地域おこし協力隊で起業は可能?メリットや起業の事例を徹底解説
地域おこし協力隊での起業とは?多数の事例を参考に起業を目指そう
これから起業を考えている人は、自分のやりたいことや夢を叶えたいと考えているかもしれません。
そして、起業の夢を叶えるのは、必ずしも都会である必要はなく、地方自治体に移住して社会貢献をする方法もあります。
その方法のひとつが、地域おこし協力隊に参加し起業することです。
今回は、地域おこし協力隊での起業について解説します。
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この記事の目次
地域おこし協力隊とは?起業もできる!
地域おこし協力隊とは、住民の高齢化や居住する人数の減少などで衰退を見せる地域に、都市部から隊員が1年~3年間程度移住して、地方創生に協力する取組みです。
隊員がサポートする主な業務には、地域観光のPRや物産品などの販売、農林水産業への参加、イベントなどへのサポートなど、自治体からの要望により異なります。
この施策では、地域の特産品や新たな製品やサービスの創出などにより、以下のようなメリットを地域にもたらします。
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- 地域おこしによって、地域全体の振興に貢献すること
- 地域に移住者や支援者を誘致し、人口を増やして自治体として成長すること
- これまでになかった新たな視点で地域を活性化させること
また、地域おこし協力隊の活動の一環で起業することもでき、自分がやりたいことで活性化を図ったり、地域資源を活用してビジネスを創出したりすることも可能です。
そして、都市部からの移住者が新たなビジネスを行うことで、地域住民にも前向きな刺激を与え、ともに協力して地域を盛り立てるきっかけになりえます。
現職を続けながら兼業もできる
地域おこし協力隊として活動するにあたり、現行の仕事を続けたままで、兼業として参加することを認めている自治体もあります。
地域ごとの施策にもよりますが、住民票を派遣先に移したうえで、居住地の拠点を2つ持って活動することもでき、現在の生活のベースは崩さず新たな取組みに参加できます。
起業型地域おこし協力隊について
地域おこし協力隊として活動する隊員が実際に起業するケースを「起業型」と呼びます。
派遣先の地域で隊員が各々の自由な発想で新たなビジネスを起こし、地域資源の活用および経済の活性化に貢献するものです。
業種や業態などは問わず、地域を盛り上げるビジネスであればどのような事業を起こしても問題ありません。
地域によって「起業型」を受け入れる体制には違いがありますが、自治体と連携を取りながら自分のやりたいビジネスを始めることが可能です。
起業家の位置付けは地域への移住・定住者
起業型地域おこし協力隊は、派遣先の地域へ移住・定住することを前提としています。
そのため、当初決められた活動期間である約1年~3年程度という期間にこだわらず、任務終了後も派遣先の地域に根ざしたビジネスを展開できます。
この点から、創出するビジネスの業種などは問わないものの、最終的に地域に還元され、自治体の求める地域おこしに貢献できるものが望ましいです。
起業型地域おこし協力隊が地域にもたらすもの
地域が抱える課題の解決
起業型地域おこし協力隊は、その地で感じたことや解決すべき課題を見つけ、それらを解消するためにビジネスを起こします。
そのため、地域の人々が求めていた商品、サービス、施策を提供することにつながるほか、地域に眠っていた様々な資源や魅力を発信していく窓口にもなります。
新たなビジネスモデルの誕生
上記のような地域の問題を解決するアイデアにより、これまで地域から生まれなかった新たなビジネスモデルが誕生します。
これにより、地域経済に新風をもたらし、さらなる発展に寄与することが期待できます。
地域の経済を盛り上げる
起業型地域おこし協力隊のビジネスにより、経済の活性化や事業拡大が行われれば、自治体の安定した運営や雇用の創出にもつなげられます。
また、事業により地域の魅力や観光資源が全国に発信されれば、ほかの地方から訪れる旅行客も増え、より地域が豊かで元気になるメリットもあります。
地域おこし協力隊が起業する業種
実際に、地域おこし協力隊の隊員が起こすビジネスにおいて、どのような業種が多いかを挙げていきます。
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- カフェやレストランなどの飲食業
- 古民家などを宿泊施設にリノベーションしたホテル業
- 食品や農産物、特産品などを販売する小売業
- 地域の資源を利用した工芸、地域をアピールするデザインや写真、動画などのクリエイター業
- 観光ガイドやツアーコンダクターなどの観光業
- 農水産物加工などの6次産業
- 地域のPR屋ブランディングなどのサービス業
など
これらは、あくまで一例かつ、比較的始めやすい業種であり、これ以外の業種を選択している隊員も多数存在します。
