木村さきシリーズ 新米社長のための会計講座 パパ、勘定科目学ぶ! 有形固定資産編
木村さきの【新米社長のための会計講座】
(2017/4/29更新)
とある大手企業の経理部に勤める木村さきが、起業したての父親に、“知らなきゃヤバい”会計のイロハを教える本シリーズ。今回は、勘定科目「有形固定資産」の管理の仕方についてレクチャーします。
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【登場人物】
木村さき(26)
上場企業の経理部に勤務するかたわら、公認会計士を目指して専門学校に通うOL。大学で現代会計のゼミに所属したことをきっかけに、会計の世界にのめり込む。
パパ(55)
出向してきた上司と反りが合わず、長年勤めた県庁を勢いで退職してしまい、妻の父親が経営する会社のサポートを受けて起業。アイデアには富んでいるが、考えるより先に行動するタイプで、なかなか会社経営を軌道に乗せられずにいる。
さき
ただいまー
パパ
おかえり……って、なんだ、さきか。
さき
なんだはないでしょ。今日は、電気屋さんに付き合ってって言ってあったじゃない。
パパ
冷蔵庫の調子が悪いんだったな。
さき
温度調節が壊れちゃったみたいで、冷えすぎるのよ。
パパ
ネットで調べてみたが、今はいろんなモデルがあるんだな。
さき
どういうのがいいか迷っちゃうのよね。
パパ
コレなんかどうだ?
さき
うーん、少し大きすぎるかも。
パパ
じゃあ、こっちのは?
さき
そうねえ……最新モデルは、さすがに高いわね。
パパ
そんなに迷ってどうするんだ。コレかコレのどっちかにしなさい。
さき
高価なものだし、長く使うんだから、簡単に決められるわけないでしょ。会社で言えば、有形固定資産を買うのと同じなのよ。
パパ
ほう。じゃあ、パパがさきの冷蔵庫を選んであげる代わりに、今日は有形固定資産について、教えてもらおうかな。
さき
有形固定資産でまず大事なのは、その資産を買うことが得なのか損なのかを判断することなの。
パパ
それぐらいパパも考えてるさ。
さき
ホントに?
パパ
さっきの冷蔵庫の例だと、パパの選んだモデルは、電気代が毎月50円節約できるそうじゃないか。だから、この買い物は得であると言うことができるんだ。
さき
でも、ほかのより2万円も高いんだよ。
パパ
ん? ホントだ。で、でも、長く使えば元が取れるだろ。ほら、やっぱり得なんだよ。
さき
パパは冷蔵庫を30年以上使うつもりなの?
パパ
い、いや……。
さき
でしょ? 資産を買うことが得か損かは、その資産の耐用年数だとか、いろんな要素を考慮して判断しないと意味ないんだから。まあ、得か損かの判定方法は、またあらためて話すとして、次に有形固定資産で大切なのは、台帳管理ね。
パパ
固定資産台帳ぐらい、みんな作ってるんじゃないのか。
さき
単に減価償却費の計算だけできればいいってものじゃないんだからね。「○○一式」じゃなく個々の資産単位で登録したり、設置場所や管理部門の情報も載せたり、現物の方にも管理番号を書いたシールを貼ったりして、現物の管理とリンクできるようにしなくちゃいけないの。
パパ
確かに「○○一式」じゃ、一部を他の場所に移したり取り替えたりした時に困るな。
さき
そして、きちんとした台帳を作ったら、定期的に実査することも必要よ。
パパ
なんだそれ?
さき
まあ、在庫の棚卸と同じように考えていいわね。台帳と現物が合っているか確認するの。
パパ
有形固定資産も棚卸をするのか?
さき
もちろん。だって、台帳に載せ忘れてる資産があるかもしれないでしょ。
パパ
反対に、すでに廃棄済みなのに台帳に載せっぱなしの資産もあるかもしれないな。
さき
そうなの。台帳の情報が正確じゃないと、減価償却費とか固定資産税も正確じゃなくなっちゃうでしょ。
パパ
なるほど。
さき
それに、廃棄済みならまだしも、従業員が勝手に売っちゃって、台帳には載ってるけど現物はない、なんてケースもあるんだから。
パパ
パソコンなんかだと、簡単に持ち出せるからな。
さき
それから、単に、台帳と合ってるかどうかだけじゃなく、個々の資産の状態とか使用状況をチェックすることも大事なのよ。
パパ
網羅的に設備や備品の点検をするいい機会ってわけか。
さき
使ってない資産だったら、廃棄すると、固定資産除却損として税務上の損金に計上できるしね。
パパ
こう考えると、有形固定資産の実査は、正確な損益や税金の計算、不正の防止や発見、資産の現況の把握といったいろんな面で役に立つんだな。
さき
そうなのよ。
パパ
じゃあ、こんどはパパがさきの役に立つ番だな。よし、そろそろ電気屋に行くとしようか。パパがさきにピッタリの物を選んであげるから、任せときなさい。
さき
そうじゃないの、パパ。今日、パパに付き合ってってお願いしたのは、車に乗せてってほしいだけなのよ。パパは違う売り場を見ててくれていいから。
パパ
なんだよ、そりゃ。それじゃ、パパは、娘が冷たいので、冷えすぎない最新モデルはありますか、とでも店員さんに聞いてみるよ。
(監修:監査法人A&Aパートナーズ)
(編集:創業手帳編集部)
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