「やるべきことがこんなにあるの!?」創業者が知っておきたい経理の業務
意外と知らない経理の業務あれこれ
(2018/03/06更新)
創業してから事業を軌道に乗せるためには、売上げを上げていくことが絶対条件。
その売上げや財政状況を把握するために必要なのが、「経理業務」です。
「創業時は様々なところで費用がかかるので、人材を雇わずに、自分でやっておきたい・・・」と思っている個人事業主の方もいらっしゃるかもしれません。ですが、自分だけで経理をやるためには、経理業務について詳しく知っておく必要があります。
そこで今回は、経営する上で必要になる、代表的な経理業務について、解説します。
この記事の目次
会社の経理をやるにあたって必要な知識
個人事業主として起業した場合、必ず知っておかなければいけないのは「管理会計」の知識ですが、自分で経理をやるなら、「財務会計」の知識も必須です。
「管理会計」とは、企業活動を円滑に進めるために、社内で用いる会計情報のことです。企業内部の経営管理に役立つ会計情報を共有して、企業の意思決定に活用することを目的としています。
対して「財務会計」とは、外部の人間が自社の情報を知る手掛かりとなるP/L・B/S・キャッシュフローなどの資料を作成し、開示することです。P/L・B/S・キャッシュフローについては、後述します。
例えば、財務会計の知識のひとつで、収入・支出を正確に記入していく「簿記」があります。
この「簿記」ですが、基本的な収入・支出のみを記入する「単式簿記」と、「貸方」・「借方」という概念を用いて少し複雑に記入していく「複式簿記」の2種類があります。
この説明を聞くと「比較的シンプルに作成できそうな「単式簿記」の方が良いのではないか?」と考える方がいらっしゃるかもしれません。ですが、「単式簿記」は比較的簡単に作成できる一方で「会社の借金残高などの詳しい財政状況がわかりづらい」、「確定申告での「青色申告」で控除される額が少なくなる」といったデメリットがあります。
さらに、複式簿記は「青色申告特別控除」で65万円の控除を受ける条件のひとつでもあります。「青色申告特別控除」とは、確定申告を青色申告で行なった際の特典のひとつで、税金を計算する際に予め所得から65万円または10万円を差し引くことができ、納めるべき税金が少なくなる、というものです。
つまり、簿記の方法ひとつ取っても、知らないうちに損してしまう可能性がある、ということです。
もし経理を自分でやることになったら、簿記や経理の知識は十分にしておきましょう。
さらに、経理の知識を十分につけることと同時に重要なのは、経理作業を行う時間を確保することです。
個人事業主の場合、1月1日~12月31日までの税金の手続きを行う「確定申告」は、翌年の2月16日~3月15日までに申告・納付をするので、申告・納付時期は、特に経理業務に時間が掛かります。
もちろん通常業務も重要ですが、間違いのない確定申告をするために、十分な時間は確保しておきたいところです。
経理担当者が行う主な経理業務
では、自分自身で経理業務を行う場合、主にどんなことをやるのでしょうか?
