有名投資家Fenox VC CEOアニス・ウッザマン氏から日本の起業家へ 「海外と渡り合う方法」(インタビュー後編)

創業手帳

悩める起業家に足りないモノとは

(2017/11/21更新)

前編では投資したい企業のポイントや、スタートアップワールドカップについて話していただいたアニス氏。後編では、日本・海外どちらも熟知したアニス氏が考える「日本の起業家の弱点」や、数々の企業に関わったからこそ見えてきた「伸びる企業の共通点」を伺いました。

前編はこちら→「日本の若者は世界にチャレンジして欲しい。そのための架け橋になる!」Fenox VC CEOアニス・ウッザマン氏インタビュー(前編)

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アニス・ウッザマン
Fenox Venture Capital, General Partner & CEO
東京工業大学工学部開発システム工学科卒業。オクラホマ州立大学工学部電気情報工学専攻にて修士、東京都立大学(現・首都大学東京)工学部情報通信学科にて博士を取得。IBMなどを経て、シリコンバレーにてFenox Venture Capitalを設立。現在は、投資家であるとともに、東南アジア最大のテックメディアTech in Asiaをはじめ、多くの企業の社外取締役を務める。著書に「スタートアップ・バイブル  シリコンバレー流・ベンチャー企業のつくりかた」(講談社)、「世界の投資家は、日本企業の何を見ているのか?」(KADOKAWA)などがある。

日本の起業家と海外の起業家、どこが違う?

ー今の日本の起業家とアメリカの起業家との特徴や違いは、どういうところにあると思われますか?

アニス日本の起業家の数は、アメリカの起業家と比べると少ないかもしれませんが、クオリティは高いと思います。

それに、日本の起業家は真面目でプロセスを重要視します。優秀な先輩方から教えてもらっているのかもしれませんが、段階をひとつずつ踏んでいくし、落ち着いた印象の起業家が多いですね。システム的だし、不安定な人は少ないところが、日本の起業家の良いところかもしれません。

ー日本の起業家に改善点などのアドバイスはありますか?

アニスこれは強く申し上げたいのですが、日本の起業家の弱点はドメスティック(国内的)なところです。自分の商品をうまく表現しない、自慢しない。それは日本の文化や国民性かもしれませんが、そもそも最初から自社サービスをアジア全体で売っていくという考えを持っていない起業家が多い気がするんです。

アメリカの起業家の場合は、会社を作る段階から世界に標準を合わせています。もちろん英語がどこでも通じるというメリットもあるとは思いますが、自社サービスの使い方に関しても世界のさまざまな人が利用できるように意識しています。

見栄えやデザインは、「どうやって人が使いやすくなるか?」というとても大切な部分です。日本の起業家も、もっと「誰でも使える」という点を意識する必要があると思います。
「日本人はこういうのが好きだ」ではなく、「台湾の人も好きだろう」「韓国の人も使いやすいだろう」と考えて作っていけば、もっとビジネスチャンスが広がってくると思いますよ。

伸びる企業に共通するのは、時代を感じ取る「敏感さ」

ーアニスさんはさまざまな起業家を見てきたと思いますが、伸びる起業家の特徴はあるのでしょうか?

アニス変化に対する柔軟性を持っている起業家です。やっぱり頑固な人は上手くいきません。業界の動きは早いので、それに合わせて動ける人が伸びていくんじゃないかと思いますね。
例えば「AIが流行っている」と聞けば、自社のプロダクトの商品の中でAIを導入することによって改善できないかと見極めるべきです。

今は商品を作るだけではなく、商品のフィードバックをもらって改善していけるようにビッグデータをうまく組み込まなきゃいけない時代です。そういった時代の流れに合う技術やトレンドを、常に自社の商品に取り入れていかないと時代遅れになってしまいます。

例えばIBMはすでにWatsonを作ってAIの分野で業界をリードしています。スタートアップと肩を並べて新しいことやっているんです。これは日本の大手企業にとって、参考になる例の一つだと思います。

会社の成長には新しい風を入れることが必要

ー日本の起業家の話に戻りますが、会社が成長するタイミングで組織の転換が必要になると思います。そのような時に起こりやすい問題と対処すべきことはどんなことでしょうか?

アニス:会社が大きくなっていくにつれ、組織変更が重要になります。最初は創業者ひとりだけで何とかなっていたものでも、ある程度規模が大きくなってくるとそうはいきません。

例えばアメリカのシリコンバレーでは、創業者はある程度の段階になったらCEOを辞めて、CTOなど部署のトップになって、CEOを外から雇う、という流れは当たり前です。もっと会社を大きくしていくためには、別のスキルと能力が必要ですから。同じ人が1000人の会社も1万人の会社も動かそうとするので、ほとんどの場合うまくいかないですね。日本の企業が陥りがちな点だと思います。

ー日本では良くも悪くも創業者が頑張りすぎ、ということですね。

アニス:そうですね。「自分で作った会社だから同じようにやろう」と考える方が多いんだと思います。例えばインドネシアのある起業家は、社員が10名から100名になった時点で、自分のスキルアップのために大企業に研修を受けに行くんです。

つまり、会社を成長させるためには、自分でスキルアップしてマネージメント能力を持つか、新しい人を雇うんです。アメリカで後者を選ぶ企業が多いのは、新しく雇った人を横から見ていると自分もスキルアップできるというメリットがあるからですね。

「夢を見せる」ことが経営者にとって一番大切な仕事

ーでは、日本の起業家に向けてメッセージをいただけますか?

アニス起業家や経営者にとって、一番重要な資質はリーダーシップです。経営者にリーダーシップがなければ人はついてきません。とくにベンチャー企業の社員たちは、お金ではなく情熱で働いているんです。その方々に夢を見せ、「やっぱり社長について行きたい」と思わせるリーダーシップがとても重要です。

日本は教育のシステムも良いですし、みなさんはもうすでに大きなスキルもポテンシャルも持っています。ですから、ぜひ世界レベルの企業を作り上げて欲しいと思います。

起業の段階から世界を見て、夢を広げて視野を大きくしてください。できればアジア全体をカバーし、全世界の人が使えるプロダクトを作って欲しいですね。

ーありがとうございます。最後に、投資家という仕事の醍醐味や面白い点はどういうところでしょうか?

アニスやっぱり最新の技術やビジネスモデルを見ることができるところです。
世界の変化を誰よりも先に見えるのは刺激的です。今の若者たちが作っているサービスを、一般の人が使うのはおそらく3年後、5年後、10年後です。それを誰よりも先に見ることができるのが、VCとしての生きがいかもしれないですね。未来が見えるのは面白いですよ。

(取材協力:Fenox Venture Capital/アニス・ウッザマン)
(編集:創業手帳編集部)

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