一人社長におすすめの節税対策8選!注意点も徹底解説

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一人社長ができる節税対策とは?


法人経営を営む社長の中には、従業員を雇わず一人で経営を行っているケースがあります。
一人で事業を行うのであれば個人事業主のままで良いのではと思われますが、一人社長で法人経営を行うことには節税メリットがあります。
そのため、一定の売上げを出している人は個人事業主よりも法人経営の方が良いと言われているのです。

一人社長になることでできる節税対策は多岐にわたります。そこで今回は、一人社長におすすめの節税対策と節税する際の注意点についてご紹介します。
一人社長の節税対策について知りたい方は、ぜひ参考にしてください。

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個人事業主より一人社長の方が節税できる理由


個人事業主と比べて一人社長の方が節税できる主な理由は、課税する税金の仕組みが異なるためです。
法人の場合、事業で得た利益は会社の資産となるので、法人税がかかります。
一方、個人事業主は利益をすべて個人の収入とすることができ、そのうちの所得に対して所得税を納めなければなりません。

法人税の税率は、資本金1億円以下で所得800万円以下の法人が15%、所得800万円以上の法人は23.2%です。
資本金1億円以下の普通法人であれば、事業で得た所得が800万円を超えても税率が変わることはありません。
しかし、個人の所得にかかる所得税は、累進課税によって所得の増加に合わせて税率が増える仕組みになっています。
2015年から2024年10月現在の税率は、5%~最大45%です。
所得が330万円未満であれば、税率は10%です。しかし、330~695万円未満は20%、695~900万円以下は23%に増加します。
この仕組みから事業によって700~1,000万円程稼いでいる個人事業主は、法人化した方が節税になると言われているのです。

また、法人化すれば収入が役員報酬となり、個人事業主の時よりも年間の所得額を抑えられるので、個人が課税する所得税も軽減されます。
ただし、法人化すると設立時に費用がかかったり、赤字でも税金の支払いが必要になったりなどデメリットとなる部分もあります。
そのため、節税だけを目的に一人社長になることは避け、本当に法人化が必要か慎重に検討してください。

一人社長におすすめの節税対策8選


ここからは、一人社長におすすめの節税対策を8つご紹介します。どのような方法が節税につながるのかチェックしてみてください。

各種所得控除を忘れず適用する

社長個人の所得税を節税するのであれば、各種所得控除を適用することが大切です。所得控除には、以下の種類があります。

  • 基礎控除
  • 給与控除
  • 扶養控除
  • 配偶者控除
  • 配偶者特別控除
  • ひとり親控除
  • 寡婦控除
  • 社会保険料控除
  • 生命保険料控除
  • 地震保険料控除
  • 障害者控除
  • 医療控除
  • 寄附金控除
  • 小規模企業共済等掛金控除
  • 雑損控除

控除の適用には条件がありますが、当てはまる種類の控除を適用すれば所得税を減らすことができます。
そのため、年末調整や確定申告の際に忘れずに適用させなければいけません。

一人社長になると給与が役員報酬となり、その収入は給与所得と扱われます。そのため、給与控除が適用される点も個人事業主との違いです。
青色申告特別控除制度を適用すれば、最大55万円または最大65万円に控除が適用されます。
しかし、給与所得控除は収入額に応じて最大195万円の控除を適用することが可能です。

退職金を設定して役員報酬を少なくする

社長の収入となる役員報酬が高額になると、個人にかかる所得税の負担も大きくなります。そのため、役員報酬を少なくすることは所得税の節税対策に効果的です。

役員報酬を少なくする手段としては、退職金を設定するのがおすすめです。個人事業主の場合、事業所得のすべてが課税対象となるので、給料や退職金の概念がありません。
しかし、法人化することで退職金を設定でき、その分、毎月支払われる役員報酬が少なくなるように調整できます。
さらに退職金は経費にできるので、法人所得が減ることで法人税の節税にもつながります。

損金算入できる方法で役員報酬を支払う

役員報酬を損金算入すれば、法人所得を圧縮して法人税を節税できます。しかし、損金にするためには、定期同額給与または事前確定届出給与で支給しなければなりません。

定期同額給与は、毎月同額の給与を支給する方法です。事業年度ごとに月額の役員報酬を決めて、1年間その金額で支払い続けていきます。
定期同額給与の金額は、事業年度開始から3ヶ月以内に改正するのが原則です。

