漫画家 あんじゅ先生|コネなし実績なしからSNSを駆使して漫画家デビュー!著書は40万部を突破
自分の得意技は他の人が見つけてくれる
初めての共著が大ヒットした美少女漫画家、あんじゅ先生。元大学職員でSNSやブログを通じて漫画家になったという異色の経歴を持っていらっしゃいます。
売れない頃からアシスタントがいてお手伝いしてもらったり、SNSのアイコンイラストを最初は小さく始めて徐々に値上げをしていったりと、今までの歩みや独自の哲学について、創業手帳代表の大久保がお話を伺いました。
漫画家
1988年生まれ。元大学職員で入試広報を担当。5年間勤めた後、コネなし実績なしからSNSを通じて漫画家として活動を始め、『お金のこと何もわからないままフリーランスになっちゃいましたが、税金で損しない方法をおしえてください!』(サンクチュアリ出版/共著 大河内 薫税理士)を出版。「難解なものをわかりやすく面白く」をテーマに出版を続け、著書は計40万部を突破。
X(twitter)アカウント:@wakanjyu321
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計250万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら
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ライティングと漫画の組み合わせ技に需要があった
大久保:どのような経緯を経て漫画家になられたのですか。
あんじゅ:ずっと水泳を習っていました。ある日、水泳の友達に漫画を見せてもらって、こんなに面白くて読んだ人みんなが惹きこまれるものがあるんだ!と驚き、いいなと思ったんです。
もともと絵は好きで、小学校の卒業文集には漫画家になるって書いて卒業しました。
どこかに持ち込みをしたことはなくて、ずっと趣味で漫画を描くことを続けていました。
少女漫画を読んでいたのに、自分で描くとなると四コマのギャグ漫画しか描けなかったので「理想と現実は違うなー」なんて思っていましたね(笑)。
自分の描いた漫画を人に見せるようになったのは、大学に入ってからです。大体の人が「すごいね!」という反応をくれました。大学を卒業してそのまま大学の職員になったんですけど、面接で「学生時代に頑張ったこと」として漫画を見せていました。
大久保:漫画家というと、まずは偉い先生のアシスタントをして徹夜で漫画を描いて、というようなイメージですが、あんじゅ先生の場合は全然違いますよね。
あんじゅ:最初は漫画家なんてハードルが高く、絶対に無理だと思っていたんです。
大学職員になって5年目で辞めたんですけど、学生時代と足したら9年で、次10年目かって考えたらもういいかって。漫画家になりたいと思って辞めたわけじゃなくて、実はどこかのお金持ちと結婚するだろう、働かなくていいかって思ってたんです。
とりあえずバイトをしながら興味があったイラストとライティングの仕事を始めてみたんですが、漫画の依頼がけっこう来たんです。ウェブの記事に差し込む漫画や電子書籍の中の漫画など、かなりの需要があったので、次第にこれは漫画家と名乗っていいのではと思うようになりました。
恋愛の記事を書いて、途中に概要みたいな四コマ漫画を差し込むだけでもほかのものと違ってきますし、SNSでシェアするときにも便利なんです。
大久保:ライティングと漫画両方できるのは強みですね。漫画で対価がもらえたら、それは漫画家でしょう。一般の人からすると「漫画家」は選ばれた雲の上の存在というイメージかもしれません。
あんじゅ:漫画家っていうと「先生」というイメージがあるじゃないですか。思い返せばフォロワー3000人ぐらいでまだ本も出していない頃から「あんじゅ先生」って名乗ってました。
大学職員時代に入試関係を担当していたんですが、高校生に「大学の学問ってこういうこと勉強するんだよ」という話をいかに面白く話すかということはかなり意識していました。面白くないと高校生って話を聞いてくれないんですよ。寝るし(笑)。30分や50分という区切られた時間で、この大学面白そうだなって思わせるための学校説明会をしなきゃと思っていました。
それが漫画を描くようになって、専門家の難しい話を聞いて漫画で面白く伝えようという風に変わりました。漫画にも難しい話を簡単だと錯覚させる効果があると思うんです。
