「易しく・深く・楽しく」電通流、本質を見る思考術と伸びる会社の条件

創業手帳
※このインタビュー内容は2016年09月に行われた取材時点のものです。

電通の未来創造グループ プロデューサー山口氏 インタビュー(2/2)

(2016/07/20更新)

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株式会社電通の「未来創造グループ」は、「右脳型経営コンサル」として、広告代理店とも、経営コンサルタントとも違う独自の解決手法を提案しています。
前回は、未来創造グループ プロデューサー・山口直樹氏に事業の本質を掘り下げるプロセスや、ベンチャー支援の裏側について伺いました。

今回は、伸びる会社の共通点や、新規事業を生み出すコツについて教えて頂きます。

“尖った意見”を面白がれる会社は、強い

ー伸びる会社の共通点はありますか。

山口:まず経営者に「自分の信念」を持っている方が多いですね。特に、成功している会社は顕著かもしれません。逆に、合議制で、「それはいいけど、今回は…」みたいに、結局決まらないことが多いところは難しいですね。

また、尖った意見に対して、「まずやってみようよ」という会社は、伸びていると思います。それに対して「その前に、過去のデーターはどうなっているんだ?調査してみよう」という会社は成功しないと感じます。

ー新しい事業に取り組むのだから、過去は関係ないということですね。

山口:そうです。今無いのだから、そんなものは分かりません。企業や事業の本質をとらえたうえで、今は無い未来を妄想し、「これは成功する」という確信をもって、前に進めることが大切です。

広告もそうですよね。「調査の結果からも、このCMは大ヒットします」なんていうものはなくて、作った当時は分からないけれど、未来の世の中で「ヒットする自信がある。うけますよ」という感覚で、進んでいくものの方が、案外ヒットしたりするものです。

「第三者」の視点で本質が露わになる

山口:業界の中での切磋琢磨し進んできた経営者の方々は、実は孤独で、一緒に夢を語れる人がそばにいなかったりする場合があると思います。

そういう時に私たちが素人視点、つまり第三者の視点で「私たちは、みなさんのようなプロではないです。なので、私たちの視点では、こんなことをやったら新しい未来が開けるのではないかと思うのです。」という話をすると、結構飛びついてくれます。

ー通常、経営コンサルだと今までの延長を外部に依頼するという形ですが、未来創造グループは、全然違う視点を持ち込めるということですね。あえて第三者という立場の方が良いケースもありますか?

山口:そうですね。初めてのお話を聞く時に、あえて、その業界のことを深く勉強していったりしません。今、自分の中に存在する情報が、ある意味フラットな情報だからです。その上で、何個かの質問を持っていき、本質を掘り下げていきます。

例えば、「業界的には、どのような位置付だと考えているのか?」

「その理由はどこにあるのか?」「商品に課題があるのか?」「人なのか?」「もっと本質的なことがあるのではないだろうか?」

というふうに。

第三者の視点から質問をしていくと、「みなさんのやりたいことは、こういうことじゃないですか」という点が見えてきます。それが人材教育だったりとか、店舗を一個作ってみようということだったりして、どんどん派生していきます。

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難しいことを易しく、易しいことを深く、深いことを楽しく

ー起業家には、今の延長線上だとなかなか出てこないアイディアがあると思います。新しい発想をする方法について、起業家にアドバイスをするとしたらどうお考えですか?

山口:未来創造グループの代表・国見ってどんな人ですか?と質問されたときに、「難しいことを易しく考えて、それを、深く、そして楽しくする」ことができる人と言っています。

難しいことを難しく言うのは、実は簡単だと思います。その難しいことを「こういうことですよね」とまずやさしくしてあげる。そのやさしくしたことをもっともっとやさしくして、深く本質まで追求していく。そして、本質まで追求していくからこそ、原点が分かるので、それを楽しく伝えたほうが、周りに伝わると思います。

事業や経営そのものは「人」

山口:戦略プランナーがわかりやすさを追求して本質まで掘り下げ、無駄なものをそぎ落とした上で、コピーライターが言葉にしていく。そこに対して、もちろん裏ではデーターを使って、色々な分析をした上で、原点回帰していく。

こうして、「右脳型コンサル」としてアウトプットまで考えているというのは、未来創造グループの特徴ですね。

ープロセスをお聞きすると、かなり人に依っているのですね。

山口:人に依っていますね。事業そのものとか経営そのものは、人なのではないかと良く話しています。なので、私たちの提案も、やはり、キーマン(社長)に直接バシッと伝えることが必要なんです。

経営者は孤独。外部の脳みそで見えてくるものも

ー経営者は孤独というお話がありました。経営をする上で、誰か外部の人に相談することは大切なのでしょうか。

山口:大切だと思います。プロジェクトの中でも、何の資料とかも用意してこなくていいから、月に1回2時間話相手になって欲しいという依頼もあったりします。

ー誰かと話すと、頭が整理されますよね。

山口:「そういう方法があったか」みたいなことがよくありますね。自分の考えていることがそうだったよねと気づいてもらう。これは多分、「難しいことをやさしく、やさしいことを深く」ということの繰り返しだと思います。

創業者へのメッセージ

ー最後に、創業者へのメッセージをお願いします。

山口:起業されている方は、志を持って勇気を持って飛び出されています。一般企業に入って辞めて始める人も、学生からいきなり始めた人もいるかもしれない。そういう人達はとってもカッコいいですし、自信を持って進めてください。最初の志を忘れないで、日本のために、日本の社会を良くするために頑張って欲しいです。

そういう頑張っている人達のお手伝いを、電通という組織力やアイデアを使ってお伝いするところに僕たちは社会に少しいいことをしているなと感じている部分もあるので、そういうこれから頑張っていこうという志の高い人たちは、自分がやろうとした最初の理念、本質的なことをずっと忘れないで突き進んで欲しいなと思います。

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電通の未来創造グループ プロデューサー山口氏 インタビュー(1/2)
電通流!事業の本質を言語化する”右脳型経営術”とは

(取材協力:電通 未来創造グループ/山口直樹
(編集:創業手帳編集部)

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