株主総会の委任状とは?代理人の特徴や他制度との違いも解説

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株主総会は「委任状」があれば代理人を立てることができる!


株主総会が実施される場合、開催の通知と共に株主総会委任状が同封されています。委任状は、出席できない株主の意見を反映させるために必要な文書です。
その理由は、委任状によって株主が当日出席できない場合であっても代理人をたてて議決権行使を任せられるからです。
今回は、株主総会における委任状の役割や代理人の特徴などについて詳しく解説します。

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株主総会における委任状の役割とは?


株主が株主総会当日に欠席する場合でも、代理人をたてて議決権の行使を任せられる書類が、株主総会の委任状です。
本来、株主総会での議決権は株主のみに与えられる権利となります。
しかし、委任状の提出によって、株主が自分の代わりとなる代理人を株主総会に出席させ、議決権を行使させることができます。
代理人は、株主から与えられた代理権により、株主総会では株主の代わりに権利を行使する仕組みです。

ただし、株主総会で代理人による議決権を行使する場合、委任状を会社に提出するのが原則です。これは会社法第310条第1項にも記載されています。
もし、委任状を提出することなく株主総会に出席したとしても、議決権の代理行使は認められません。
また、委任状の提出もなく株主総会を欠席した場合は、議決権行使の機会も失います。

株主総会の委任状を受けられる「代理人」の特徴

株主総会で委任状を受けられる「代理人」は、基本的に株主が希望する人物であれば誰もが無条件で代理権を授与できます。
ただし、場合によっては会社法298条1項5号、施行規則63条5号を元に、代理人の資格について制限を設けることも認められています。
会社が代理人の資格制限を設けていない場合は、職員や従業員を代理人として選任することも可能です。
株主に代理人として代理権を受け取れば、自分自身が代理人となって株主総会に出席し、株主の代わりを務めます。

他にも、株主総会では円滑に進めるために代理人の資格について合理的制限を設けることも可能としています。
最も一般的なのは、代理人本人が株主であるとみなされるケースです。

株主総会の委任状の書き方

委任状については、自分で書類を用意しなければならない場合もあれば、招集通知に同封されている場合もあります。
委任状が同封されていた場合、記載されている内容に沿って記入するだけですが、同封されていない場合は自分自身で要件を満たす内容を記載してください。
最も欠かせない文言は「株式会社◎◎の株主である私は、○○を代理人(住所:××)と定め、次の権限を委任いたします」という一文です。
この文言がないと権利が代理人に委任されません。

次に、「令和▲年▲月▲日開催の株式会社△△の第▲回定時株主総会に出席し、議決権を行使する権利を委任します」と記載し、議決権を委任します。
代理人が必要な株式総会では、株主本人の住所、氏名、生年月日の他に代理人の住所、氏名、生年月日、委任した年月日の記載も必要です。

株主総会の委任状出席を含む3制度の違いは?


株主総会を毎度開催することなく、合法的に開催できる方法として「書面決議(みなし決議)」というものがあります。
他にも、名前の似ている「議決権行使書による議決権行使」、「委任状出席」がありますが、ここではそれぞれにおける相違点について解説します。

委任状出席
(議決権の代理行使)
書面による議決権行使 書面決議
(みなし決議)
会社法 310 311 319,320
株主総会の開催 開催 開催 省略する
議決権の主体 代理人 株主 全株主
主に必要な書類 委任状 議決権行使書面等
株主総会参考書類
提案書
同意書
書類の保管 株主総会の日から3ヶ月間本店に委任状を備えおく必要がある
(会社法310Ⅳ)
株主総会の日から3ヶ月間本店に議決権行使書を備えおく必要がある
(会社法311Ⅲ)
株主総会の日から10年間本店に株主総会議事録を備えおき、写しは支店で5年間保管
(会社法318ⅡⅢ)
株主総会の日から10年間本店に全株主の同意書原本を保管
(会社法319Ⅱ)
メリット ・当日参加できない株主についても議決権行使の機会を設けられる
・株主総会参考書類の作成義務がないので準備が簡素化できる
・当日参加できない株主についても議決権行使の機会を設けられる ・議案や報告事項について全ての株主が同意した場合、株主総会が省略できる
・日程調節が不要
・全ての株式会社で採用できる
デメリット ・株主総会が撹乱される可能性がある ・作成が複雑な株主総会参考書類作成が必要
・書面による議決権行使を採用しないケースが多い
・全株主からの同意書の取得が必要
・外部株主の増加で決議が困難になる

