役員変更登記は自分でできる?登記手続きが必要な時期や方法、費用について解説
役員変更登記は都度行うべき手続き。自分で行う際の方法や費用について解説します。
会社の役員変更登記は、変更のたびに手続きが必要であり、その都度行うのであれば自分で済ませたいと思う経営者も多いものです。
しかし、専門家に依頼せず自分で登記申請手続きを行うとなると、その方法やかかる費用については覚えておくべきでしょう。
今回は、役員変更登記を自分で行うための知識を解説します。
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この記事の目次
役員変更登記は役員変更のたびに必要
会社役員に何らかの変更事項があった時は、速やかに役員変更登記を行わなければなりません。以下では、役員変更登記がどのような時に必要かを見ていきます。
役員変更登記を行うタイミング
・代表取締役の住所が変わった時
登記した代表取締役の情報の中で、住所が変わった時は変更登記を行います。
・代表取締役および役員の就任があった時
代表取締役や各役員の交代や新たな就任のタイミングです。
・役員を増員した時
社外取締役や監査役など、役員もしくは役職を新たに増やす時に必要です。
・役員の再任、辞任、解任があった時
役員が任期満了後も役職を続ける時、任期中に自ら役職を持する時、他の役員により解任される時も変更登記を行います。
・役員の任期が満了した時
役員が任期満了を迎え、そのまま退任する時にも変更登記が必要です。
・役員が亡くなった時
役員が亡くなった場合も、登記で登録した内容を変更します。
役員の任期とは
役員は、会社法によりそれぞれに任期が設けられています。ただし、各役員の任期は原則的なものであり、株主総会での決議や定款の変更により変わる場合があります。
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- 取締役…2年
- 会計参与…2年
- 監査役…4年
- 会計監査人…1年
基本的に、上記の任期が満了するたびに、新任や再任、退任や辞任の変更登記を行わなければなりません。
非公開会社では任期延長が認められる
上記に加え、株式会社のうち株式公開をしていない非公開会社に関しては、取締役および会計参与、監査役の任期を最長10年まで延長することができます。
これらの役員の任期を延長する時は、定款に記載することでその効力を発揮します。
役員変更登記を行う時期について
役員の任期満了による変更の場合、まずは選任から満期になる事業年度末日の翌日から3ヵ月以内に定時株主総会を招集します。
この株主総会で、各役員変更事項について決議しなければ、役員変更登記は行えません。
株主総会による役員変更の決議から、2週間以内が役員変更登記を行う期限です。
役員変更登記時期の具体例
例として、事業年度が4月1日から3月31日までの会社で考えます。
この例における定時株主総会は、事業年度末日から3ヵ月以内の6月30日までに招集します。
そして、現取締役が2021年5月10日の定時株主総会で選任されたとします。
この場合、取締役の任期2年以内における最後の定時株主総会は、事業年度末日から3ヵ月以内の2023年6月30日までに行われるものです。
上記に則り、2023年5月20日に定時株主総会が招集され、取締役の任期満了による変更が決議されれば、役員変更登記申請の期限は、そこから2週間以内の2023年6月3日までです。
任期の計算方法
取締役の任期は、前述のように原則2年とされています。
上記の例における取締役の任期は、選任された2021年5月10日の翌日5月11日から、解任の変更株主総会で決議された2023年5月20日までです。
役員変更登記を怠るとどうなるか
役員変更登記を、上記に定められた期間以内に実施しなかった場合、登記懈怠(とうきけたい=行うべき登記を怠ること)とみなされ、100万円以下の罰金を徴収されることがあります。
また、株式会社の場合、役員変更登記の登記申請を最後に行った日から12年が経過すれば、休眠会社とみなされます。
休眠会社は、その機能をなさず解散したもの(みなし解散)として処理されるため、会社運営が継続されている旨を登記所に申請しなければなりません。
この申請がない場合、法務省の権限により解散登記の手続きが行われ、登記上は廃業したことになります。
役員変更登記は、この12年間で必ず発生するはずです。会社が健全に経営されていることを登記上で証明するためにも、申請は忘れないようにすべきです。
役員変更登記を自分で行う時にやるべきこと
役員変更登記を、経営者自ら行う場合は、その流れや必要な書類を知っておく必要があります。では、実際に役員変更登記までにどのような手順を踏むのか見ていきます。
1.株主総会を招集して決議する
役員の選任や辞任などの変更を行うにあたり、株主総会を招集し、役員変更の決議を行います。
