エッジAIとは?メリット、クラウドAIとの違い、活用事例などを徹底解説!
注目のエッジAIがもたらす可能性は無限大
近年AI技術は飛躍的に進化しており、現代社会において欠かせないものです。AI技術は、エッジAIとクラウドAIの2種類に分けられます。
今回の記事では、エッジAIとはどのようなものか、クラウドAIとは何が違うのか、なぜエッジAIが注目されているのか、などの疑問に答えていきます。
活用事例についてもご紹介するので、導入する際の参考にしてみてください。AIを導入することで、業務の効率化などにつながるため、検討する価値は大いにあります。
※この記事を書いている「創業手帳」ではさらに充実した情報を分厚い「創業手帳・印刷版」でも解説しています。無料でもらえるので取り寄せしてみてください
この記事の目次
エッジAIとは?デバイス上でAI処理をするシステム
エッジAIとは、デバイス上でAI処理をするシステムを指します。エッジデバイスと呼ばれる端末にAIを搭載し判断できるようにしたものです。
インターネットに接続しなくても、パソコンやスマートフォン、自動車などに搭載された端末のみで動作するという点が大きな特徴です。
これまではインターネットにつないでサーバー上で運用するのが一般的でしたが、エッジAIの登場でインターネット環境がなくても活用できるようになりました。
インターネットにつなぐ生成AIと比べると機能は限られてしまいますが、翻訳など多岐にわたる用途でエッジAIは導入されつつあります。
エッジAIを導入することで、遅延のない処理が可能で、セキュリティ性能が向上するなどのメリットを享受できます。
スマートフォンが圏外でも利用できることもメリットのひとつです。
クラウドAIとの違いは?
クラウドAIは、通信を行い、クラウド上のデータから予測や判断をするシステムです。
クラウドは、インターネット上で膨大な量のデータを管理できるシステムを指します。
エッジデバイスで収集したデータをネットワーク経由でクラウドに送信し、CPUやGPUの力を使って高速処理・学習・推論します。
AI処理が終わると、その結果をデバイスに戻す仕組みです。エッジAIとは異なり、取得した解析用データをすべてクラウドに送信する点が大きな特徴です。
エッジAIよりもクラウドAIのメリットが大きく感じられるかもしれませんが、機密情報は漏洩のリスクが高まるため、避けるべきといえます。
インターネットを介することで時間がかかる場合もあるので、エッジAIの注目度は格段に高まっています。
エッジAIの基幹技術・エッジコンピューティングとは?
エッジAIの基幹技術は、エッジコンピューティングです。
エッジコンピューティングとは、クラウドやデータセンターで行っていた処理を、データ収集用の端末・エッジまたは端末の近くに置いてあるコンピュータなど、データ発生源の近くで処理を行うことです。
クラウドやデータセンターを介さないため、スピーディな処理を実現できます。
エッジAIは、その仕組みを応用したシステムです。ユーザーに近いところで処理を行えるため、多くのメリットが生まれます。
従来のシステムであれば、リアルタイムなデータ処理ができなかったり、データをクラウドに送信するためプライバシーを保護しにくかったりする点が課題でした。
それを解決するための効果的なシステムが、エッジコンピューティングを活用したエッジAIです。
エッジAIのメリットや注目されている理由
エッジAIは注目されているシステムです。続いて、導入することで生まれるメリットや注目されている理由について解説していきます。
データ通信量を削減できる
エッジAIを導入すると、データ通信量を削減できます。
現在AIの主流は多くのデータを集めて処理ができる点が便利なクラウドAIですが、転送速度が遅くなるなどのデメリットもあります。
一方、エッジAIは、エッジコンピューティングで処理するので、スピーディな処理が可能です。
エッジAIには数種類あり、クラウドを使わずに稼働できるタイプであれば、通信に関する問題を解消できます。
また、状況に応じてエッジAIとクラウドAIを使い分けることで、より業務を効率化できるケースもあると考えられます。
セキュリティ性能の高さ
