会社設立は妻名義でも問題ない?メリットやデメリットなどを詳しく解説!
会社設立を妻名義にしている企業は多い
副業をしている会社員の中には、節税対策について悩みを抱えている方もいるかもしれません。
副業で収入がアップすれば手取り額が増えるので大きなメリットとなりますが、納税額も増えるため、対策をしないと損をする可能性があります。
そこで考えるのが「妻名義での会社設立」です。妻を代表にしても問題がないのかと不安視する方もいるでしょう。
結論としては、妻名義での会社設立は問題ありません。しかし、リスクも存在します。
今回は、会社設立を妻名義で行うメリットやデメリットについて解説していきます。
融資を受ける際の注意点もご紹介するので、妻を社長にして会社を設立したいと考えている方は参考にしてください。
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この記事の目次
妻名義で会社設立をするメリット
会社設立を自分名義ではなく妻名義にすると、様々なメリットがあります。以下では、メリットをピックアップして具体的に解説していきます。
夫が本業に時間を割きやすくなる
妻名義で会社を設立する方のほとんどは、夫が本業を持っているパターンです。本業があれば、副業となる事業において事務手続きといった作業を割く時間は取りにくいです。
会社経営では事業活動のみならず、銀行や税務関係の手続きなども必要なので、兼任するとなれば本業に支障をきたす恐れがあります。
会社を設立したとしても、本業以外の作業に時間を取られてしまえば、本業や副業の事業活動が思うようにできずに売上げにも影響を与えてしまう可能性があります。
しかし、妻名義で会社設立を行えば、会社の代表は妻です。
そのため、妻が代表者となって運営に関わる事務作業や税務関係の作業をこなすことで、夫は本業に専念しやすくなります。
「本業に集中できる体制を確保したい」「副業での各種手続きは自分以外の人に任せたい」と考えているのなら、妻名義での会社設立は大きなメリットです。
勤務している会社に副業がバレにくくなる
副業が会社にバレる要因として「住民税」が挙げられます。会社からの給与額に対して住民税額が大きいため、給与所得以外にも所得があると判断されるためです。
しかし、確定申告の時に「給与・公的年金等以外の所得にかかる住民税の徴収方法」の項目を「自分で納付」にすれば普通徴収となるためバレにくくなります。
ただし、副業で会社設立をした場合、会社の代表名は誰にでも閲覧できる状態となり、副業をしていることが本業となる会社にバレやすくなってしまいます。
妻名義で会社設立をすれば、登記簿謄本に夫の名前が記載されることはありません。
そのため、会社に副業をしていることや会社を設立したことがバレるリスクを軽減できます。
節税効果が期待できる
妻名義での会社設立は、前述したように節税対策に有効です。具体的にはプライベートカンパニーで節税が可能となります。
プライベートカンパニーとは、個人が所有する会社で家族や個人の事業収入や副業収入による資産管理のために設立します。
プライベートカンパニーがなぜ節税につながるのか、その理由は所得税と法人税の税率の差です。
所得税は超過累進課税制度を採用しているため、一定を超える所得にはより高い税率が適用されるのです。
一方、法人税は所得額に関係なく一定の税率がかけられる比例課税方式が採用されています。
そのため、所得が年800万円を超える部分には23.2%が適用され、年800万円以下の部分には15%が適用されます。(資本金1億円以下の普通法人の場合)
所得が一定を超える場合であれば、所得税よりも法人税のほうが税額を抑えられるので、副業による所得が大きい場合は、節税目的で法人成りをしたほうがメリットを享受できるようになるでしょう。
会社設立によって金融機関からの信用度アップにつながる
自分は会社員として企業に務め、副業として妻名義で会社設立をした場合、会社員としての収入以外にプライベートカンパニーでの利益が追加されます。
夫婦で安定した収入を確保していることがわかれば、銀行や取引先の企業からの信用度アップにつながるはずです。
信用度が高ければ事業に必要な資金の借入れがしやすくなる、取引きをスムーズに進められるといった魅力があります。
今後、副業での事業拡大を目指している方には大きなメリットとなるでしょう。
妻が社会保険に加入できる
妻を代表にして会社を設立すれば、妻は個人で社会保険に加入することができます。
専業主婦であれば、通常は夫の社会保険や扶養家族に入ることで、保険や年金を受け取れます。
しかし、妻が代表となれば会社役員となるので、個人での社会保険加入が必須です。
社会保険に加入をすれば、妻が受け取る給与から社会保険料が差し引かれるので、個人であれば労使折半となり、会社としては福利厚生費として経費計上が可能です。
そのため、節税につながります。
加えて、妻が社会保険に加入すれば国民基礎年金に加えて、役員報酬分も上乗せできます。
専業主婦として夫の扶養に入っているよりも、老後の年金受取額が高くなる点がメリットです。
ただし、妻を社会保険に加入させるためには、役員報酬を設定しなければいけません。ゼロのまま設定してしまうと条件に当てはまらないので注意してください。
また、役員でも権限がない、実質的に勤務実態がない状態だと被保険者とみなされない可能性があります。条件を確認してから社会保険への加入を行ってください。
会社設立を妻名義ですることのデメリットやリスクはある?
