アフリカンプリントを使ったバッグや小物で起業!RICCI EVERYDAY仲本氏にインタビュー

創業手帳woman
※このインタビュー内容は2021年06月に行われた取材時点のものです。

まずは行動してみる。信じてまかせてみる。アフリカと東京をしなやかに行き来する女性社長のストーリーとは

銀行で働いていたとき、地味な色のスーツが嫌で、他にはあまりないデザインや派手な色の物を仕事以外の時間に身につけることが自分の個性を守ってくれた、というエシカルファッション小物ブランド”RICCI EVERYDAY”オーナーの仲本氏。

周りが就職活動をしていたときに大学院に進み、新卒で入った銀行を辞めてNGOへ。その後NGOを辞めて起業。ファッションだけでなく人生もまた、周りとは少し違った道を選んできました。

アフリカのウガンダと東京を行き来しながら、アフリカンプリントを使って生産されたバッグや服を主に日本で販売しています。そんな彼女に、創業手帳の代表・大久保が、今までたどってきたキャリアや、アフリカでビジネスをするということなどについてお聞きしました。

仲本千津(なかもと ちづ)
RICCI EVERYDAY 代表取締役COO兼Rebeccakello Ltdマネージングディレクター
1984年静岡県生まれ。一橋大学大学院卒業後、邦銀で法人営業を経験。その後国際農業NGOに参画し、ウガンダの首都カンパラに駐在。その時に出会った女性たちと日本に暮らす母と共に、カラフルでプレイフルなアフリカ布を使用したバッグやトラベルグッズを企画・製造・販売する「RICCI EVERYDAY」を創業。2015年に日本法人、2016年に現地法人を設立。2019年には日本初の直営店舗を代官山にオープン。
2016年11月第一回日本アフリカ起業支援イニシアチブ最優秀賞など受賞歴多数。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計200万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら

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銀行→農業系NGO→起業という異色のキャリア

大久保:本日はよろしくお願いいたします。まず、アフリカでビジネスをしようというアイディアはどのように思いつかれたのでしょうか?

仲本:実は大学院でアフリカの政治の研究をしていて、将来はアフリカの開発課題の解決に取り組みたいと思っていたんですね。ただ、理想ばかり追いかけていても仕方ないということで、まずは社会を見てみよう、そのために社会人経験を積んでみようと銀行に就職したんです。ただ、社風と言いますか、銀行の常識は社会の非常識という言葉がありますけど、わたしには合わない部分が多いなと感じ、もやもやしていたときに、NGOに拾ってもらい、転職したんです。

大久保:どのようなNGOだったんですか。

仲本:アフリカの農業系のNGOですね。そこから月に1回はアフリカに行く生活が始まったんですけれど、本業の合い間に約1年間プロボノをやってまして、エチオピアでレザーバッグを作る事業の創業期をお手伝いしたんですね。その際に、アフリカでビジネスをするということの面白さを垣間見ることができて、いつか自分もアフリカで起業できたらなという思いを強くしました。

2014年に駐在でウガンダに行くことになりました。ウガンダ全土の農家さんを回って農業の収益化をサポートしつつも、業務の合い間にローカルマーケットを覗いてみたり、いろんなスタートアップを訪問して活動内容を見せてもらったりしていました。そんな中で、わたしがピンと来たのがアフリカンプリントだったんです。周りにいた日本人の女性たちみんなが「本当に可愛い!」と言うんですけど、当時の日本では、アフリカンプリントはほとんど知名度が無かった。このギャップを埋めることが、ビジネスになるんじゃないかと思いましたね。

大久保:本業だけではなく、常にそれ以外の部分にもアンテナをはり行動されていたんですね。行動力が素晴らしいです。

商品の魅力、そしてコロナの影響は?

