「グロースハック」でDropboxやクックパッドも成功した?ー実践方法を解説ー

創業手帳

起業家にとって重要な「グロースハック」の実践方法を解説します

グロースハック

(2020/05/26更新)

みなさんは、Dropboxやクックパッドが取り入れていることで注目された「グロースハック」という言葉を聞いたことはありますか?

グロースハックは、ただのトレンドワードではありません。マーケティングだけではなく、スタートアップや新規事業を改善させていく上で、欠かせない考え方の1つです。

今回は、グロースハックの意味や実践的に進めていく上での手順などをご紹介します。

創業手帳の冊子版では、サイトに掲載していない起業家に役立つ情報を紹介しています。ぜひ、参考にしてみてください。

グロースハックとマーケティングの違い

グロースハックとは、英語で「Growth Hacking」といい、米企業Dropboxの創業者であるショーン・エリスが2010年頃提唱した考え方です。

グロースハックの歴史はまだ浅いため、しっかりとした定義はありませんが、「サービスを成長させるために、徹底的な効果測定をし、継続的に改善していく」手法を指します。この説明だと、一般的なマーケティングとあまり変わらないと思われるかもしれません。しかし、グロースハックとマーケティングは大きく異なります。

従来のマーケティングは、売上を増やすということやアクセスを増やしたいといったように、完成したプロダクトの販促活動です。それに対してグロースハックは、サービス・プロダクトの機能や設計の改善までも手掛けることができます。

グロースハックの代表的な3つの特徴

グロースハック特徴
グロースハックの手法を用いて成功したDropboxやAirbnb、クックパッドなどの企業があり、グロースハックは注目を浴びるようになりました。それだけではなく、価値観の多様化やテクノロジーの進化など、現在のビジネス環境にグロースハックの特徴がマッチしたことも、注目されるようになった理由の1つです。

そんなグロースハックの特徴をご紹介します。

1.ローコスト・ハイリターン

従来のマーケティングは、戦略をしっかり練り、大きく予算をかけて一回のキャンペーンで結果を求めるような、ハイコスト・ハイリターンなものです。

しかし、グロースハックは一度で結果が出るものではありません。仮説を立て、何度も効果がある施策を試す必要があります。サービス自体の成長が目標となるため、継続性がとても重要となります。

グロースハックは、なるべくお金をかけずに結果を求めることが理想とされる、ローコスト・ハイリターンな手法です。そのため、スタートアップや中小企業などの多額なマーケティング投資が難しい企業にも注目されています。

2.スピード重視

グロースハックでは、仮説を検討しながら手がつけられる施策から試していき、実際の消費者の反応をみて、プロダクトや施策などの改善を行っていきます。

しかし、消費者がどのような施策に反応するのかは分かりません。実際、施策の80%以上は失敗するともいわれています。そのため、短期間でPDCAを回すことが重要になります。

いち早く失敗をして、また仮説を検証し、改善を繰り返す。このように、スピード感を持ってPDCAを回すことによって、短期間での成長も可能になります。

3.データ分析

グロースハックの大きな特徴は、データ分析を軸に検討することです。これまでのマーケティングは、担当者の経験や勘などに頼っている部分がありました。しかし、テクノロジーの発展によって、様々なデータを収集することが可能になってきています。

ユーザーがどのように行動しているのかというアクセスログやユーザーの声などを解析することで、どこに問題点があるのかなどを検証します。

このように、テクノロジーの発展にともなって発展してきたのがグロースハックです。

グロースハックで成功した企業事例

ドロップボックスとクックパッド
実際に、グロースハックで成功した企業の事例をご紹介します。
グロースハックの手法を活用する際の参考にしてみてください。

オンラインストレージ最大手の「Dropbox」

まず、ご紹介するのはオンラインストレージ最大手のDropboxです。Dropboxは、グロースハックの手法を用いてユーザー数を伸ばしたことで有名です。

Dropboxは、ユーザーの登録プロセスを分析したところ、新規ユーザーの30%近くが既存ユーザーからの紹介で登録したということが判明しました。その分析結果を受け、「Dropboxを紹介した人に250MBの追加ストレージを提供する」という友人紹介キャンペーンを実施したところ、ユーザーが60%増加したという結果が出ています。

また、サイト設計やトップページ、登録プロセスなどの検討も、すべてグロースハックの結果であり、シンプルで使いやすい設計になっています。このように、Dropboxの成功にグロースハックの手法が大きく影響しています。

レシピ検索No.1の「クックパッド」

料理レシピサービスを展開しているクックパッドも、グロースハックで大きく成長した企業です。クックパッドが大きく成果を出しているのは、顧客の有料サービスへの登録です。

クックパッドでは、顧客の有料サービスへの登録を増やすために、プレミアムサービスにおける無料クーポンの配布を行いました。たとえば、顧客の誕生月や9月9日をクックの日として無料クーポンを配布したことによって、1日の登録人数が倍になりました

ほかにも、無料クーポンを活用することで認知拡大やクレジットカード登録率もアップさせています。

グロースハックを進めるための手順とは?

