海外企業との遠隔商談1000回!「リモート商談の達人」が語る遠隔商談術
遠隔商談のコツとは?プロが教えるコロナに影響されない働き方
(2020/04/03更新)
現在、新型コロナウイルス感染の影響もあり、リモートワークや遠隔商談の普及が急速に進んでいます。こういった働き方は、災害などのトラブル時にも影響を受けないため、非常に注目されてきています。
また、Zoomやベルフェイス、Whereby(旧appear.in)、interCOMといった、様々な遠隔商談のツールも普及してきました。今回は、リモートによる仕入れ先開拓や海外商談を1000回以上こなす遠隔商談の達人、氏家真氏に、遠隔商談のコツやリモートで仕事を円滑に進めるテクニックを聞きました。
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北海道大学理学部卒、国際大学大学院国際開発学修了。株式会社ジャフコにてライフサイエンス投資、アジア投資先企業の日本市場進出支援に従事。韓国ソルトルックス社(Saltlux, Inc.)日本支社長として、OEM事業提携など日本市場開拓。クラウドクレジット株式会社にて、世界25カ国で金融機関を中心とした海外提携企業を開拓。
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この記事の目次
遠隔商談のキーワードは「フォローアップ」と「認識の共有」
氏家:最近独立したのですが、それまでは海外融資に特化した貸付型クラウドファンディング企業や、外資系ベンチャー企業に在籍していました。
外資系ベンチャー企業では日本支社長を勤め、日本と海外との間を取り持つ立場を経験してきました。
クラウドファンディング企業では、中南米、東欧、アフリカなどの新興国を中心に、およそ25カ国で商談を行ってきました。海外企業との商談回数は、1,000回以上にのぼります。
海外のイベント運営企業との参加条件交渉や、イベントで名刺交換を行った海外の金融機関とベンチャー企業との融資条件の交渉などの商談を担当しました。
独立した現在は、クラウドファンディングで海外の商材を日本に輸入する企業から、商談支援の依頼を多く受けています。
氏家:目から鱗のような話ではないので恐縮ですが、対面による商談と同じで、事前の準備とフォローアップが大切です。
例えば、海外企業とのやり取りでは時差が発生するので、どちらの国の時間帯を前提に話しているのか、しっかり確認しておく必要があります。
メールやチャットなどの文字でやり取りしておかないと、間違えてしまうこともあります。確認を忘れて、退社間近にアフリカから電話が入ったり、夜中に中南米からSkypeがかかってきて起こされたこともありました。
時差があるという認識がない相手の場合は、海外との取引に慣れていないことを意味するので、実際に取引が始まってから苦労することもあります。
また、リモートによる商談を始めた当初は、顔の分からない相手と通話だけで商談を進めることに違和感がありました。そのため、会議の最初にお互いの顔を映像で映すことによって、リラックスして会話できるように行っていました。
数をこなして慣れてくると、時間的な効率を優先するようになり、顔を知らないまま相手と商談することが気にならなくなりました。
イベント運営会社との交渉であれば、前年実績の参加者数や最低価格の参加費、金融機関との融資交渉であれば、許容可能な金利や金額など、商談の種類によって、抑えておくべきキモが明確になったからかもしれません。
氏家:英語による会議では、お互いに意思の疎通ができていたのかを確認する必要があります。話し合った内容のメモを送り、認識のずれを起こさないようにしていました。
また、誤解なく進めるためにスクリーンを共有し、資料を映しながら説明するなど、資料の同じページを見せることで、誤解なく進めるようにしていました。
もし、カメラでこちらが映っていないのであれば、相手が話している時はこちらのマイクをミュートにして、チームで作戦を練ることも効果的でしょう。
- 準備とフォローが大事!普通の商談と基本は変わらない
- メールやチャットでテキストで記録を残しておく
- スクリーン共有機能などで相手に資料を見せておく
- マイクをミュートにして、こちらで作戦会議という小技もアリ!
遠隔商談は時間の節約にもなり、スムーズに商談ができる
氏家:物理的に離れていて会えない相手、特に海外の相手と商談を進められることですね。方向性を口頭で固めたあと、具体的な条件を書面ですり合わせ、最後に契約の締結をするのに先方の拠点へ訪問し、握手するだけといった進め方ができます。
電話するよりも、アプリで話せば通信料が安いという点も魅力ですね。
すでに面識のある相手との商談では、顔を見せるために時間を使って移動することが、時間の無駄となってしまうこともあります。こういった移動時間のロスを避けることもできます。
また、情報伝達ツールのメリットとしては、メールよりも人間の体温やニュアンスが伝わりやすい点です。文章だけでは、内容がぶっきらぼうに感じてしまうこともあり、トーンが伝わりにくいといった場合もありますが、こういったツールを用いると、行間の意味が取れるため商談がスムーズに進むこともよくあります。
氏家:移動時間の節約や電話よりも細かく情報を伝えられるといったことは、日本のビジネスパーソンや起業家も活用するべきメリットがあります。
サービスのリリース後や商品の販売後など、面識のある相手との定期的な打ち合わせのようなルーティーンであれば活用しやすいと思います。
たとえば、北海道と沖縄間であっても、現在のようにコロナによる影響で移動の制限がある環境下では、映像や音声、ファイル送信を駆使して、より営業的な目的にも活用できるでしょう。
- 離れた相手とも会話できる
- 移動ロスがない
- メールよりもニュアンスが伝わりやすい
- 細かいフォローがしやすい
遠隔だからこそ気をつけるべき注意点とは
氏家:相手が目の前にいないので、良く言えば相手の圧をあまり感じなくなりますが、逆に失礼な対応にならないように注意しなければなりません。
また、使用している機器の電池が途中で切れないよう、事前に充電しておきましょう。
音声が聞こえない、相手のなまりが強くて何を言っているのか分からない場合もあるので、注意深く聞き取ることも重要です。
あとは、通信が重い時には映像を切り、音声通信だけでやりとりすることで、通信品質が安定します。
相手によって異なる複数のアプリを使うことになるので、初めて使用する場合は、事前にテストしておくことで落ち着いて話すことができます。
- 相手のプレシャーを感じなくなりやすいので、失礼な対応にならないように!