加えて自分が理解する過程を書いているから、読者もゼロからわかるのかもしれません。税金やNISAの本も「ほんとに誰か教えてくれよ」と思いながら大河内さんに電話して、教えてくれたことや自分の反応をそのまま漫画にしています。
最初はこういう本が売れると思いませんでしたけど、大学生からそのまま出身大学の職員になりそのままフリーランスになった私が、世の中のことをほとんど知らない視点からお金について見ているのがもしかして新鮮だったのかなと感じました。
SNSやブログで気軽に発信を始めファンを作ろう
大久保:漫画家としてお仕事をスタートされ、結果として本が出るまでの経緯を教えてください。
あんじゅ:漫画家として活動し始めて2年目ぐらいの時期は、仕事が来ない限りは漫画を描いていなかったんです。そういう話をしたら、ある男の子に「もったいないよ、ちゃんと描けば?」と言われて。確かにと思ってもともとやっていたブログに漫画を載せてみたんです。
そのうちの何個かがバズって、北海道に行ったときの漫画を描いたらある市長から連絡があったり、職員時代のことを描いたら教育関係の方から連絡があったりと反響がありました。
目立ちたがり屋なので、「あ、こういうことを描いたら面白がってくれるんだな」とうれしく思いました。
そのあたりから、ちゃんと漫画に向き合ってみたらいろんな会社のPRなどいろいろな案件の依頼が来て、「バイトやってる場合じゃない、ちゃんと漫画を描こう!」と努力して2年目ぐらいで本を出すことになりました。
まだ無名の時代に、税理士の大河内さんが「税金の本を出すから挿絵を描いてください」と声をかけてくださったんです。最初は挿絵の予定だったんですが、出版社に打ち合わせに行ったら「この内容は全編漫画の方がいいかもしれないですね」ということになり共著になったんです。
大河内さんもYouTubeを始める前でしたし、無名の我々が普通のいつもの会話を漫画にしたという感じでしたけど、結果として多くの方に読んでいただいたのでほっとしてます。
漫画や絵は、すぐにお金になるものではなく実際に稼げるようになるまで時間がかかるものですが「何が当たるんだろう」って思いながらSNSに上げると読者が反応をくれるので、現代の漫画家はやりやすいと思います。私のようにゼロからスタートする方にはSNSをおすすめしたいですね。
『お金のこと何もわからないままフリーランスになっちゃいましたが税金で損しない方法教えてください!』
—あんじゅ先生☆漫画家 (@wakanjyu321) November 11, 2011
大久保:本の作り方もSNSっぽいですよね。完成品を提示しているというよりも、ドタバタと作っている過程を見せているような。
あんじゅ:そうですね。わからないことがあったら大河内さんに電話して聞いて、話を聞いても「それがわかんないんだよ」って言ったら詳しく説明するねってLINEが来たりと、自分の外からの情報をリアルタイムで漫画に反映させたから知識を得る本だったけど面白く読めたのかなと思っています。
大久保:例えばクラウドワークスなどのプラットフォームでスタートしてお客さんに学びながら仕事の幅を広げるという方法についてはどう思いますか。
あんじゅ:クラウドワークスなどではクオリティを求められる傾向があるので、画力が高い人はいいと思います。
私のような個性派はSNSでハードル低く始める方が合っているんじゃないかと思いますね。値上げすると最初に買った人が喜ぶっていう現象もあるんです。現在、SNSのアイコンのイラストは3万円で描いているのですが、5000円や1万円で描いていた時に依頼してくださった方もずっと使ってくれていて、応援していただいてます。
最初は1000円でもいいと思うんです。「限定5名で1000円で描きますよ」で、イラストの練習もできますし実績にもなります。
値上げすれば自分も嬉しいですし、手前で買った人たちも喜びますし、小さく始めるのもアリかなと思いますね。
大久保:クラウドワークスなどのプラットフォーム上だと競争が激しいので、どこかで自分のブランドに移行した方がやりやすいのかもしれないですね。
あんじゅ:そういったところだと、競争相手がたくさんいるので値段で比べられて選ばれることが多いんです。
それよりも「あなたにこの仕事をやってほしいのだけど、おいくらですか」という風に選ばれたいと思っています。そのためにも、自分の発信の部分が肝になってくるのかなと思います。
手伝ってくれる人と一緒に成長しよう
大久保:過去を振り返って、これはやってよかったと思うことはありますか?
