飲食店に起こりうるリスクとは?対策法や保険について徹底解説
飲食店にリスクはつきもの。どのような対策法があるかを解説します。
飲食店経営では様々なリスクが存在します。経営者はそのリスクを事前に把握し、対策を練っておく必要があります。
食中毒や火災など、飲食店によくあるリスクに対応できるよう事前に準備を行ってください。
今回は、飲食店に起こりうるリスクや対策法について解説します。
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飲食店で考えられるリスク
飲食店では、どのような事故のリスクがあるのか説明します。
食中毒など
まず、食中毒などのリスクが挙げられます。衛生状態や食材の鮮度の状態により、細菌が発生した食品をお客様が口に入れてしまうことにより発生します。
食材そのものだけではなく、調理中に異物が混入するケースもあり、いずれもお客様の身体に影響を及ぼす事故です。
飲食店の責任になるため、お客様へ治療費などの賠償金を支払うことになります。
火災事故
調理中に火を使う飲食店では、火災もリスクのひとつです。コンロなどからの発火はもちろん、ガス設備や電気設備からの発火も充分考えられます。
ほかにも、ホールの照明やたばこ、空調など、調理場以外でも火災のリスクがあります。
火災事故が発生した場合、店舗の各種設備や建物にも損害が及ぶ可能性が高く、修復や補償、設備の買い替えなどの費用が必要です。
預かり品やリース機器などのトラブル
お客様から預かった荷物や貴重品を何らかの原因で破損したり、紛失したりするトラブルも起こり得ます。
飲食店の過失だけではなく、盗難被害に遭うこともあるかもしれません。どのような理由があるにせよ、お客様へ補償しなくてはなりません。
なお、各種設備にリース品を使用している場合にも、過失による破損や故障はリース会社への補償が必要です。
施設内での過失
店舗施設内で過失があり、何らかの事故が起きてしまうこともあります。例えば、床が濡れていてお客様が転倒するなどは、よくあるケースです。
ほかにも、熱い料理や飲み物を運ぶ際にお客様にかけてしまったり、お客様とぶつかり怪我や物損を負わせてしまったりするなど、従業員の過失による様々な事案があります。
これらの場合にもお客様への補償は必須であり、怪我の治療費だけではなく物損の場合の補償も考えなければなりません。
従業員の怪我など
お客様に損害を負わせるだけではなく、従業員にも怪我などのリスクがあります。特に、調理中の包丁による切り傷や調理器具、食品などによるやけどは頻発する事故です。
さらに、従業員に不当な残業をさせるなど、無理なシフト組みによる長時間労働を強いた結果、従業員の心身に影響が出る場合もあります。
この場合には、公的な労災保険に加えて賠償金を支払うケースもありえます。
建物・設備の損壊や不備
飲食店が入居している建物や設備に、予期せぬ損壊や不備が発生してしまうことも考慮に入れましょう。
看板が倒れたり、地震や台風などの天災で設備が破損したりするなど、多くのリスクがあります。
建物や設備は所有者の財産です。そのため、賃貸物件であれば貸主への補償が必要となり、自身が購入したものであれば修繕費がかかります。
売上げの減少
飲食店は他店との競合のみならず、業界内の動向や社会経済状況などにより、営業を続けることが困難なリスクがつきまとっています。
その結果、売上げが減少して経営が立ち行かなくなる飲食店は多くあるため、経営者は競合との差別化や市場トレンドを常に押さえ、対応することが求められます。
一方、社会的な経済状況への対応は難しいことがあるかもしれません。いずれにしても、売上げ減少のリスクは起こりやすいものと考えてください。
そのほかのリスク
ほかにも、飲食店経営で考えられるリスクは多くあります。
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- デリバリーなどに使用する社用車やバイクの事故
- 売上管理や顧客管理システムの不具合、サイバー攻撃
- お客様からの過剰なクレーム
- 従業員の不祥事
など
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リスクの分類と対応策
前述したリスクを回避したり対応したりするためには、リスクを分類することが必要です。リスクの分類方法を大別すると、以下の2つが挙げられます
-
- 発生頻度・損失の大きさ
- リスクをジャンル
それぞれの概要と対策を見ていきます。
発生頻度と損失の大きさに応じて分類する
想定できるリスクについて、どれくらい発生しやすいか、損失の大小はどれくらいかを検証し、それぞれに分類を行います。
これにより、リスクの大きさや緊急度がわかりやすくなります。
