法定利率とは?約定利率との違いや計算例などを解説

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法定利率は民法によって定めている利率


利率は、お金の借入れで生じる利息や遅延損害金の割合を示します。法定利率と約定利率の2種類があり、そのうち前者は民法によって定められているのが特徴です。
法定利率は様々な契約に絡んでくるため、どのようなケースで適用されるのか、約定利率とはどのような違いがあるのか理解しておく必要があります。

そこで今回は、法定利率の基礎知識や約定利率との違い、計算方法などを解説していきます。借入れや金銭が生じる契約を適切に行うための参考にしてください。

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法定利率の基礎知識


法定利率は、民法404条で定められている利率です。明治時代から長きにわたって利率は固定されていましたが、2020年4月に改正民法が施行され、変動制に変わりました。
これによって法定利率は3年に1度見直しされています。2024年5月時点の法定利率は、年3%です。

法定利率は、借入れや支払い期限を守らなかったことで生じる遅延損害金において、当事者間で特に利率を決めていなかった場合に適用されます。
適用された場合、債務者は民法で定められた利率で、利息や遅延損害金を支払わなければなりません。

約定利率との違い


約定利率は、契約を締結する当事者間の合意で定める利率です。
契約書や規定などに記載された利率で契約を締結した時点で、その利率での返済や遅延損害金に合意したことになります。
約定利率が設定されている場合、そちらが優先されます。
しかし、特に利率を決めておらず、単純に「利息を付けて返済する」という契約であれば、法定利率が適用されるのです。

法定利率は民法で利率が決まっていますが、約定利率は企業の意向や当事者間の話し合いなどで決めることが可能です。
ただし、無限に利率を引き上げられるわけではなく、元本額に応じて年15~20%までの上限利率の範囲で設定しなければなりません。

また、遅延損害金は、利息制限法の上限利率の1.46倍(元本額に応じて年21.9~29.2%)まで適用できるのが原則です。
ただし、お金を貸す業者として金銭を貸し借り(営業的金銭消費賃借)を行う場合は年20%まで、クレジットカードのショッピング利用分といった消費者契約は消費者契約法によって年14.6%までと定められています。

法定利率が適用される契約


法定利率は具体的にどのような契約に適用されるのか、具体的な例をご紹介します。

遅延損害金について特に定めていない場合の契約

契約で遅延損害金を特に定めていない場合、返済や代金の支払いに遅延が生じても遅延損害金の支払いは不要と思われがちです。
しかし、実際には契約上、遅延損害金を定めていない場合でも請求することはできます。
遅延損害金を定めていない場合、利率が決まっていないため、法定利率で計算することになります。

遅延損害金で法定利率に従う旨が記されている場合の契約

契約書や規定などで「法定利率に従う」という旨が記載されていれば、その利率で遅延損害金を計算することになります。
先に述べたとおり、約定利率が設定されていれば、その利率が優先されるので注意してください。
また、法定利率は3年ごとに見直しされるため、債権者側は利率が変更された際に契約書の見直しなどの対応が求められます。

利率が決まっていない金銭消費貸借契約

銀行や消費者金融からの借入れ、クレジットカードのキャッシング利用などの金銭消費貸借契約をする際、利息の利率が決まっていない場合も法定利率が適用されます。
一般的に利息付の金銭消費貸借契約では、約定利率が設定されていることが多いので、まれなケースといえるでしょう。

なお、金銭消費賃借の約定利率では、年20%までの上限利率が定められています。
約定利率が設定されている場合、上限以上の利率になっていないか確認して契約するようにしてください。

その他法定利率が適用される契約

個人間で金銭の貸し借りや、企業間で金銭が生じる取引きが発生した場合にも法令利率が適用される場合があります。
ただし、これらのケースも当事者間で約定利率を定めた上で、契約に合意することがほとんどです。

なお、個人間の金銭の貸し借りであっても利息制限法が適用されるため、上限を超えた利率を設定することはできません。
また、遅延損害金の約定利率が法定利率を下回る場合、法定利率で計算することが民法第419条第1項で定められています。

