健康保険証廃止にともなう企業の必要な対応とは?アナウンスすべき内容を解説

創業手帳

2024年12月2日から健康保険証の新規発行が停止に


2024年12月2日以降、病院を受診する際にはマイナ保険証での受診が基本となります。
しかし、従業員の中には対応に戸惑ってしまう方もいるかもしれません。

そこで今回は、健康保険証の新規発行が停止になることを受け、企業がどう対応すべきかを解説していきます。
従業員に対して正しい知識を伝えるためにも、ぜひ参考にしてください。

※この記事を書いている「創業手帳」ではさらに充実した情報を分厚い「創業手帳・印刷版」でも解説しています。無料でもらえるので取り寄せしてみてください

【健康保険証廃止】企業が実施する対応①資格情報のお知らせの配布


現行の健康保険証は廃止されます。企業として、マイナ保険証に対する理解を深めるとともに、適切な対処が必要になります。
従業員に対して、全国健康保険協会や健康保険組合から発行される「資格情報のお知らせ」を配布しなければいけません。その内容と配布の流れを解説していきます。

「資格情報のお知らせ」の内容とは

健康保険証の廃止後には、マイナンバーカードが保険証として活用されます。
全国健康保険協会や健康保険組合からは、事前に「資格情報のお知らせ」と記された書面が各企業に送付されます。
企業は、その書面が届き次第従業員に配布しなければなりません。書面には、健康保険被保険者と被扶養者それぞれの基本情報が記されています。
具体的な内容は以下の通りです。

  • 記号番号枝番
  • 氏名(フリガナ)
  • 生年月日
  • 負担割合
  • 資格取得年月日
  • 保険社名

配布の流れ

次に、「資格情報のお知らせ」を配布する流れを解説していきます。書面は全国健康保険協会や健康保険組合から企業宛てに送付されます。
個人ごとの書面が1つの封筒に入れられており、箱もしくは大型の封筒に封入されて送付される仕組みです。なお、それぞれ約150人分が封入されます。
従業員だけではなく、被扶養者分も同封されるため、人数が多いほど封筒や箱の数も多くなります。

1回目の送付は2024年9月なので、すでに受け取った企業もあるかもしれません。なお、6月中旬以降に資格を取得した加入者に対しては、2025年1月送付予定です。
各封筒には被保険者となる従業員の氏名が記されていますが、間違えないよう配布する必要があります。
被扶養者の分も一緒に送付されるため、対象となる従業員に忘れずに配布するよう注意してください。
また、従業員に対しては「資格情報のお知らせ」を点線に沿って切り取って保管するように呼びかけると同時に、用紙に記載されているマイナンバーの下4桁に間違いがないかチェックすることも伝えましょう。

【健康保険証廃止】企業が実施する対応②適切なアナウンス


これまでの健康保険証が発行されなくなり、医療機関などで使えなくなることは従業員にとっても大きな変化といえます。
従業員からは、会社宛てに健康保険証に関する質問が寄せられるケースが増えるかもしれません。
正しい知識を伝えるためにも、マイナ保険証に関する情報を理解しておく必要があります。
以下のポイントを押さえて、適切なアナウンスができるよう準備をしておいてください。

健康保険証廃止後の保険証の取り扱い

2024年12月1日までは健康保険証が発行されますが、翌日2日からは新規発行が停止されます。
新しい健康保険証を受け取ったばかりであれば、取得した意味がなくなってしまいますが、経過措置として最大1年間まではそのまま保険証が使えます
病院を受診したい時には、2025年12月1日までであればこれまでの健康保険証を持参しての受診が可能です。

ただし、経過措置の期間中に資格を喪失した場合は失効となり、健康保険証の利用はできません。
氏名の変更や保険証を紛失した場合も再発行はできないことにも注意が必要です。
また、資格を喪失した際や氏名変更の際には健康保険証が回収されるため、なくさないよう大切に保管しておくことを従業員に伝えてください。

マイナンバーカードを持っていない場合の対応

従業員の中には、マイナンバーカードを持っていない方や保険証の利用登録をしていない方もいるかもしれません。
「これまでの健康保険証が利用できなくなれば病院が受診できない」と不安になることがあうかもしれませんが、保険者から交付される「資格確認証」を提示することで、保険診療を受けられるようになります。

協会けんぽの新規加入者であれば、2024年12月2日以降は資格取得届での申請に基づいて、企業を経由して資格確認証が発行されます。
一方、既存加入者の場合は、保険者が必要と判断した場合のみ2025年12月2日以降資格確認証が発行されます。