2.登記に必要な書類を準備する
株主総会で決議が終了した後、役員変更登記を行うための必要書類をそろえます。
必要書類について
役員変更登記の必要書類は、変更内容により異なります。
・共通して必要な書類
役員変更登記申請書
・役員就任の必要書類
株主総会議事録
株主リスト
就任承諾書
就任する役員の本人確認書類
(住民票、戸籍謄本、運転免許証、マイナンバーカードなど)
印鑑証明書
・任期満了による退任・任期途中での解任の必要書類
株主総会議事録
株主リスト
・任期満了後の再任の必要書類
株主総会議事録
株主リスト
定款
・任期途中での辞任の必要書類
辞任届
・役員死亡での退任の必要書類
死亡届
役員変更登記申請を自分で行う際は、必要な書類、不要な書類を整理することが求められます。
3.登録免許税支払いのための収入印紙を用意する
役員変更登記には、登録免許税の納付が必要です。そのため、納付額に応じた収入印紙を用意し、役員変更登記申請書に貼付します。
4.書類を法務局へ提出する
上記の書類をそろえたら、会社の管轄である登記所に提出します。提出方法は、以下の3つの方法で行えます。
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- 管轄の登記局に直接持参する
- 管轄の登記局に郵送する
- インターネットでオンライン申請する(登記・供託オンライン申請システム)
役員変更登記を自分で行う時の費用について
役員変更登記を行う際、かかる費用についても気になるところです。ここからは、役員変更登記を自分で行った際、費用がどれくらいかかるかについて見ていきます。
基本的には最安で登録免許税のみ
書類をそろえる際、役員変更登記申請書の取得は無料です。その他の書類作成にも費用がかからない場合は、必要な費用は最安で登録免許税のみとなります。
登録免許税は、会社の資本金が1億円までであれば1万円、1億円を超える場合は3万円です。これは、登記申請1件あたりの税額です。
役員変更が複数あった場合はまとめて登記するのがおすすめ
上記のように、登録免許税は1件あたりで計算します。
そのため、例えば資本金1億円未満の会社で2件の変更を別々に行った時、2万円の登録免許税が徴収されます。
役員の変更が複数発生した場合は、申請を1件にまとめるのがおすすめです。この時、変更登記申請書1通にすべての変更内容を記載して提出します。
その他必要な雑費
その他に必要となる費用は、基本的に雑費にあたるものです。
例えば、印鑑証明書が必要な場合は1通につき300円程度の費用が発生します。
また、書類の印刷代や登記所に直接出向く場合には交通費、郵送する場合には郵送費がかかります。
インターネットによるオンライン申請では、雑費がかからない代わりにソフトのダウンロードや電子証明書の発行が必要です。
役員変更登記を自分で行うメリット・デメリット
役員変更登記を自分で行う時、メリットとデメリットがそれぞれ存在します。
その内容を理解した上で、どのような点を優先するのかを考慮して手続き方法を決めるのがおすすめです。
大きなメリットは費用を抑えられること
経営者自身で役員変更登記を行う大きなメリットは、やはり費用を最小限に抑えられることです。
上記のように、費用の中で大きなものは登録免許税くらいで、その他の費用は少額な雑費程度です。
少しでも費用を抑えたいなら、自分で申請を行うことを検討しましょう。
手間がかかる面がデメリットとなる
一方、デメリットはやはり書類の準備や申請作業そのものにとても手間がかかることです。
必要書類を取っても、様々な種類のものを取得・作成しなければならないほか、変更内容によって用意するものも異なります。
加えて、これらの書類は会社法で規定されているものであることから、不備があれば再度そろえて提出し直さなければなりません。
その他、直接提出の場合は登記所に出向く手間、郵送では書類をまとめて郵便局に預ける手間もあり、オンライン申請ではソフトのダウンロードおよび操作手順を正しく踏む手間が必要です。
専門家に手続きを依頼するとどうなるか
もし、役員変更登記を自分で行うことが大変だと判断した場合には、作業一式を専門家に依頼することができます。
申請を代行してくれる専門家は、法律上で司法書士か弁護士のみと規定されています。
役員変更登記を行ってくれる専門家
役員変更登記をはじめ、各種登記申請は、司法書士もしくは弁護士しか行えないとされています。
司法書士法および弁護士法により、登記申請代行を認められているのはこれらの業種のみです。そのため、役員変更登記の代行を依頼する際には、司法書士か弁護士を探します。
ちなみに、上記の業種以外(行政書士など)が登記申請を代行した場合は、依頼した側も罰せられる場合があるため、注意が必要です。
専門家に依頼するメリット・デメリット
司法書士や弁護士のような専門家に役員変更登記を依頼する際にも、メリット・デメリットがあります。