2020年の改正による法定利率の変更点


法定利率は、2020年の民法改正によって利率や仕組みが大きく変わっています。ここで、民法改正による法定利率の変更点をご紹介します。

法定利率が5%から3%に引き下げ

明治以降、法定利率は長きにわたって年5%で固定されていました。しかし、民法改正によって2020年4月1日から年3%に引き下げられました。
借金の滞納や損害賠償などの遅延損害金に対しても、約定利率が設定されていなければ法定利率の年3%で計算します
法定利率に関する民法が改正された理由としては、低金利政策が挙げられます。
低金利政策によって一般的な金利が5%よりも大きく下回っていたため、改正によって利率が引き下げられたのです。

商事法定利率が民事法定利率と一本化

民法改正前に、商事法定利率が存在しました。商事法定利率とは、企業間の取引きや個人の商行為に対して適用される法定利率です。
民法改正によって商事法定利率は廃止され、民事の法定利率と一本化されました。
これにより、企業間の取引きや個人の商行為においても、年3%の法定利率が適用されます。

3年ごとに利率を見直す変動制が導入

民法改正で利率が引き下げられただけではなく、3年ごとに利率を見直す変動制になったのも大きな変更点です。
2024年5月時点で判明している利率の変動は以下のとおりです。

  • ~2020年3月31日まで(改正前):年5%
  • 2020年4月1日~2023年3月31日:年3%
  • 2023年4月1日~2026年3月31日:年3%

2024年5月時点では、2026年3月末まで年3%の法定利率が適用されます。変動制になったことで、今後利率が変わる可能性があります。
しかし、変動のルールが定められているため、変更されるかどうかは予測しやすいです。

具体的には、日銀の市場金利と連動して見直しをする仕組みとなっています。
過去5年分を遡って国内の銀行が短期で貸し付けた時の利率の平均値を求め、前回変動した時の利率と比較します。
この時、前回変動した時の利率が平均値より1%以上の差が開いていれば、1%刻みで利率は加減され、逆に1%未満の変動であれば利率は変更されません。

法定利率の基準となるタイミングの明確化

民法改正によって、法定利率の基準となるタイミングが明確化されています。
変動制になったことで、どのタイミングの法定利率が適用されるのか明確でないと、当事者間でトラブルに発展する可能性があります。

しかし、現在は利息が発生した時点の法定利率が適用されるというルールが定められました。
例えば、民法改正前の2020年3月31日までに利息が生じる金銭の貸し借りが行われた場合、適用される利率は年5%です。
遅延損害金の場合、契約を成立したのが改正前であっても、実際に滞納が発生したのが改正後であればその時点の法定利率が適用されます。
3年ごとの見直しで利率が変わった場合も、契約が成立した時点の利率が適用されます。

中間利息控除に法定利率が適用

中間利息控除とは、交通事故などの不法行為で損害賠償請求が生じる際、将来受け取るお金を先に受け取ることです。
早くお金を受け取れる分、損害賠償金の金額を下げて当事者同士の不公平をなくす狙いがあります。
民法改正前は、中間利息控除に関する規定がありませんでした。しかし、改正によって中間利息控除を法定利率で計算することが明文化されました。

法定利率を使った計算例


利息が法定利率となっている場合、「借入残高×法定利率÷365日×利用日数(借入期間)」で求めることが可能です。
例えば、30万円を30日の利用日数で返済する場合、発生する利息は以下のとおりです。

30万円×0.03÷365日×30日=約740円

遅延損害金であれば、「支払う金額×法定利率÷365日×滞納した日数」で計算します。
返済期日まで20万円を返済するはずが、15日滞納した場合の遅延損害金は以下のとおりです。

20万円×0.03÷365日×15日=約246円

上記の計算は、1回の返済分に対して生じる遅延損害金です。
分割払いで返済する場合、滞納が複数回にわたって生じれば、現状支払っていない金額のすべてに対して遅延損害金が発生します。
そのため、未払いの返済額を合算した上で、遅延損害金を計算してください。

遅延損害金の支払いが困難な場合の対処法


遅延損害金は、滞納した日数に応じて金額が増えていきます。負担を減らすためには早期に支払うことが大切ですが、様々な事情ですぐに払えない時もあるかもしれません。
ここで、遅延損害金が発生し、支払いが困難な時の対処法をご紹介します。

お金を借入れた機関に相談する

返済できないとわかった時点で、債権者に相談してみてください。
やむを得ない事情であれば、返済期日を延ばしたり、返済額を減らしたりという対応に応じてくれる可能性があります。
返済期日の延長や返済可能な金額まで下げてもらえれば、遅延損害金の支払いを回避できます。

