IoTの本質とは。IoTで叶う4つのコトと8社の主要プレイヤーを紹介
知っておくべきIoTのアレコレをまとめました
(2016/07/13更新)
「IoT」という言葉、聞いたことはあって、意味もなんとなくわかるけど、どんなことに使えるかが分からない!そう考える創業者も多いかと思います。今回は、IoTの本質を探るために、「集める」「送る」「貯める」「使う」という4つの構成要素を解説しながら、IoTとはどんなものか見ていきましょう。また、IoTを事業化している企業もご紹介します。
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この記事の目次
IoTとは
IoT(Internet of Things)とは、これまでネットワークに接続されていなかったモノが通信機能を持ち、相互に通信を行って数値を測定したり制御したりできるネットワークです。IoTは、次のように、第四次産業革命と位置付けられています。
- 第一次産業革命(18世紀後半):蒸気機関による自動化
- 第二次産業革命(20世紀初頭):電力の活用
- 第三次産業革命(1980年代以降):コンピュータによる自動化
- 第四次産業革命(2010年代以降):IoTによるさらなる効率化
しかしながら、「モノのインターネット」と訳されることが多いIoTですが、「モノゴトのインターネット」と言った方がより正確です。ネットワーク化され様々な情報が取得できるようになり、あらゆる分野で効率化が進むだけでなく、新たなサービスが生まれる素地を作ります。
例えば、人々の脈拍や血圧、血糖値などの情報が常に取得できれば、病気になる前に対処することができるようになるなど、医療の効率化を超えた新たなサービスが誕生するでしょう。
IoTの構成要素
IoTを構成する要素は次の4つにわけることができます。
- 集める
- 送る
- 貯める
- 使う
それぞれ解説していきます。
1:集める
モノや環境の状態を把握するためにセンサーを用います。取得できる情報はセンサーによって異なり、位置、高さ、速度、加速度、傾き、ジャイロ、温度、湿度、気圧、照度、地磁気など様々な値を取得することが可能です。
近年ではIoT向けに複数のセンサーと通信モジュールを組み合わせたデバイスも多く登場してきており、開発のハードルは下がりつつあります。
「集める」分野での主要プレイヤー
・ローム
1958年創業。小型化に強みを持つ。最近では920MHz無線通信に対応した「Lazurite」シリーズを発表。
・村田製作所
スマートフォン用の部材で大きなシェアを持つ。ベンチャー育成にも力を入れている。
・アルプス電気
1948年創業の老舗メーカー。2014年にはマルチセンサネットワークモジュールを発表するなど動きが早い。
・Cerevo
IoTスタートアップの旗手。コンシューマーエレクトロニクスで培った経験を生かし、「BlueNinja(https://blueninja.cerevo.com/ja/)」等のプロトタイピングモジュールを提供。
2:送る
これらのセンサーから取得した値をネットワークに転送するためには、Bluetooth、ZigBee、Wi-Fi、2G/3G/4Gといった無線通信を利用します。BluetoothやZigBeeは無線PAN(Personal Area Network)にカテゴライズされる規格で、概ね20~30mの距離内で通信を行うことができます。
距離が短い分、Wi-Fiに比べてモジュールの消費電力が少なく、低コストで利用できるのがメリットです。ただし、BluetoothやZigBeeではインターネットに直接接続ができないため、ゲートウェイを介する必要があり、開発のコストは上がります。
反対にWi-Fiは100m程度の通信距離を確保でき、直接インターネットに接続できる点がメリットとなります。ただし、消費電力が大きいことが課題となっています。2G/3G/4Gも消費電力の大きさやモジュールの価格がネックですが、基地局次第で100km以上の通信範囲をカバーできるという大きなメリットがあります。
一般的な開発では、BluetoothやZigBeeを利用して、インターネットへ情報を流す中継器としてルーターを用意します。ルーターは専用のものもあれば、スマートフォンやタブレットを利用するものもあります。Wi-FIは転送できるデータ量が多いのがメリットで、搭載する機体が十分なバッテリーを備えている場合やインターネット接続への開発費用を抑えたい場合に利用されます。
また、最近では次世代規格の「Wi-Fi HaLow」も登場し、IoTのスタンダードの地位を狙っています。2G/3G/4Gが使われるのは、固定回線が引けない環境であったり、センサーや制御装置を搭載する機体が広範囲に移動する場合などです。
