個人事業主は住宅ローンを経費にできる?計上可能な経費や住宅ローン控除について解説

創業手帳

事業では経費についての理解が必要


経費として計上できる支出は、事業を遂行するために絶対に必要なものだけです。住宅ローンの支払いでは元金の返済は経費にはできません。
しかし、利息部分は経費計上を認められる可能性があります。

個人事業主の経費は日常的に発生します。どういった支出を経費として計上できるのかを把握することが節税の第一歩です。
個人事業主が計上できる経費について理解しておくようにしてください。

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個人事業主の住宅ローンは経費に計上できる?


個人事業主になった時に、まず意識してほしいのが事業に当たって何を経費計上できるかです。事業のために必要不可欠な備品や消耗品は経費として計上できます。
経費として計上すれば利益を圧縮することになるため、節税にもつながります。節税のために支出を見直してみた時に住宅ローンの元金や利息が目に付くかもしれません。
自宅で仕事をしている場合、家賃の一部を経費計上することは認められています。では、住宅ローンの支払額を経費にできるのでしょうか。

ここでは、住宅ローンと経費の関係について紹介します。

住宅ローンの元本は経費計上できない

そもそも住宅ローンの支払いは、借入れした元金の一部返済とその利息の支払いを合わせたものです。この住宅ローンの元本の支払いは経費計上できません
住宅ローンだけでなく事業に関わるお金でも借りたお金分の返済は、経費に参入はできません。
借入れたお金の元金は借りたお金をそのまま返済しているものであり、事業の売上に直接関係しないので経費計上もできないのです。

利息は経費計上できる

住宅ローンの返済は、元金部分は経費計上できません。しかし、発生する利息部分に関しては経費算入できる場合があります。
住宅兼オフィスとして事業用に使っている場合であれば利息を経費計上可能です。
建物スペースの中で事業に使用する割合を計算して、それに対応する割合の利息を計上するのが一般的です。

このように、事業に使用している部分を算出して経費計上することを家事按分と呼びます。家事按分は、事業の支出とプライベートを区別して経費計上する時に使われます。
家事按分する時には、何を根拠に割合を算出しているのか明確に答えられるようにしてください。

住居関連で利息以外に経費計上できるもの


住居に関わる費用は住宅ローンだけではありません。ここでは住居関連に利息以外の経費計上可能なものをまとめました。

減価償却費

見えないところで発生している費用として減価償却費があります。家屋や自家用車、機械などは毎年少しずつ価値が下がっていきます。
この価値の減少を経費として計上するのが減価償却です。

減価償却は、固定資産を購入した時に一度に経費計上するのではなく、耐用年数で分割して経費計上することをいいます。
国税庁のホームページでは、法定耐用年数を確認できるので調べてみてください。

例えば、木造の事務所用建物は24年が耐用年数です。パソコンであれば耐用年数4年です。
ほかにも車やエアコン、ソフトウェアといった資産が減価償却資産となります。減価償却には定額法と定率法の2種類があり、個人事業主は原則として定額法で計上します。

光熱費

自宅で事業をしている場合、光熱費も事業に必要なお金と考えることが可能です。一般的には、1日の電気の使用時間と仕事時間から家事按分の比率を割り出します。

例えば1日12時間電気を使用していて、6時間程度を仕事に使っているのであれば、半分を経費計上する形です。
また、業務に関係ない同居人がいる場合には、仕事のみに使うコンセントを決めてコンセントの数と割合から計算する方法もあります。

ガス代や水道代は、その事業の形態によって経費計上が認められるかどうか判断します。
自宅を飲食店や料理教室として使用している場合であれば、ガス代や水道代も問題なく経費計上可能です。
暖房器具としてガスを使用している場合には、冬季のガス代から一定割合を経費計上します。

通信費

インターネットの回線使用料や携帯電話料金といった通信費も経費計上できます。通信費は、仕事に使っている時間で家事按分して経費計上するのが一般的です。
郵送費や切手代、はがき代は、事業に使用したものがわかりやすいため経費計上も簡単です。スマートフォンや携帯電話料金も使用時間で家事按分できます。
業務に使用する時間が多い場合には、事業用として端末を購入することも検討してください。