それぞれ、以下に紹介しますので、自分で役員変更登記手続きを行う場合と比較してください。
手続きをほぼ任せられるのがメリット
専門家に手続きを代行してもらえば、何より経営者の手間が大幅に削減されます。煩雑な役員変更登記申請書の記入や書類の準備を、専門家にすべて任せられます。
さらに、書類の提出までを専門家が行ってくれるため、自身にかかる提出の手間は一切なくなり、一石二鳥です。
その結果、余裕が生まれて本来の事業に集中できるメリットもあります。
専門家に支払う報酬が発生する
専門家に依頼するので当然ではありますが、司法書士や弁護士に支払う報酬が発生することです。自分で手続きを行うよりも、コストはかかります。
費用について
では、司法書士や弁護士に役員登記申請手続きを依頼すると、どれくらいの費用がかかるのでしょうか。以下では、登録免許税などを除いた報酬額を紹介します。
司法書士に依頼した際の費用
司法書士に依頼した場合、相場としておよそ3万円前後の報酬が発生します。
ただし、報酬額は司法書士が自由に設定できることから、報酬額に変動が出ることがあります。
弁護士に依頼した際の費用
弁護士に依頼すると、報酬はだいたい2万円前後を見ておくと良いです。弁護士に関しても、報酬額の決定は自由であり、依頼する弁護士によって異なります。
別途変更登記事項証明書の発行料が必要なことも
役員変更登記にかかる変更登記事項証明書は、発行は必須ではありませんが、控えとして残しておきたい場合は、別途これを依頼します。
役員変更登記事項証明書の発行には、1通につき450円~600円の発行手数料が発生します。
この費用は専門家に支払う手数料に含まれている場合もあり、その際には報酬とは別におよそ2,000円前後の手数料を支払います。
役員変更登記をサポートしてくれるツールもある
役員変更登記を自分ですべて行うのは大変、しかし専門家に依頼する費用は抑えたいという経営者のために、インターネットで手続きのサポートを受けられるツールもあります。
そのツールの特徴について、下記に説明します。
手続きの時間が大幅に短縮できる
登記申請サポートツールには、役員変更登記申請書のフォーマットが組込まれており、最低限の必要事項を入力するだけで書類が自動的に完成します。
入力に必要な時間は数十分程度で、自分で作成するとかなり時間がかかるところを、大幅に短縮することができます。
さらに、入力した内容によって以下のような書類も作成・出力が可能です。
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- 株主総会議事録
- 株主リスト
- 就任承諾書
- 辞任届
- 死亡届
など
これらの書類をダウンロードして登記局に提出するだけです。提出方法についても、サポートツールに付属するマニュアルで丁寧に説明してくれます。
さらに、オンライン上で書類作成が終了することから、オプションとしてサービス運営会社から作成書類および郵送キットを送ってくれるサービスもあります。
その他オプションについて、ツールによっては、登記所での登記申請手続きが終了した後に、登記簿謄本を登記所から直接金融機関に郵送してもらうことも可能です。
専門家に頼むよりリーズナブル
登記申請サポートツールで役員変更登記書類を作成する場合、利用料はわずか1万円程度です。
司法書士や弁護士に依頼した時は、報酬が2万円~3万円となるのは、前述の通りです。
その点、自分でやると煩雑な書類作成が簡単かつ短時間になり、提出までのサポートを行ってくれて1万円程度と考えると、かなりお得といえます。
必要な手続きの内容も把握できる
数ある登記申請手続きの中でも、役員変更登記は頻繁に行うものです。
そのため、どのような手順で行うのか、必要な書類や記載事項は何なのか、経営者自身が知っておきたいところです。
そこで、登記申請サポートツールを使用すれば、作業は簡単ですが必要な流れを把握することができ、さらに必要書類や手続き方法も丁寧に説明してくれます。
司法書士や弁護士にすべて手続きを依頼すると、どのような作業が行われているか把握しづらいです。
これからも継続的に行う手続きだからこそ、経営者が手続きの流れをしっかり知っておくことが得策であり、登記申請サポートツールであれば簡単に叶います。
まとめ
役員変更登記については、何らかの変更事由が生じた場合にその都度行わなければなりません。
この手続きは自分でも行えますが、費用が大幅に抑えられる一方で、作業は煩雑でもあります。
役員変更登記を自分で行う場合と、司法書士や弁護士のような専門家に依頼する場合では、それぞれにメリットとデメリットがあります。
その内容の中でどこを優先するかによって、取るべき方法が変わってくるため、よく検討すべきです。
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(執筆:創業手帳編集部)