資金繰りが苦しい時はどう乗り越える?財務健全化のためにできること
資金繰りが苦しい時のために事前の備えをしておこう
順調な経営が理想ですが、時には資金繰りが悪化してしまうこともあるかもしれません。資金繰りが苦しい時には、まず現状を把握して支払いの計画を立てます。
支払いの優先順位を決めたり、返済や支払いのリスケジュールができないかなどを交渉したりするのも有効な手段です。
この記事では、資金繰りが厳しい時の対処法や原因などを紹介します。
早い段階で資金繰りの悪化に気付くためにも、普段から経営状態をチェックし、事前に備えておくようにおすすめします。
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この記事の目次
資金繰りが苦しい時の対処法
資金繰りは企業経営の要です。資金難にならないように、多くの企業では資金管理を綿密に実施しています。
しかし、突発的なトラブルや環境の悪化で資金難に陥るケースは珍しくありません。
資金繰りが悪化した時の対処法は、①現状把握②資金調達③融資のリスケジュールの3つが基本です。
現状を把握して、不足している資金を計算してから資金調達に進みます。
返済が厳しいと感じた場合には、早い段階で借入先の金融機関にリスケジュールを相談してください。
借入先に相談する内容は、主に月額返済額の減額や返済期限の延長です。
現実的かつ合理的な経営改善計画を提出して借入先から納得してもらえれば、資金難からの脱却もそう遠くはありません。
さらに、経済産業省中小企業庁では、コロナ禍において資金繰りで困窮している中小企業に対して、新型コロナ感染症特例リスケジュールを提供しています。
これは、借入金の返済負担を軽減するために中小企業再生支援協議会が金融機関と経営者の間に入って借入返済をリスケジュールの養成をする制度です。
資金繰りを改善するために、専門家や公的機関のサポートを上手に活用してみてください。
資金繰りが苦しい時にはじめにやること
資金繰りが苦しい時に、まずできるのは現状把握です。これから控えている支払いと入金の予定を確認します。
資金繰り改善の基本は、回収は早く、支払いは遅くです。
以下に、資金繰りが悪化した時にできることをまとめました。
支払いのスケジュールを調整する
取引先も関係することなので簡単にはできませんが、資金繰りが悪化した時には支払いを遅らせられないか、もしくは自社への入金を早められないか交渉してみてください。
ただし、無理に交渉を進めると信頼関係に傷をつけてしまうので、無理は禁物です。
資金繰りが苦しい時には、経費の見直しも有効です。業務が効率的かどうかをチェックして、人件費などをチェックします。
もしも経費の中に現金払いのものがあれば、クレジットカード払いにすることで支払いを遅らせる方法もあります。
無駄な経費を発生させないためには、普段から適正在庫を保つようにしてください。
在庫の抱えすぎは現金化していない資産を保有していることで、キャッシュフローを悪化させます。
また、同様の理由で事業に活用されていない遊休資産を売却することも検討します。
反対に、資金繰りを楽にするために支払いのスケジュールをチェックせずに新しく借入れをするのは絶対に避けてください。
無計画かつ、その場しのぎで借入れをすると、高金利の業者から借りてしまい、雪だるま式に借入れの残高が増加する危険性もあります。
資金繰りが苦しい時には、安直な方法を探すのではなく、はじめに現状を把握して確実にできることからスタートするようおすすめします。
支払いの優先順位を決定する
支払いが必要なものは、期限までにすべて入金するのが理想です。
しかし、それができない資金難の状況では支払いの優先順位を考えておくようにおすすめします。
支払いの優先順位を決めることで、現金の出入りに対応する支払い計画も立てることが可能です。
支払いの優先順位は企業によっても異なりますが、支払いの期日が変更できず、失った場合の損害の大きいものを優先的に支払います。
具体的には、振り出した手形や小切手は優先的に支払います。
一度不渡りを出してしまえば、金融機関にその事実が通知され、さらに6カ月以内に再度不渡りになれば、全金融機関で取引停止報告が通知され、それから2年間は取引きができません。
また、従業員に支払う人件費も優先される支払いです。給与の支払いが遅れてしまえば、従業員の生活にも影響します。
従業員の離職ややる気の低下を招きかねないため、給料が遅れる場合にも、いつ支払えるのか必ず説明するようにしてください。
