KONNEKT INTERNATIONAL 由羽弘明|SNS時代にさらなる強みを発揮するコンテンツIPビジネスの真価
コンテンツIPのリーディングカンパニー代表が語る、コンテンツIPビジネスの魅力と成功手法
アニメやアーティストなどのコンテンツ市場の拡大に伴い、さまざまな企業から注目を集めているIPビジネス。
IPとは知的財産を意味する「Intellectual Property」の略で、IPビジネスは個人や企業が自ら生み出した知的財産によりライセンス使用料などの収益を得るビジネスモデルを指します。
この他社がもつIPの権利を活かし、モノづくりを通じてその価値を最大化するコンテンツIPビジネスの先駆者として業界を牽引しているのがKONNEKT INTERNATIONAL(コネクトインターナショナル)です。
同社は創業以来、IPにファッションを掛け合わせる手法で市場を開拓。多くの国内外著名IPや大手グローバルファッション企業の商品づくりをサポートしてきた実績をベースに、次世代マーケットを創出する新たなモノづくりを提供しています。
今回は代表取締役を務める由羽さんの起業までの経緯や、コンテンツIPビジネスの魅力と成功手法について、創業手帳代表の大久保がインタビューしました。
株式会社KONNEKT INTERNATIONAL 代表取締役
神奈川県横浜市出身。慶應義塾大学経済学部卒業後、教育業界、ブランドビジネスを経験し、2013年にコネクトインターナショナルを設立。17年からロンドンの会社とのジョイントベンチャーであり子会社のユアジャパンの代表取締役も務める。
KONNEKT INTERNATIONAL
Goods Luck
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計250万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら
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この記事の目次
台湾系日本人として強みを磨いた幼少期・学生時代から、看板講師を経て起業
大久保:由羽さんは起業当初から海外にまつわる事業を展開されてきましたが、もともと日本国外にルーツがあると伺っています。
由羽:私は台湾系日本人で、祖父と母が台湾人の一家に生まれた3世です。横浜中華街で育ったのですが、幼い頃から日本と諸外国の文化に親しみながら生きてきました。
こうした環境下で自然と培われたのは、多種多様なバックグラウンドをもつ人たちとのコミュニケーション能力です。経歴や出自が異なる一人ひとりの考えを尊重したり、客観的に捉えることができる力が育まれたと実感しています。
語学力の高さも生い立ちが影響していて、幼少期は台湾人の母と中国語で会話しながら、小学校からずっと日本の学校でしたので日本語もどんどん上達しました。英語も得意でしたし、言語習得能力が優れていたんです。
慶應義塾大学時代には英語力を活かして海外留学も経験し、さらに異文化コミュニケーション能力に磨きをかけました。
大久保:現在のビジネスで成功するための資質を高めながらご経験を積まれてきたんですね。大学卒業後、すぐに起業されたのでしょうか?
由羽:20代の頃は教育業界で働いていました。学習塾や大手家庭教師会社の看板講師だったんです。
テレビ番組への出演や書籍出版など多角的な展開で活躍するかたわら、事業を行ったこともありますが、当時は大きく成長させていくことができなかったんですね。
そこで30歳を過ぎてから「違うジャンルに本気で挑戦しよう」と一念発起し、2013年7月にKONNEKT INTERNATIONALを設立しました。
「違うジャンルでの挑戦」で起業したものの、当初は教育事業での実績に助けられました。
弊社が最初に手掛けたのは、LDHとエイベックスが共催した「GLOBAL JAPAN CHALLENGE」の英語教育事業です。
オーディションに合格した男子小中学生をニューヨークに留学させ、歌やダンス、語学、国際力などを学ばせながら新世代のアーティストを育成するプロジェクトだったのですが、留学前の英語習得を弊社にご依頼いただきました。
この案件が教育業界からエンタメ業界への橋渡しをしてくれました。創業時を支えてくれた案件として思い出深いですね。
IPとファッションを掛け合わせる。フランスのアイウェアブランドと出会い成功へ
大久保:御社は今年2023年が周年記念だそうですね。いち早くコンテンツIPビジネスに目をつけた先見の明に感服しています。
由羽:ありがとうございます。弊社は「IP×FASHION×TECHNOLOGY」をテーマに、現在ではブランド事業・グッズ事業・ライセンス事業・カスタマイズ事業を展開し、おかげさまで10周年を迎えることができました。
社名のKONNEKT INTERNATIONAL(コネクトインターナショナル)は“世界をつなぐ”という意味で、世界中の人と協業するグローバルビジネスを強みにしたいというのが創業時から抱いていた想いです。
同時に、エンターテインメントやファッションの領域においてIPを扱う事業は必ず発展すると確信していましたので、人気のコンテンツやアーティストなどのIPを軸にしたモノづくりを提供し続けてきました。
大久保:コンテンツIPビジネスを軌道に乗せたきっかけについてお聞かせください。
由羽:フランス人のビジネスパートナーと出会い、「nunettes(ヌネット)」というフランスのアイウェアブランドの総代理店として事業を始めたことで、その後の地盤を築くことができました。
同ブランドのサングラスは前面にIPなどをプリントすることが可能で、アニメ「ONE PIECE」をはじめ、サッカー日本代表やJリーグ各チーム、プロ野球チーム、大型フェス、SMAPやLDHなどの人気アーティストを含む多数の人気IPと契約できたんです。
この成功によりIPにファッションを掛け合わせるビジネスモデルに商機を見出しました。
SNSの浸透が大きな転機に。消費行動は「より付加価値を重視」の時代へと進化
大久保:近年「IP」という単語の認知度も向上しましたよね。業界内での変化はありましたか?