つまり、それぞれの地域に適したビジネスであれば、アイデア次第で可能性は広がるということです。
起業型地域おこし協力隊のメリット
起業における支援が受けられる
派遣先で起業する場合にはその支援を目的とし、総務省から自治体を通し、ひとりあたり最大100万円が支給されます。
また、自治体からも助成金などを受けられることがあります。
そのほか、起業家に向けて以下のような支援体制が用意されています。
・隊員向け研修
地域おこし協力隊としての経験に応じ、起業に向けてのノウハウを享受できる研修が行われます。
・ビジネスサポート事業
起業家のビジネスプランを募り、地域貢献の見込みがあるものには、ビジネスの専門家からアドバイスや指導などが受けられます。
・資金や経営などの相談
日本政策金融公庫では、地域おこし協力隊の任務を終えて起業する隊員に向け、事業資金の貸し付けにかかる利率を下げる施策があります。
また、よろず支援拠点を利用して、無料で経営相談も行うことができ、起業の不安を解消することが実現します。
・生活全般に関する相談
派遣先の地域で生活するにあたり、不安や疑問点、住民とのコミュニケーションについての相談を受け付けている自治体もあります。
サポートデスクの手厚い体制が整っている
地域おこし協力隊には、隊員が活動しやすくなるようにサポートデスクが設けられています。
参加時点から、自身に合った地域選択のアドバイスや、経験者からの細やかな相談対応など、起業を目指す隊員を支える体制が整っています。
サポートデスクには、電話やメールでアクセスできるため、利用してみるのもおすすめです。
地域おこし協力隊での起業で得られる起業支援補助金
地域おこし協力隊を受け入れている自治体では、起業支援補助金などの名称で補助金を支給している場合があります。
起業支援補助金の概要
地域によって名称が異なる場合もありますが、多くは「起業支援補助金」として制度を設けています。
これは、地域おこし協力隊の任期終了の前後1年以内に起業した隊員に対し、支給されるものです。
そして、住民票を派遣先に移していること、地域貢献に役立つ事業の展開を前提とし、自治体および総務省の審査に通過すれば、補助金を受けることが可能です。
給付の条件については、派遣先の自治体の制度をよく確認してください。
補助金の対象になる経費
起業支援補助金は、起業および経営にかかる経費に対して支給されるものであり、その経費は以下のようなものが該当します。
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- 事業を行う土地や建物
- 法人登記
- 各種備品など
- 知的財産登録
- 各種市場調査、マーケティングなど
- 事業にかかる技術指導
ほかにも、自治体に申し出れば許可が出る経費もあるため、一度自治体に相談することをおすすめします。
起業型地域おこし協力隊の成功事例
こちらからは、実際に地域おこし協力隊として活動し、起業した人の成功例を紹介します。
広い敷地で牧場経営
畜産が盛んな地域で、地域おこし協力隊として派遣されていた、元警察官の人がいます。警察としての知見を生かし、地域警察への協力や防犯などを行っていました。
任期終了後、現地の広大な敷地を利用して牧場を経営すべく、地域の酪農家のもとで、動物の世話をしたり雑務をこなしたりと、起業への準備を進めているそうです。
この人は、昔から自然と戯れることが好きで、自然の多い自治体に地域おこし協力隊として派遣され、その生活の中で牧場経営というビジネスにたどり着きました。
また、地域の人々との交流を深めることで、地域の子どもたちにスポーツを教える支援も行っているとのことです。
海産物の加工品製造
海外で、長らくボランティア活動に従事していたある人は、水産業が盛んな地域で海産物の加工品製造・販売のビジネスを始めました。
日本に帰国してから、全国へ旅行する機会があり、その中で地域の海産物に出会ったことから、地域おこし協力隊として活動したのだそうです。
そして、海産加工に惹かれて以降、地域の人々の力を借りつつ専門知識を学び、加工品の製造に恵まれた地域で日々邁進しています。
将来的な目標は、海外を飛び回っていた経験を生かし、海産加工物を通じて地域の魅力を全世界に発信して観光客誘致をおこない、さらに事業を海外進出させることです。
地域の材木による木工
ものづくりが好きで地域おこし協力隊として派遣された人は、派遣先の木材を利用して身の回りの道具や彫刻作品を制作するビジネスを起ち上げました。
隊員として参加する前に、家具などのメーカーに勤めていた経験を活かし、木工技術に加えて地域の生き物をモチーフにしてデザインした作品を作っています。
美しく品質の高い木工作品を作るためには、良質な材木を手に入れることが課題です。そこで、林業が盛んな派遣先の材木に着目しました。
展示会などで多くの人々に作品を知ってもらい、将来的に販路を広げることを目標に掲げています。
地域の魅力を映像化
