エイジフレンドリー補助金とは。対象事業者や補助金額、スケジュールなどを解説
高齢化が進む日本において高齢者の雇用は経営者にとって責務
労働市場における高齢者の役割は高まっていますが、高齢者は労災事故の発生率が高いため、企業には高齢者が安心して働ける職場環境づくりが求められています。
中小企業にとっては負担が大きく感じられるかもしれませんが、「エイジフレンドリー補助金」を活用すれば負担を減らして職場環境の改善を図れます。
本記事では、2022年度のエイジフレンドリー補助金について解説します。対象事業者や補助金額、申請方法も紹介しますので、有効に活用しましょう。
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この記事の目次
年々増加する高齢者の労働人口
内閣府の高齢社会白書によると、全労働者に占める65歳以上の人の割合は年々高まり、2020年は13.4%になりました。
2010年 | 2012年 | 2014年 | 2016年 | 2018年 | 2020年 | |
65歳以上の割合 | 8.8% | 9.3% | 10.6% | 11.8% | 12.8% | 13.4% |
参考:内閣府「令和2年版高齢社会白書・高齢期の暮らしの動向」
65歳以上の人の割合が高まる理由は、高齢者人口の増加もありますが、高齢者の労働力人口比率(人口に占める就業者・完全失業者合計の割合)が高まっているからです。
2020年度には、65歳から69歳の人の半数以上が就業または求職しています。70~74歳を含めて、労働力人口比率は10年前と比較して10%以上アップしました。
2010年 | 2012年 | 2014年 | 2016年 | 2018年 | 2020年 | |
65~69歳 | 37.7% | 38.2% | 41.3% | 44.0% | 47.6% | 51.0% |
70~74歳 | 22.4% | 23.4% | 24.4% | 25.4% | 30.6% | 33.1% |
75歳以上 | 8.3% | 8.4% | 8.2% | 8.7% | 9.8% | 10.5% |
参考:内閣府「令和2年版高齢社会白書・高齢期の暮らしの動向」
高齢者における労働災害の実態
高年齢労働者の増加とともに、高齢者の労働災害(以下、労災)も増えています。厚生労働省の資料によると、60歳以上労働者の労災による死傷者数は年々増加し、全労働者の死傷者数に占める割合も26.6%(2020年)に達しました。
引用:厚生労働省「令和2年高年齢労働者の労働災害発生状況」
全労働者に占める60歳以上の割合は18.0%(2020年)であることから、高齢者の労災発生率が高いことがわかります。
厚生労働省の「事故の型別の分析」によると、高齢になるほど労災発生率が高まる「転倒」や「墜落・転落」「交通事故」に対する対策が、重要課題とされています。特に、高齢になると男性は墜落・転落や交通事故、女性は転倒による労災事故の発生率が大幅に高くなります。
エイジフレンドリー補助金とは
企業には高齢者の労災事故を防ぐための対応が求められますが、中小企業にとっては負担が大きいケースもあります。そこで、⾼齢者が安⼼して安全に働けるように職場環境の改善などを図る中小企業を支援するのが「エイジフレンドリー補助金」です。
補助⾦は、職場環境の改善に要した費⽤の⼀部が支給されます。
対象となる事業者
エイジフレンドリー補助金は、次の要件を満たす事業所が対象です。
-
- 60歳以上の労働者を常時1名以上雇⽤している
- 中⼩企業事業者である
- 労働保険に加⼊している
中小企業事業主とは、資本金または労働者数が次のいずれかに該当する企業の事業主です。
中小企業事業主の要件
業種 | 資本(出資額) | 常時雇用する労働者 |
小売業(飲食店を含む) | 5000万円以下 | 50人以下 |
サービス業 | 100人以下 | 卸売業 |
1億円以下 | その他の業種 | 3億円以下 |
300人以下 | 300人以下 | 300人以下 |
補助金額
補助金額は、⾼年齢労働者のための職場環境改善に要した経費の2分の1です。ただし、上限金額(100万円・消費税は除く)が設けられています。
補助金の対象とならない経費もあるため、後述の「対象となる対策」と「よくある質問」や、エイジフレンドリー補助金事務センター(以下、補助金事務センター)への照会などで確認しましょう。
対象となる対策
補助金の対象となるのは、次の4つの対策に要した経費です。
-
- 身体機能の低下を補う設備・装置の導入
- 働く高齢者の健康や体力の状況の把握など
- 高年齢労働者の特性に配慮した安全衛生教育
- その他、働く高齢者のための職場環境の改善対策
具体的な対策は、補助金の案内リーフレットに記載されています。
引用:厚生労働省「令和4年度エイジフレンドリー補助金のご案内」
申請方法・スケジュール
2022年度のエイジフレンドリー補助金について、申請方法やスケジュールを確認しましょう。
必要書類
補助金交付申請(対策を実施する前の事前申請)に必要な書類は、次の7つです。
②誓約及び申立書(様式1-1)
③高年齢労働者名簿(様式1-2)
④補助金対象経費内訳書(様式1-3)
⑤日本標準産業分類(別添)
⑥労働保険申告書・領収書の写し
⑦添付資料(見積書・カタログ・写真など)
①~⑤の書類については、厚生労働省のホームページから取り出しできます。また、⑦については、同ホームページ添付の関連資料①に対策ごとに必要な資料が具体的に記載されています。
対策実施後の補助金請求に必要な書類は、次の8つです。
②エイジフレンドリー間接補助金交付決定通知書の写し(様式2)
③集計表(補助対象が複数の場合)
④発注書・契約書など
⑤物品購入や工事施工などが確認できる書類(納品書や工事完了報告書など)
⑥業者からの請求書
⑦対策の実施状況が確認できる写真
⑧経費の支払いが確認できる書類(口座振替の振込明細書、領収証など)
厚生労働省のホームページから①を取り出し、対策の実績報告と補助金の請求を行います。②の交付決定通知書は、補助金交付申請の審査終了後に補助金事務センターから送付されるものです。
申請フロー
補助金の交付申請の流れは、主に次の3つです。
-
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①補助金事務センターに補助金交付申請を行う
②交付決定後に対策を実施し、その費用を支払う
③対策実施後に、補助金事務センターに実績報告と補助金請求を行う
補助金交付申請して交付決定する前に物品を購入したり、工事の発注・施工を行った場合、その費用は補助金の対象にならないので注意しましょう。
また、補助金が支給されるのは、対策を実施(経費の支払いを含む)し実績報告・補助金請求をした後になります。補助金は事前に支給されないため、支給までの資金繰りを考えておきましょう。
スケジュール
2022年度の補助金交付申請は、「2022年5月11日から10月末日まで」です。また、対策実施後の実績報告・補助金請求は「2023年1月末日」までに行わなければなりません。
どちらの手続きも、期限内に行わないと補助金は支給されないため、スケジュール管理はしっかりと行いましょう。
よくある質問
エイジフレンドリー補助金について、よくある質問をQ&A形式でまとめてみました。参考にしてください。
まとめ
⾼齢者が安⼼して安全に働けるように職場環境の改善などを図る中小企業を支援するのが「エイジフレンドリー補助金」です。100万円を上限に対策に要した経費の2分の1が補助金として支給されます。
高齢化社会への対応として、高齢労働者の有効活用が企業の課題の1つです。補助金を利用して、高齢労働者の能力発揮を図りましょう。
(編集:創業手帳編集部)