法人・個人事業主が4月にやるべきこと|新年度の手続きと注意点まとめ
新年度スタートで整えておきたい実務のポイント準備

4月は税制改正や社会保険制度の切替が集中する起算点であり、全事業者に直接的な影響が生じる重要な月です。
これから起こる制度変更を把握しないまま放置すると、納税遅延や違法残業など法令違反に直結し資金繰り悪化を招くおそれがあります。
本記事では公的制度に基づき今すぐ確認すべき実務を整理し、1年間の計画立案に役立つ情報をまとめました。
新年度のスタートをスムーズにするためにできることからはじめてください。
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この記事の目次
なぜ4月は法人・個人事業主にとって重要なのか

多くの制度改正や保険料算定に影響する時期は、4月に集中しています。そのため年度の初動対応によって、その後の経営負担が大きく左右されます。
3月を決算月にしている法人は決算の確定と申告準備が始まるため、税務作業と資金繰り対応が同時進行する繁忙期です。
手続きや事務処理が増える一方で、4月の確認不足は納税資金不足や労務違反につながります。早期に計画を策定し、リスクを未然に防ぐようにおすすめします。
法人が4月に確認・対応しておきたいこと

法人は税務申告準備と労務手続きが同時に発生するため、法令順守と資金管理を両立させる体制整備が不可欠です。
以下では税務会計、社会保険、経営管理の3分野に分け、優先順位の高い実務を順に整理します。
各項目は国税庁や厚生労働省の公式手続きに基づく内容です。期限が設定されているので管理を徹底するようにしてください。
税務・会計・法改正まわり
法人は、毎年4月施行の税制改正や労働法改正があればその内容を確認し、就業規則や社内規程へ速やかに反映させなければいけません。
近年の法改正は、コンプライアンス遵守だけでなく助成金の受給要件に関わるケースもあるので、初動の遅れは禁物です。
さらに、3月決算法人は事業年度終了後2カ月以内に申告納税を行います。5月末が期限なので、資金繰りの調整が必要です。
この時期は、取引先への確認も増加します。
消費税の課税事業者判定やインボイス登録状況を新年度開始時に再確認して、請求書の様式が最新の適法性を担保できているか、再度確認しなければいけません。
消費税の免税・課税判定は、2年前の売上(基準期間)だけでなく、前年度上半期の状況(特定期間)によっても変動するなど複雑です。
新年度がはじまった今、改めて自社の納税状況を把握しておくようにおすすめします。
社会保険・労務まわり
昇給等で報酬が大きく変動した従業員がいる場合には、健康保険法等に基づく随時改定の対象者を速やかに確認する作業も発生します。
時間外労働を行う事業者は、労基法第36条に基づき36協定を締結し労働基準監督署へ届け出をしなければ時間外労働は違法となってしまうので、注意してください。
4月から6月の報酬額は定時決定の算定基礎として使われます。給与データの正確な集計体制を事前に整備しておくようにしてください。
経営管理・社内体制
4月は、社内の体制や人事等の経営管理にも変化が訪れます。
年間の税務期限や社会保険手続きを一覧化したスケジュールを作成することで、漏れや遅延を未然に防止するようおすすめします。
契約関係の見直しもこの時期に進めまてください。固定費やサブスクリプション契約を棚卸しし、不要経費を削減することで新年度の資金余力を高められます。
見直しの結果、役員報酬を変更する場合は原則として期首から3カ月以内に改定しなければいけません。
損金計上だけでなく、個人の所得税や住民税、社会保険料にも影響する部分なので前もって検討しておくようにしてください。
個人事業主が4月に確認・対応しておきたいこと