委任状出席(議決権の代理行使)

委任状出席は、代理人が議決権を行使することを意味します。株主が実際に株主総会に出席できない場合でも議決権を行使できる仕組みです。
委任状出席の場合は、書面による議決権行使と同様に株式総会を開催し、当日参加できなかった株主にも議決権が行使できる機会があります。

ただし、書面による議決権行使と違うのは株主総会参考書類作成が義務でない点です。
ベンチャー企業から上場企業まで幅広く取り入れやすくなっています。

開催するメリット

書面によって議決権行使と同じで、株主総会は開催するものの、当日参加できなかった株主からも代理人を通じて意見が受けられます。

開催するデメリット

株主総会の開催日から1週間前までに、招集通知を発送しなければなりません。
複雑な株主総会参考書類は不要ですが、上場株式の議決権の代理行使を勧誘する場合は、金融商品取引法施行令に沿った参考書類の提供が必要です。
また、委任状の提出を求めたにも関わらず、議案の記載が不十分な場合はクレームとなる可能性があります。

書面による議決権行使

書面による議決権行使は、株主が物理的に集合して株主総会が行われます。出席できない株主は、書面で議決権を行使できますが議決権行の主体は株主本人です。
必要事項を議決権行使書面に記載し、原則として株主総会日時直前の営業時間までの提出が求められます。
他にも、議決権を行使できる株主が1,000人以上存在する場合、議決権行使を認めるのが義務です。
議決権行使書類の作成は、決められた期間は備え置く必要があります。

開催するメリット

書面による議決権行使のメリットは、遠隔地や海外に住んでいる株主も参加できる点です。
様々な環境で生活する株主から意見が集まりやすく、反映しやすくなります。時間の制約もないので、多くの意見を集めやすい利点があります。

開催するデメリット

複雑な株主総会参考書類を株主総会までに準備しなければなりません。十分な人員が確保できない会社には大きな負担となります。
さらに、株主総会開催日の2週間前までに招集通知の発送が必要です。そのため、このような発送を含めた開催準備業務が負担になる場合があります。

書面決議

書面決議は、議決権を持っている株主全員から可決の同意を得ることで、実際に株主総会を開催しなくても、議案が可決する旨の決議があったとみなされます。
普通決議はもちろんですが、定時総会、臨時株主総会、特別決議など、株主総会の議案や種別に関わらず採用できるのが特徴です。
ただし、書面決議の提案書や同意書が必要で、株主全員から同意を得る必要があります。

開催するメリット

全ての株主から同意書を集めれば、株主総会の開催が省略できます。
これにより、法定の招集期間を気にすることがないだけでなく、株主総会の日程調整や場所の確保なども不要です。
株主や会社役員にとってはスケジュールを気にする心配もありません。

開催するデメリット

会社の成長に伴って、外部の株主が増加してきます。多くの株主がいる場合は、スムーズになるはずの書面決議が困難になるケースもあります。
また、株主総会が開催されないものの、提案書と株主が提出する同意書が必要です。株主総会招集通知は不要ですが、議事録の作成は必要になります。

株主総会の委任状に関する注意点


株主総会を開催する際には、委任状が必要です。しかし、同じ「委任状」であっても注意点がいくつあります。ここでは、委任状に関する注意点をご紹介します。

株主総会の委任状をめぐる「委任状勧誘」と「委任状争奪戦」の規制

委任状は、株式会社が株主総会の当日に出席できない株主に対して、代理人を通じて参加する機会を設けています。
そして、代理権の有無を明らかにさせるために証明する書面を株式会社に提出する規定があります。

株主総会の前には、一定数以上の株式を保有する株主が、これから行われる株主総会に先立って株主提案をして、その案が可決されるように他の株主に対して積極的に議決権行使の委任状を勧誘します。
これの状態が「委任状勧誘」です。
また、会社側の会社提案の支持を訴えたり委任状勧誘をしたりしている場合は、株主同士の争奪戦のような状態になるため、「委任状争奪戦」の状態になります。
委任状を英語でプロキシーということから、プロキシーファイトと呼ばれます。

株主総会で委任状を持つ出席者の代理人資格の確認方法

株主総会では、委任状を持つ出席者の代理人資格をどのように確認するとよいのか解説していきます。

会社で作成した委任状を提出している場合

会社で作成した委任状を提出している場合、委任状を持つ代理人に資格があるかどうか確認する手段として議決権行使書面用紙の提出を求めます。
この書類は、株主が株主総会で議決権を行使する際に必要になるからです。
議決権行使書の存在によって、代理人の出席であっても株主の意思表示を確認できます。