債権者との交渉を成功させるためには、返済できない正当な理由をしっかり伝えることが大切です。
そして、必ず返済する意思表示を示した上で返済計画の見直しに応じてもらえるように相談してみてください。
急な相談だと応じてもらえない可能性があるので、早めに連絡することもポイントです。

最低弁済を行ってから交渉する

最低弁済とは、最低限の金額だけを支払うことです。最低弁済を行った上で債権者と交渉をすることで、遅延損害金の支払いを回避できる可能性があります。
1円も支払わず交渉する場合より、最低限のお金を支払っていたほうが返済する意思があることアピールできるので、交渉は成功しやすいです。
業者によっては、事前に連絡して最低弁済をすれば、遅延損害金を請求しないケースもあります。

ただし、最低弁済だと元本がほとんど減らない点に注意してください。
利息は完済するまで生じるため、最低弁済額が毎月の利息以下であれば借金はなかなか減らず、総合的に支払う金額はさらに高くなります。
したがって、長期的に滞納が続く場合には向いていません。

債務整理も検討してみる

上記の方法は一時的に返済が厳しく、遅延損害金の支払いを回避したい場合に有効です。
しかし、返済の負担を大きく減らせるわけではないため、返済自体が厳しい場合は債務整理を検討してみてください。
債務整理には、任意整理・個人再生・自己破産といった種類があります。それぞれの違いは以下のとおりです。

任意整理

弁護士が債権者と利息や返済期間の見直しを交渉し、新たな返済計画で再契約する方法です。
返済計画が見直された後、債務者はその返済計画どおりに借金を完済することになります。
任意整理では、利息制限法の上限利率を用いて返済額を再計算します。
再計算によって過払い金が発生していれば、返済額が減ったり、借金がなくなったりする可能性がある)点がメリットです。

ただし、「安定した収入がある」「原則3~5年間で完済する見込みがある」「今後も返済を継続する意思がある」という条件をクリアできないと、任意整理はできません。
また、信用情報機関に5~10年間、債務整理手続きを行った事実が記録されます。記録されている間は、新たに借入れができない点にも注意してください。

個人再生

裁判所の認可を得て借金を減額してもらい、原則3年間のうちに完済する方法です。
このケースでは、法律に基づいて5分の1に借金を減額できるので、金額によっては任意整理よりも返済額を圧縮できる可能性があります。

個人再生は、住宅や自動車を所有し続けられることがメリットです。
住宅ローンを支払っている途中の住宅は、特約が適用できれば、ローンを支払いし続けることで住宅を手放す必要がなくなります。
自動車は、自動車ローンが完済していれば個人再生後も所有し続けることが可能です。

個人再生同様に、信用情報機関に債務整理を行った事実が5~10年間記録されるので、新規で借入れができなくなります。
そのほかに、国が発行する官報にも氏名や住所、手続き内容などが掲載されるため、人に知られてしまう可能性がある点がデメリットです。

自己破産

借金を返済する見込みがない場合、裁判所の認可によって支払い義務を免除してもらう方法です。
裁判所に支払い不可と判断され、免責許可を得た場合、教育費や税金など非免責債権以外の借金をなくすことができます。
借金がゼロになる代わりに、不動産や自動車など一定の価値がある財産を手放さなければなりません。
ただし、20万円以下の預貯金など裁判所が定める基準以下の財産は、手もとに残すことが可能です。
連帯保証人がいれば、その人が借金を肩代わりすることになる点に注意してください。

ほかの債務整理と同じく信用情報機関に手続きを行った事実が記録され、官報にも載ります。
また、手続きが完了するまで、税理士や公認会計士など一定の職業に就けなくなるなどのデメリットが多いため、最終手段と考えてください。

法定利率・約定利率を確認して無理のない借入れを心掛けよう

金融機関などからお金を借りる場合、基本的に利息が発生するので、借りた金額よりも多くお金を返さなければなりません。
また、滞納によって遅延損害金が発生すれば、さらに返済総額は大きくなってしまいます。
適用される利率が法定利率か、約定利率かによって返済や遅延損害金の負担が変わってきます。
そのため、どちらの利率が適用されるのか、無理なく返済できる利率であるか確認した上で借入れの契約を締結してください。

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(編集:創業手帳編集部)

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