資本金、資本剰余金、資本準備金はどう違う?
資本金と資本剰余金、資本準備金の違いを解説!会社設立と会計で抑えておきたい情報とは?
「資本金」は、会社設立時に設定する必要があり、聞きなれた言葉で意味も大体分かりやすいものですが、その他に関連する「資本剰余金」、「資本準備金」についても理解していますか。
会社経営者にとって、財務や会計の知識は大切なものです。自社の決算書の内容を読み解くことができれば、常に自社の状況を数字で把握することができます。
「資本金」「資本剰余金」「資本準備金」は、設立時だけでなく経営していく中でもコントロールすることが必要となり、債権者や株主など、外部との関係も左右するものなので、しっかりと知識を付けておきましょう。
ここでは「資本金」「資本剰余金」「資本準備金」の概要や適切な金額、考え方を解説します。
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この記事の目次
資本金とは
「資本金」は、経営に携わらなくとも見たり聞いたりする機会が多いです。今回ご説明する三種類の中で、最もなじみのある言葉ではないでしょうか。
資本金は開業時に準備する会社設立のためのお金で、会社の体力や規模を表わします。
開業時に準備する元手資金
資本金とは、事業を始めるにあたって株主が出資したお金を指します。開業の準備のための元手であり、会社の初期の運転資金です。多くのスタートアップ企業では、投資家から出資を受けるのは難しいため、経営者本人が自己資金を投じて資本金とします。
資本金は金融機関などからの借入金と違い、返済義務のない資金であるため、金利もかからず、返済期限も心配する必要がありません。
資本金が多ければ、資金繰りは楽になり、経営が悪化した時も持ちこたえることができるので、資本金=企業の体力と考えられています。一般的に資本金が多いほど体力があるとみなされ、信頼性が上がります。
銀行融資や新規取引時などに、資本金によって会社の安定性や信用性を見られることもあります。自己資金が多いほど、融資の審査に通りやすく、取引先からの信用が得やすいと言えるでしょう。
また、大規模な設備導入や人員確保などを行わなければいけない事業では、初期費用として資本金を多く準備する傾向があります。
資本金の金額のルール
以前は資本金の下限が会社法で決められていて、株式会社の場合1,000万円、有限会社設立ならば300万円の資本金が必要でした。しかし、新会社法の施行後は1円からでも会社を設立できることになっています。
ただし、実際に1円で会社を設立するのは現実的ではありません。前述したとおり、資本金は会社の体力を示し、信用度として見られることも多いため、信用に足るだけの最低限の金額は必要となります。
融資を受ける際も資本金で左右されるものです。融資によっては受けられる資本金額が決まっていることもあります。
また、事業の内容によっては許認可が必要となることもありますが、一定額以上の資本金がないと認可がおりないケースもあります。
例えば、職業紹介事業や一般建設業では、許可要因として500万円以上の資本金が必要です。
資本剰余金とは
「資本剰余金」とは、会社設立時に株主から集めた資金の中で「資本金」にしなかったものを指します。つまり「資本金」以外の元手資金です。
「資本準備金」と「その他資本剰余金」に分類
資本剰余金は「資本準備金」と「その他資本剰余金」に分かれます。
資本剰余金のうち、資本準備金は配当できませんが、「その他資本剰余金」は株主への配当に当てることができます。利益が十分に出なかった時の配当の原資となるお金です。
資本準備金とは
「資本準備金」は、先に説明した通り「資本剰余金」の中の一つです。
将来的な支出や損失に備える積立的な役割りを持っています。
資本金は、会社設立後「増資」や「減資」という形で増減ができますが、資本金額を変えるためには、登記変更手続きや株主総会の特別決議も必要です。手続きには1か月ほどかかり、また、資本金を減らして損失の補填を行うなどすると、会社の信用にかかわります。
一方、「資本準備金」は簡便な手続きで取り崩して使うことができます。そのため、将来の多額の支出や損失に備える積立金のようなものとして、「資本準備金」という使いやすい形でプールしておきます。
資本準備金は資本金とバランスをとる
資本準備金は資本金の額をコントロールするのに用いることができます。
資本金は多い方が安心ですが、資本金の額が増えると、資本金の額を基準として課される税金や外部会計監査の義務の負担などが増えます。
そのため、資本金として準備した金額を資本準備金に分けて負担を回避することが大切です。
資本金を1億円以下にすると、中小法人として法人税率の軽減を受けられます。また、企業の規模を基準に課税される外形標準課税も対象外です。
消費税については、会社設立時の資本金が1000万円未満であれば、設立後2年間は原則免除となります。
資本準備金の金額のルール
資本準備金の金額のルールは、会社法で定められています。
「資本金として計上しないこととした額は、資本準備金として計上しなければならない」(会社法第445条第3項)
つまり、準備しておいた自己資金や株主からの出資金のうち、一部を資本金として設定した後、資本金の二分の一を上限として、資本準備金にできます。
例えば、資本金1,000万円を準備した場合、半分の500万円未満は資本準備金にすることができるということです。
資本金は多いと経営を安定させやすくなりますが、資本金が多すぎると節税の面などで不利なこともあります。
そのため、資本金として準備したお金はバランスよく資本金と資本準備金に分散させ、節税効果とリスクへの備えを両立させます。
資本金・資本剰余金・資本準備金のおさらい
ここまで3種類の「資本○○金」の説明をしてきました。
どれも似た言葉のため混乱しやすいかもしれません。そこで最後にもう一度特徴を整理します。
- 「資本金」
-
- 純資産の部に記載される科目
- 会社の経費には使えない
- 設定後の増資・減資が難しく簡単に変えられない
- 会社の信用力につながる
- 金額が大きくなれば税額なども上がるためバランスを取ることが必要
- 「資本剰余金」
-
- 純資産の部に記載される科目
- 「資本準備金」と「その他資本剰余金」に分類される
- 「資本金」以外の元手資金のこと
- 「その他資本剰余金」は株主の配当に使える
- 「資本準備金」
-
- 純資産の部に記載される科目
- 「資本剰余金」の中の一つ
- 将来の支出や損失に備える積立金のようなもの
- 資本金の2分の1未満の額
資本剰余金については、「利益剰余金」という似た用語もあります。しかし、利益剰余金は会社の利益を積み立てたお金を指し、資本剰余金とはまったく性質が異なるものです。
まとめ
資本金、資本剰余金、資本準備金は専門的な用語でなかなか分かりにくいですが、会社を設立・経営する上では理解すべき要素です。
起業の際には、資本金の金額の設定の仕方や金額目安を知り、資本準備金や資本剰余金の役割の必要性を検討することが大切です。
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(編集:創業手帳編集部)