固定資産税

固定資産税は、土地や建物といった固定資産に対する税金です。固定資産税は、所在地の市町村に治める市町村税で毎年4~6月に納税通知書が送付されます。
個人事業主が固定資産を事業に使用していれば、固定資産税も経費計上が認められています

固定資産税も事業に使用している部分だけを経費計上可能です。
自宅の中で事業に使っている範囲とプライベートで使っている範囲の底面積から算出するか、使用している日数や時間から家事按分してください。

固定資産税の計上は、固定資産税を納めた日に経費計上する方法と金額が確定した日に経費計上する方法があります。固定資産税の支払いは租税公課での仕訳です。
納税した日に計上する方法で分割払いする時には、納付した日付ごとに仕訳をします。
金額が確定した日に経費計上する場合には、確定した時に未払金で処理してから納付時に振り替える処理が必要です。

火災保険料

火災保険をかけている場合は、その火災保険料も事業に関わる部分を経費として計上できます。
保険は、保険契約期間があるので、もしも保険契約期間が事業年度をまたぐ時には、それぞれの事業年度に分けて経費として計上しなければいけません。
3年契約の保険料を一括で支払った時にも、その事業年度に該当する部分だけを保険料として経費計上して、翌年度分、翌々年度分は前払費用、長期前払費用として処理します。

積立型の火災保険を契約した場合には、貯蓄部分があれば保険積立金として処理することになります。
火災保険は、その内容によっても処理方法が違うのでよく確認しておくようにしてください。

個人事業主が経費計上できないものと注意点


個人事業主が経費計上できるのは、事業に直接関係する費用です。つまり、業務に間接的にかかわる費用、業務外の費用は経費計上できません。
ここからは、経費計上できないものの中でも間違いやすいものを紹介します。

地震保険料

地震保険料や生命保険料は、個人事業主自身の保険であり、事業に直接かかわるわけではないので必要経費として計上はできません

ただし、生命保険料と地震保険料は、事業主が確定申告する時に生命保険料控除と地震保険料控除として、一定額を所得から控除できます。
これらの控除を受けるには、各保険会社から交付される保険料控除証明書か、QRコード付控除証明書を申告書に添付するか提出の際に提示します。
保険会社から交付を受けた時は紛失することがないように保管しておいてください。

同一生計の親族に支払う家賃

同一生計の配偶者や親族の物件を利用するケースもあるかもしれません。同一生計の配偶者その他親族に支払った家賃は、経費計上が認められません。
これは同一生計内でお金を動かしているだけで、経費の支払いとみなされないからです。

また、配偶者やその他親族を雇用して給料を支払った場合も白色申告の時は経費計上が認められません。青色申告で青色事業専従者給与の特例を使えば給与を経費計上できます。
青色申告専従者給与の特例を受けるには、「青色事業専従者給与に関する届出書」を納税地の所轄税務署長に提出します。
提出期限は、原則経費算入しようとする年の3月15日までです。
その年の1月16日以後に新しく事業を開始した場合、新たに専従者がいることとなった場合であれば、その事実の発生日から日から2カ月以内までとなります。

敷金

賃貸住宅に入居する時には、一般的に家賃の1~2カ月分を敷金として支払います。この敷金については経費として計上はできません
敷金は、退去する時に返却されるお金であり、お金を預けているだけなので費用ではなく資産です。帳簿上も敷金や差入保証金といった勘定科目で処理をします。

敷金が20万円以上の場合には、資産として処理が必要で、借入期間5年で減価償却が発生します。
退去する時に修繕が必要な場合は、敷金から差し引かれて全額返還されないケースもあり、この場合には差し引かれた分を経費計上可能です。

個人事業主が支払う税金

個人事業主が支払う個人の所得税は住民税は必要経費にはなりません。これらの税金は事業のための費用ではなく、あくまで個人事業主本人が支払わなければならい費用です。
事業で使用した印紙税を経費として計上する場合には租税公課の勘定科目を使用します。

