お客様の声は宝の山!顧客の本音を引き出すヒアリングのコツ
スタートアップ必見!ビジネス成功の秘訣【第2回】
(2017/08/04更新)
全6回にわたりお送りする「起業家のためのビジネス成功の秘訣」。
第2回目のテーマは、「お客様の声」です。時に耳が痛いものでもあるお客様の声ですが、その奥には会社を成長させる宝が埋まっています。そこで今回は、質問するときに相手の本音を引き出すコツや、お客様へアンケート調査をするときのポイントをご紹介します。
この記事の目次
大学卒業後、マーケティング会社に入社、3年目にマーケティングコンサルタントとしてNo.1の業績をあげた。その業績を買われて住宅メーカー(ミサワホーム)に入社、市場調査部門、営業部門、アパート事業部門などを担当後、販売教育部門の責任者として12年間営業部門の教育を担当し、新卒から管理職までの研修体系を構築した。その後、元上司が創業したコンサルティング会社「サクセスウェイ」のマネージャーに就任し、リーダーの養成や営業支援活動を担当
お客様の声は業績UPに直結する?
お客様の声を聞くことによって業績を飛躍的に向上させた代表的な事例は「アート引越しセンター」です。顧客の不満を徹底的に収集し、その不満を解消するサービスを次々と提供することによって急成長しました。
ひとつひとつのサービスに「アートエプロンサービス」等とネーミングを付け、引越し業ではなくサービス業であることを印象づけて顧客開拓に成功しました。
さらに、「ドクターグリップ」というボールペンは、書類作成の多い女性500人の不満点(疲れる、字がかすれる)を解消する商品として開発。疲れないボールペンを訴求して年間100万本の大ヒットになりました。
他にも、重いお酒を持ち帰る不便を無料宅配サービスで解消した「カクヤス」、PC対策や花粉対策や紫外線カットなど眼の不満を解消し続けてきた「ジェイアイエヌ」など、急成長した企業はたくさんあります。
お客様の不満や不便を解消するサービスの提供は業績に直結するのです。
なぜ社員ではなく、顧客から情報を聞くのか
多くの会社では顧客の情報を社員(主に営業マン)から収集しています。でも、これが大きなミスジャッジをする原因になりかねないのです。
なぜなら、営業マンはお客様からの不満や要望を聞いても、自分にとって都合の悪い情報は報告しないからです(例えば面倒な仕事が増えるとか自分の評価が下がる等)。
企業再生の名コンサルタント、一倉定(いちくらさだむ)氏は、「私の勧めでお客様を訪問した社長が『こんな話は社員から一度も聞いてなかった』と驚愕の声をあげるのを何度も聞かされた」と著作の中で語っています。特に、BtoB(法人を顧客とするビジネス)企業の社長は、1週間のうち4日をお客様訪問に当てるべきだと提案しています。
もちろん、お客様の不満や要望を聞くことが最大の目的ですが、顧客企業の社長との人間関係づくりや「わざわざ来てくれたのでお土産を・・・」ということで受注にもつながる効果が期待できるからです。
お客様の声、直接ヒアリングするときの3つのコツ
選択質問から入る
ヒアリングのコツとして第一にあげたいことは、選択質問から入ることです。最初から「どこが不満ですか?」と聞いても、相手は答えにくいです。商品サービスをいくつかの要素に分解し、不満点や要望の的を絞るための選択質問から入りましょう。
2次質問をする
次に、お客様の不満や要望を深く掘り下げるためには2次質問をしましょう。
2次質問とはお客様の回答に対して「なぜ」「具体的には」「例えば」というような突っ込みを入れる質問です。このような2次質問をする目的はよりお客様の本音や核心にせまる回答を得るためです
例えば、下記のような質問をしてみてはどうでしょうか?