毎日・毎月・毎年に分けて解説します。
毎日の仕事(日次業務)
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- 現金出納業務
- 預金管理業務
- 売上取引の業務
- 仕入れ取引の業務
- 伝票や帳簿の記入、作成
- 与信管理
現金の出し入れ、毎日の残高管理を行ないます。
預金の出し入れ、毎日の残高管理を行ないます。
商品を売り上げた時に、見積書や納品書などを作成します。
商品を仕入れる際に、見積りの依頼や仕入後の検品業務を行ないます。
会計処理のために必要な書類の記入・作成を行います。
新たな企業と取引する際に、相手企業の情報を収集して、取引しても大丈夫かどうか判断する調査をします。
etc…
もちろん、会社の業種や規模によっても状況が異なるため、それぞれの業務が必ず毎日発生するとは限りませんが、これらの業務を日常的な業務として経理担当者は処理をしています。
毎月の仕事(月次業務)
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- 月次売上取引の業務
- 月次仕入取引の業務
- 給与や源泉徴収した所得税、住民税の計算と支払い
- 損益計算書(P/L)、月次貸借対照表(B/S)の作成
月内に発生した売上げをまとめて、請求書を作成します。請求書には振込先や支払い方法を記載して、代金の支払いを受けます。
月内に発生した仕入れをまとめて、取引先への振込を行います。
社員に支払う給与や、源泉徴収した所得税や住民税の計算をして、給与明細を作成するとともに、給与を支払います。
決算時に使用する損益計算書(P/L)、月次貸借管理表(B/S)を作成します。
etc…
大きな企業の場合、給与計算については総務や人事といった部門が担当部門という会社もありますが、社員への送金処理は経理担当者が行います。
また売上げや仕入れも担当部門が請求書の管理を行うケースも多いとは思いますが、売上げの入金確認や仕入れ代金などの支払いも、経理担当者が行います。
毎年の仕事(年次業務)
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- 決算書の作成
- 会社の税金(個人事業税や所得税など)の計算と支払い
- 年末調整
- 社会保険料の計算と申告
- 労働保険料の計算と申告
その事業年度にいくらの売上げがあっていくらの利益があったのか、資産や負債にはどのような変動があったのかを明らかにする「決算書」を作成します。
決められた期日までに個人事業税や所得税を支払います。
10月末ごろに届く年末調整の書類に、必要事項を記入して提出します。
健康保険料・厚生年金保険料・介護保険料・雇用保険料・労災保険料を総称した「社会保険料」の計算と申告をして、社員の給与明細に記入します。
人員を使って事業を行う場合に、一部の例外を除いて加入が義務付けられている労働保険料の計算と申告を行います。
etc…
年次で行う業務のひとつである「決算書の作成」で重要なのが、損益計算書・貸借対照表・キャッシュフロー計算書です。
損益計算書(P/L)
損益計算書(P/L)とは、一定期間の会社の経営成績を表したもので、具体的には「売上げ」と「それにかかった諸々の費用」、「最終的な利益」などが表示されています。
損益計算書を見ることで、どの商品・サービスが儲かっているのか、儲かっていないのか、さらに儲けるためにはどうしたらいいか?がわかります。
貸借対照表(B/S)
貸借対照表(B/S)とは、資産と負債と純資産の額を明示し、「今どれくらい蓄えがあり、どのくらいの借金があるか」をわかりやすくした資料です。資産は税金の算出に関わることもあるため、額を正確に把握しておくことが求められます。
キャッシュフロー計算書(C/F)
キャッシュフロー計算書(C/F)とは、一定期間の現金の流れを数値で示した書類です。
この資料があることで、自社の資金状態を把握することができます。
商品やサービスを売ることはできても、お金が手に入るまでにタイムラグが発生する可能性があります。売上げでは好調を維持していても、手元に現金がなければ、最悪の場合「黒字倒産」になってしまう危険性もあります。
そうならないためにも、「今、どのくらいの現金が手元にあるのだろう?」といったお金の流れを把握できるキャッシュフロー計算書は、とても重要な資料です。
少しでも不安に感じたら「会計のプロ」に頼もう
創業期は、様々なところでお金が掛かってしまいます。そのお金を節約するために経理の業務を自分自身で行うのも、選択肢のひとつです。
ですが、経理の業務は多岐に渡りますし、重要なお金の計算をするため、間違えることができないプレッシャーもあります。
少しでも経理業務で不安を感じることがあったら、独りで抱え込まずに、会計士や税理士に相談しましょう。もし、少しだけ資金に余裕があるなら、一部の業務だけでもアウトソース(外注)できると、本来の仕事に集中することができるでしょう。
いち早く事業を軌道に乗せるためにも、「経理業務にどのくらいの時間をかけるか」をしっかり決めておきましょう。
(執筆:創業手帳編集部)
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