Colorkrew 中村 圭志|6億超えの赤字企業を黒字化した「全てを透明化するマネジメント手法」とは?

創業手帳
※このインタビュー内容は2024年11月に行われた取材時点のものです。

7つある事業が全て赤字!2年で黒字化に成功した裏側に迫る


商社マンとしてキャリアをスタートさせた中村圭志さん。ドイツ駐在を経験し、分社化のリーダーとして活躍した後、現在は企業再建に挑む経営者として新たな道を歩んでいます。

中村さんが掲げるのは「全てを透明化する」マネジメント手法。閉鎖的な社内環境や多額の赤字を抱える企業を再建し、全事業を黒字化させた彼の手腕には、確固たる信念と革新的なリーダーシップがありました。

Colorkrewでの経験を通じて培われた経営哲学や、組織を変革へと導く力について、大久保が聞きました。

中村 圭志(なかむら けいじ)
株式会社Colorkrew 代表取締役
1970年8月 新潟県生まれ。千葉大学工学部→豊田通商株式会社→2010年10月株式会社ISAO(現:株式会社Colorkrew)代表取締役就任。役職や部署のないバリフラット経営をスタート。「世界のシゴトをたのしくするビジョナリーカンパニー」をビジョンに掲げる。
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インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計250万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら

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ファーストキャリアの商社では「挑戦と成長」を求めた

大久保:これまでの経歴を教えてください。

中村:大学時代にビジネスへの興味が湧き、いろいろな経験を積みたい、そしてグローバルな人材になりたいと思い、商社に就職しました。

その後、約6年半ドイツに駐在しました。

主な仕事内容は、アメリカの製品を国内でエンドユーザーに販売する営業で、取り扱っていたのはハードディスクです。

7年ほどその業務を続け、成果を出せるようになった頃、国内に留まらず、もっと大きなビジネスをしたいと考えるようになりました。

そして、自ら商材を探すためにアメリカの展示会に行き、そこで台湾のICチップを扱う企業と出会いました。

大久保:ご自身で新しい道を切り開いたのですね。

中村台湾企業の製品を日本やアメリカに販売する企画を始めたのが、28歳の時です。

そこから5年ほどビジネスに携わり、さらにリアルなグローバル環境で仕事がしたいと思うようになりました。

そして、同じ商社の中でドイツへの駐在が決まりました。

ドイツではバーコードハンディターミナルを扱い、ヨーロッパ・中東・アフリカに販売する業務を約6年半行いました。

35歳の時に母体企業からスピンオフする形で会社経営を任される

大久保:ドイツではどのような役割でしたか?

中村:私のポジションはドイツ人部門長のアシスタント的な役割でした。当時は現地人を雇用してビジネスを構築する方針でしたが、人件費の高騰や業界の専門性の高さから、別会社にするべきだと提案していました。

結果として、本社や現場から私がトップを務めるべきだとの声が上がり、35歳でスピンオフとして別会社を設立することになりました。

会社経営は初めての経験で、ゼロから経営者として学んでいくことになりました。

大久保:通常の起業とは異なる経緯ですね。その点についてどう感じていますか?

中村:自分で分社化したため、困ったことはありませんでした。

しかし、責任はすべて私にかかり、業績が悪化すれば会社が存続できないというプレッシャーは大きかったです。

大久保:分社化後の業績はどうでしたか?

中村:業績は順調で、チームもいい方向に発展していきました。

ただ、駐在員としての任期があるため、6年半後に後任に引き継ぎ、40歳で元の会社に戻りました。

大久保:そこで経営の面白さを実感されたのですね。

中村:はい。

良い経営をすれば、周りの人たちを幸せにできると強く感じました。

最近では、責任を持ちたくないから出世したくないという若い人が増えていると聞きます。

その気持ちはわかりますが、理想を実現するためには、ある程度のパワーが必要だと若い頃から感じてきました。

上に立つ人がパワーを使ってくれたからこそ、私がパワーを持った時に他人のために力を使える喜びを知れました。

大久保:それがまさに経営者の役割ですね。

中村経営者としてやるべきことは2つあります。

事業を成功させることと、関わる人たちを幸せにすることです。

顧客に貢献することで社員も顧客も共に成長し、良い循環を生み出すことが重要です。

母体企業が買収した企業の再建を担うため「Colorkrew」の代表に就任

大久保:その後、Colorkrewに入社されたのですね?

