事業年度は変更できる?変更したほうがいいケースと手続き・注意点を解説
事業年度の最適化は経営者の重要な役割

事業年度の設定は経営効率や資金繰りに直結する重要な要素です。そのため、決算期をこのまま続けて良いのか不安に感じる経営者も少なくありません。
事業年度は法人であれば原則自由に変更でき、繁忙期回避や納税時期調整など、状況次第では有効な経営判断となります。
本記事では、事業年度を変更したほうが良い具体的なケースやメリット・デメリット、必要な手続きを整理しました。
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この記事の目次
事業年度(決算期)とは?

事業年度は、会社を設立する時に決めなければいけません。事業年度によって決算書の対象となる期間が変わります。ここでは、事業年度の基本的な知識をまとめました。
事業年度の基本定義
事業年度とは、法人が収益や費用を集計し決算書を作成するために区切る一定期間のことをいいます。
事業年度は、全事業年度の末日の翌日から1年以内であり、半年や9か月といった1年以内に設定する人もいます。
事業年度の開始日と終了日は定款に記載され、原則として定款に基づいて毎期同一の期間で運用される仕組みです。
事業年度は法人税や法人住民税など各種税金の計算・申告の基準期間となり、経営管理や税務実務の土台となる重要な区分です。
個人事業主・法人での違い
事業年度は、法人であれば任意に決められますが、個人事業主はそうではありません。個人事業主の事業年度は税法上1月1日から12月31日と固定されており、法人のように任意で変更することはできないのです。
法人の事業年度は自由に定めることができる上、経営状況や業種特性に応じて変更することも制度上認められています。
本記事では、定款変更や税務届出が必要となる法人の事業年度変更を主な対象として解説しました。
事業年度を変更したほうがいい主なケース

法人設立時にあまり事業年度について考えずに設定しているケースもあります。ここではどのような場合に事業年度を変更したほうがいいのか、主なケースをまとめました。
繁忙期と決算期が重なっている
事業年度末を避けたほうが良いケースに、売上げが大きくなる繁忙期があります。
事業年度末が繁忙期だと、事業年度の終わりに大きな売上げが発生するため、決算予想が難しくなってしまいます。
さらに、繁忙期は通常よりも業務負担が増える時期です。決算業務の負担が増えれば業務過多になってしまうリスクがあります。
一方で、事業年度の前半に売上げが大きくなれば、決算予想を立てやすく落ち着いて決算の準備を進められます。
事業年度を決めるためには、業務負担や時期調整のしやすさも考えて設定するようにしてください。
納税時期を調整したい
決算は納税にも関係します。法人税や消費税の納付期限は、事業年度終了日の翌日から2カ月以内です。つまり、決算月が3月末なら納税期限は5月末です。
法人は通常、中間申告による納付や予定納税で複数回に分けて税金を納付します。これは納税の負担を分散するためです。
しかし、急に売上げが大きくなった場合、納税の余裕がなくて資金繰りが苦しくなってしまうことがあります。
想定外に納税額が大きくなった時でも納付できるようにするには、資金繰りに余裕がある時期に税金を納付できるよう事業年度を設定してください。
設立初年度で決算期を調整したい
事業年度を初めて設定する時には、設立日から遠くなるように設定することをおすすめします。
事業を始めたばかりの時期は様々な手続きが発生し、利益が安定しにくいタイミングです。
設立日と事業年度末が近すぎると、事業を始めたばかりのタイミングで決算となり、忙しい中で決算手続きをしなければいけません。
会社が軌道に乗るまでは忙しいので決算手続きと同時進行するのは大変です。
資金繰りに余裕をもたせたい
大量に仕入れがある時や売上げが少なくなる時期は、資金繰りの余裕が少なくなります。
これらの時期に決算をすれば、納税資金が足りなくなって支障をきたすリスクがあります。
税金は決算日から2カ月以内に納付を行うので、その時期には通常よりも潤沢に資金が必要です。
年間を通じて資金繰りの様子を確認し、余裕がある時期に納税できるようにしておいてください。
消費税の免除期間を延ばしたい
会社を設立したばかりで条件を満たした場合には、一定期間消費税が免除されます。
消費税を課税するかどうかの基準期間は法人の場合には前々事業年度であり、設立したばかりの法人だと基準期間が存在しないからです。
この時の課税のタイミングは、事業年度単位で考慮されます。事業年度で2期といっても必ずしも2年ではありません。
事業年度を1年未満に設定するかによって、消費税が課税されるまでの猶予期間が変わります。
法人を設立してから初めての事業年度終了日が近いと消費税の免除期間は短くなってしまいます。
事業年度を設定する時には、どれだけの期間消費税の免税が受けられるのかも考慮するようにしてください。
親会社・グループ会社と決算期を合わせたい
親会社やグループ会社がある場合には、連結決算で決算期のズレも気にしなければいけません。
グループ間で決算期を合わせることは一般的であり、実務上多くの法人が採用しています。
親会社やグループ会社と決算期を合わせることで、連結決算やグループ管理の事務負担を大幅に軽減可能です。
さらに決算期を統一すれば月次・年次の業績比較や予算管理が容易になり、経営判断のスピード向上につながります。
海外に拠点がある場合など決算期を合わせにくいケースもありますが、仮決算の実施などの方法が使われています。
事業年度を変更するメリット・デメリット

