外国人雇用時には助成金を活用できる!要件や受給までの流れ、注意点などを解説

創業手帳

雇用の安定化や人材育成のために外国人雇用助成金を活用しよう


人材不足やグローバル対応として外国人雇用をスタートする会社は増えています。
外国人雇用助成金などの国や地方自治体の助成金を活用すれば、採用や育成にかかる負担を軽減可能です。
外国人を雇用した時に利用できる助成金制度にはどのようなものがあるのかを知って、自社で活用できるものをみつけてください。

この記事では、様々な助成金の情報をまとめているのでチェックしてください。

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外国人雇用で使える助成金5選


外国人を雇用した時や育成した時、一定の条件を満たせば費用を国や自治体から助成金として受け取れます。
外国人を雇用する企業は、経済的負担を減らすために助成金の活用を検討してください。

ここでは、外国人雇用で使える助成金を5つ紹介します。

人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)

 
人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)は、外国人が働きやすい環境を整えて職場への定着を促進する目的の助成金です。
外国人は、日本の労働法や雇用慣行などに関わる知識不足、言語の違いからトラブルが生じてしまうケースがあります。
この助成金では、外国人に特有の事情に配慮した終了環境整備や職場定着に取組む事業主に対して、それにかかる経費の一部を助成しています。

受給要件や受給額

人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)の受給要件は、以下のものです。


①外国人労働者を雇用している事業主である
②認定を受けた就労環境整備計画に基づき、外国人労働者に対する就労環境整備措置(以下のア、イの措置に加えてウ~オのいずれかを選択)を新たに導入し、外国人労働者に対して実施すること

ア) 雇用労務責任者の選任
イ) 就業規則等の多言語化
ウ) 苦情・相談体制の整備
エ) 一時帰国のための休暇制度の整備
オ) 社内マニュアル・標識類等の多言語化
③就労環境整備計画期間終了後の一定期間経過後における外国人労働者の離職率が15%以下である

上記の条件をすべて満たした場合、1制度導入につき20万円(上限80万円)が支給されます。
支給対象経費には、通訳費や翻訳機器導入費、翻訳料、弁護士、社会保険労務士等への委託料や改修費などが含まれます。

受給の流れ

人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)の支給を受けるには、以下の流れで手続きを進めます。

①就労環境整備計画の作成と提出
②就労環境整備措置の導入
③就労環境整備措置の実施
④支給申請
⑤助成金の支給

②、③の計画期間は3カ月から1年です。就労環境措置実施日から6カ月経過した翌日から2カ月以内に本社の所在地を管轄する都道府県労働局に届け出ます。

人材開発支援助成金(人材育成支援コース)

人材開発支援助成金(人材育成支援コース)は、事業主が雇用する労働者に職務に関連した専門的な知識や技能を習得させるための職業訓練等を計画に沿って実施した時に訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成する制度です。

受給要件や受給額

人材開発支援助成金(人材育成支援コース)の対象となる事業主は、雇用保険適用事業所の事業主で労働者は雇用保険被保険者です。

対象となる訓練は以下の3つに分けられます。

①人材育成訓練
10時間以上のOFF-JTによる訓練

②認定実習併用職業訓練
新卒者などのために実施するOJTとOFF-JTを組み合わせた訓練

③有期実習型訓練
有期契約労働者などの正社員転換等を目的として実施するOJTとOFF-JTを組み合わせた訓練

助成率・助成額と、受講者ひとり1訓練当たりの助成限度額は訓練の種類によって異なります。

受給の流れ

人材開発支援助成金(人材育成支援コース)は、以下の流れで実施します。

①計画提出
所定の様式で職業訓練実施計画を作成し、訓練開始日の6カ月前から1カ月前までの間に管轄労働局に提出

②訓練実施
職業訓練実施計画に基づき訓練を実施

③支給申請
訓練終了日の翌日から2カ月以内に、必要書類を管轄労働局に申請
添付書類として、訓練期間中の労働条件がわかるものや訓練費用を負担したことが確認できる書類、出勤簿やタイムカード賃金台帳の写しなどを提出する

トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)

トライアル雇用助成金は、一般的に安定した就職が難しいとされる求職者を職業紹介事業者を介して原則3カ月間試用雇用すると受け取れる助成金です。
企業は、求職者の適性を確認してから常用雇用に移行できるため、求職者と企業のミスマッチへの予防になります。