由羽:以前は「IP=知的財産」としてのビジネスが主流でしたが、徐々にファンマーケティングの要素が強まってきました。
コンテンツIPビジネスは、必然的にそのIPのファンに向けて展開するサービスです。そのため、ファンマーケティングが注目され始めた時期に「IP」という言葉にもスポットが当たるようになりましたね。
大久保:その理由はなんでしょうか?
由羽:大きな要因のひとつとして、インターネットの普及に伴うSNSの浸透があげられると思います。
特にここ10年で主要SNSが一気に広がりましたので、企業側はファンのニーズが把握しやすくなり、ファン側はファン同士のコミュニティでさらに盛り上がれる環境が形成されたことが大きいと感じています。
大久保:急速に時代が変わってきたわけですね。
由羽:はい。そして今後の消費行動において、より付加価値が重視されるのではないかと考えています。
この“付加価値”というのは「好きな作品やアーティストの商品だから」だけでなく、「このブランドが好きだから」「好きな人がプロデュースしているから応援したい」といった購入動機もすべて含みます。
日本はもともと「より品質の優れたモノを生み出そう」という視点で開発や改良を重ね、商品を誕生させる能力に長けた国です。
ただ、現在ではこの「より品質の優れたモノ」が当然のように市場にあふれているため、人が満足するファクターとなるのはなにか?というと、それ以外の付加価値が鍵となるんですね。
すっかり世間に浸透したといわれる「推し活」も、まさにこの「付加価値の重視」を起因とする活動ともいえると思います。
大久保:「より品質の優れたモノ」がスタンダードになったからこそ、消費行動をする際の優先順位が変わってきたわけですね。
由羽:おっしゃる通りです。「品質が優れているかどうか?」を判断基準とする方々が多かった時代から、徐々に推移していると実感しています。
コンテンツIPビジネスを成功させるために覚えておきたい「適切な調理法」の重要性
大久保:業界のパイオニアである由羽さんの視点で見た、コンテンツIPビジネスを成功させるための秘訣をお教えください。
由羽:いかに優れたIPという素材を用いて、適切な調理法で美味しい料理として仕上げることができるかどうか?ではないでしょうか。
実は一言で「コンテンツIPビジネス」といっても幅広いのですが、弊社ではまず大前提として「IPの価値をモノづくりを通じて最大化する」を理念としています。最終的にあらゆる“モノづくり”に落とし込んでいるんですね。
その際に適切な調理法を選択できていることが重要で、「このIPはどういう商品企画を行い、どんなマーケティングを展開し、どのタイミングでリリースするのが最適か?」をひたすら熟考しながら進めていくこと。これができるかどうかで大きな差が出てきます。
大久保:「どのIPでも同じ商品をつくればいい」というわけではないからこそ、IP活用側の腕にかかってくるんですね。
由羽:その通りです。「このIPの場合、Tシャツよりアクリルスタンドのほうが喜ばれるだろう」というように、柔軟な感性と対応力で企画しアプローチしていく必要があります。
人気があるIPはブランド価値があり、その裏には消費活動を行ってくれる多くのファンがついています。
つまり「どういう調理法なら売れるのか?」は、イコール「ファンがなにを求めているのか?」「どういう企画をしたりモノをつくればファンが喜んでくれるか?」と同義なんですね。
だからこそ、常にファンの存在を念頭に入れてとことん突き詰める。ファンの共感を重視してリリースするとヒットにつながりますし、反対にファンを無視してひとりよがりに走ってしまうとまったく売れないという惨状を招いてしまいます。
大久保:料理に例えた論理が非常にわかりやすく腑に落ちますね。日本料理がまさにそうですが、基本的な考えとして「質の良い素材を選び、その素材の味を活かす」ことが重視されています。つまり優れたIPを選択し、同時にそのIPを活かすためには仕掛人の力量が重要なわけですね。
由羽:おっしゃる通りです。著名IPなのに思ったほど売れないこともあれば、大人気のIPでなくてもヒットを生み出すケースもありますからね。
SNSのフォロワー数などIPのパワーを判断する指標はありますが、それらを超越し大きく結果が変わることも少なくありません。掛け算のように、たとえば1のIPに1000を掛ければ1000になりますし、100のIPでも1を掛けてしまうと変わらないというイメージですね。