大久保:商品のアイディアはどのように考えているのですか。

仲本基本的には自分が欲しいものを作っています。この写真は、アケロバッグというアイコンバッグなのですが、こういうバッグがあったらなあと作った4通りに使える大きなクラッチバッグで、5年間売れ続けています。サンプルを作り、友人などに見てもらい改善を重ねました。デザインに落とし込むときにウガンダのスタッフにも相談して、議論しつつ決めていきました。

大久保:お話をうかがっていると、もともとファッションがお好きだったのかなと感じました。

仲本:そうですね。昔から人が持っていないようなものが好きで、珍しい色のアイテムやビンテージのアイテムなどが好きでした。銀行で働いていたときには、髪型や着る服などにすべてルールがあったので、きゅうくつに感じたというか、どこかで自分の個性が消えていくような感覚があったんですね。そんなときに守ってくれたのが、ちょっと派手目なお洋服だったんです。そういった経緯もあって、個性的なものに惹かれる気持ちが、アフリカンプリントに出会わせてくれたのかなと感じますし、お客様にもそういった出会いを届けたいと思いますね。

大久保:コロナの影響はありましたか?

仲本:生産サイドのウガンダでは、2020年3月末からかなり厳しいロックダウンがスタートしたんです。国民は車を使う必要がある離れた場所への外出は禁止され、あらゆる営業活動はストップせよとのお達しが出ました。その後段階的にロックダウンが緩和されるまで1か月ほどだったんですが、その間は生産も回らなかったですし、売るものがなくて、どうやって事業を続けていこうかとても不安でした。

幸い、その後少しずつ規制が解除されていくにつれ、生産も少しずつ再スタートすることができました。

大久保:それは不安だったでしょうね。販売という面では、いかがでしたか?

仲本:販売は主に日本で行っていますが、2020年の4月から5月にかけて百貨店さんが軒並み休業されました。うちの販売の主要チャンネルのひとつが百貨店さんだったんですが、イベントなども全てキャンセルになり、そのために用意していた在庫が残ってしまったんですね。ただ、ラッキーなことにちょうどメディアに取り上げていただいたこともあって、その在庫はオンラインストアを通じて全てお客さまに届けることができました。

大久保:メディアの力はすごいですね。それはどういった経緯で取り上げられたのでしょう?

仲本:毎月PR会社の方に入っていただきプレスリリースを出しているのですが、それに興味を持って取材をしていただきました。やはりいいものを作っても知っていただかないと売れないですから、こういった機会は貴重だと思っています。

大久保:商品の魅力はなんだと思われますか?

仲本:やはりアフリカンプリントの鮮やかな色の組み合わせは、日本人がなかなか思いつかないような発想なので、まずはその魅力ですね。ただそれだけではなく、使い勝手がいいように、そこは日本人の発想で細部まで気を配ってデザインしています。

信頼してまかせることが人材雇用では大事

大久保:ホームページを拝見したんですが、お母さまと一緒にビジネスをやられているのでしょうか。

仲本:そうなんです。商品を作っても売らないとビジネスが回らない、いわゆる在庫ビジネスなので、わたしがウガンダ側に張り付いているときに、販売サイドを誰かにお願いしたいなとは思っていたんです。そんなときに、タイミングよく母が子育てが一段落したこともあって、声をかけてみたら快諾してくれたという経緯です。

大久保:お母さまがビジネスパートナーというのは心強いでしょうね。今は仲本さんはどちらにいらっしゃるのですか?

仲本:今は日本です。ウガンダにももう行けるようになったので、現地に2か月ぐらい、日本に3か月、というサイクルを繰り返していますね。

大久保:アフリカでの人材雇用はどのようなプロセスで行っているんですか?