受給要件や受給額

トライアル雇用の対象とするには、以下のいずれかの要件を満たした上で紹介日に本人がトライアル雇用を希望した場合です。

①紹介日の前日から過去2年以内に、2回以上離職や転職を繰り返している
②紹介日の前日時点で、離職している期間が1年を超えている
③妊娠や出産、育児で離職してから、紹介日の前日時点で安定した職業に就いていない期間が1年を超えている
④生年月日が1968年4月2日以降のものでハローワークなどで担当者性による個別支援を受けている
⑤就職の援助を行うに当たり特別な配慮を要する(生活保護受給者、母子家庭の母など)

助成金の支給額は、対象者ひとり当たり、月額で最大4万円。最長で3カ月間受け取れます。
母子家庭の母や父子家庭の父の場合には、認定事業主が35歳未満の対象者に対しトライアル雇用を実施するといずれもひとり当たり月額5万円で最長3カ月になります。

受給の流れ

トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)を受給するには以下の流れで手続きを実施してください。

①トライアル雇用求人の提出
②紹介を受けた求職者と面接して選考を経て、トライアル雇用を開始する
③トライアル雇用開始から2週間以内に、トライアル雇用等実施計画書と雇用契約書等の労働条件が確認できる書類を提出する
④トライアル雇用終了日から2カ月以内に助成金支給申請をする

キャリアアップ助成金

キャリアアップ助成金は、非正規雇用労働者ののキャリアアップを促進するために、正社員化や処遇改善に取組んだ事業主に対して助成する制度です。
大きく正社員化支援と処遇改善支援に分けられます。

受給要件や受給額

キャリアアップ助成金の対象となる事業主は、以下のすべての条件に該当する事業主です。

①雇用保険適用事業所の事業主
②雇用保険適用事業所ごとに、キャリアアップ管理者を置いている
③雇用保険適用事業所ごとに、対象労働者に係るキャリアアップ計画を作成して管轄労働局長に提出している
④当該コースの対象労働者の労働条件、勤務状況および賃金の支払い状況等を明らかにする書類を整備して、賃金の算出方法を明らかにしている
⑤キャリアアップ計画期間内に計画に記載した正社員化・処遇改善に取り組んでいる
(支給申請時点で各コースに定めるすべての支給要件を満たしている)

キャリアアップ助成金の支給額は、コースや対象者、企業規模によって分けられています。

正社員化コースの場合、中小企業で有期雇用労働者を正社員化した場合には、80万円(40万円×2期)が支給額です。
さらに事業所あたりに加算があり、多様な正社員制度を新たに規定し、当該雇用区分に転換等した中小企業は1事業所当たり1回のみ40万円が加算されます。
賃金規定等改定コースでは賃金引き上げ率に応じた助成が支給される仕組みです。

受給の流れ

キャリアアップ助成金を受給するには、以下の流れで手続きを行います。

①キャリアアップ計画の作成支援・受理
②就業規則の改定など処遇改善の取組み
③取組後(正社員化後)6カ月分の賃金の支払い
④支給申請

支給申請は、取組みから6カ月の賃金を支払った日の翌日から起算して2カ月以内に実施します。

雇用調整助成金

雇用調整助成金は、景気悪化による事業縮小や労働者の雇用調整が必要な事業主に対して休業手当や賃金の一部を助成する制度です。
事業の状態によって仕事量が少なくなった時に、労働者を一時的に休業させたり、研修期間や出向としたりして雇用を維持するケースがあります。
そういった時には国が費用を助成してくれます。

受給要件や受給額

雇用調整助成金を受給するためには、以下の要件のすべてを満たさなければいけません。

①雇用保険の適用事業主である
②売上高や生産量などの事業活動を示す指標において、最近3カ月間の月平均値が前年同期に比べて10%以上減少している
③雇用保険被保険者数や受け入れている派遣労働者数による雇用量について、最近3カ月間の月平均値が前年同期に比べて、一定以上増加していない(中小企業の場合は10%を超えてかつ4人以上、中小企業以外の場合は5%を超えてかつ6人以上)
④実施する雇用調整が一定の基準を満たすものである
ア) 休業の場合
労使間の協定により、所定労働日の全一日にわたって実施されるものである
イ) 教育訓練の場合
ア)と同様の基準のほか、教育訓練の内容が職業に関する知識・技能・技術の習得や向上を目的とするものである
ウ)出向の場合
対象期間内に開始され、3カ月以上1年以内に出向元事業所に復帰するものであること
⑤過去に雇用調整助成金の支給を受けたことがある事業主新しく対象期間を設定する場合は前回の対象期間内の最後の判定基礎期間末日もしくは支給対象期末日のいずれか遅い日の翌日から起算して1年を超えている

