ゼロから始めよう!中小企業のブランディングとは

広報手帳

あなたのブランド戦略、ロゴマークで終わっていませんか?

(2016/06/08更新)

「自分の会社は小さいからブランディングなんてできない」と思っていませんか?
実は現在の変化の激しい経営環境において、中小企業こそブランドが必要なのです。そして、今のネット社会ではお金をかけずにブランドを育てていくことができます。
そこで、スタートアップや、創業して数年が経過した企業がブランドをどのように育てていけばよいのかを解説します。

ブランドが必要な5つの理由

そもそもブランドはなぜ必要なのでしょうか。

1.信頼を得る

新規の取引先を開拓するには、時間をかけて信頼を得る必要がありますが、ブランド力があれば、時間をかけずに取引先からの信頼を得られます。

2.お墨付きがもらえる

営業が訪問して「自社の商品(サービス)はこんなにいいんです!」と言ってもなかなか信じてもらえませんが、他の人が「この商品はいいよ」と薦めると信じる傾向にあります。

ブランド力があれば、他の人からのお墨付きをもらったのと同等にみなされます。

3.選ぶ理由になる

顧客は、その商品(サービス)を選択する理由が欲しくなるものです。

その場合に、認知されているものであれば、それだけで理由づけになるため、選択されやすくなります。

4.多数の会社から支持される

顧客は自分の決断ではなく、大勢の他人の決断に左右される傾向があります。

ブランドが認知されていると「多くの企業(人)が支持している」と見なされます。

5.マーケットを広げる

「自社の商品(サービス)はこのマーケットでしか売れない」と思っていませんか?商品の寿命が少なくなったとしても「リブランド化」を行えば、少ない労力で新しいマーケットにリポジショニングすることができます。

「ロゴマークを作ればブランドになる」のウソ

ではどのようにしてブランドを作っていけばよいのでしょうか。

誰も知らない企業の商品は、存在していないのと同じことで、そのままでは売れません。

その対策としてよくあるのが、ロゴマークを作って名刺や封筒、看板、ホームページにロゴマークを入れること。

ロゴマークがあれば、会社や商品の認知度があがると思いがちです。

しかし、ブランドの本質とは、生活者が会社や会社の商品のことを「いいなあ」と思ってファンになり、信頼を寄せることであって、企業がロゴマークを使って自ら売り込むものではありません。

アップルに学ぶブランディング

例えばアップルは誰もが知っている「革新的でクール」なイメージの企業ですが、ガレージでコンピュータを作っていたころは誰にも知られていない会社でした。

経営者のビジョンでコンピュータの新たなマーケットを開拓

そのアップルが一躍脚光を浴びたのはコンピュータの新たな領域を開拓したからです。

アップルが安価なコンピュータを発売したことによって、従来のコンピュータが10人に1人しか導入されなかった時代に「1人1台のコンピュータ」という新たなビジョンを示したのです。

そして、次に「コンピュータが世界を変える」をビジョンに送り出したのがMacintoshでした。

当時のコンピュータはその当時コンピュータはキーボードから文字の入力で操作するインターフェース(CUI)で一般の人には使いづらいものでした。

そこでアップルは、ファイル・フォルダー・ディスクトップといった概念を作りマウスを使って直感的に操作するインターフェース(GUI)のコンピュータをリンゴのマークをつけて売り出しました。

ロゴマークの旗印に社員もファンも集まる

経営者の情熱とビジョンが創りだした製品の未来感、世界観に共感し、社員は「世界を変える」を実践するためにエバンジェリストとなってMacintoshの普及に努めました。

アップルで働く人すべてがもつ信念になりました。

誰でもすぐに使えるコンピュータは人々に熱狂をもって受け入れられました。

それはリンゴのマークだからではなく、「世界を変える」革新的なGUIのコンピュータだからです。

人々はあまり信用のない小さな会社にもかかわらず、こぞってアップルのコンピュータを購入しました。

また、生活者はアップルのステッカーを喜んで貼り、リンゴを見るとMacintoshを思い浮かべ、リスペクトするようになりました。

このようにアップルがロゴマークや広告戦略でブランドを作ったのではなく、製品や会社のファンがブランドを作ったのです。

ブランドを作る5つのプロセスとは?