一方で、事業用の口座から個人事業主の税金を支払った時には、「事業主貸」で処理します。これは、事業用の資金をプライベートの生活費として使った時に使われる勘定科目です。

自宅兼事務所は住宅ローン控除を活用できる


住宅ローンを使って自宅兼事務所を購入している場合、住宅ローン控除を活用できます。住宅ローン控除について知っておいてください。

住宅ローン控除とは

住宅ローン控除とは、一定の要件を満たした住宅ローンがある場合に最長で13年間年末時点での住宅ローン残高の一定割合を控除できる制度です。

一般的に住宅ローン控除や住宅ローン減税と呼ばれますが、正式には住宅借入金等特別控除をいいます。
住宅ローンを使って所得税だけで控除をしきれない場合には、翌年の住民税からも控除されます。
控除によって税が還付されるケースもありますが、納税した額以上の還付はありません。
住宅ローン控除は適宜変更があるため、これから住宅購入、住宅ローンの利用を検討している場合には最新の情報を確認してください。

住宅ローン控除を受けるための要件

住宅ローンは、要件を満たさなければ適用されません。どういった要件を満たさなければいけないのか要件を確認してください。

居住期間

住宅ローンの要件を満たすには、購入してから6カ月以内に入居して、かつその年の12月31日まで住み続けていなければいけません
例えば5月1日に購入して9月から入居していたとしても、12月30日に退去した場合には住宅ローン控除は受けられません。

住宅床面積

住宅ローン控除を受けるにためには、購入した住居の底面積が50㎡以上あって、その2分の1以上を居住用にしなければいけません

例えば、店舗兼住居に場合に店舗部分の割合を50%以上に設定すると住宅ローン控除は適用されません。このように底面積の割合は節税の観点から重要な意味を持ちます。
事業用のスペースを増やすと経費に算入できる費用は増えるものの、居住用の底面積が減少して住宅ローン控除の控除額は減少します。
居住用の底面積を増やせば住宅ローン控除の額は増加するものの算入できる経費が減少する逆相関の関係です。
居住用の底面積を90%以上とすると全額控除できるので、居住用底面積を90%として10%以下の事業用スペースで発生した費用を経費算入するとメリットを最大限享受できます。

所得額

住宅ローン控除を受けるには、1年分の合計所得金額が2,000万円以下であることも要件です。
会社員としての給与所得が別にあるような場合も、合計で2,000万円を超えると適用外になります。

ローン期間

住宅ローン控除の適用要件のひとつに、ローンの返済期間が10年以上であることも挙げられます。注意しなければならないのが住宅ローンの繰り上げ返済です。
繰上げ返済することで住宅ローンの返済期間が10年未満になってしまうと住宅ローン控除が適用されません。

繰上げ返済をする時には控除を受けられる期間が終了する返済11年目からおこなようにおすすめします。

中古物件の要件

中古住宅購入時は、新築の適用条件に加えて以下の要件のいずれかを満たさなければいけません。

  • 家屋が建築された日からその取得の日までの期間が20年(マンションなど耐火建築物の建物は25年)以下である
  • 耐震基準に適合している
  • 取得日までに耐震改修を行うことについて申請をして居住の用に供した日までにその耐震改修により家屋が耐震基準に適合することにつき証明がされたものであること

住宅ローンの適用条件は変更されることがあるので、最新のものをチェックしておくと良いです。不安があれば専門家に相談することも検討してください。

まとめ・経費計上や住宅ローン控除を活用して節税につなげよう

個人事業主が経費を計上するには、事業に必要な支出であることと、事業とプライベートを明確に分けられることが求められます。
住宅ローンは、個人の所得税、住民税で控除を受けられるほか、事業に使用している部分に関する支出は経費計上が可能です。
実際にどれだけの節税になるかは個々の事情によって異なります。実際にシミュレーションして住宅ローン控除も経費を上手に活用してください。

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(編集:創業手帳編集部)

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