事前確定届出給与は、事前に税務署に届出書を提出し、その内容どおりに支給する方法です。主に支給したボーナスを損金算入したい場合に適しています。
届出書には、いつ(年日)・いくら支給するのか記載されます。
事前確定届出給与を損金算入するためには、届出の内容どおりに役員報酬の支給を実行しなければならない点に注意してください。

通勤手当・出張日当を支給して経費計上する

通勤手当や出張日当は経費にできるため、計上することで法人所得を圧縮できます。
そのため、事務所への通勤や出張が発生する際は、通勤手当や出張日当を支給することで法人税の節税が可能です。

個人事業主も出張などで発生する旅費交通費は、実費を経費計上できます。
しかし、法人化すれば出張旅費規程を定めることができ、設定した金額で経費計上が可能です。
例えば、出張時の宿泊費を4万円と設定し、実際には3万円しかかからなかった場合でも4万円を経費にできます。

また、通勤手当と出張日当は所得税の課税対象とならないため、所得税の負担を軽減しながら収入を増加させることもメリットです。

自家用車を社用車として活用する

一人社長は自家用車を社用車に転用することも節税になります。
もともと所有している車を社用車にすると新しい社用車の購入にお金をかけずに、減価償却費・ガソリン代・自動車費用・車検費用などを経費にすることが可能です。
これによって、課税対象の法人所得を減らせます。

ただし、経費に計上できるのはプライベートで使用した分を差し引いた部分です。
減価償却費の場合、取得金額から自家用で使っていた分の減価償却費を差し引いた金額で経費を処理しなければなりません。
さらに、プライベートで使う際の利用規定や一定の利用料の支払いに関するルールなどを定めておくことが大切です。

役員社宅制度を導入して自宅を社宅にする

役員社宅制度によって自宅を社宅扱いとすることで、法人税を節約できます。
役員社宅制度とは、社長や役員の自宅を社宅として使うために法人契約を締結し、そこに役員や従業員が居住するという制度です。
契約者である法人が家賃を支払い、社宅に住む役員・従業員の給与から一部の賃料を徴収する仕組みとなっています。

社長の自宅を社宅として役員報酬から賃金を徴収すれば、その費用を経費にすることが可能です。
一人社長の場合、自宅を社宅にすると個人が支払う賃金は少ない金額で済むため、多少収入が減っても生活に大きな影響を与えるリスクは少ないです。
徴収した賃金を経費計上すれば法人税を節税でき、さらに役員報酬が少なくなるので所得税の負担も軽減できます。

公的な節税制度を活用する

公的な制度を使って節税する方法もあります。一人社長が利用できる公的な節税制度は、以下のとおりです。それぞれの制度の特徴や節税になる理由をご紹介します。

小規模企業共済

小規模企業共済は、常時使用する従業員の数が20人以下の会社役員や事業主が加入でき、リタイア後の資金作りができる制度です。
毎月掛金を支払うことで、引退時に共済金を受け取ることができます。

掛金は全額が所得控除の対象となるため、一人社長個人の所得金額を減らすことが可能です。
その結果、所得税を抑えつつもリタイア資金を確保できるメリットがあります。
ただし、加入期間が20年未満となると元本割れする可能性があるため、長期での加入が前提です。その点に考慮して、加入するかどうかを慎重に判断してください。

中小企業倒産防止共済(経営セーフティ共済)

中小企業倒産防止共済は経営セーフティ共済とも呼ばれています。この制度に加入しておくと、取引先などが倒産した際に共済金を無担保・無保証人で借入れができます。
共済金によって中小企業の経営を立て直せるので、経営難に陥ることや連鎖倒産を防止することが可能です。
こちらも加入すると掛金を拠出する必要があり、最大800万円まで積み立てできます一人社長の場合、掛金を損金算入できるので、法人税を軽減することが可能です。

中小企業経営強化税制

中小企業経営強化税制は、中小企業の設備投資を支援する制度です。
新しい設備を取得して利用する場合、一定の条件を満たしていると即時償却や取得価格の最大10%の所得控除が受けられます。
本来は減価償却しなければならない取得費用を即時償却できたり、所得控除を受けられたりすることで、法人所得を減らして節税につなげることが可能です。

こちらの制度では、資本金や出資金が1億円以下の法人、資本・出資を有しない法人のうち常時使用する従業員数が1,000人以下など、対象企業が定められています。
また、申請には中小企業等経営強化法で認定された経営向上計画が必要になる点に注意してください。