仲本:最初は別々の日本人からの紹介で、3人の女性を雇用しました。ミシンで何かを縫うのが得意な人、革を縫うのが得意な人というように。日本人からの紹介がよかったのは、信頼も置けますし、「日本人と仕事するとはどういうことか」というのをわかっていたという点ですね。細かい要求をしても理解してくれますし、修正にも応えてくれました。

それ以降はその3人の紹介で人を増やしていったような感じです。彼女たちが一緒に働きたい人がいいだろうということですね。現在は20人弱の従業員がいます。

大久保:今までに、従業員との間でがっかりさせられたり、トラブルのようなものはなかったですか。

仲本:従業員との関係ではそういったことはなかったですね。ただ政府とのやりとりには苦労させられました。法律を全ての人が理解していなかったり、解釈が違ったりするので、必要な書類が窓口の人によって違うということが起こったりするんですね。現地で起業するために、営業許可証を取ったりと、いろいろな手続きが必要だったんですが、自分の労働許可証を取るだけで1年ぐらいかかりましたね。その間にも入国管理局と投資庁の間で手続きに整合性が取れていなかったり、いろいろな法律上の矛盾がありました。結局、現地の弁護士の力を借りて、手続き上は何とかクリアしました。

大久保:なるほど。組織の作り方という意味で意識されていることはありますか?

仲本まかせることですね。例え学生のインターンでも偏見を持たずに、新規事業のリサーチをしてもらったり、事業のリードを取ってもらったりします。週に1回ミーティングを設定して、方向を修正したりといったことはしますが、基本的には頼む業務はおまかせしています。

アフリカのスタッフと一緒に成長していきたい

大久保:社会起業ということは意識されていますか。

仲本やはり現地で事業をやっている以上、意識せざるを得ないですね。最初に雇った3人の女性と話していたら、全員が都市部に暮らしながらシングルマザーとして子育てしながら仕事をしていました。家賃から母子の食べ物から、給与水準を考えたらお金がかかる医療のことまで、すべてひとりでカバーするというのはかなり厳しく、簡単に追い込まれやすい状況だと感じました。そんな人たちを支えながら、一緒に成長できればと思っています。

大久保:全員がシングルマザーだったのですか。

仲本:ウガンダでは慣習的に一夫多妻制が認められていたり、男尊女卑の考えが根深く家庭内暴力などが発生しやすく、離婚率も高いんです。日本以上にシングルマザーは多いと感じました。

男女を問わず、優秀な大学を卒業しても、20%しか定期的にお給料をもらえるような仕事につけないんです。必然的に、バイクタクシーのドライバーや売り子など、日銭を稼ぐような仕事をしている人が多いですし、小学校も出ていない人も珍しくありません。そういった人たちと働く中で、教育のバックグラウンドがない人でも仕事ができて、生活できるということを証明したいという思いがありました。

大久保:日本とはまったく労働環境が違うんですね。

仲本:はい。でも、一緒に仕事をし始めると、彼らの生活が目に見えて変わっていくんです。レンガがむきだしの家からコンクリートの家になったり、それまでなかった冷蔵庫やテレビを買えたり。「子どもが継続して学校に通えるようになった」「生活がうまく回りだした」などという声を聞いたり、「日本のお客様を喜ばせるために自分たちは働いている」という自信にあふれた姿を見ると、本当にこの仕事を始めてよかったと思います。

大久保:それは日本で起業していたらなかなか味わえない感覚でしょうね。アフリカでの最近のスタートアップの状況はどうですか。

仲本:わたしが事業を立ち上げた2014年当時は、大企業がアフリカに進出していた印象ですね。個人での起業は少なかったと思います。ただネットもだいぶ普及して困ることもなくなりましたし、参入障壁が低くなり、コロナ禍の前はいろいろな人がビジネスをスタートさせていました。ウガンダでいうと農業が盛んなので、農業系、テック系などが多いですね。

アフリカって危険じゃないの?

大久保:ネットもだいぶ普及したということですが、アフリカと日本の両極で仕事をする上で、便利だったツール類などはありますか?