事業年度を変更することは可能ですが、定められた手順を踏むため手間や時間がかかります。
事業年度を変更するメリット・デメリットを紹介するので、比較して慎重に判断してください。
事業年度変更の主なメリット
事業年度を変更するメリットのひとつが節税です。期末に大きな利益が見込まれる場合には、決算日を調整して利益を翌期に回せば、課税のタイミングをコントロールしやすくなります。
また、売上高の調整によって消費税の免税期間を延長できるケースもあります。
法人税や消費税の納税期限は、原則として決算期末から2カ月以内です。
法人税は負担が大きくなりやすく資金繰りにも影響します。決算期と資金に余裕がある時期に調整すれば資金繰りへの影響を軽減可能です。
事業年度の変更は、役員報酬を変更する時にも有利に働きます。役員報酬の変更は決算期末日から3カ月以内に株主総会で決議が必要です。
急いで役員報酬を変更したい時には事業年度を変更して株主総会の時期を早めることが可能です。
事業年度が替われば決算業務の時期も変わります。閑散期に決算業務ができるように調整して、決算業務の負担を軽減する手法もあります。
事業年度変更の主なデメリット
事業年度の変更にはメリットがあるものの、手続きが必要で手間がかかります。
加えて事業年度は1年を超えられないので、決算期を変更する時には通常より短い期間で決算業務や納税対応が発生します。
タイミングによって短期間で決算や納税などが発生するので、業務負担が大きくなる点には留意してください。
さらに、短い事業年度が生まれると税金の調整も発生します。減価償却資産や中小法人などの軽減税率は事業年度の月数に応じた額に調整しなければいけません。
短い事業年度が発生すれば、今までの財務データとの比較が難しくなるので経営判断にも影響します。メリットだけでなくデメリットも把握して検討するようにおすすめします。
事業年度を変更する手続きの流れ

