監査とはどんなことをするの?経営者が知っておきたい監査の目的や内容について解説

創業手帳

健全な会社経営のために行われる監査とは?その目的や必要性、内容について解説します。

監査とはどんなことをするの?経営者が知っておきたい監査の目的や内容について解説
会社が健全な経営を行っているかどうかについて、様々な立場の監査人により経営状況を把握し、報告する作業が監査です。

一定の条件を満たす会社が監査を受けることは、法律によって義務付けられています。
その理由は、会社を支える立場の人々に、経営の健全性や整合性を周知させるためです。

今回は、監査を行う目的や必要性、実際に行われる内容について解説します。

※この記事を書いている「創業手帳」ではさらに充実した情報を分厚い「創業手帳・印刷版」でも解説しています。無料でもらえるので取り寄せしてみてください

この記事の目次

監査とは何か


監査は、会社の経営状況について問題がないかを洗い出すために重要な作業です。
そして、もし問題点が見つかった場合には、早急に経営体制の見直しを図ることが求められます。
こちらでは、監査の概要について説明します。

監査の意味合いとは

監査の言葉の意味は、何らかの事柄について監督・検査を行うことです。
会社に対する監査は、経営状況が法律および会社規定に則ったものかを監督・検査することと言えます。

監査では、経営状況が把握できる財務諸表や各部門の業務実績の情報を収集し、健全かつ合理的な経営が行われているかどうかを確認します。
監査をクリアできれば、会社の信用が上がるだけではなく、浮かび上がった問題点について社内の組織体制や事業計画の見直しを行い、解決に導くことができるでしょう。

監査はなぜ受けなければならないか

[tn1] 監査を行うことが求められる理由は、特に規模の大きな会社において、経営を支える株主や投資家および債権者に対して、経営実態を明確に示す必要があるためです。
これらの立場の人々は、形は違えど会社に対して出資を行っています。
そして、出資先の会社の経営状況が思わしくなければ、損害を被ります。
会社は出資を行う人々に、経営についての健全性や整合性を示し、信用を担保することが必要です。

そこで、公正な目線で経営状況をチェックする監査を行うことは必須であり、出資を行う人々に対して安全を保障しなければなりません。
監査は、後述のように分類によっては会社法・金融商品取引法に基づき、一定の条件を満たす大会社に対して義務付けられています。

監査の分類


監査にはいくつかの種類があり、担当する監査人の立場や監査の対象によって分類できます。その分類を把握しておくことで、それぞれに適切な対応を行えます。
下記では、監査の分類について解説します。

監査人の立場による分類

こちらでは、監査人の立場別に分類した監査を紹介しましょう。

外部監査

外部監査は、法律の規定に基づき会社法監査と金融商品取引法監査に分けられます。

・会社法監査
会社法で定められている監査では、公認会計士や監査法人が監査人となり、決算書およびそれに付随する財務諸表をチェックする会計監査が行われます。
その結果により監査人から行われるのが、内容に対する意見表明です。

会社法監査は、資本金5億円以上か、負債200億円以上の大会社について、外部監査が義務付けられています。

・金融商品取引法監査
金融商品取引法でも、公認会計士および監査法人のいずれかを監査人とし、会計監査に加えて内部統制監査が行われます。
こちらの監査では、会計監査の場合は上場会社および店頭登録株の発行、有価証券届出書の提出を行っていること、株主を500名以上擁していることなどが義務付けの条件です。

内部統制監査の場合、上場会社および店頭登録株を発行している会社に義務が発生します。

内部監査

内部監査は、社内から選出された監査人により行われるもので、それぞれの会社が任意で実施します。
任意とはいえ、会社経営においてその健全性を示すためには重要であり、内部監査を取り仕切る日本内部監査協会では、一定基準を設け経営状況の改善を目指すよう勧告しています。

監査役監査

監査役監査とは、株主総会で選任された監査役が監査人となり行われる監査です。
会社法により、資本金5億円以上か負債総額200億円以上の大会社、もしくは取締役会を置き会計参与がいない会社について、監査役の設置が義務付けられます。

監査役監査では、取締役の職務執行状況をチェックし、監査結果によって適切な助言が行われます。

監査対象による分類

[tn3] 以下では、監査の対象による分類について説明します。

会計監査

会計監査は、前述でも少し触れたように、決算書をはじめとして付随する財務諸表について、基準を満たした適切な処理が行われているか否かを確認するものです。
会計監査を受ける義務は、前述のように会社法に規定された大会社および上場会社に加え、地方自治体や一定基準を満たした社会福祉法人などにも課せられます。

業務監査

業務監査とは、仕入れや販売、製造や物流といった、財務以外のあらゆる業務について、社内規定に基づいて行われているかをチェックされるものです。
また、組織体制や業務規則もチェックの対象であり、内部監査や監査役監査で実施されます。