実際に、グロースハックを進めていくための手順について、ご紹介していきます。
グロースハックを進めていくための手順は、大きく4つのステップに分かれています。

1.現状の課題を把握する

最初のステップは、課題を把握することです。現状のサービスにおいて、どのプロセスでターゲットが離脱しているのかなどを把握します。

その際に有効なのが、ファネルです。ファネルとは、消費者の行動や思考にともない、ターゲットが絞り込まれていく推移を図にしたものです。図にした形が漏斗に似ていることから、ファネルと呼ばれています。

ファネルには決まった形式がなく、購入プロセスなどを参考に作成していきます。

ファネルを作成する際には、数値をしっかりと明記できることが大切です。どこのフェーズにどれくらいの人数がおり、次のフェーズまでにどれくらいの人が移行しているのかを明記しましょう。

ファネルでターゲットの推移を図にできたら、フェーズ間のどこで離脱が起きているのかを確認します。たとえば、認知の絶対数が少ないのか、比較・検討から購入に移行している段階で問題があるのかなどの課題を洗い出します。

課題は一つに絞らず、できる限り多くの課題を洗い出すことが大切です。多くの課題を洗い出し、サービス改善に大きく影響を及ぼしそうな課題から行うなど、優先順位をつけて取り組むようにしましょう。

2.仮説を立案する

課題を洗い出したら、それぞれの課題の原因について仮説を検討します。ユーザーの声などの定性データやアクセスログなどの定量データなどを分析しながら、なぜ比較・検討から購入に移行しないのか、ユーザーにとってなにが問題になっているのかなどを考えていきます。

たとえば、比較・検討から購入への課題があると考えた場合、「金額が高い」、「サービスを一度試してみたいけど体験できない」、「申し込みの入力フォームが分かりづらい」などの仮説を立てることができます。解決するべき仮説を立ててから、実際の施策を検討します。

3.施策を実行する

仮説が立てられたら、その仮説を検証するための施策を実行します。施策はできるだけ多く考えて実行するようにしましょう。

ご紹介したようにグロースハックでは、スピード感が重要です。実行している施策がうまくいかなければ、すぐに次の施策を実行するようにしましょう。多くの施策を繰り返し実行していく中で、本当に効果が高い施策を見つけることができます。

4.高速でPDCAを回していく

グロースハックで最も重要なのは、PDCAを高速で行うことです。

施策を検討・実行した上で効果を測定し、その結果をまた分析して、仮説をまた立案し施策を実行する。この繰り返しを行うことによって、効果の最大化が可能になります。

グロースハックにおいて、失敗は当たり前です。失敗から学び、そこからまた新たな施策を検討するというサイクルを繰り返すことが重要です。

グロースハックを進めるときに便利なフレームワークと分析方法

データ分析
グロースハックではフレームワークを活用し、データ分析などを行っていくことがとても重要です。
グロースハックを進めていく上で、便利なフレームワークや分析方法をご紹介します。

AARRRモデル

AARRRモデルとは、グロースハックで基礎となるフレームワークです。スタートアップを成長させるためのモデルともいわれています。

AARRRモデルは、ユーザーの獲得から収益化までの成長段階を表すものです。成長段階は、Acquisition(獲得)Activation(活性化)Retention(継続)Referral(紹介)Revenue(収益化)の5段階にわかれており、各段階の頭文字からモデルが名付けられています。

サービスの改善において、どうしても目の前の目標にばかり目がいってしまうこともあると思います。AARRRモデルが有効なのは、自社のサービスの全体を把握することができて、成長課題が割り出せるからです。

サービス全体のどこに課題があるのかを把握し、施策を理解することに利用しましょう。前述したファネルを作成するために使用してもいいでしょう。

コホート分析

コホート分析とは、データ分析のための手法です。ユーザーを行動履歴などでセグメント化し、それぞれの行動の変化を分析します。

たとえば、コホート分析を活用することで継続利用率や解約率の要因などを探ることができます。

初期のtwitterでは、継続利用率が問題となっていました。そこで継続利用者を分析すると、フォローが30人以上になると継続利用率が上がるということが分かり、フォローリコメンド機能を充実させた結果、ユーザーの継続利用が大幅に上がったのです。

A/Bテスト

A/Bテストとは、施策検証のための手法です。たとえば、採用したいデザインを決めるときに、2つのデザインを用意して、どちらのほうが効果的なのかを実際の消費者でテストすることです。

A/Bテストは、検討した仮説を簡単に試すことができる施策として重宝されています。とくに、サイトデザインやコピーなどの効果が計測しづらいものを比較することで、最適なものを選択することができます。

現在では、ツールなどによって同一URLでテストができるなど、簡単に実施できるようになっています。

グロースハックを進めるためにチェックするポイント

チェックポイント
最後に、グロースハックを進めるにあたって、チェックするべきポイントをご紹介します。

PMF

グロースハックを進めるためのチェックポイントの1つとして、PMFがあります。PMFとは、Product Market Fitの略で、自社のサービスが市場に受け入れられている状態のことを指します。

市場が縮小傾向にある場合、良いプロダクトを開発したとしても今後成長する可能性はありません。逆に、拡大している市場でも、プロダクトが良くなければサービスを再度検討する必要があります。このように、自社のプロダクトがPMFしているかいないかをしっかり検証することが、グロースハックで最大の効果を出すために重要です。

グロースハック思考

2点目は、グロースハック思考をしっかりもつことです。ご紹介したように、グロースハックは一回で成功するものではありません。施策を繰り返し行っていく中で、最適な施策を探し出すというものです。

そのため、多くの失敗もします。失敗を常に受け入れ、改善していくような姿勢が求められます。

施策を繰り返すことが必要となるため、短期間で結果が出ることはまれです。繰り返すことによって、小さな成功を重ねていき、最終的に大きな成功につなげるという長期的な視点をもちましょう。

また、施策を繰り返すことが重要なので、大きな資金をかけないような施策を行っていく、ということを常に頭に入れておきましょう。

サービス全体の改善にはグロースハックを取り入れましょう

グロースハックとは、マーケティングにとどまらず、サービス全体を改善する手法です。そのため、多くのスタートアップが導入しており、成功を収めている手法でもあります。

新たなサービスの開発や事業の成長に奮闘している方は、ぜひグロースハックの視点を取り入れてみてはいかがでしょうか。

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(編集:創業手帳編集部)

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