雇用調整助成金の受給額は、事業主が支払った休業手当負担額、教育訓練を実施した時の賃金負担額の相当額に助成率を乗じた額です。
原則、中小企業であれば3分の2の助成率、大企業では2分の1の助成率で、教育訓練を実施するとさらに訓練費として、ひとり1日当たり1,200円が加算されます。

受給の流れ

雇用調整助成金の受給は以下の流れで行います。

①雇用調整の計画
休業や教育訓練、出向の具体的な内容を検討して計画する

②計画届の手続き
計画届をハローワークに提出する

③雇用調整の実施
計画届に基づいて雇用調整を実施する

④支給申請

外国人雇用のための助成金を活用する際の注意点


外国人雇用の助成金を活用する時には、いくつかの注意点があります。助成金があるからと安易に採用を進めるのではなく、慎重に計画を進めてください。

すぐに受給できるわけではない

外国人雇用で受け取れる助成金は、外国人を雇用すればすぐに受給できるわけではありません。

各助成金制度で定められている受給要件を達成して申請が受理されれば支給されます。
外国人雇用で助成金を受ける時には、必ず助成の対象になる外国人かどうか、受給要件を満たせるかを確認します。
支給されてから審査が行われるため、先に費用の支出があって受給するまでに時間がかかる点は念頭に置いてください。

労働関連の違反に注意する

外国人を雇用するにあたって、就労するためのビザや資格に問題がないかは必ずチェックします。
就労するための適切なビザや資格がないと、採用する企業側が罰則の対象になるリスクがあります。

外国人を雇用した時には在留カードやパスポートは定期的に確認してください。外国人を受け入れる時には、外国人雇用状況の届け出も必要です。
就労した外国人の氏名や在留資格などを、外国人雇用状況の届け出としてハローワークに提出するよう義務付けられています。
届け出を怠ったり、虚位の届け出をすれば罰則が科される恐れがある上、助成金の受給対象外になるかもしれません。

助成金以外で活用できる外国人雇用のための支援制度


外国人を雇用した時に使える支援ツールは、助成金だけではありません。どういった支援制度があるのか知っておいてください。

外国人雇用管理アドバイザー制度

外国人雇用管理アドバイザーは、外国人を雇用する事業主が雇用管理や職場教育をする時に支援、援助してくれる制度です。
専門家が事業所を訪問して法令順守のサポートからトラブル対応まで幅広いアドバイスを提供しています。

外国人雇用管理アドバイザー制度は、相談料無料で申し込みはハローワーク経由で受け付けています。
ハローワークで外国人雇用管理アドバイザーによる相談会を実施しているので、外国人を雇用しようと考えた段階で相談することも可能です。

厚生労働省による支援ツールの活用

厚生労働省では、外国人労働者の人事・労務に関する3つの支援ツールを提供しています。以下がツール名と内容です。

・労務管理のポイント・例文集
外国人を雇用する時に実際に想定される場面のポイントや例文、図表を掲載した資料

・雇用管理に役立つ多言語用語集
人事、労務の場面でよく使用する労働関係、社会保険関係の用語について多言語で検索できるツール

・モデル就業規則(やさしい日本語版)
外国人向けの就業規則作成に役立つ資料

外国人を雇用する時には、円滑に雇用管理するために上記のツールも活用してください。

まとめ・助成金を活用すれば採用や研修にかかる費用を削減できる

外国人雇用において助成金を活用できれば、企業が負う費用負担を大幅に削減可能です。
助成金の支給条件や助成額は、年度によって変更されることがあります。申し込む時は最新の要綱を確認して間違いがないようにしてください。
また、外国人を雇用してからも採用や研修、雇用管理は必要です。外国人とともに働く時に便利なツールも多数提供されているので活用してください。

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雇用で差がつく助成金10選

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(編集:創業手帳編集部)

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