監査の違いによる特徴


上記のように、監査は担当する監査人や監査対象により分類されます。そして、それぞれの分類には特徴があり、すべてに目的と必要性が存在します。
では、各監査の分類における特徴とはどのようなものなのでしょう。

外部監査

外部監査は社外の第三者が行う

外部監査を担当する監査人は、会社とこれまでに取引きのない公認会計士や監査法人から選出されます。

外部監査は出資者に経営状況を周知させるのが目的

会社を支えている株主および投資家、債権者のような出資者に対し、法律に基づいた会計処理が行われているか、経営状況が健全であるかを周知させるのが、外部監査です。
財務諸表によって経営状況をチェックし、会社の信用性を出資者に明確に示さなければなりません。

出資者の利害を鑑みる必要がある

出資者が会社に出資することは、双方の利害関係によって成り立つものです。
そのため、会社の経営状況が思わしくなかったり、財務諸表に不備があったりする場合、出資者は会社に対する評価を正しく行えず、結果的に損害を受けることにもなりかねません。

外部監査では出資者に損害が出ないよう保護することも目的のひとつとされています。

外部監査の監査人を選任するには

外部監査の監査人の選出は、会社法により、監査を受ける会社との関係性において、監査以外で業務を委託されず報酬を受け取っていないことが条件とされています。
また、監査人を選任する際は株主総会および監査役による決定が求められます。
監査人は取締役の一存で決めることができません。

内部監査

内部監査は社内で自発的に実施される

内部監査は、前述のように行う義務はと法律上で定められておらず、社内の担当者が自発的かつ任意で行うものです。

内部監査の目的は合理的な経営を検討するため

内部監査では、日本内部監査協会により実施の勧告が行われており、経営体制が合理的か、また法律に抵触しないかを確認します。
日本内部監査協会では、内部監査の基準を設けており、会社内での規律を守ることや事業に取り組むモチベーション、会社の信用を向上させるためのものと定義しています。

経営目標達成のために改善策を講じなければならない

内部監査で必要なことは、経営目標を達成するにあたり適切な組織体制や制度が遵守されているかをチェックし、問題点を洗い出すことです。
もし問題が発見された場合は、規律維持や業務の合理性、会社の信用を上げるために、しかるべき改善策を講じなければなりません。

監査役監査

監査役監査は取締役の職務を監視するもの

監査役監査では、会社内に設置した監査役により、会計監査と業務監査の両面から、取締役の職務が正しく行われているかを監視します。

監査役は取締役・従業員以外の人員で決定

監査役の選任は、株式総会にて決定され、公平性を期すために取締役および従業員を除いた人員から選任されます。

監査役監査では法律違反の有無をチェックする

監査役は、取締役の職務について、法律に遵守するものであるかをチェック。
そして、監査役の権限として、取締役会において職務状況について意見することが認められています。

もし、取締役が法に触れる職務を行った場合、監査役は取締役からの報告請求や職務の差し止めなどの権限を持ち、取締役が不正を行わないように監視することができます。

監査役監査の結果は株主総会で報告

監査役監査で、会計監査と業務監査を通して取締役の職務をチェックすれば、監査役は結果を報告書にまとめ、株主総会で報告しなければなりません。

会計監査

財務諸表の適正な処理をチェックする

会計監査を行う目的とは、経営状況を数値で確認できる財務諸表により、会計処理が適正か、経営状況に問題はないかを明確にするものです。

そして、前述のように各出資者に対して、経営状況を周知させ安心できる利害関係が築けるか、出資者が損害を被らないかを明示しなければなりません。

会計監査の詳細について

・会社法監査
前述した、会社法で規定された大会社に対して義務が生じるもので、財務諸表と監査報告書を合わせて開示します。

・金融商品取引法監査
金融商品取引き方に基づき、前述の条件を満たした会社の義務です。
会計監査と内部統制監査の両面から経営状況が適正であるかを調査します。
内部統制監査とは、適正な財務諸表を作成する体制が整っているかなどをまとめた内部統制報告書を作成し、それを監査人がチェックするものです。

監査結果を報告する際は、監査報告書に加えて有価証券報告書の開示が必要となります。

監査結果は報告書にて意見表明する

会計監査では、結果をもとに監査人が報告書を作成します。
この報告書は、会社の財務情報に合わせて開示されるものであり、4段階の意見表明がなされます。その意見表明の段階とは、以下の4つです。