資格確認証は、従来の健康保険証と同じようにプラスチック製の黄色のカード型です。医療機関を受診する際には、窓口で提示するだけで保険証の代わりとして使用できます。

「資格情報のお知らせ」のみでの受診は不可能

従業員の中には、「資格情報のお知らせ」のみで医療機関を受診できると勘違いしている方がいるかもしれません。
資格情報に関する内容が記載されていますが、まったく別のものになります。

資格確認証は保険証の代わりにできますが、資格情報のお知らせのみを提示しても保険診療は受けられません
ただし、マイナ保険証の利用ができない医療機関を受診する際には、資格情報のお知らせを提示することで保険診療が可能です。

医療機関によっては資格情報のお知らせが必要な場合もあるため、あらかじめ確認しておくよう授業員に対してアナウンスしてください。
なお、オンライン資格確認システムの整備は2023年4月から義務化されているため、ほとんどの医療機関ではマイナ保険証での受診が可能です。

マイナ保険利用時にも医療証を提示する

マイナ保険証を持参すれば、これまで通り医療機関を受診することが可能です。
ただし、自治体から交付される医療証はマイナンバーでの確認ができないため、持参して別途提示する必要があります。
医療証の種類は以下の通りです。

  • 公費負担医療受給者証
  • 乳幼児医療費証
  • 介護保険証
  • 特定疾病療養受療証 など

マイナ保険証との紐づけは今後実施される予定となっていますが、紐づけが実施されるまでは各医療証を持参して受信するよう周知してください。

マイナ保険証のメリットを周知させる

マイナンバーカードの発行は任意です。ただし、所有していると様々なメリットがあります。
メリットを従業員に対して適切に伝えるためにも、以下の内容を覚えておいてください。

質の良い医療を受けられる

マイナ保険証で受診すれば、特定健診や薬剤、診療情報などを共有でき、初めて受診をする病院でも適切な医療を受けられます。
例えば、病院を受診した際に「現在飲んでいる薬はありますか?」と聞かれた際に、お薬手帳を持っていればすぐに答えられますが、忘れた時や持っていない時は、正確な名称を答えられない方もいるかもしれません。

そうなれば、同じ薬が処方されたり、併用してはいけない薬が処方されたりする可能性があります。
一方、マイナ保険証を持参していれば、薬剤情報をチェックできるため重複処方のリスクを回避できます。

医療費の軽減

マイナ保険証で受診をすれば、医療費の負担軽減に役立ちます。
医療費の加算額の違いは以下の通りです。

初診料 再診料
これまでの保険証 30円の加算 20円の加算
マイナ保険証 10円の加算 10円の加算

初診料と再診料のいずれも、マイナ保険証のほうが費用を抑えられます。
少しでも節約をしたいと考えているなら、マイナ保険証を利用するほうがメリットを享受できます。

高額な医療費負担が手続きせずに軽減する

病気や怪我などで病院を受診した際、医療費が高額になる場合は「限度額適用認定証」を健保組合に申請しなければいけません。
事前申請をしておけば医療機関の窓口に提出することで費用負担が軽減されますが、申請には手間がかかったり、適用認定証が届くまで時間を要したりするデメリットがあります。

一方、マイナ保険証を持参すればオンラインで限度額がわかるため、申請手続きしなくても自己負担額が減額します。
限度額を超える医療費の立替え払いをする必要はなく、費用を捻出するために焦る必要もありません。

非常時も安心

マイナ保険証を持っていれば、非常時でも安心できます。
例えば、救急搬送される際に、患者となる本人が病院を受診している状況や服用している薬などを説明できないことがあるかもしれません。
マイナ保険証があれば、受診歴や診療情報、薬剤情報などを把握できるため、救急活動の迅速化につながります。
この取組みは全国67の消防本部で順次開始されています。2025年度からは全国展開が予定されており、万が一の際も安心です。

また、災害における避難時にも、診療状況や薬剤情報などを医師と共有できる実証実験が進められています。
災害はいつ発生するかわからないため、万が一の時でもすぐに診療が受けられれば安心です。

確定申告の負担が軽減する

1年間で支払った医療費が一定額を超える際には、所得控除を受けることが可能です。
ただし、控除を受けるためには医療費控除の明細書の作成が必要で、確定申告時に添付しなければならず、1年間の医療費の領収書を管理する手間がありました。

一方、マイナポータルからe-Taxに連携をすれば、医療費控除申請の手間を省くことが可能です。
領収書を保管していなくても、マイナポータルでの医療費通知情報管理が可能になるため、データを自動入力できます。
確定申告の手続きの負担軽減のためにも、マイナ保険証の活用はおすすめです。