あんじゅ:私、売れてない1年、2年目からアシスタントがいたんです。誰か手伝ってくれる人いますかって声かけて。そのおかげで、ひとりで全部抱え込まずに済みました。
「手伝います」って言ってくれる人って、意外と金銭的なものを求めているというよりも「漫画、描いてみたかったんです」のように経験を求めている人が多くて。最初はどっちもレベルは低くても、3年、5年一緒に漫画を描いていると自分より画力が伸びたりすることもあって、下が育つんですよ。
ちょっとずつ誰かにまかせて、長い間手伝ってもらうといいと思います。私はアシスタントさんがいて本当によかったです。
大久保:成功してからアシスタントを雇うのではないんですね。
あんじゅ:例えばお茶をおごったら背景をやってくれたり、1ページ埋めてくれるだけでも自分が1時間休憩できます。
クリエイターの人はなんでも自分でやりがちだと思うんですが、わたしはアシスタントが常にいてくれてよかったし、アシスタントの成長がすごくうれしいです。
この前インフルエンザになって、数日間はとてもじゃないけど仕事できるような状況じゃなかったんです。でも指示だけ書いてお願いしたら、アシスタントがやってくれるんですよ。
メインキャラはわたしのテイストを活かして描いてくれるんですけど、モブキャラはアシスタントさんの絵で描いてくださいってお願いしてますし、編集後記にアシスタントさんの紹介を入れたり、みんなに一言書いてもらうのを楽しみにやってます。
大久保:壁にむかってひとりでやるよりも、みんなでやったほうがモチベーションも上がりますよね。
あんじゅ:「アシスタントさんにわたすから5時までにやっとかなきゃ」って頑張ったりするので、人と漫画を描くっていうのが私にとっては続けられる鍵なのかなと思います。
大久保:『ゴルゴ13』の作者、さいとう・たかをさんは1960年にさいとう・プロダクションを設立し、さいとうさんの死後も漫画は続いています。そこまで育てたというのもすごいですよね。
あんじゅ:皆さん、さいとう先生の意志を継いで、誇りをもってやられているみたいですよね。素晴らしいなと思います。
大久保:逆にやめておけばよかったと思うことはありますか?
あんじゅ:まず1つは税金についてちゃんと知っておけばよかったということです。源泉徴収ってあるじゃないですか。引かれたまま申請すると返って来なかったり、知らなかったことで損した部分もあったので、最初から税金について勉強すべきだったと思います。
2つ目は、あれこれやらずに1つのことに早く集中すればよかったということです。最初はライティングとイラストに加えて、お店でバイトを始めました。ポスターやメニュー表などのデザインをまかせてもらって、昼はデザインを作って夜は飲食店に出てバタバタだったので、自分が本当に好きな漫画に向き合える時間がほとんどありませんでした。
大久保:今後の夢はありますか。
あんじゅ:著書が100万部以上売れることがひとつの目標ですね。
あと漫画ってページをめくったりスクロールしたりする必要があるので、ただ見ていればいいアニメにも挑戦したいなという気持ちがあります。最近は簡単にショート動画が作れる動画編集ソフトがあって、絵を描いて自分で声入れするだけでショート動画が作れちゃうので、例えば「3分でわかる◯◯◯」のようなスッと入ってくるものが作れたりするのかなと思います。
オタクなので、昔から声優さんにも憧れがありました。昔はプロにならないと実現不可能だった自分の夢が、小さい範囲でも実現できるんだと思うとわくわくします。漫画もいろいろな企業から声をかけてもらったので、アニメもそうなればいいなという夢がありますね。
漫画と同じで、SNSやネットにとりあえず公開して反応を見ることができますし、収益を生んだりもするので、やろうと思えばなんでもできるいい時代だと思います。世の中にありがとうって言いたいです(笑)。
皆さんにも「使えるものは使っていこう」と言いたいですね。本が売れない時代と言われますけど、本屋に行って選ばれる作品は少ないかもしれませんが、ネットだったら軽率にいろんな作品を試し読みしたり手に入れたりすることができます。名前を売るにはいい時代になったと思いますね。
大久保:普通の本が売れない分、人々がお金を支払う対象が新しいマーケットに移動しているんでしょうね。新しくチャレンジをする人にとってはやりやすい環境かもしれません。あんじゅさんはそれをうまく捕まえた好例と言えますね。
あんじゅ:ラッキーだったなとも思いますけど、うまく時代に合ったのかなと思っています。
本の仕事をして初めて、難しいことを簡単に伝えることが自分の得意技だったんだと気づきました。お金に詳しくない自分がこの仕事をやっていいのかなと思いましたけど、意外と需要があったので、最初から「自分はこれが得意です」というのがなくても、ほかの人が引き出してくれるから心配ないですよ。
戦略などの難しいことは詳しい人におまかせして、自分の得意なところで評価されることをおすすめしたいですね。
大久保:最後に読者へのメッセージをお願いします。
あんじゅ:何かを続けていると伸び悩むこともあると思うんですが、初期のお客さんはずっと成長している姿を見て喜んでくれるということを実感しています。成長こそがユーザーさんへの恩返しと思いながら日々前を向いて仕事に取り組んでいます。
手伝ってくれる人を大切にすることが次への原動力になったりもするので、ひとりで頑張ってらっしゃる方には、ぜひ手伝ってくれる人を見つけることをおすすめしたいですね。
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(取材協力:
漫画家あんじゅ先生)
(編集: 創業手帳編集部)