・無限定適正意見
財務諸表について、適正と評価されたものです。

・限定付適正意見
財務諸表はおおむね適正であるものの、一部に問題がある場合です。

・不適正意見
財務諸表が適正ではないと判断された時に出されます。

・意見不表明
何らかの理由により監査に支障が出て、適正か否かの判断ができないとされたものです。

会計監査は年に数回行われる

会計監査の回数について、会社法監査では年3~4回行うのが適正とされています。
また、金融商品取引法監査では、2ヵ月に1回以上が求められます。

業務監査の詳細について

業務にかかるあらゆる部門が対象

会計監査の対象外となる業務について、あらゆる部門を監査の対象とするのが、業務監査です。
取引先との健全な取引き状況や、製造や物流といったシステムの効率性、組織体制や業務規則など、違法性がなく適切なものであるかを判断されます。

業務監査は、主に監査役監査の一環であるほか、任意の内部監査でも行われることがあります。

内部統制報告制度との関係性

金融商品取引法監査における内部統制報告制度の遵守も、業務監査に関係してきます。

金融庁における内部統制の定義とは、以下の4つを指します。

・業務の有効性、効率性
あらゆる業務について、目標達成のために有効か、効率は良いかを評価します。

・財務報告の信頼性
財務状況が適正に報告されているか、その信頼性を測ります。

・法律の遵守
会社経営にかかるすべての法律に抵触していないかをチェックします。

・資産保全
会社内における金銭的な資産に加え、商品や備品、マンパワーや機密情報をすべて資産とし、管理保全に努めることが求められます。

子会社の業務も合わせて監視される

業務監査では、子会社を有している会社であれば、その関係性や経営状況についても監査対象とします。

子会社の取締役が不正を行わないために、親会社の監査役は、子会社の監査役と常に密な連携を取り、経営状況の把握および監視を行わなければなりません。

監査ではどのようなことが行われるのか


それぞれの監査において、実際にどのような作業が行われるのかを知っておくことも大切です。
そのポイントを把握すれば、おのずと経営状況のどこを重視すれば良いかも見えてきます。
こちらでは、監査で行われる作業やチェックポイントを紹介します。

外部監査では財務諸表を詳細にチェック

外部監査で主に重要なのは、財務諸表の中でも貸借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書の、いわゆる財務三表と呼ばれるものです。
貸借対照表では、会社の資産と負債のバランスを見ることができ、損益計算書では費用に対してどれだけの収益を得たかを把握できます。

キャッシュフロー計算書は、現預金の流入出の状況を知るものであり、会社の現金における資金繰り状況を判断することが可能です。

外部監査では、これらの書類に記載されている数値と、総勘定元帳や売掛帳・買掛帳との照合、また請求書や見積書などの伝票類まで詳細にチェックされます。

外部監査の流れ

・外部監査人の選任
会社と取引きがない公認会計士か監査法人を外部監査人として選任し、契約を締結します。
このとき、外部監査人は契約前に会社の財務状況をチェックし、リスクがないことを確認します。

・監査計画を立案する
選任された会計監査人は、会社の期首から期末までの監査計画を立案します。
この時、監査役や内部監査の担当者、また経理担当者と協議しながら計画を決めます。

・当期内に数回に分けて実施
監査計画に基づき、当期内で数回に分けて監査を行います。上記のように、財務諸表や伝票など、細かな資料まで事前に用意しなければなりません。

・棚卸しを行う
期末日になると、書類のチェックに加えて在庫状況を把握するための棚卸しを行います。
ここで、書類に記載されている数量と実際の数量が一致するかをチェックします。

・財務諸表により取引先に対し残高を確認する
期末日前後には、取引先や銀行に対して、会社で記帳した残高と差異はないかの確認を行います。
この過程で差異が生じている場合、原因を追究することが必要です。

・現金や有価証券と照合する
期末日後に、会社内にある現金や有価証券が財務諸表どおりに存在するかどうかを照合します。ここで、現金や有価証券などの管理状況を見ます。

・決算時に最終チェック
決算において、当期の数値が確定した時点で、決算書の数値に問題がないかを最終チェックします。
この時、当期内の監査で必要となった書類を用意しておくとスムーズです。

内部監査で評価されるポイント

内部監査では、以下の3つのポイントが評価対象となります。

・リスク回避策について
会社内で打ち立てているリスク回避策を見直し、その対策が妥当かつ有効であるかを見ます。
また、それにより効果的に経営目標を達成できているか、資産管理は十分かといった点も重要です。

・経営コントロールについて
経営に対するコントロール体制については、経営方針と業務目標が一致しているか、実際に目標を達成しているか、そこに至るまでの業務が合理的であるかなどを評価します。

・統治体制について
統治体制とは、会社内の規律やモチベーション向上、業務における説明責任の遂行、各部署間または取締役と監査人との適切な情報共有などを指し、これらが適切かを判断します。

