公告の義務はないが、財務諸表の作成は必要

LLPは、貸借対照表を作成し、毎事業年度ごとに、貸借対照表、損益計算書などの書類を作成することが義務づけられています。財務諸表について、株式会社のように公告する義務はありません。

従業員を雇うこともできる

LLPは、組合員の肩書つきの名義で雇用契約を結ぶことで、従業員を雇用できます。従業員は労働保険(労災保険・失業保険)や社会保険(健康保険・厚生年金)に入ることも可能です。

まとめ

LLPは、株式会社や合同会社に比べると認知度の低い事業体です。設立や運営の方法も特殊ですが、その性質をうまく活用すれば、優れた技術や能力を効果的に発揮できる事業を作ることが可能です。起業や業務提携の選択肢として、知っておいて損はないでしょう。

無料で利用できる創業手帳では、事業を有利に進めるためのノウハウや選択肢をまとめて解説しています。事業の形態や運営方法について迷った時の参考にしてみてください。

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(編集:創業手帳編集部)

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