アップルの例を見てもわかる通り、ブランドは事業を行う上で欠かせないものです。

事業の立ち上げからブランドが出来上がるまでのプロセスが成功のカギとなります。

このプロセスをさきほどのアップルの事例と対応させてご紹介しましょう。

1.生活者が待ち望んでいるものをビジョンとして言葉にする
→「一人一台のコンピュータ」をビジョンに掲げる

2.ビジョンを実現できるアイデアを作る
→普及するために「安価なコンピュータ」というアイデアを創出する

3.アイデアを実現するために必要な専門知識を持つ
→革新的なコンピュータを作る専門知識を獲得

4.強い意志でアイデアを長続きさせる
→「コンピュータで世界を変える」ため革新的なMacintoshを開発

5.ビジョンを同じくする仲間を増やす
→経営者のビジョンに共鳴した社員が「世界を変える」を実践するためにエバンジェリストとなってMacintoshを普及させ、ファンを増やす

ビジョンがあればアイデアが創出でき、アイデアが実現できる専門知識があれば製品が作り出せます。

そして、ビジョンを投影した製品の世界観に共感した人達が増えてきたら、思いを一つにする旗印としてロゴマークが必要となってくるのです。

スタートアップ企業のブランドの育て方

このようにブランドを育てていくのですが、起業してからファンを獲得するまでには1年近くはかかります。

まずは種をまき、少数のファンを獲得し続ける仕組みを作らなくてはいけません。

そして、地道に少数のファンを獲得し続けて、経営の核となる実績を作っていきます。

ここまでブランドが育ったら、今度はパブリシティ戦略でファンの量産化を狙います。

広告では手に入れることのできない信用と知名度を得ることができ、ファンとの関係も深まります。

このように丁寧にビジネス化を図っていくと次第に顧客がリピートし、コミュニティが出来あがります。

そこに旗印となるロゴマークがあれば帰属意識を刺激され、顧客がファンに変わっていきます。ブランドはこのように自然に出来上っていくのです。

商品衰退期に中小企業が陥りがちなワナ

これまでは起業してからブランディングするまでのプロセスをご紹介しましたが、何年も継続している企業の場合はどのようにブランドを育てていけばよいのでしょうか。

多くの事業は商品のライフサイクルの衰退期にひきずられて終焉を迎えます。

どんな事業も生き残るために創意工夫を繰り返し脱皮していきますが、社会の変革と共に事業の寿命が短くなっていると言われています。

売上がピークまで登った後は、あっという間に半分近くまでに落ち、利益ベースで赤字が出るか出ないかまで落ちます。

「夢よもう一度」と成功体験にしがみついて再生を試みようとしますが、成功した時とは時代が違い、売り方も、購入パターンも違っているため売上は戻りません。

焦れば焦るほど蟻地獄のように深みにはまり、施策を打っても売上の減少が続き、企業の業績が悪化します。

中小企業は一つのヒット商品を基にカテゴリー展開し事業化している場合が多く、その商品と共に企業自体も衰退していく道をたどるケースが多いのです。

商品の売上が急速に落ちるのは、ブランドが高齢化して時代遅れになっているからです。

そのため、
・今あるブランドを生かして「リブランド化」してポジションチェンジをする
・新しい時代に向けた新しいブランドをつくり出す
のいずれかの対策を打つ必要があります。

「リブランド化」のススメ

例えば高級食器を売っていた会社がオーダーメイドキッチンの事業へ進出する場合、ブランドのある会社は販促費などの広告コストが少なくて済みます。

一から新たに認知度を上げなくてよいため、最初から大きな優位性があります。

生活者にとってもブランドの信用に裏づけられた一定の質を努力せずに手に入れることができ、ブランドの新しい価値を見つけることができます。

このように会社にとっても顧客にとっても魅力的な姿へ脱皮するのが中小企業の経営マネジメントです。

ブランド化するのは中小企業が商品のライフサイクルにひきずられずに生き残るための戦略なのです。

ブランドは経営者のビジョンから

いままでは、ブランドをつくるためには多大な投資と3年から4年という時間を必要としたため、中小企業では手を出すことができないものでした。

それなのに、企業の規模にかかわらず、「なぜあなたの会社から買うべきか?」という問いに対して明確で説得力のある答えを訴求する必要がありました。

つまりこれこそがブランドをつくらなければいけない理由の一つなのです。

中小企業の弱点の一つは訴求力の弱さなのですが、今ではインターネットをつかえばすべての企業が映像・画像を世界に向け発信できるようになりました。

今までは億単位の費用が掛かったものが無料でできます。

経営者の強い思いをコアメッセージとして言葉とビジュアルでデザインし、商品情報と共に発信することができます。

シリコンバレーの出資者は、「だれがどんな思いでこの事業をしているのか」がまず知りたいと言います。

重い責任を伴う経営者の言葉は社会的なソリューションであればあるほど人の心に響きます。

経営者がリーダーとなって自らビジョンを示し、理念を体現するからこそ社員は熱狂し生活者はその熱に巻き込まれ、商品にフォーカスがあたるのです。

その商品が生活者の希望をかなえる商品ならばイノベーターが周りの人に広めてくれます。お客様がエバンジェリストとなるのです。

中小零細企業だからといってブランドができないのは昔の話です。

必要なのはブランドを自社の重要な経営資産と位置付けてブランドのための計画に時間を割くことなのです。

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(監修:CEOブランディング デイレクター四倉清志(よつくら きよし)
(編集:創業手帳編集部)

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