適切な安全対策で持ち運びも安心

マイナ保険証の安全性に対して不安を抱いている従業員もいるでしょう。
しかし、適切な対策がされており、安全に持ち運びができることを従業員にアナウンスしてください。

例えば、紛失時の対応です。
マイナ保険証を紛失した際、個人番号カードコールセンターに電話をすれば、カードの一次停止措置が行われ、第三者によるなりすまし利用を防ぐことが可能です。
コールセンターは24時間365日問い合わせを受け付けているため、時間や日時に関係なく相談できます。

マイナンバーカードを健康保険証として利用するための方法


最後に、マイナ保険証の利用を開始するための方法を解説していきます。

マイナポータルで申請

マイナンバーカードの健康保険証利用の申し込みは、マイナポータルから行えます。
スマートフォンやパソコンでマイナポータルにログインし、指示に従って入力をすれば登録ができます。
申請する際には以下のものが必要になるため、あらかじめ用意しておいてださい。

  • 申請者のマイナンバーカード
  • 市町村窓口で設定した数字4桁の利用者証明用電子証明書の暗証番号
  • マイナンバー読取りに対応しているスマートフォン、もしくはパソコンとICカードリーダー

セブン銀行で申請

申請は、セブン銀行のATMでも可能です。マイナンバーカードと利用者証明用電子証明書の暗証番号があれば申請できます。
ATMの画面にある「各種お手続き」を選択し、「マイナンバーカードの健康保険証利用の申し込み」に進み、利用規約に同意をした後に、マイナンバーカードを挿入し、暗証番号を入力すれば申し込みが完了します。
スマートフォンを持っていない従業員や、スマートフォンの操作に自信のない従業員にとって申請しやすい方法です。

顔認証付きカードリーダーで申請

医療機関や薬局に設置してある顔認証付きカードリーダーでの申請も可能です。
マイナンバーカードを読み取り口に置き、認証方法を選んで本人確認を行い、案内に沿って情報提供の可否を選択します。

その後、マイナンバーカードを取り出すだけで終了となるため、手軽な申請が可能です。
カードリーダーのある施設には、ステッカーやポスターが設置してあるため、近隣の施設に設置されている場合は、申請したい従業員に進めてみてください。

市町村窓口で申請

マイナ保険証は、各市町村の窓口でも申請が可能です。
マイナンバーカードと利用者証明用電子証明書の暗証番号のみで申請できますが、ほかの必要書類がある可能性もあるため、あらかじめ確認しておくとスムーズな申請ができます。

ただし、自治体の窓口が開いている時にしか申請できず、土曜日や日曜日、祝日には申請できないケースもあります。
混雑状況によっては待ち時間も発生するため、余裕を持って申請に行くよう従業員に促してください。

マイナ保険証での受診方法

マイナ保険証を利用する医療機関受診方法を解説していきます。

受診時の受付方法

受付方法は以下の通りです。

1.医療機関に設置してある顔認証付きカードリーダーにマイナンバーカードを置く
2.画面に顔を写して本人確認を実施する
3.診療や薬剤情報、健診情報の提供に同意する
4.カードを取り出して受付完了

本人確認は、顔認証だけではなく暗証番号の入力でも可能です。

利用可能な施設の見分け方

マイナ保険証を利用できる施設は、ステッカーやポスターの設置の有無で確認可能です。
利用できる医療機関や薬局には、「マイナ受付に対応しています」といったポスターや「マイナ受付」と書かれたステッカーが貼られています。

また、マイナ保険証の利用可能な施設を検索できるサイトも存在しています。
厚生労働省のホームページ「マイナンバーカードの健康保険証利用対応の医療機関・薬局等についてのお知らせ」の下部に掲載されているため、チェックしてから受診をするよう促してください。

まとめ・健康保険証廃止に向けて適切な対応をしよう

2024年12月2日から健康保険証の新規発行が停止され、マイナ保険証の利用が一般化されていきます。
従業員の中にはマイナ保険証について理解していない方もいるかもしれません。これまでの健康保険証は、経過措置を過ぎれば使えなくなってしまいます。
適切な情報を従業員に対してアナウンスする必要がありますが、マイナンバーカードの作成はあくまで任意です。
各従業員の自由意思による発行となるため、マイナ保険証の利用を強制しないよう注意してください。

創業手帳(冊子版)では、企業の運営に必要となる様々な情報を発信しています。起業や事業の継続に役立つ内容となっているため、今回の記事とあわせてぜひチェックしてみてください。

関連記事
一人社長は社会保険に未加入でも問題ない?未加入のリスクと加入方法を解説
協会けんぽとは?他の健康保険との違いや受けられる制度を解説

(編集:創業手帳編集部)

創業手帳
この記事に関連するタグ
創業時に役立つサービス特集
このカテゴリーでみんなが読んでいる記事
カテゴリーから記事を探す