- 電池と電波の状況を確認しよう!
- 通信が重い時は映像を切り、音声通信だけにしよう
- 事前のテストは必須
商談相手の国によって使い分けるオンライン会議ツール
氏家:使うことが多い順に紹介すると、Skype、WhatsApp、Zoom、Google Hang Outです。とくにSkypeは「老舗」であり、世界的に最も普及しているようで、どの地域の商談相手でも、一番使うことが多かったです。
欧米やアフリカの企業の場合は、WhatsAppを使用することが多かったです。WhatsAppは、音声を中心に電話として、場合によってはテキストで簡単なやりとりをするために使っていました。
また、東南アジアの企業とは、LINEでコミュニケーションを取ったこともあります。
氏家:あくまでも私の印象ですが、SkypeはWhatsAppよりも回線が途切れることが多い気がします。さらにWhatsAppは電話番号がIDになるため、IDをわざわざ覚える必要がないので管理が楽です。
欧米系の企業と使うことがあるZoomやGoogle Hang Outは、音声品質が良いです。有名なビジネスチャットアプリのSlackにも通話機能が付いているのですが、Slackで会議を行ったことは一度もないですね。チャットの印象が強いからなのでしょうか。
個人的にLINEはプライベートでも使うので、相手とつながることに、少し心理的な抵抗感があります。
ツール名 | 特徴 |
---|---|
Skype | 普及率が高い |
Zoom | 音声品質が安定 ビデオ会議に良い |
電話番号がIDになるので覚えやすい 欧米圏の普及率が高い。日本では普及率が低い |
|
LINE | 手軽 プライベートと分けたい場合には抵抗がある |
Slack | 通話機能が付いている。チャットのイメージが強い |
Google Hang Out | 音声が安定 Google系が好きな人にとっては良い 普及率はいまいち |
通話機能に限っていえば、どのツールでも使い勝手についてはそれほど悪くはないといった印象です。
アフリカでは、通信環境が悪いため、従来の電話だけでやりとりしていたこともあります。
また、地域によらず弁護士事務所の場合は、自社採用の電話会議システムにダイヤルインする方法しか認めないという場合も多いです。
氏家:日本国内では会社から発信するため、Wi-Fiの通信環境は問題ないです。
通信環境とは違いますが、備品の台数の関係でPolycomのような電話会議システムを使えない場合、パソコンのマイクでは音声を拾えないこともあるため、念のためにヘッドセットを使います。
ただ、パソコン内臓のマイクの集音機能は年々進化しており、専門の装置が無くても、パソコンできれいに音が拾えるようになってきています。
海外に発信する場合は、ツールにより品質が異なる場合があります。安全策はWhatsAppですが、それで品質が確保できなかったときには、正直打つ手がありません。
音声品質が悪いと、こちらも確認のために声を張ることになるので、会議室から発信することになります。
今後はリモートワークや遠隔商談が主流になっていく可能性も!
氏家:そういった使い方も良いかもしれませんが、私の経験上、面識がある相手との商談フォローアップのために使う方が効果的だと思います。
たとえば、展示会などのイベントではバタバタしてしまうので、名刺交換をして立ち話程度にしか話せなかった相手と、詳細確認のためにリモートで会議を行うことが多々ありました。最終的には、先方の会社を訪問して業務実態を確認し、契約締結という流れになります。
また、海外イベントへの参加の条件交渉を行う場合などには、遠隔によるコミュニケーションだけで支払いまで済ませ、会場で軽く挨拶を交わすだけといった時もあります。
通信環境は年々改善してきていることもあり、今後はより一層、対面で会っているのと同じようにコミュニケーションが取れるようになっていくと考えています。
氏家:将来的に、リモート商談ツールの品質は、相対でのコミュニケーションに近づき、間違いなく一般的に使われるようになるでしょう。
私の経験上、遠隔商談に慣れてくると、直接会わずに商談が完了するといったことに対する心理的な抵抗感が減っていきます。店頭に赴かないオンラインショッピングは生活に浸透していますよね。遠隔商談もいずれ一般的に定着するのではないでしょうか。
氏家:昔の仰々しい電話会議のイメージしかなく、最近のアプリを使ったことがない方には、ぜひ一度試してほしいです。ものすごく簡単に始めることができますし、機能も日々進化しています。録音はもちろん、音声の認識からテキスト化まで簡単にできます。
さらに、Google翻訳の精度も飛躍的に向上しており、リアルタイムで音声翻訳ができるようになる日もそう遠くはないと思います。こうした商談に活用できるツールを使いこなして、海外ビジネスにどんどん挑戦してみてはいかがでしょうか。
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(編集:創業手帳編集部)