返済や支払いを延期・猶予してもらう
資金難になった時に、支払いの優先順位が下がるのは、期日を遅らせることができる支払いです。
例えば、借入金の返済は銀行との相談次第で支払いを後にできます。
返済条件を変更するためには、業績を立て直すための経営改善計画書を提出する必要があります。
一方で、事業に直接の影響がないからと税金や社会保険料の滞納をするのは絶対に避けてください。
滞納してそのままにしておくと、延滞税が加算された督促状が届くことがあるだけでなく、会社の財産を差し押さえられてしまうこともあります。
税金や社会保険料の支払い遅れは、会社の信用を下げるためリスクが高い行為です。
税金などの支払いは、窓口に相談して分割払いや据置が認められることがあります。
税金が支払えないくらい苦しい時期は、支払いを後回しにすればと思うかもしれません。
しかし、決められた期限までに申請すれば、延滞金を免除・軽減できるほか、差し押さえも回避できることがあります。
申請は、税金や保険料などそれぞれ窓口が異なるため、どこなのかを調べて確実に手続きを行います。
資金繰りが苦しい時に使える融資制度
資金難や債務超過になってしまうと、金融機関からの融資も受けにくくなります。
しかし、資金繰りが苦しい時であっても利用できる融資制度もあります。
どのような融資制度があり、どういった条件なのかを確認してください。
制度融資
制度融資は、地方自治体・信用保証協会・金融機関が連携して事業者をサポートする融資制度で、中小企業や小規模事業者のサポートを目的にしています。
地方自治体が貸付原資の一部を負担するため、長期かつ低金利での借入れが可能です。
また、地方自治体と信用保証協会の補助があるので、審査のハードルが低いともいわれています。
制度融資はその地方自治体によっても内容が異なり、資金難の時に利用できるものもあります。
セーフティネット貸付
セーフティネット貸付は、日本政策金融公庫が提供している融資制度です。
社会的・経済的な環境変化などの外的要因で資金繰りが悪化した事業者が、経営基盤を強化できるようにサポートしています。
セーフティネット貸付は、3年以内の据置期間があり、返済期間も長期なので余裕をもって返済可能です。
企業再建資金
企業再建資金は、日本政策金融公庫が提供している融資制度です。経営改善や経営再建に取り組む必要がある中小企業の事業者を対象としています。
企業再建資金を利用できる人には条件もあるので、事前に調べておくことをおすすめします。
資金繰りが苦しい時に相談できる窓口
資金繰りが苦しい時に、避けたいのは悩みをひとりで抱え込むことです。資金繰りが苦しくなると、気持ちが焦って視野も狭くなりがちです。
自分だけでどうにもできなくなった時こそ、自分以外の人に頼ってみてください。
以下に、資金繰りが厳しい時に利用できる窓口を紹介します。
国や地方自治体の相談窓口
国や地方自治体は、企業の資金繰り改善に向けた相談窓口を設置しています。
金融庁の相談ダイヤルや経済産業省の中小企業金融・給付金相談窓口のほか、自治体ごとの相談窓口を利用できます。
国や地方自治体をはじめとする相談窓口は、無料で利用できるものも多くあるため、調べてみると良いでしょう。
また、新型コロナウイルス感染症に関する資金繰りの相談については、日本政策金融公庫・商工中金・農林中央金庫でも受け付けています。
なかなか窓口まで出向く時間がない場合には、電話やオンラインでの相談を受け付けている窓口もあるため、利用してみてください。
中小企業診断士や専門家
豊富な知識や経験、資格を保有している専門家も相談先として心強い見方になります。専門家に頼るタイミングは、依頼する内容が具体的になっている時がベターです。
例えば、各種手続き・認可・書類作成のアドバイスや作成を依頼する時や、専門知識が必要な事項に対して相談する時です。
また、一連の手続きを継続サポートしてほしい時にも専門家に依頼します。
専門家に依頼する場合には、基本的に有料になる点に注意が必要です。コストを大きくしすぎないためにも、ある程度依頼する内容は具体的にしておくようにしてください。
資金繰りが苦しくなる原因
資金繰りが苦しくなる原因には、どういったものがあるのでしょうか。
資金繰りの悪化を事前に防ぐため、また、早めに対処できるようにするために、原因を知っておくようおすすめします。
①資金繰りを把握していない
いくら利益が出ていたとしても、資金の流れを把握していなければ支出が重なった時に破綻してしまいます。
黒字経営であっても、大きな支出や仕入れで支払いができなくて倒産してしまうのはこのためです。