1.頻繁に発生し損失が大きいリスク
損失が大きく頻繁に発生しやすいリスクとして、以下のようなものがあります。
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- 食中毒や異物混入
- 業界の市場動向の変化
- 店舗周辺の環境状態
など
これらは、お客様への補償や店舗の経営困難を引き起こします。その上、いつ起こってもおかしくありません。
これらのリスクへの対策として、発生を防ぐことが大切です。店舗の負担が大きいため、確実に予防してください。
特に食中毒や異物混入については、衛生管理および調理器具などの保全を徹底的に行うことが基本です。
業界の市場の変化に対して常にアンテナを張っておき、いつでも対応できるようにしておくことも重要です。
2.頻繁に発生し損失が小さいリスク
損失は小さいものの、起こりやすいリスクとして、以下のようなことが想定されます。
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- 建物や設備の故障
- 人手不足
- 過度なクレーム対応
など
これらはいつでも起こりえますが、多大な損失にはなりにくいものです。そのため、なるべく発生しないようにリスクを最小限に抑える策を講じます。
建物や設備は、こまめに点検・補修をして万全な状態に整えます。また、人手不足やクレーム対応に関しては、従業員の能力を上げるのもひとつの方法です。
3.まれにしか発生せず損失が大きいリスク
飲食店経営において頻発するものではありませんが、一度起こると大きな損失を負うリスクもあります。以下は一例です。
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- 火災や自然災害による各種被害
- 施設内での事故
- 自動車やバイクの事故で、人や物に損害を与えるもの
- 従業員の仕事中における怪我や病気
- サイバー攻撃や顧客情報の流出
など
まれにしか発生しないため備えを後回しにしがちですが、何らかの対応策を練らなければ、起きた時に大きなダメージを受けます。
そのため、負担を補填する保険に加入しするなどの対策を講じてください。
詳しくは後述しますが、大きな損失は保険金で賄えるように備えておくことが重要です。
4.まれにしか発生せず損失が小さいリスク
発生しにくく損失が比較的小さいリスクは、以下のようなものです。
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- 預かり品の損壊、紛失、盗難
- 従業員が起こした不祥事
- 自動車やバイクの事故で、社用車にのみ損害が発生したもの
など
これらの起こりにくく損失も小さいリスクについては、万が一のために支払う資金を余分に備えておくことがおすすめです。
もし、余分な資金を用意できない場合は、後述の保険に加入して補填できるようにしておきます。
リスクをジャンルごとに分ける
想定できるリスクをジャンルごとに分けて、対策を練る方法もあります。それぞれに対してより具体的な対策を講じることが重要です。
衛生管理について
衛生管理は、飲食店においては決して外せないものです。前述の食中毒や異物混入などのリスクを避け、衛生状態の保持を徹底的に行う必要があります。
そのために、食品に関する各種法律(食品衛生法や食品安全基本法など)について熟知し、それらをガイドラインにすることも方法のひとつです。
具体的な衛生管理の対策としては、以下のとおりです。
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- こまめな手洗い
- 調理器具や各種食器の徹底洗浄、消毒、保全
- 食材の適切な管理
- 衛生管理のマニュアル策定
- HACCP(ハサップ・衛生に関するリスクを低減させるための管理方法)の徹底
など
火災などの災害について
火災をはじめとした災害など、飲食店で起こりうるリスクには多くのものがあります。これらには、危機管理体制を整えて臨むことが求められます。
従業員にも普段から対応を徹底させ、万が一の時に適切な行動ができるように備えてきましょう。
飲食店で起こりやすい災害については、以下のような対策を講じます。
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- 災害時の対応、避難方法のマニュアル化
- 定期的な災害訓練
- 火災保険への加入
など
従業員不足について
ランチタイムやディナータイムなどの混雑する時間帯に人手が少ないと、サービスが雑になりクレームにつながる恐れがあります。
さらに、人手不足による事故や怪我なども予見できます。