赤字が出た時は繰越す

赤字が出た場合、それを翌年度以降に繰越すことができます。赤字が出た翌年以降に黒字へ回復したとしても、前年の赤字額を損益通算して法人税を計算することが可能です。
この仕組みによって、繰越欠損金が発生した際に翌年以降の黒字の利益と相殺できるため、法人税の節約になります。
赤字を繰越す期間には上限があり、一人社長の方がその上限を長く設定することが可能です。

青色申告をしている個人事業主は、3年間まで繰越すことができます。
それに対して一人社長は最大10年間まで繰越すことができるため、長期にわたって繰越せる点も個人事業主との違いです。

【一覧】一人社長が経費にできるもの


個人事業主と一人社長では経費にできる範囲が変わり、一人社長はより多くの費用を経費計上できます。
参考に、一人社長が経費にできる費用の例をご紹介します。

  • 地代家賃
  • 通信費
  • 交通費
  • 旅行交通費
  • 接待交通費
  • 会議費
  • 広告宣伝費
  • 外注工費
  • 支払報酬
  • 役員報酬
  • 福利厚生費
  • 給料賃金
  • 損害補償料
  • 租税公課
  • 消耗品
  • 減価償却費
  • 修繕費
  • 雑費 など

法人化すると保険商品の保険料や役員報酬なども経費に計上できるようになるため、個人事業主よりも節税効果は大きくなります。

一人社長が節税対策する際の注意点


一人社長ができる節税対策は色々ありますが、実際に対策する際に注意したいことがあります。その注意点は以下のとおりです。

節税を優先しすぎないようにする

法人税や所得税は、経営や一人社長の生活に負担がかかるため、節税に取り組むことは大切です。しかし、節税を優先しすぎないように注意してください。

節税対策の本来の目的は税金を減らすことではなく、少しでも多くの資金を手元に残すことです。
節税を優先するあまり事業活動が疎かになれば、ビジネスチャンスを逃す可能性があります。そのため、本業を最優先で取り組み、可能な範囲で節税対策を行っていきましょう。

税制改正など最新情報をチェックする

一人社長が節税対策をするにあたって、税金に関する最新情報を確認しておくと安心です。
税金に関する法律・制度は定期的に改正されています。現在は節税対策に有効な手段であっても、法改正や制度の変更によって活用できなくなる可能性があります。
常に最新情報をキャッチした上で、有効性があるか判断して節税対策に取り組むことが大切です。

経費計上は適切に行う

経費計上は法人税の節税につながる大切なことです。しかし、適切に処理しないと節税効果を得られないので注意してください。

適切な経費計上を行うためには、法人で経費にできるもの・できないものを正しく理解しましょう。
特に一人社長は個人事業主の時よりも経費にできる費用の範囲が広がるため、どこからどこまで計上できるのか把握しておく必要があります。

経費にできないものには、以下の費用が挙げられます。

  • 借入金の返済
  • 不動産屋車両などの高価な固定資産の購入費
  • 役員のみの旅行代金
  • 事業で使う衣服・靴などの購入費
  • 法人税や地方税などの会社に課せられる税金

これらの費用は法人が支払った費用であっても経費に計上できないので注意が必要です。

経費を無駄遣いしない

経費を無駄遣いしないことも節税対策では大切なことです。計上する経費が多ければ、それだけ法人所得を圧縮することができます。
しかし、経費を増やすために不要なものを購入する行為は、適切な節税対策と言えません。
経費を使い過ぎたことで、事業で資金が必要になった際に足りず、経営が苦しくなる恐れがあります。
それを防ぐためにも、経費は事業に役立つ備品・設備への投資に活用してください。

まとめ・一人社長も節税対策をして負担を減らそう

法人化することで、個人事業主よりも高い節税効果を得られる可能性が高まります。節税対策によって個人の所得税や企業にかかる法人税を軽減でき、生活や経営の負担を抑えることが可能です。
個人事業で続けていくと税金の負担が大きくなる可能性があれば、一人社長での会社設立を検討し、節税対策に取り組んでいくと良いでしょう。
ただし、節税することを目的に一人社長になることは避け、明確な目的を持って法人化を目指してください。

税金については、理解しているかしていないかでその年に支払う金額が何十万も変わってくるケースがあります。そこで創業手帳では「税金チェックシート」をご用意致しました。どのくらい節税対策を実施しているかチェックするためにもご活用いただけるかと思います。
また「税金カレンダー」では、個人事業主用と法人用と2種類をご用意。税金のうっかり支払い忘れが一番の節税対策です。どちらも無料でご利用いただけますので、ぜひあわせてご活用ください。


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(編集:創業手帳編集部)

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