- 例1(なぜ質問)
「〇〇を重視されるとのことですが、なぜ○○を重視されるのですか?」 - 例2(具体的質問)
「〇〇の商品は使い勝手が悪いとのことですが、具体的にはどんな点でしょうか?」 - 例3(例えば質問)
「購入理由は〇〇ということですが、例えばどんなメリットが得られるとお考えですか?」
相槌を入れる
軽視されがちですが、お客様が気持よく答えるための「相槌」を入れることは非常に重要です。
例えば、「なるほど」「さすがですね」「おっしゃるとおりですね」「素晴らしい考えですね」といった相槌です。
相槌がどれだけ効果があるか?一度相槌なしで話を聞けば理解できるでしょう。
「最」の質問によってニーズを引き出せ
最の質問とは、「最も〇〇なことをお聞かせください」というように、「最も」が入った質問です。この「最の質問」を活用することによって、最も重要なニーズを知ることができます(少なくともニーズを知る手掛かりを得ることができます)。
最の質問例をあげておきましょう。
- 例1 最も不満に思っておられることは何でしょうか?
- 例2 最も改善が必要だと感じられたことは何ですか?
- 例3 最も満足されたことは何でしょうか?
- 例4 購入を決定するのに最も重視されることは何ですか?
この手法で顧客のニーズを見出したのが、「エアークローゼット」という企業です。
服やファッションのニーズは「コーディネート」にあることを見出したエアークローゼットは、プロのスタイリストによるコーディネート服のレンタルサービスをはじめ、注文が殺到しています。
普段からできる「お客様の一言情報メモ活動」
お客様の一言情報メモ活動とは、お客様の表情や発する言葉、お客様同士の会話、従業員との会話などの生の声や行動をメモする活動のことです。「ウォントスリップ」とも呼ばれています。
例えば、伊勢丹が業績を向上した背景には、この「ウォントスリップ」が大きく関わっています。毎日のメモの量は少なくても、活動を積み重ねれば大きな改善エネルギーを社内に生み出すことができるのです。
アンケート調査のポイント
一般の消費者の不満や要望を聞くためにインタビューを行う場合、なかなか本音が聞けないというカベにぶち当たります。質問者への遠慮と時間的な制限があるからです。その点、アンケートであれば、遠慮なく書くことができ時間も十分とれるでしょう。一般消費者からの声を収集する方法として、アンケートは是非活用したいツールです。
アンケートのポイントは、「どのような内容にするか」という点と「回収率をいかに高めるか」にあります。
どのようなアンケート内容にするか
アンケート作成時は「ヒアリングのコツ」でも述べたように、要素に分解して満足度を質問する選択質問から入りましょう。
下記に選択質問の選択肢をつくる事例を挙げてみましたので、参考にしてみてください。
- 商品は部品や機能に分解・・・例えば「やかん」なら、胴体、蓋、取って、水を入れる、湯を沸かす、注ぐなど
- 店舗は認知部位(判断要素)に分解・・・店の入りやすさ、雰囲気(照明、音楽、眺望、内装など)、品揃え、メニューの選びやすさ、接客の満足度、声のかけやすさ、購入品の満足度など
- 営業等の顧客対応はプロセスに分解・・・初回接客、要望確認、商品説明、提案、見積り、受注、など
選択肢(要素)の満足度がわかれば、具体的な満足点と不満足点を自由質問で聞き出しましょう。
アンケート回収のコツ
回収のコツは3つあります。
1つ目は想いを込めた依頼文をアンケートに書くことです。「弊社はお客様の声を商品サービスに反映させることを大切にしています。忌憚のない声を・・・」というような文章です。
2つ目はご協力いただいたお客様に感謝の謝礼を用意することです。例えば、お役立ち情報(小冊子)、自社の商品、自社のみで使える金券(再来店の促進にもなる)等を用意しましょう。予算に限度がある場合は「抽選によるプレゼント」でもいいでしょう。
3つ目は、アンケートを購入時や来店時に書いてもらうのではなく、十分時間を取って書いてもらうために返送方式にすることです。料金受取人払いの返信ハガキに記入していただく方式がいいでしょう。タイトルは「〇〇のアンケート」ではなく、「お客様の声お伺いシート」というようなタイトルがベターでしょう。
お客様の声の収集に取り組まれている方へ
お客様の声を収集して商品・サービスの改善に活用していくことは、「大事なこと」というより「必要不可欠なこと」と捉えるべきでしょう。
企業は市場やお客様のニーズに対応して、常に変化しなくてはいけません。
常に顧客の声を意識して、戦略を立てていきましょう。
(監修:株式会社サクセスウェイ 松本全司 )
(編集:創業手帳編集部)