事業年度を変更するには、いくつかの手順を踏まなければいけません。計画的に進めるために手続きの流れを把握しておきましょう。
定款変更の要否
事業年度は定款に記載されることが一般的なため、変更する場合は株主総会の特別決議による定款変更が必要です。
株主総会が開催される時期でない場合にも臨時株式総会を開かなければいけません。
定款変更は会社法第466条に基づき行われ、議事録の作成と保管が法令上求められています。
議事録作成期限は定められていないものの、変更登記には議事録の添付が必要であり、変更登記は株主総会の決議から2週間以内が期限です。
定款変更後は、変更内容を基に税務・行政手続きを進めなければいけません。
税務署・都道府県・市区町村への届け出
事業年度が変更になれば決算期も変更になるため、税務署や都道府県税事務所、市区町村に「異動届出書」を提出する必要があります。
提出期限は変更後速やかに提出するように定められています。 法人住民税や事業税を管轄する都道府県・市区町村にも同様に異動届出書の提出を行ってください。
事業年度変更の決議をとった株主総会議事録の添付が必要になるので、コピーしておきましょう。
手続きに不安がある場合には、税理士などの専門家に依頼することも検討してください。
提出書類の概要
事業年度の変更に必要となる主な提出書類は異動届出書であり、事業年度変更の内容や変更日を正確に記載しなければいけません。
定款変更を行った場合は、変更後の定款や株主総会議事録の写しの提出を求められることもあるでしょう。
提出書類の様式は国税庁や自治体の公式サイトで公開されており、最新版の使用が求められています。
事業年度の変更を思い立ったときには提出書類を早めに確認しておくと後の手順も円滑に進めやすくなります。
事業年度変更時の注意点

事業年度の変更は、会社の大きなルール変更であり現場での混乱も予想されます。ここでは注意点をまとめているので、あらかじめ対策しておいてください。
変更できる回数・タイミングに関する注意点
事業年度の変更回数に法的な上限はありません。しかし、毎期頻繁に変更すると税務署から合理性を確認される可能性があります。
事業年度の変更は事業計画や資金繰りを踏まえ、慎重に判断するようにしてください。
事業年度変更は決算確定前に行わなければいけません。すでに確定した決算期を遡って変更することはできないので注意してください。
例えば、3月決算の会社が事業年度を2月にする場合には、2月中に手続きを完了しなければいけません。
事業年度を変更するまでには、株主総会の開催から議事録の作成、届け出の手続きも必要です。日にちに余裕をもって変更できるようにスケジュールを組み立ててください。
決算処理や納税対応への影響
事業年度が変更になれば、短期間で決算や納税の対応に追われる可能性があります。12カ月未満の会計期間になるので、イレギュラーな対応も発生するかもしれません。
減価償却費の計算や消費税の基準期間など12カ月の会計期間を前提にした制度を利用している時には事務手続きは慎重に実施してください。
計算が煩雑になるのでミスが発生しないように早めに準備しておくようにおすすめします。
取引先や金融機関への連絡に関する注意点
事業年度を変更した時には、取引先や金融機関といった社外を含めた関係者への連絡が必要です。
まずは社内の関連部門に伝えて、新しい事業年度に合わせるための業務スケジュール変更や目標設定の組み直しが求められます。
また、請求書や支払いのタイミング、与信管理で混乱を防ぐために取引先や金融機関への連絡も必須です。
事業の内容によっては、許認可を受けている行政機関に連絡が必要になるかもしれません。
連絡漏れが発生しないように社内外への通達もスケジュールに組み込んで管理するようにおすすめします。
税理士へ事前に相談すべき理由
税理士は、税金のプロでありそれぞれの業種や規模に応じた適切な事業年度をアドバイスしてくれます。
いつ設立して初めての決算をどこに設定すると良いかは、経験豊富な専門家の意見が参考になります。
事業の繁忙期や季節変更、キャッシュフローに応じた事業年度設定は税理士に事前に相談しておくのがおすすめです。
すでに法人を設立した後であっても、最適な事業年度に変更したいと考える時には、プロの意見を参考にしてみてください。
まとめ|事業年度変更は「経営判断のひとつ」
事業年度の変更は決して珍しいことではありません。制度上認められた正当な選択肢であり、繁忙期や資金繰りなど経営状況に応じて検討すべき議題のひとつです。
一方で、事業年度を変更すれば事務負担や税務への影響も生じてしまいます。すべての法人にとって変更が最適解になるとは限らない点には注意しましょう。
自社の業務実態や財務状況を踏まえて、変更のメリットとデメリットを比較した上で慎重に判断するようにしてください。
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(編集:創業手帳編集部)