内部監査はどのように行うか

・監査計画の立案
会社内の担当者によって、監査計画の立案を行います。

この時、監査対象の範囲決定やスケジュールの調整、監査過程の整理を実施し、対象部門の業務を網羅できるように綿密に計画を練りましょう。

・監査対象部門に通知、事前調査
内部監査を実施する1ヵ月程度前には、対象部門に監査の旨を通知し、必要な資料を用意してもらうようにします。
また、プロセスを事前に各部門と共有し、必要な調査を周知させます。

・準備されたデータをチェック
事前調査により準備された資料やデータをもとに、各部門で監査が必要なポイントをチェックします。
部門によって、チェックポイントが異なるため、監査計画で整理しておくことが必要です。

・監査報告書の作成
内部監査が終了すれば、その結果をまとめた監査報告書を作成します。
作成した監査報告書は、取締役および対象部門に提出し、報告。

・問題点の改善策を提案
内部監査により業務における問題点が見つかった場合、改善策を各部門責任者に提案し、具体的な改善策の回答を得ます。後日、適切に改善されているかを確認します。

監査役監査における監査役の権限とポイント

監査役監査では、監査役に対して取締役の職務をチェックするいくつかの権限が与えられています。その権限とは、主に以下の4つです。

  • 取締役や従業員、子会社に対して事業報告の請求や財務状況の調査ができる
  • 取締役会の招集ができる
  • 取締役に違法行為および規定違反があった場合、取締役の職務を差し止めることができる
  • 会社から取締役、また取締役から会社に対し何らかの訴えを起こしたとき、会社の代表となる

 

これらの監査役の権限をもとに、下記のようなポイントについて監査を行えます。

  • 取締役の職務について、法律違反や規定違反がないか監視する
  • 財務諸表が法律に則って作成されているかチェックする
  • 法律違反や情報漏洩、災害時のリスクマネジメントについて精査する
  • 内部統制について、適切な整備および運用が行われているかを確認する

監査役監査で行われる業務

・財務諸表が適切かをチェック
貸借対照表や損益計算書をはじめとした財務諸表について、経理責任者と協力して適切に作成されているかをチェック。
また、会計監査人からの情報収集も行っておきます。

・自社の資金繰り状況を分析する
財務諸表に問題がない場合でも、実際の経営状況を知るべく、キャッシュフロー計算書を参照して資金繰りについて精査します。
キャッシュフローや過剰在庫を確認し、リスクの有無も見てください。

・設備投資の状況を見る
製造などにかかる設備投資について、投資額に対してどれだけの利益が出ているかを精査。
これにより、設備投資が適切であるかを判断し、問題があれば改善策を講じます。

・不正の有無を把握する
取締役や従業員の職務を監視し、横領や盗難といった不正がないかを把握しましょう。
また、不正を起こさないためのリスク対策を講じ、場合によっては第三者委員会の設置などを行います。

・法律に抵触する動きがないかを確認する
会社に関わるすべての法律を把握します。会社法や金融商品取引法をはじめ、独占禁止法や労働基準法といった法律です。
それらに抵触する動きがないか、あった場合には再発防止策が採られているかを確認してください。

・製品の不具合情報を収集する
製品を製造・販売する事業の場合、製品に不具合が生じることがあります。
このような不具合の情報を収集し、開発設計部門や管理部門と連携し、不具合の隠ぺいを阻止します。

・セキュリティ体制を洗い出す
会社において、IT化が進む昨今では、情報に対するセキュリティ体制の強化は重責です。
現在のセキュリティ体制において、管理は適切か、管理意識が周知されているかをチェックします。

・監査調書の作成
監査役監査が終了すれば、株主総会で報告するための監査調書を作成します。
監査調書には、実施日や目的、実際に実施した作業内容に加え、監査役の所見を記載してください。

まとめ

監査とは、会社の財務や業務全般を見直すために重要な作業です。
これを怠ることは法律違反となるだけではなく、社会的信用も失い出資者からの協力を得られないなどの事態を招きます。
そのため、監査でどのようなことが行われるか、チェックすべき点はどこかといった内容をしっかり把握しておくべきです。

経営者にとっては頭の痛い問題かもしれませんが、監査をクリアしてこそ健全で信用度の高い会社となることができます。
監査について、きちんと把握していつでも適切に対応できるよう、会社内の情報を整理しておきましょう。

創業手帳(冊子版・無料)は、資金調達や事業計画など起業前後に必要な情報を掲載しています。起業間もない時期のサポートにぜひお役立てください
関連記事
普通の人が起業するには。起業の成功に大切な5ステップを創業手帳の大久保が解説!
【保存版】株式会社設立の「全手順」と流れを創業手帳の創業者・大久保が詳しく解説!

(編集:創業手帳編集部)

創業手帳
この記事に関連するタグ
創業時に役立つサービス特集
このカテゴリーでみんなが読んでいる記事
カテゴリーから記事を探す
今すぐ
申し込む
【無料】