株主が作成した委任状を提出している場合

株主が招集通知に委任状を同封し、それを代理人が提出した場合はその者を株主の代理人として扱うことができます。
これは、株主が送付した委任状が用いられている以上、株主から代理権が授与されたと推定できるからです。

株主総会の委任状に関するよくある質問


株主総会の委任状に関する疑問や質問について解説します。委任状の出し方を知りたい方は参考にしてください。

株主総会の委任状は提出しない・白紙だとどうなる?

株主総会の委任状を提出していない、もしくは白紙の状態の場合は議決権の代理行使が認められません。
代理人の欄が何も記載されていない状態で提出された場合は白紙委任状と呼ばれます。

白紙委任状は、作成した株主の意見を推測し、それに合わせた効力を発生させることを基本として考えます。
そのため、代理人の欄が記載されていない委任状も基本的には有効であり、会社が自由に代理人を指名できる状態です。

株主総会の委任状はメールでの提出も可能?


株主総会の委任状に関しては電子メールで提出できます。委任状は原則として書面での提出が求められます。
しかし、会社の同意がある場合に限り、電子メール、オンラインを使った電磁的方法での提出が可能です。
詳しい内容は、会社法第310条第3項、会社法施行令第1条第1項第6号に記載されています。

株主総会の委任状は電子化できる?

株主総会の委任状が電子化できると利便性が高くなります。株主は代理人によって議決権を行使できますが、基本的に権利を証明する書面の提出が求められます。
ただし、会社として認めていない以上、勝手に委任状を電子化することはできません。株式会社の承諾を得た場合のみ、電子化が可能ということです。

株主総会の委任状は一度作成・提出すればOK?


株主総会の委任状に関しては、一度作成して提出すれば次回以降も代理人が固定されると思われるかもしれません。
しかし、株主総会の委任状は株主総会が開かれる度に委任状の提出が必要です。

以前、委任状を提出したからといって次回以降も免除されることはありません。
委任状の内容を確認するとわかるように「令和▲年▲月▲日開催の株式会社△△の第▲回定時株主総会に出席し、議決権を行使する権利を委任します」と、いつ開催されるどのような総会なのかを委任状に明記しなければなりません。
単に「株主総会において」としただけでは委任状として認められない可能性があるので注意してください。

株主総会を開催する流れ


ここでは、株主総会を開催する流れについて解説します。

1.取締役会で招集事項を決定する

株主総会開催に先だって、取締役会で招集事項を決定します。
主な内容は、株主総会の日時・場所、株主総会の目的、株主総会に出席しない株主への書面による議決権の行使を認めるかどうか、電磁的方法による議決権行使を認めるかどうか、これらを認める場合はその詳細を決定します。

2.招集通知を発送する

招集事項が決まったら、株主にこれらの内容を記載した招集通知を発送します。公開会社なら開催日2週間目、非公開会社なら開催日1週間前です。
この期間はそれぞれ異なりますが、原則書面で行います。株主の承諾を得た場合のみ招集通知は電磁的方法となるメールなどで発送可能です。
委任状についても、招集通知と同封して発送します。

3.株主総会当日は決議事項について採決を取る

株主総会当日は、会場や議事進行の最終チェック、開場時間になったら株主の受付を行います。
株主総会に出席できるのは、株主本人もしくは代理人です。会社側が代理人の資格を株主に限定している場合は、代理人も株主でなければなりません。

株主総会が開始されたら、議長による議事進行と決議事項について採決を取ります。
開始されたらすぐに出席株主数、議決権数が報告され、監査報告や事業内容などの報告がされます。これらの事案に問題がなければ閉会宣言となり総会は終了です。

4.議事録の作成と保存を行う

株主総会が終了した後には、議事録の作成に取りかかります。議事録は、取締役の誰かが作成することが会社法によって定められているからです。
作成された議事録に関しては、株主総会開催日から10年間本店で保管されることも義務付けられています。

株主総会の委任状は代理人資格や提出方法を適切に定めておこう

株主総会に出席できない場合は、委任状の提出によって代理人が株主の意見を反映することができます。
委任状があれば、当日出席できない株主の議決権を行使できますが、委任状の書き方や提出方法によっては認められないケースもあるので注意してください。

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(編集:創業手帳編集部)

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