会社設立を妻名義で行うことで、いくつかリスクがあります。それぞれを詳しくみていきます。
贈与税が発生する
妻名義で起業した会社の収入が夫に入る場合、贈与税に関わる問題が生じるケースもあります。
例えば、妻名義での設立でも、実際の経営や事業活動をすべて夫が行っていた場合、妻は名義だけを貸している状態です。
この場合は、会社の収入が夫の手元に入るとしても、妻を経由するため贈与税の問題が発生する可能性があります。
夫婦間でも、生活費や教育費以外で、年間110万円以上の資金を渡した場合は、贈与税の対象です。
プライベートカンパニーでの節税効果よりも、税負担のほうが大きくなる可能性もあるので注意してください。
贈与税が発生するかはケースによって異なります。あらかじめ、専門家でもある税理士に相談してみてください。
創業融資を受けにくくなる
創業直後でも活用できる融資制度を総称して創業融資といいます。一般的な融資制度では、審査の際に会社の事業実績を重要視するのです。
しかし、創業して間もないころやこれから創業する場合は、代表者の経歴や創業計画を用いて融資が可能か判断します。
そのため、妻名義での会社設立であれば、代表である妻が審査の対象です。
妻の経歴がチェックされるので、事業経験がない場合は創業融資を受けにくくなる可能性があるため注意してください。
夫の事業経験が豊富であれば、代表となる妻のサポートが可能といった説明をすることは可能です。
しかし、なぜ妻が会社を設立したのか、妻に会社運営ができるのかなどを説明しなければいけません。創業融資のハードルが高くなる点を覚えておいてください。
妻が夫の扶養から外れる
妻を代表にして会社を設立する場合、役員報酬を妻に対して支払うため妻が扶養から外れる可能性が高いです。扶養から外れる条件は以下のとおりです。
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- 所得税:103万円
- 社会保険:130万円
- 配偶者特別控除:150万円
役員報酬が上記を超えると扶養から外れるため、妻自身で納税をするほか、社会保険にも加入しなければいけません。そのため、妻の支出が増大してしまいます。
金額によっては世帯全体の支出が増えるケースもあります。節税効果があったとしても、支出が増えてしまえば意味がないので注意してください。
名義貸し状態だと夫側の負担は軽減しない
妻名義で会社を設立しても、実質的な経営者が夫となるケースもあります。
この場合は融資や税務申告など、様々な業務が夫を中心に進められます。そのため、名義が妻でも夫の負担は減少しません。
本業に支障を与える可能性があるため、負担を減らしたいのであれば、妻に様々な業務を任せるようにしてください。
セミナーへの参加や経営者団体での勉強など、様々な方法で経営に関する知識を習得できます。
妻名義の会社で融資を受ける際の注意点
妻名義で会社を設立し、融資を受ける場合には注意が必要です。審査の基準があるので、以下の3つのポイントを覚えておいてください。
妻の事業経験があるか
創業融資を受けないのであれば妻が業界未経験でも問題ありませんが、創業融資を受ける場合は、前述したように経歴が重要視されます。
妻のこれまでの職歴がチェックされ、会社の事業との関連が薄い、同業種でもアルバイト経験しかないといったケースでは、審査に通らない可能性もあります。
そのため、まったくの異業種での会社設立となれば、経験がないと創業融資を受けるのは難しいです。
同業種での経験がない場合は、起業に活かせる資格を持っていると、未経験よりも有利となります。
起業に対する真剣度が伝わるので、未経験であれば資格取得も検討してみてください。
自己資金はどの程度用意できるか
事業経験の浅い妻を代表として会社設立する場合は、自己資金をどの程度用意できるかもポイントとなります。
自己資金の割合は、通常の融資であれば売上げの1/3程度といわれています。
創業融資の場合も、同程度となる売上げの1/3程度もしくは借りたい額の半分程度は自己資金を用意したほうが融資を受けやすいです。
経験がないのであれば、より多くの自己資金を用意したほうが融資も受けやすくなります。
ただし、自己資金を用意したルートをチェックされるケースもあるので注意してください。
具体的には、過去1年分の代表個人の預金通帳の提出が求められます。
そのため、妻の通帳を提出する必要があり、自己資金として申告した金額が、どういったルートで貯めたものなのかをチェックするのです。
給料が毎月入っていて、それを貯金した形跡が残っていれば問題ありません。
しかし、一括で振り込まれていた場合や、不定期で振り込まれていた場合は、借りたものであるかを問われることになります。
万が一借りたものであれば自己資金ではないため、審査にも影響を与えてしまうでしょう。
そのほかにも、通帳をチェックされる際には税金や光熱費、スマートフォン代などが延滞することなく支払われているかも確認されます。
信用情報の確認が目的なので、もし支払いが滞っていることがわかれば審査において悪影響となるはずです。
経営能力について説明できるか
事業経験だけではなく、経営能力も重要なポイントです。起業家としての経験があれば有利といえます。
しかし、妻に経営に関する能力がない場合は説明責任が求められます。
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- 夫が業界経験豊富でサポートをしてもらえる
- 受注が確実なことの証明として契約書や発注書がある
- 管理職の経験があり、経営に関する能力を持っている
上記について粘り強く説明する必要があります。融資を受けるためにも、問題なく経営が可能な点を金融機関の担当者に説明してください。
まとめ・会社設立を妻名義にするメリットやデメリットを理解して判断しよう
妻を代表にして起業をすれば、夫は本業に集中でき、副業をしていることをバレずに収入アップを見込め、そのほかにも節税効果がある点が大きなメリットです。
しかし、妻が扶養から外れる、贈与税が発生するほか、創業融資が受けにくくなるといったリスクも考えられます。
場合によっては、トラブルにつながる恐れもあるため、リスクを抑えるためにも専門家に相談することがおすすめです。
(編集:創業手帳編集部)