エッジAIはクラウドAIと比べてセキュリティ性能が高くなっています。なぜなら、クラウドにデータを送る必要がないからです。
クラウドAIだとクラウドにデータを送信しなければならないため、人物などが映る機密性が高い情報を送るのは懸念事項になります。
しかし、エッジAIであればエッジデバイス上で分析を行うことが可能です。したがって、セキュリティ性能がクラウドAIより価格、あらゆる情報の保持に役立つといえます。
リアルタイムな対応を実現できる
リアルタイムに対応するためには、エッジAIのほうが向いています。
クラウドAIは、多くのデータをエッジデバイスからクラウドに送信し、クラウド上で判断した後にエッジデバイスに再送するという流れで、少なからず遅延が発生します。
しかし、エッジAIはエッジデバイスですぐに判断ができるため、クラウドAIよりタイムラグが少なくなるのです。
データ通信を使うことはなく、インターネットがつながらない場所や回線が貧弱な場所でも対応できます。
通信障害が起こった場合のリスクにも対応できるため、工程の遅延を防ぐためにもエッジAIの導入は効果的です。
タイムラグや許されない分野、製造現場で膨大なデータをリアルタイムで解析する必要がある分野にも適したシステムです。
エッジAIの注意点・デメリット
エッジAIを導入する際、注意点やデメリットがあることも忘れてはいけません。続いては、具体的にどのような注意点・デメリットがあるのかみていきます。
大規模データの処理は難しい
エッジAIで使うCPUやGPUは、クラウドAIと比べるとスペックが劣るケースが多くあります。そのため、大規模データの処理は難しくなってしまいます。
使う場面によっては、消費電力や端末の大きさに限界があり、搭載できる機能を制限しなければならないかもしれません。
運用管理の手間やコストがかかる
エッジAIを運用するためには、エッジAI搭載の端末で行うデータの送受信ネットワークの管理も必要不可欠です。
端末数が増えるほど管理が煩雑になり、管理担当者の配置やシステム導入に関する労力とコストがかかってしまいます。
また、社内システムのアップデートや入れ替えも適切なタイミングで行う必要があるので、導入後にも様々な手間がかかることを念頭に置く必要があります。
エッジAIの活用事例7選
エッジAIを実際に導入した事例はいくつもあります。次は、エッジAIの活用事例を7つピックアップしてご紹介します。導入を考えている場合は参考にしてみてください。
画像解析技術を活用した人物行動分析サービス
日本電気株式会社(NEC)は、エッジコンピューティングソリューションをいくつも手掛けており、その中のひとつが画像解析技術を活用した人物行動分析サービスです。
これまで店舗マーケティングでは、何も買わずに帰った非購買者行動の分析が困難でした。
しかし、カメラの映像から人物検出や追跡を行う画像解析技術を活用した人物行動分析サービスを導入することで、これまで取得できていなかった層のデータを可視化し、分析に役立てられるようになったのです。
取得したデータはクラウド上に集約され、分析結果を提示します。
それをチェックしたマーケティング担当者は、場所をウェブ上でどこにいても来店者の行動を把握できるようになります。
Yahoo!知恵袋アプリにおける不適切投稿の削減
ヤフー株式会社が提供しているYahoo!知恵袋では、毎日多くの質問や回答が寄せられています。
中には、他のユーザーが不快感を覚えるような内容もあるため、それらが目につきにくくなるような対策を講じてきました。
その対策のひとつが、投稿内容が適切かどうか機会学習を活用した判定をモバイルデバイス上で行うというものです。
投稿前にリアルタイムでユーザーに通知するという取組みです。
リアルタイムで対策ができるだけではなく、通信量を削減したり、セキュリティリスクを軽減したりすることにもつながります。
警告文を表示して投稿自体をやめるように促すことで、不適切な投稿を減らすために効果を発揮しました。
介護施設における見守り
コニカミノルタ株式会社は、IPネットワークカメラシステム・MOBOTIXを手掛けています。
このシステムは、医療法人社団愛友会の介護老人保健施設三郷ケアセンターにおいて、施設内の見守りをするために取り入れられています。