だからこそ「調理法が大事」なんです。非常に面白く、やりがいのある仕事だと思っています。
注目案件が目白押し。今後もコンテンツIPのリーディングカンパニーとして牽引
大久保:御社が現在、力を入れているサービスについてお聞かせいただけますか。
由羽:いくつかあるのですが、そのひとつとして2023年5月から提供を開始した「オンデマンド生産×IP」による次世代型のグッズサービスに注力しています。
電通との共同事業なのですが、オンデマンド生産をベースにすることで従来の在庫リスクから解放され、自由な発想で多彩なMD企画が可能なことが大きな特長です。
優れたSDGsの取り組みというだけでなく、特に多くのキャラクターが登場するアニメなどのIPで「ファンがキャラクターやデザインの組み合わせを自由に選べる」カスタマイズ性の高さにも評価をいただいています。
メインキャラクターだけでなくサイドキャラクターも商品化したり、これまでは1種類だったデザインを複数パターンで展開するなど、従来の手法では難しかった企画が大量在庫を抱えることなく実現できるようになりました。
大久保:ファンが本当に欲しいグッズを手に入れることができる素晴らしいサービスですね。御社は「IP×FASHION×TECHNOLOGY」を掲げていますので、IPにファッションを掛け合わせるだけでなく、最先端のテクノロジーを取り入れていることも強みなんですね。
由羽:はい。世の中の流行を先読みしたり、各業界の動向をウォッチすると同時に、常にテクノロジーの進化にも注目しながら共に歩んできました。弊社がサービスを展開するうえで「IP×FASHION×TECHNOLOGY」は不可欠です。
大久保:ほかにも直近で動いている大型プロジェクトはありますか?
由羽:俳優の新田真剣佑さんとのパートナーシップで立ち上げたアパレル・ジュエリーブランドINCRM(インクリム)をグローバルマーケットに向けて本格始動させていく予定です。「IP×FASHION×TECHNOLOGY」を世界に表現していきたいと思っています。
創業以来、信頼関係を築きながら結果にこだわる姿勢で実直に事業を運営してきた結果として、おかげさまで多くの著名IPのコーディネートをお任せいただく機会に恵まれています。
これからもコンテンツIPのリーディングカンパニーとして市場を牽引し、「コンテンツIP領域の本質」と呼ばれる会社を目指していきたいです。
リスクを背負いながら挑戦するのが起業だからこそ、“楽しむ力”を武器に継続を
大久保:最後に、起業家に向けてメッセージをいただけますか。
由羽:起業すると不安に苛まれたり大変なことが多いです。でも、そもそもリスクを背負いながら挑戦するのが起業ですよね。
なかなか先を見通すことができませんし、私自身、予測が外れて痛い目にあう経験もしています。
ただ、困難に見舞われたときでもファイティングポーズだけは崩しませんでした。
たとえ駄目だったとしても命までとられる時代ではありません。なにより、地道に続けていれば人に喜ばれる瞬間がたくさんあり、その結果として人も残ります。
今だからそう言えるというのもありますが、不安に苛まれたり大変なことが多いからこそ、そういう側面も含めて楽しんでいけたらいいのではないかなと。
ぜひ起業家の方々には「これはハッピーエンドになる過程なんだ」と自分の力を信じて、“楽しむ力”を武器に事業を継続していただきたいと願っています。
大久保の感想
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(取材協力:
株式会社KONNEKT INTERNATIONAL 代表取締役 由羽 弘明)
(編集: 創業手帳編集部)
今回起業家に役立つと思ったポイントは下記です。
・海外では会社対会社より個人対個人。信頼される人間力が大事!
・「推し活」は突然出てきたものではなく、実は人間の自然な感情がテクノロジーや時代の要求の中で社会現象になったもの。
・IPビジネスは料理。素材と素材を料理する腕。そこが面白い。
皆様はこの記事を読まれて何を感じられましたでしょうか?
創業手帳では今後も面白い起業家の方から起業家に役立つという視点で体験をシェアしていただきます。こんな起業家を取材してほしい、こういうところを効いてほしいなどがあればtwitterなどでも教えて下さいね。また、創業手帳ではこうした起業家同士が会える機会も作っています。皆様のビジネスの助けになりましたら幸いです。