その結果、お客様や既存の従業員にも負担をかけることになるため、優秀な従業員の積極的な採用や教育は急務です。
従業員の人員が足りない場合、以下の対策を講じましょう。
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- 求人広告の内容の見直し
- 採用条件の拡充
- 適切な面接
- シフト組みの工夫
- 職場環境の改善や福利厚生の充実
など
資金繰りについて
開業したての飲食店では、売上げが伸びずに資金繰りに困る時期があるかもしれません。そのため、経営が立ち行かなくなり廃業するケースは多いです。
資金に余裕を持てるようにキャッシュフローを健全にするには、経営者自身で利益を上げる工夫をしなければなりません。
資金繰りについては、特に以下の工夫が必要です。
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- 仕入れや光熱費、人件費など各種経費の削減
- 広告やメニューの刷新
- 業界の市場動向の把握
- 販売方法の拡充(テイクアウト、デリバリーなど)
- 余剰資金の確保
など
飲食店のリスクに備えることができる保険
飲食店経営においては、あらゆるリスクに備えて保険に加入することをおすすめします。
保険の種類
PL保険(生産物賠償責任保険)
PL保険とは、製造物責任法(PL法)に基づき、飲食店で作った料理などの製造物に対して補償が発生した時に、保険金を受け取れるものです。
食中毒や異物混入により多額の賠償金が発生する場合や、弁護士報酬が必要な場合に補填してくれます。
火災保険
飲食店のリスクとして起こりやすい火災に備えるために、火災保険にも加入しておくのが得策です。
火災保険は、商品によっては火災のみならず様々な自然災害にも対応したものがあり、建物や設備の損壊などが生じた時に、損害額に応じた保険金を受け取れます。
施設賠償責任保険
施設の内装や設備などで損失が起きた場合には、施設賠償責任保険が有効です。
店舗内での過失によるお客様の怪我や、持ち物の損壊などによる補償はこの保険で賄え、弁護士報酬や裁判費用も対象内です。
テナント保険
テナント保険は、ショッピングモールやオフィスビルなどのテナント物件に入居している場合に適用される保険です。
テナント物件に対する補償内容としては、主に建物や設備の損壊に対するもので、商品によっては貸主への補償に充てられるオプションをつけることもできます。
労働保険
労働保険は、公的な労災保険とは別に、民間の保険会社が提供する保険商品で、従業員が業務中に負った怪我や病気の補償が対象となります。
労働保険と公的保険を合わせて従業員に支払うことで、充分な補償になることが考えられます。
店舗休業補償保険
何らかの事故や災害のような理由で、店舗の休業を余儀なくされた場合には、店舗休業補償保険が強い味方です。
ただし、店舗側の過失によるものや経営者自身の事情で休業する場合は、補償の対象外になります。
店舗総合保険
店舗総合保険とは、上記にあげた保険商品を総合的にフォローするものです。例えば、災害や各種事故から、店舗休業まで幅広くサポートする保険商品もあります。
オプションが充実しているため、店舗総合保険に加入しておけば幅広いリスクに備えられます。
その他
店舗用の自動車やバイクで事故を起こしてしまった場合に備え、自動車保険やバイク保険には入っておくことをおすすめします。
また、サイバー攻撃を受けた場合や個人情報が漏洩した場合の損害を補償してくれるサイバー保険なども存在します。
保険に加入するメリット
保険に加入することのメリットは、様々なリスクにかかる損失を補填でき、経営者の負担を減らせることです。
複数の保険に加入すれば、お客様や従業員、建物や設備などに起こり得るあらゆるリスクに備えられ、経済的な圧迫を避け資金繰りに余裕を持たせられます。
保険に加入するデメリット
保険に加入することのデメリットとして、保険会社に支払う保険料を負担しなければならない点があります。
保険料を支払うための余剰分を残しておかなければ、保険料が経営を苦しめることにもなるため、保険選びは慎重に行いましょう。
まとめ
飲食店のリスクは多く存在するため、いつ何が起きてもおかしくないと考えておいてください。
発生する頻度と損失の大きさ、ジャンルを分類し、それぞれに対策を考えておくことが重要です。
対策として、店舗側の管理体制を徹底することに加え、保険への加入が有効です。リスクと保険料にかかる負担を考慮し、最適な保険に加入することをおすすめします。
自身の飲食店に起こりうるリスクを考慮し、賢いリスク対策を講じてください。
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(編集:創業手帳編集部)