民泊新法対応!民泊事業立ち上げで気を付けるべき税務のポイント

創業手帳

盛り上がりを見せている民泊で知っておくべきこと

(2018/05/16更新)

2020年に開催される東京オリンピックを見据え、訪日外国人が増加の一途を辿っています。そんな日本において、今、「宿泊業」が盛り上がりを見せています。その中でも注目されているのが、個人宅や投資物件を有料で貸し出す「民泊」です。

海外ではAirBNB(エアービーアンドビー)などのスタートアップの登場で巨大な市場となっている民泊ですが、日本では「住宅宿泊事業法(通称:民泊新法)」が制定されるなど、法整備が行われてきたところです。日本の民泊は、これから成長する分野だと見られています。

今回は、動きが活発化している民泊において、民泊の概要や税務において注意すべき点を、この分野に詳しい野口五丈公認会計士に伺いました。

「民泊」ってどういうもの?

本来、「民泊」とは「民家に泊まること」を指しますが、AirBNB(エアービーアンドビー)などの仲介サイトやアプリの出現により、個人宅や投資物件を宿泊用に有料で貸し出すビジネスを「民泊」と呼ぶようになりました。

ですが、この個人宅を有料で貸し出すビジネスモデルに対しては、従来の「旅館業法」で規制すると、そのほとんどが要件を満たすことができません。その結果、無許可で運営する違法民泊の増加が社会問題となっています。もしかしたら、ニュースなどで耳にする機会が多いかもしれませんね。

そこで、従来の「旅館業法」の改正と並行して、新しいビジネスモデルとしての民泊に対しての法律である「住宅宿泊事業法(通称:民泊新法)」が制定されました。
そのような経緯があって、現在、民泊は「旅館業法で定める簡易宿所としての民泊」、「民泊新法で定める住居として貸し出す民泊」、「民泊条例に定める国家戦略特区の民泊」と3種類に分かれています。

3種類に分かれている「民泊」

先ほど「民泊は3種類に分かれている」とお話ししましたが、それぞれの特徴を下記にまとめました。投資目的で民泊を行うのか、副業として自己資産を活用した民泊を行うのかなど、目的により適用する民泊の種類が異なるといえます。

①「旅館業法で定める簡易宿所としての民泊」

建物用途がホテル・旅館である必要があり、住宅専用地域での営業はできません。また、居室の床面積が3.3㎡以上必要であるなどの制限はありますが、営業日数の制限がないことが大きな特徴です。行政の手続では申請及び許可が必要となります。

②「民泊新法で定める住居として貸し出す民泊」

建物用途が住宅、長屋、共同住宅又は寄宿舎のため、住宅専用地域での営業が可能です。(条例で禁止の自治体もあるので、注意が必要です。)
ただ、1年間での営業日数の上限が180日と制限されていますが、行政の手続では届出だけで事業を開始できることも大きな特徴です。

③「民泊条例に定める国家戦略特区の民泊」

建物用途は住宅、長屋、共同住宅ですが、住宅専用地域での営業はできず、条例で定められている民泊特区でのみ営業が可能です。こちらは営業日数に制限はないですが、行政の手続では申請及び認定が必要となります。

投資目的で民泊を始める方の税金について

不動産を購入したり、賃貸物件を転貸して民泊を始める方は「旅館業法で定める簡易宿所としての民泊」もしくは「民泊条例に定める国家戦略特区の民泊」について、行政から認可を受け、事業をスタートします。

この場合、「旅館業法で定める簡易宿所としての民泊」では所得税上は事業所得として確定申告が必要となります。一方で「民泊条例に定める国家戦略特区の民泊」では宿泊者と建物の賃貸借契約を行うため、事業規模に応じて不動産所得又は事業所得として確定申告が必要となるので、注意が必要です。

副業として自己資産を活用して民泊を行う場合

自宅に空き室があり、その一部を民泊として貸し出す場合には、「民泊新法で定める住居として貸し出す民泊」を行うこととなります。
この場合、収入は雑所得に該当し、所得が20万円を超えると確定申告が必要です。

また、自宅の一室を民泊とした場合、住宅ローン控除の適用が受けられなくなる恐れもあります。住宅ローン控除適用中の自宅を貸し出す場合には、管轄の税務署に確認を取った方がよいでしょう。
経費は電気代や水道代などを、自宅で使ったものと民泊で使ったものを分けて申告する必要があるので、気をつけましょう。

税務署に出す届出について

事業を新しく始められる際には、「個人事業の開業届出」を事業の開始等のあった日から1月以内に提出する必要があります。

また、青色申告承認申請書を事業開始年の3月15日までに提出することにより、最大65万円の青色申告特別控除を受けることができたり、損失が発生する場合には、翌年度以降に赤字を全額繰り越して翌年以降の利益との相殺できるといった特典があるので、こちらも必ず提出するようにしましょう。

まとめ

民泊ビジネスは、法整備や観光客の増加、東京オリンピックと今後さらなる市場の拡大が見込め、大きなビジネスチャンスがあることは間違いないかと思います。

民泊を行うことで税務での手続きは生じますが、クラウド会計の普及もあり以前より簡単に会計ができるようになっているので、上記の点に気を付けていただければ簡単に申告までできるかと思います。これから民泊を始める方の参考になれば幸いです。

(監修:野口五丈公認会計士事務所 野口五丈)
(編集:創業手帳編集部)

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