個人事業主は、納税や保険料負担が4月以降の時期に集中します。帳簿管理や保険料把握を後回しにすると後半に事務負担が急増してしまいます。
支払いに備えて4月に年間資金計画を立て、初動で仕組み化するようにしてください。
以下では税務、保険、事業運営の3視点から具体的な確認事項をまとめました。
税金・帳簿管理
確定申告の期限は3月中旬ですが、振替納税を利用する場合は4月中旬に所得税及び復興特別所得税の引落日があります。
国税庁が指定する日を確認して、不足が生じないよう口座残高を確保しなければいけません。
さらに5月から6月には住民税や自動車税の納付書が届きます。前年所得を基に概算税額を試算できるので、資金準備を進めておきます。
青色申告者は、日々の記帳を複式簿記で継続することが65万円控除を受ける要件です。65万円控除を受ける場合には会計ソフトも利用して入力体制を整えておいてください。
保険・年金・住民税
住民税や国民健康保険料は前年所得に基づき決定されて、6月から納付が始まります。
会社員であれば給与から天引きされるのが一般的ですが、個人事業主の場合には通知前に概算額を試算し資金を確保しておかなければいけません。
前年所得に基づく予定納税基準額が15万円以上の場合、7月と11月に所得税の「予定納税」で前払いが必要です。
4月の時点で前年実績から対象かを確認して資金を確保しておきます。
労働保険の年度更新も6月に実施されます。雇用されている労働者がいる場合は前年度賃金総額を4月から集計して支払いの準備を進めてください。
事業運営の見直し
4~6月は人事や制度が変わるタイミングであり、事業運営を見直す機会です。事務フローを見直して改善できる部分がないか調べてください。
請求書発行や入金管理を月次で締める仕組みを作ることで、売掛金の未回収や資金不足のリスクを低減できます。
生産性向上やコスト削減を目標とするのであれば、業務フローを標準化して作業時間を可視化する方法も効果的です。
個人事業主が運営を見直す場合には、会計や事務の効率化を検討してください。
事業用と私用口座やカードを分離することで、帳簿処理が簡素化され税務調査時の説明負担も軽減できます。
4月にやりがちな手続きミスとその回避策

4月は制度切替が多く、誤解や思い込みによる手続き漏れが起きやすく注意が必要な月です。
制度が変わったからと不要な手続きを焦って行うよりも、自社に該当する義務だけを正確に把握してください。
以下では実務で頻発する代表的なミスと、その回避策を具体的に整理します。
新年度=すべて4月提出と誤解する
【よくあるミス例】
新年度開始だから全員が提出義務を負うと誤解し、根拠のない届け出を探して時間を浪費してしまう。
事業年度や適用要件と無関係な手続きを無理に4月に合わせ、不要な事務負担を増やしてしまう。
【注意点】
4月は共通の提出月ではなく制度切替の時期であるため、自社に該当する義務のみ確認するようにしてください。
【改善策】
制度について把握するには所轄官庁の公式案内や法令条文を根拠にします。必要なものは期限を確認してスケジュールに落としこみます。
公式の情報をよく確認して思い込みによる作業を排除してください。
役員報酬を決議なしで変更してしまう
【よくあるミス例】
新年度の気分で株主総会や取締役会決議を経ずに報酬額を変更し、後から手続き不備が判明した。
給与額変更後に税務影響を知り、損金算入不可となる可能性に気付くケースが発生している。
【注意点】
役員報酬は定期同額給与の要件があり、事業年度開始日から3カ月以内の改定など厳格なルールが存在しています。
役員報酬を4月に変更する場合でもそれは『新年度(事業年度)』のスタートに合わせなければいけません。
【改善策】
変更前に税理士等へ相談し、議事録作成と決議日管理を徹底することが税務リスク回避につながります。
6月の住民税・社会保険料増加を想定していない
【よくあるミス例】
経営者自身の住民税が6月から増額されることを想定せず、4月・5月の手取り額を基準に生活費を使い切ってしまう。
従業員を雇用している場合、6月からの社会保険料や給与変動にともなう「会社負担分」の増加を予測できず、資金繰りが苦しくなる。
【注意点】
住民税は前年所得に基づき決定され、6月に支払い額が決定、改定されます。法人では負担する者樹保険料が増えて労務費が上昇してしまいます。
働き出して2年目の人や前年に所得が増えた人は、天引きが増えることで昨年よりも手取り額がガクンと減ることがあるので注意が必要です。
【改善策】
4月時点で「会社と個人で6月からいくら払うのか」を概算し、納税や支払いに充てるためのキャッシュを確保しておいてください。
補助金・助成金は4月に一斉開始と思い込む
【よくあるミス例】
新年度開始と同時に公募が始まると決めつけて、公式サイトの公募要領確認を怠ってしまう。
募集開始後に準備をはじめるため、事業計画書や見積書が間に合わず応募機会を逃してしまう。
【注意点】
多くの制度は公募時期が個別に設定されます。変更されることもあるので所管の省庁の発表スケジュールを継続的に確認しなければいけません。
同様に制度の対象や要件が変わることもあるので好評の都度確認が必要です。
【改善策】
4月は情報収集と要件整理の準備期間と捉え、事前に書類を整えておき、公募要領がわかった段階ですぐに行動に移せるようにしておきます。
補助金や助成金の情報は、税理士や社労士などの専門家に相談することも検討してください。
専門家であれば最新の情報を必ず確認しているので、チャンスを逃さずに応募できます。
忙しさを理由に「とりあえず後回し」にする
【よくあるミス例】
忙しいからと記帳や経費整理を後回しにして未処理が累積し、後半に膨大な事務作業が発生してしまう。
年間計画を立てず場当たり的に業務を進めるため、納税資金不足や手続き漏れが頻発する。
【注意点】
記帳や経費処理を未処理にすればミスも発生しやすくなります。年間計画を作成する時には、資金計画や手続きについても記載が必要です。
【改善策】
4月に最低限の仕組みとスケジュールを整えることで作業を平準化でき、年間の業務負担を大幅に軽減可能です。
どういった作業が発生して、どれだけの人員が必要になるかまで考えておいてください。
ただし、あくまで計画なので完璧主義に陥らないように注意します。
急に体制を変えるのではなく小さな改善から着手し、継続的に管理体制を整える姿勢が長期的な効率化につながります。
36協定の更新を忘れる
【よくあるミス例】
4月1日を起算日とする36協定の期限切れに気付かず、更新届け出をせずに残業を命じてしまう。
36協定の届け出日を把握しておらず、届け出が遅れた結果として違法状態が発生してしまう。
【注意点】
36協定は遡及適用できません。協定されていない時間外労働は違法となり、労基法に基づく罰則や企業名公表の対象となるリスクが発生します。
協定が期限切れしていた場合には速やかに労働基準監督署に届け出てください。
【改善策】
期限前に締結と届け出を完了させるスケジュール管理を徹底してください。また、協定の内容については定期的に見直すと良いでしょう。
36協定は事業所単位での締結と届け出が必要ですが、本社と各事業所で協定の内容が同一であれば、例外的として本社一括での届け出も認められています。
4月〜6月の重要実務カレンダー