MOBOTIXはエッジAIカメラで、デバイス側で異常や物体検知など検知機能を備えているため、見守りの徹底が必要不可欠な介護施設において役立っています。
介護老人保健施設三郷ケアセンターでは、これまでもモニタリングカメラを設置していました。
しかし、利用者に向けて設置されていなかったり、画質が悪かったりするなどの理由から役に立っていませんでした。
そこで、動体検知機能を搭載し、利用者の転倒や椅子・車いすからの立ち上がりなどがあった時に映像を記録できるMOBOTIXを導入したのです。
農機の自動化や無人化に向けた取組み
株式会社クボタは、アメリカの半導体メーカーであるエヌビディア・コーポレーションと連携して、AIによる自動運転技術を磨いています。
スマート農業の実現に向け、農機の自動化や無人化に関する取組みを行い、完全無人化の達成を目指しています。
株式会社クボタが活用しているのが、エヌビディア・コーポレーションのエンドツーエンドAIプラットフォームです。
このプラットフォームには、解析や推論をワンストップで行うAIを用いた機械学習モデルが組み込まれています。
自社が手掛ける農機に高性能なGPUのAI推論を実現できる、エッジAIシステムの研究開発を行っています。
ABL支援のための放牧牛管理システム
東京工業大学やソニーグループ株式会社などの共同プロジェクトチームが開発したものが、ABL支援のための放牧牛管理システムです。
共同プロジェクトチームによって開発されたエッジAI技術と、LPWA技術(低い消費電力で長距離の通信が可能となる技術)を駆使した放牧牛AIモニタリングシステム「PETER」の動産・債権担保融資(ABL)が適用できるか、実証実験も行われました。
ABLは畜産物を担保にするもので、畜産経営に貢献すると期待されています。
しかし、融資に必要な個体数のチェックや、個体ごとの状況チェックに大幅な時間やコストがかかるという課題がありました。それを改善するための仕組みがPETERです。
製造工場における入退室管理システム
食品工場では衛生管理を徹底的に行う必要があり、いつ、どの部屋に、誰が入ったか、などを管理することが重要です。
しかし、これまでの顔認証やICカード認証による入退室であれば、帽子やゴーグル、マスクを着けたままの従業員の管理が難しいという課題がありました。
そのような課題を解決へと導いたのが、ビーコア株式会社のエッジAI・Vieurekaカメラを活用した入退室管理システムです。
ユニフォームなどに取り付けできるカラービット入館証をカメラが検出し、クラウドにデータを送信するまでエッジAIカメラが自動で処理できるという仕組みになっています。
入館証をカメラにかざす必要もなく、ハンズフリーで通過できるようになるので非常に便利です。
不織布の不良品を検知
株式会社KYOSOとトーア紡マテリアル株式会社四日市工場では、織布製造において生じる表面の汚れや異色繊維の飛び込み検知を行うために、エッジAI・Vieurekaカメラを使用しています。
目視で行っている作業を効率化することが目的です。
リアルタイムで検品を実現できるだけではなく、異常を検知すると通知が送られる仕組みになっています。
目視でも確認はできますが、見落としが出てしまうケースがあるかもしれません。
エッジAIを搭載したカメラを導入することで、見落としのリスクを軽減できます。納品する品物のクオリティも向上するため、一石二鳥です。
エッジAIの導入は省力化だけでなく事業の可能性も広げる!
エッジAIを導入することで、省力化できるので業務をより効率的に進められるようになります。
クラウドではなくデバイス上で処理することが可能で、処理速度を向上させたり、セキュリティ性能を高めたりできます。
しかし、メリットだけではなくデメリットがあることも加味した上で取り入れなければ、思ったような効果が出ないと後悔することになりかねません。
創業手帳では、今話題のChatGPTについて独自に検証した結果などをまとめた「ChatGPT生成AIガイド」を無料プレゼントしています。ChatGPTはどこまで情報が正確なのか税理士との対決コーナーや生成AIで作った画像比較などを公開。ぜひこちらもあわせてご活用ください。
(編集:創業手帳編集部)