仲本:そうですね、基本リモートで仕事をしているので、zoomやスラック、Googleドライブなどはなくてはならない存在です。現地の従業員とはwhatApp(ワッツアップ)で連絡を取っています。あとはVPNも必須で、大統領選挙があった時に、言論の自由を封じる目的でネットが遮断されたんですね。解除されてからもSNSがしばらく使えなかったんですが、インスタグラムをお客様とつながる場として使用していることもあって、仕事にならなかったのでVPNには本当に助けられました。未だにFacebookとインスタグラムは遮断されています。

大久保:そんなことがあったんですね。アフリカと聞くと、一般的な日本人としてはステレオタイプな印象しかなく、例えば「内戦が起こっている」、「ライオンがいる」、「体の大きな黒人がいる」といったところかなと思いますが、現地をよく知っている仲本さんは、こういったイメージについてどう思われますか?

仲本:そうですよね。でもアフリカ内でもだいぶ国によっていろいろなことが違うんですよ。例えばエチオピア人は植民地化されなかったという歴史があるので、誇り高い民族と言われています。自分たちの国を守り切ったという意識が強いんでしょうね。何かお願いするのにも気を使いますし、日本人よりもさらに本音と建前の差があると思います。我慢していつか爆発、というタイプです。ですので、わたしはエチオピアでは起業したくないなと思っています(笑)。

ウガンダ人はオープンですし、外見も親しみが持てるというか、そんなに身長が高いというわけではないです。ケニアのほうが干ばつなど環境的に厳しいので、どうにかして生き延びないとというハングリーさがあり、優秀でサービス業などに向いているかもしれませんね。これは私見ですが。

大久保:国でそんな違いがあるんですね。日本人も外からはステレオタイプに見られていますよね。「台風で壊滅しかけている過労死寸前のかわいそうな人たち」のような(笑)。

仲本:確かにそうですね(笑)。現時点で紛争しているところもありますが、局所ですし大部分は平和的です。「東京で暮らすようにウガンダで暮らす」というのがわたしのテーマなんですが、おしゃれなカフェもありますし、高層ビルもあります。でも街は緑にあふれていて、気候的にも東京よりも過ごしやすく、暮らすには最高だなと感じることもありますよ。ただ、紛争も数百キロ離れたところには存在しますし、それなりに注意する気持ちは必要ですね。数年に一度はテロも起こりますし。

Follow your heart. 迷ったら自分に聞く

大久保:起業に役立った本はありますか。

仲本ユニクロの柳井さんが書かれた『経営者になるためのノート』ですね。書き込み式になっているので、納得度が違いました!

大久保:好きな言葉は?

仲本Follow your heart. 悩むことがあったら自分の心に聞くようにしています。自分の事業ですから、答えは自分の中にしかない、自分の考えに従うべきだと常に思っています。

大久保:私生活との両立の工夫はありますか?

仲本朝8時ぐらいから1時間、何も考えないようにして家事に集中しています。自分の中ではちょっと瞑想的な役割がありますね。気分が乗らないときは思い切って仕事をしないんですが、その代わり基本的には週7日いつも働いています。土日を休みにしないとと思うほうが逆にストレスなんですよ。

大久保:起業家や経営者に向けて、最後にメッセージをお願いします。

仲本:今は起業に関しての環境も恵まれているので、スモールスタートでご自分がやりたいと思うことがあったら、まず一歩踏み出してみることをお勧めします。商品を作って販売してみて、それによって得られるフィードバックを改善にいかすというように、とにかくPDCAを回していくことです。

考えているだけでは意味がなく、動いてみないと何も始まらない、というのは現地で学んだことです。

わたしは公庫さんから借入れをして資金調達をしましたが、今は資金調達やコミュニケーションに関してもいろいろな手段が考えられますので、とにかく行動にうつすということを意識して、前に進んでみてください。

大久保:今日は興味深いお話をありがとうございました!

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(取材協力: RICCI EVERYDAY 代表取締役COO兼Rebeccakello Ltdマネージングディレクター
(編集: 創業手帳編集部)



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