4月の準備内容が5月の法人税申告や6月の労働保険更新に直結します。場当たり的に対処していると後手になってしまうかもしれません。
3カ月を一連の流れとして管理するようにしてください。
以下の実務を単発業務としてではなくタイムラインで把握することで、資金繰りや人員配置の計画が立てやすくなります。
出費と事務負担が集中する5月と6月の山場に備え、4月中に全体像を把握して先手を打つ戦略が効果的です。
| 月 | 法人の主な実務 | 個人事業主の主な実務 |
|---|---|---|
| 4月 | 36協定の届け出、3月決算法人の決算作業、昇給による社会保険改定の確認 | 振替納税(所得税・消費税)の残高確認、前年度の労働保険料集計 |
| 5月 | 3月決算法人の納税・申告、自動車税の支払い | 自動車税の支払い、翌月の住民税通知への備え |
| 6月 | 労働保険の年度更新、住民税の特別徴収額の更新 | 住民税の第1期支払い開始、国民健康保険料の通知確認 |
4月にすべきことチェックリスト

4~6月に進めておく実務は数も多く、うっかり漏れてしまう可能性があります。以下では4月にすべきことをチェックリストでまとめました。
優先度の高い実務のみを抽出しているので、今すぐ着手すべき項目の整理に活用してください。
特に、罰則や損金不算入など重大リスクにつながる手続きを中心に掲載し、セルフチェックによる漏れ防止を目的として作成しています。
すべてを一度に完璧に行うのではなく、該当項目から順に対応するようにすると実務の仕組み化を進めやすくなります。
- 【法人向け】
-
- 36協定の有効期限を確認し、必要なら締結・届け出をしたか
- 役員報酬を変更する場合、議事録の作成と期限内の手続きを理解したか
- 今年度から適用される法改正(労働条件の明示など)に対応したか
- 【個人事業主向け】
-
- 4月20日頃の振替納税に向けて、口座残高を確保したか
- 6月から始まる住民税・保険料の負担増をシミュレーションしたか
- 領収書やレシートを「溜めない仕組み」をひとつ導入したか
まとめ|4月は“義務”より“見直し”の月
4月というタイミングの本質は単発手続きの処理ではなく、年間の資金計画と法令対応を見直すための準備期間です。
安定して経営を続けるには、5月や6月に到来する納税や行政手続きの集中期を先読みし、早期に仕組み化してください。
まずはチェックリストで現状を可視化し、自社に必要な対応から着手します。
この記事ではすぐにはじめられる実践的な内容をまとめているので、経営陣だけでなく現場でも活用を推進してください。
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(編集:創業手帳編集部)