現在のところ導入のためのコストが高く、通信料金もかさむため開発事例は多くありませんが、株式会社ソラコムのようなベンチャーも出てきており、今後の注目の的であることは間違いないでしょう。
「送る」分野での主要プレイヤー
・ソラコム
2015年の設立ながら、すでに台風の目。ソフトウェアによってMVNOを実装し、IoTモバイル領域のプラットフォームとして破竹の勢いで躍進中。
3:貯める
センサーによって集めたデータは、「データレイク」に保存する必要があります。このデータレイクを設置するのは自前のサーバーかクラウド上になります。IoTにおいては、取得するデータの量が莫大になり、またその波も大きく変化することから、自前のサーバーを利用することは現実的ではありません。
そのため、各種クラウドサービスを利用することになります。代表的なものは、Microsoft 「Azure」、Amazon 「AWS」、Google、IBM、Oracle、SAP、salesforce.com等が提供するサービスあります。
「貯める」分野での主要プレイヤー
・Microsoft
ただのクラウドではなく、デバイス管理やビッグデータ解析まで可能。AWSと比較して東西日本にデータセンターがあり、冗長構成ができる点が特徴。
・AWS
パブリッククラウドとして実績があり、多くの企業が採用。Salesforce.comはAWS上にIoTプラットフォームを作るなど、あらゆるサービスの核となっている。
・さくらインターネット
ソラコムやソフトバンクと提携し、データの保存だけでなく、IoTに必要な機能をパッケージ化した垂直統合型システムを提供。小規模開発者向け。現在はβ版。
4:使う
貯めたデータは使わなければ宝の持ち腐れです。しかしながら、膨大で多岐にわたるデータを分析し、目的に応じて抽出し、さらに使える形に加工するのは至難の業です。記念ではビッグデータから意味のある情報を抜き出す「データサイエンティスト」と呼ばれる職業も出てきており需要は飛躍的に拡大しています。
データ分析に当たっては自前で分析部隊を持つ方法と、分析の専門家にアウトソースする方法があります。前者ではHadoopやSparkといった分散処理フレームワークを用いて自社に最適化したシステムを作り上げる必要があります。
一方、IBMやNTTデータ、Microsoftといった企業に外注することも可能です。外注のメリットとしては、外注先企業のクラウドと連携することでシームレスな分析環境を整えることができるという点です。どちらが良いかは一概には言えませんが、きめの細かい分析を必要とするならば自前で構築し、クラウドとのスケールメリットを十分に生かしたいならばプラットフォームに乗るべきでしょう。
「使う」分野での主要プレイヤー
・NTTデータ
インフラやFAといったIoTの中でも規模の大きい産業分野に強い。
・Microsft
Azureにより、クラウドで貯めたビッグデータを一気通貫で解析することができる。NTTデータとは協業路線。
・IBM
自動車やビル管理といったあらゆる産業に対してIoTソリューションを提供。
IoTのシステム構築
IoTのシステムを構築するのためには、上記の4つの要素を適切に組み合わせる必要があります。必要になる機器や専門知識が多く、大企業以外は参入できない領域に思えますが、そうでもありません。スマートフォン用のアプリケーションを開発するほど簡単ではないものの、環境が整いつつある現在、IoTのシステム構築は個人でも可能なレベルまでハードルが下がってきており、新規参入がしやすいと言えます。その要因として、以下の三つがあげられるでしょう。
- 安価なセンサーモジュールの登場
- クラウドベースのスモールスタートが可能
- あらゆる分野でIoT導入が求められており差別化が図りやすい
1:安価なセンサーモジュールの登場
「IoTの構成要素」①でも紹介しましたが、近年はIoT用の複数のセンサーと通信デバイスを搭載した安価なモジュールが多種登場してきています。これらを用いることですぐに情報の取得とネットワーク化が可能です。
2:クラウドベースのスモールスタートが可能
クラウドに情報を蓄積することで、大きな設備投資が不要であるという点も大きな魅力です。事業の最初から莫大な量の情報を扱うことはまずないため、従量課金制で使った分だけサーバーの料金を払うクラウドは新規事業やベンチャーに向いていると言えるでしょう。
3:あらゆる分野でIoT導入が求められており差別化が図りやすい
IoTが第四次産業革命と呼ばれるように、すべての産業に影響を与えます。そのため、施設、エネルギー、ヘルスケア、物流、工場、小売り、セキュリティ等、産業ごとに特徴ある製品やサービスが求められます。すなわち、創意工夫により、大企業を押しのけてIoTの勝者になるチャンスが大きいということです。
(監修:株式会社Cerevo 中村雅弘 )
(編集:創業手帳編集部)