中村:はい。

日本に帰国した後、本社が買収したIT系企業の再建を任されました。

その企業は業績が悪く、社員は70名、業務委託やアルバイトも含めて150名ほどでした。

規模はドイツでの会社より大きいですが、営業経験を活かせると考え、チャレンジしました。

私が入社する前の年は6億2,000万円の赤字でした。

社員70人で割ると、1人あたり800万〜900万円の損失という状況です。

通常ならどこか1つは好調な事業があるはずですが、7つの事業全てが悪く、赤字だったのです。

私をこの企業に送り込んだ人が「2年で黒字化する」と社内で公言してしまっていたため、やるしかない状況でした。

そこで、まずは事業の立て直しを図りました。

組織の形をもう一度整え直して、人事制度も見直しました。それと同時に、閉鎖的だったコミュニケーションの改善にも取り組んでいきました。当時は社員のモチベーションがすごく低くて、資金の使い方もかなり無計画な状態だったんです。

さらに、職場には閉鎖的な人間関係が根深く、悪い噂が流れるなど、信頼感を損ねる要因がありました。なので、私はまず社員一人ひとりの声に耳を傾け、事実を正確に伝えることで、会社全体に信頼を取り戻す努力をしました。

特に、意欲的に行動する社員を中心にチームを組織し直し、少しずつ企業全体の雰囲気と業績を回復させました。結果として、2年以内に全社の黒字化を達成することができました。

1年経った時点で、「黒字化しなければ解散」と言われていましたが、結果的に2年後には全社が黒字化しました。

さらに1年半後にはすべての事業が黒字化し、それ以降はほとんど赤字になったことはありません。

6億の赤字を立て直すために重視した3つのポイント


大久保:基本的な施策を行ったということですが、他に重視したことはありますか?

中村大切にしたポイントは3つあります。

1つ目は、リーダーが事業に情熱を持ち、必ず成功すると信じていること。

2つ目は、事業プランが1年程度で形にできそうかどうか。

そして3つ目は、新しいビジョンに合致しているかです。

7つあった事業のうち、4つに絞り込みました。その中には一番利益を出していなかった事業も含まれていますが、最終的にはすべてを黒字化することができました。

営業で培った経験を活かしながら事業内容を細かく見直し、チームとの密なコミュニケーションを通じて問題点を一つひとつ解決していきました。何より大切だったのは、「当たり前のことを徹底しながら、未来を見据えた戦略を考える」という姿勢です。

また、経営者としてすべての情報をオープンにすることを約束しました。無駄な支出は徹底的に排除し、交際費を含めた経費についても全て透明に説明しました。そして、努力した人がきちんと報われる仕組みを作ることを心掛けました。

大久保:中村さんは会社の悪いところを改善してきたわけですが、会社が悪化しないようにするにはどうすればいいですか?

中村全ての情報を透明化することです。

全社で情報を共有し、なんでも質問できる環境を作りました。

それによってガバナンスが効き、サボる人や不正が減ります。

仕事も公開し、誰でもできるようにすることで、組織のカルチャーが健全に保たれます。

この考え方は全ての会社に通用するものです。

Colorkrewのプロダクトにも生かされた「透明性の哲学」

大久保:御社の考えはプロダクトにも関係があるのでしょうか?

中村:はい。

私たちの「オープンな哲学」は、プロダクトにも色濃く反映されています。ユーザーがより透明性のある働き方を実現できるよう、さまざまな工夫を凝らしているんです。

例えば、「Goalous(ゴーラス)」というSNSでは、チームメンバーが目標を共有し、日々の進捗を投稿してお互いに進捗状況を把握できます。この仕組みによって、目標達成に向けた一体感が生まれ、仕事の効率も向上します。

さらに、主力製品である「Colorkrew Biz(カラクルビズ)」は、出社時にQRコードをスキャンするだけで、自分のステータスをリアルタイムでチーム全体に共有できるツールです。これにより、誰がどのような状況にいるのかを簡単に把握でき、チームの連携がスムーズになります。

私たちのプロダクトは、働く環境やチームの在り方をより「オープン」に変えるためのパートナーと言えます。

大久保:オープンな哲学が浸透しているのが分かります。

中村情報を独占して権力を持つ人もいますが、そうではなく全員がフラットに情報を持つことが大切です。

その上で、一番優れたリーダーが引っ張るべきだと思っています。

給与を公開することに抵抗がある人もいますが、説明すれば解決できます。

それが人事制度であり、経営です。

質問に答えることで、相手の考えも理解でき、より良いアイデアが生まれます。

大久保:それが広まれば、日本全体が良くなりそうですね。

最後に、起業家へのメッセージをお願いします。

中村:会社は自分のものではなく、社員全員のものです。

チームとして最大の価値を生み出し、社内の政治を排除し、最高のパフォーマンスに集中することが大事だと思います。

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(取材協力: 株式会社Colorkrew 代表取締役 中村 圭志
(編集: 創業手帳編集部)



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