地域おこし協力隊の隊員になる前に映像制作に携わっていた人は、派遣先の地域に住む人々のドキュメンタリー映像を制作し発信しています。
人の歩みや心は制作者の想像を遥かに超える時があります。その部分に面白さを感じ、映像の中でもドキュメンタリーを選んだそうです。
ドキュメンタリーを作り上げることは、まさに地域の人々との交流であり、何気ない生活を切り取って発信することは、地域のアピールになりえます。
地域の魅力を映像に収めて発信することから始め、ビジネス展開としてはローカル放送局を起ち上げて、住民の身近に寄り添う番組づくりを目指しています。
デザインで地域のブランディング
都市部でデザイナーとして活躍していた人は、地元への思いを募らせていくうちに、都市部でなくともデザインの仕事ができることに気付いたそうです。
地域おこし協力隊として地元に戻った当初は、都市部から発注される仕事を受けていましたが、徐々に地元のブランディングを目的としたビジネスにシフトしています。
地域の店やイベントで使用するロゴデザインやパンフレットデザインに注力しなかった人々からも次々に声をかけられ、大々的なPRを担うようになりました。
ビジネスの展望は次のステージに進んでおり、地域の空き家を活かしてアトリエと民泊ができる施設を経営することを新たな目標にしています。
子どもたちの遊び場の運営
過疎地などで生活する子どもたちに地元への愛着や思い出を与えるために、子どもの遊びスペースの運営を始めた人も、地域おこし協力隊のひとりでした。
施設としての遊び場を提供するだけではなく、遊具やギミックなどを取り込んだ車で移動して遊びを提供するビジネスも、人気を博しているそうです。
また、小学校以上の子どもたち向けに、勉強や放課後のコミュニケーションに使えるスペースを作ったり、イベントを行ったりすることも、ビジネスの一部です。
このようなビジネスにより、子どもたちがその地域で暮らすことを楽しみ、長く住み続けたいと思ってもらうことが期待されます。
地域農業の活性化
放置され機能していない田畑が問題視されている地域で、地域おこし協力隊として田畑を利用し新たな名産を作る取組みをおこなっている人がいます。
利用されていない田畑の増加や農業の後継者不足は、地域にとって深刻な問題でした。その問題を直接的に解決するために、農業ビジネスに着手しました。
田畑で栽培するものは、地域の気候での生育に適したアボカドです。
将来的には農業イベントを通じてアボカド栽培に従事する人口を増やしたり、アボカド料理を提供する店舗経営も考えているそうです。
地域おこし協力隊で起業したい人向けQ&A!疑問を解決
地域おこし協力隊に関してよくある疑問を、下記にて解決していきます。
年齢制限について
地域おこし協力隊の年齢については、自治体によって制限があることが多いです。一般的には、20歳~40歳前後に設定されるケースが見られます。
年齢に制限が設けられているのは、長きにわたり地域に貢献してくれる人材を募集したいという意図からであるといえます。
平均的な任期について
前述のとおり、地域おこし協力隊の任期は1年~3年程度とされています。延長の申し出が許可された場合でも、最長で3年が一般的です。
その間に、地域とのコミュニケーションや起業への準備をおこない、任期終了前もしくは任期終了直後に起業し定住できます。
起業までの給料について
地域おこし協力隊として活動している期間の給料については、自治体によって異なるため一概に示すことはできません。
しかし、総務省の資料によると、国から自治体に支給される経費があり、任期中には隊員ひとりあたり最大480万円、報償費として280万円などの設定があります。
起こりやすいトラブルについて
地域おこし協力隊として地域に派遣された時、任期中の給料だけで生活することが難しい点や、その地域に住んでいる人々との確執が生まれやすい点に注意が必要です。
特に、地方の人々は都市部からの移住者の受入れを拒むケースが多いことから、自ら地域に貢献する活動を積極的に行いましょう。
求人窓口について
隊員の求人については、各自治体もしくは「移住・交流推進機構」のホームページを参照してください。
要項に基づいて応募し、選考により地域おこし協力隊としての派遣が決定します。
まとめ・起業準備する前に!地域おこし協力隊の事例や補助金を確認してみよう
地域おこし協力隊は、人口が減ったり高齢化が進んだりしている自治体に出向き、地域の魅力発信や支援などを行う制度です。
この活動には地域での起業も含まれており、任期中もしくは任期終了後に起業して暮らしている人も少なくありません。
地域から新しいビジネスを創出することは、地域経済を活性化させ、自治体や住民を豊かにすることにつながります。
この機会を利用し、ビジネスへの情熱をもって地域おこし協力隊に参加してみてはいかがでしょうか。
創業手帳冊子版では、起業型地域おこし協力隊に参加することによる起業方法などを詳しく解説しています。地方での起業をお考えの方は、ぜひご参考にしてみてください。
(編集:創業手帳編集部)