資金繰りを把握するには、資金繰り表を作成して資金の流れを管理できるようにしてください。
②入金が遅い
売掛金や受取手形の回収が遅れると、現金が不足して資金繰りを悪化させます。可能であれば、売掛先と相談して回収を早めるようにします。
③経営に無駄が多い
経費がかかりすぎて無駄が多い経営は、資金難になりがちです。経費が大きいとそもそも利益が出にくく、手元にお金が残りにくくなります。
利益につながっていない事業の見直しや、経費の無駄をチェックしてみてください。
例えば、無駄な残業や休日出勤で人件費がかさんでいないか、ペーパーレス化できる書類はないかもチェックできる項目です。
④資産が多すぎる
不要な固定資産や過剰在庫も、資金繰りを悪化させる原因です。
利益につながらないものを資産として保有している状態は、資金が活用できていないことを意味しています。
特に、維持費や倉庫代がかかるものについては、本当に必要かを考えて売却も視野に入れてください。
⑤不測の事態が発生する
取引先の倒産・災害・損害賠償の支払いといった事態は、急に発生することがあります。
特に、取引先の倒産は保有債券が貸倒れになるだけでなく、今後の利益にも関わる問題です。
取引先1社への依存を高めてしまうとリスクも高くなるので、リスクを分散できるようにしておくことをおすすめします。
⑥売上げが急増する
売上げが急増するタイミングは、ビジネスチャンスと思われがちですが、資金繰りが悪化するリスクもはらんでいます。
これは、売上げが増えれば仕入れの資金も増え、人件費などの必要経費も増加するためです。
すると、急激に支出がかさむことで対応できなくなってしまい、資金繰りが悪化するケースもあります。
売上げの増加は喜ばしいことですが、売上げがいつ入金になるのか、どれだけの経費増までに対応できるかを計算しておくようにしてください。
資金繰りを悪化させないためにできること
資金繰りの悪化は早い段階で気がつけば防ぐことができます。最後に、資金繰りを防ぐためにできる方法をまとめました。
資産を売却する
事業に活用されていない不動産・機械設備・有価証券などは早めに売却するようにおすすめします。
特に優先してほしいのが、経費が発生する資産です。不動産は保有しているだけでも、固定資産税や維持費もかかります。
売却資金や保有することで発生していた経費を事業に回せば、資金繰り改善につながります。
資金繰り表を作成して予実管理を行う
資金繰りが悪化する前に、資金繰り表を作成して資金の出入りを記録してください。
資金繰り表には、月ごとの入出金の予定と実績を書き込みます。
わかっている先の予定もすべて書き込むことで、資金繰りが悪化する前に気づけます。
資金繰り表は、会計ソフトや表計算ソフトで作成可能です。
「資金繰り表」・「テンプレート」といったキーワードでインターネット検索をして、テンプレートを探してみてください。
経費削減
資金繰りが悪化する原因は、資金不足です。支出を抑えて、資金の流出を防ぐことは資金繰りの改善につながります。
コストダウンすることで、効率的な経営にシフトできれば事業に使えるお金も増加します。
しかし、カットする経費を間違えてしまえば、経営にとってむしろ悪影響です。
例えば、飲食店の原材料品を削減したり、人を減らして人件費をカットしようとしたりすれば、商品やサービスの質が低下してしまうかもしれません。
経費を削減する際には、削減して経営に影響を与えない経費かどうかを精査してください。
消耗品費の節約や業務のペーパーレス化は、今すぐでもスタートできて経営のへの影響も少ない経費削減策です。
不要在庫の削減
倉庫に原材料や製品が過剰にある場合には、適正な在庫量になるように調整します。過去の販売実績に照らし合わせることで、適切な在庫量を計算してみるのも有効です。
余剰在庫がなくなることで、仕入れの費用が少なくなるほか、保管のための場所代や空調代もカットできます。
また、在庫が少なくなり管理コストが減れば、作業効率もアップが期待できます。
まとめ
資金繰りが苦しい時の改善策と聞くと、まずはどこからかお金を調達しなければならないと考える人もいるかもしれません。
しかし、資金調達をして資金繰りが改善したとしても一時的なもので、再度資金繰りが悪化する危険性もあります。
資金繰りに苦しまないようにするには、普段から無駄な経費を削減し、適切な資金管理を行うことが大切です。
まずは、現状の資金管理や経営のどこに課題があるか、資金難になる要素がないかを把握してください。
(編集:創業手帳編集部)