インバウンド戦略とは?必要性や成功のポイント、企業事例などを解説

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今がチャンス!インバウンド戦略を立てて業績アップを目指そう


新型コロナウイルスの影響によって2020年以降は日本を訪れる外国人の数が大きく減少しました。
しかし、2022年の後半から規制が緩和されるようになり、日本に来る外国人の数も回復傾向です。
そこで今回は、企業がビジネスを広げるためにも重要となるインバウンド戦略について考えていきます。
インバウンド戦略とはどういった仕組みなのか解説すると共に、取り組むメリットや成功するためのポイントなど、事業に役立つ情報を解説していきます。
業績アップを狙っている企業の方は、ぜひ参考にしてください。

インバウンド戦略とは?


まずは、インバウンド戦略が何なのか概要や必要性について見ていきます。

インバウンド戦略の概要

インバウンド(inbound)とは、直訳すると「内向きの」や「外から中に入ってくる」などの意味です。
ビジネスにおけるインバウンドは「訪日外国人」を指しています。
日本に来る外国人といえば観光客を思い浮かべる方もいますが、仕事や留学のために日本に訪れるケースもあります。
こうした方々の惹きつける施策がインバウンド戦略となり、観光だけではなく日常生活での消費行動を考えた戦略を立てることが重要です。

インバウンド戦略の目的としては、日本語や日本文化を理解していない外国人にも、日本のお店やサービスを利用しやすくし、機会損失や満足度をアップさせることです。
メニューを多言語化するほか、外国語を話せるスタッフをお店に配置するといった策がインバウンド戦略となります。

インバウンド戦略の必要性

訪日外国人は、日本の経済に影響を与えるといわれています。日本では、少子高齢化や物価高による影響で国内の消費額減少に悩まされています。
しかし、観光やビジネス、留学などで日本に来る外国人が増えれば、国内での消費が伸びていくため日本人の国内消費額減少をカバーできると考えられているためです。

  • 宿泊費
  • 飲食費
  • 交通費
  • 観光スポットでのお土産購入
  • サービスの利用

日本への訪問で上記のようなことを行ってくれるため、インバウンド戦略を立てれば経済の発展だけではなく、より満足のいく商品やサービスを開発するきっかけにもなるはずです。

コロナ後のインバウンドの現状


2020年から全世界で広がりを見せた新型コロナウイルスは、日本にも大きなダメージを与えました。
しかし、2023年にはコロナが5類に移行して環境にも大きな変化が生まれたのです。コロナ後のインバウンドの現状を解説していきます。

訪日外国人の数は回復している

コロナが流行し、国内外で移動制限が設けられました。日本でも海外からの渡航が禁止され、外国人観光客の数はほぼ0になる事態に陥ります。
また、ビジネスだけではなく留学も含めた外国人の入国が禁止されました。

しかし、2022年には1日の入国者数が1万人に引き上げられ、ビジネスや留学を目的とする訪日外国人の数も徐々に増え始めました。
2023年には入国者制限やワクチンの接種・陰性証明書といった水際対策も廃止され、外国人観光客の数も再び増え始め、2023年4月の訪日外国人の数は、約194万人といわれています。
これは、コロナ禍前の2019年と比較すると約66%の回復率です。

数多くの外国人が日本を訪れるようになりましたが、中でもアメリカやインドネシア、シンガポールといった国からは、2019年を上回るほどの外国人が日本に訪れています。
訪日外国人数が10万人を超えていた地域は以下の通りです。

  • 韓国:約46万人
  • 台湾:約29万人
  • アメリカ:約18万人
  • 香港:約15万人
  • タイ:約10万人
  • 中国:約10万人

中国人の訪日人数は約10万人となっていますが、2019年と比較するとまだ少なく、約14%に留まっているのが現状です。

2024年も訪日外国人は増加が見込まれる

インバウンド戦略を練るにあたり、気になるのは今後の訪日外国人の数です。2023年と同様に増加傾向となるのか解説していきます。
旅行会社のJTBから発表された2024年の旅行動向の見通しによれば、増加が見込まれているといいます。
予想としては3,310万人と過去最高数となっており、2019年と比較すると103.8%、2023年と比較すると131.3%の回復率となる見通しです。

水際対策が終了したことで日本への旅行がしやすくなったことに加えて円安の影響もあり、訪日外国人の数は回復傾向です。
中国のみ回復率が緩やかな傾向でしたが、着実に増加しており、2024年は個人旅行を中心として回復が進むと予想されています。

公益財団法人日本交通公社が発表した「DBJ・JTBFアジア・欧米豪訪日外国人旅行者の意向調査 2023年度版」によれば、「次に観光したい国」として日本が1位を獲得しています。
その結果からも、訪日外国人の数が増えることが予想できるでしょう。

インバウンド戦略に取り組むメリット


企業がインバウンド戦略に取り組むと、これから紹介する以下のようなメリットが得られます。それぞれを詳しく解説していきます。

新しい顧客の開拓につながる

インバウンド戦略を企てれば新規顧客の獲得につながります。
越境ECを活用したプロモーションといった対策を講じれば、新しい市場に対してビジネスチャンスを創出できるでしょう。
口コミを見て訪れる訪日外国人も増えるので、サービスの充実や外国人が喜ぶサービスを提供して新規顧客に繋げてください。

消費支出の増加によって高い経済効果が期待できる

訪日外国人が増加すれば国内での商品やサービスの利用者も自然と増えていきます。
その中でも買い物は、消費額全体の約4割を占めているといいます。
お土産といっても様々な種類があり、お菓子や小物雑貨以外にも家電や家具など、高品質な日本製品を求めて買い物を楽しむ外国人も多いです。
消費支出が増えれば、高い経済効果を期待できるでしょう。

地域の活性化につながる可能性がある

日本に訪れる外国人の中には日本の文化に触れることを目的としている方もいます。自国にない文化は、新鮮で興味をそそるためです。
文化財を保有している地方に訪れる観光客も増える可能性があるため、インバウンド戦略を企てることは地方活性化にもつながります。
貴重な体験ができれば帰国した先で、日本で目にしたことや体験した内容を広めてくれるでしょう。
その結果、さらに日本へ来る外国人の数も増えていくことが予想できます。

雇用の増加が期待できる

訪日外国人が増加すれば、宿泊施設や飲食店、小売業など、様々な業種で雇用促進も期待できます。
売上げがアップし、顧客が増えれば今のスタッフではお店が回せない可能性もあり、その場合はスタッフを募集する必要があります。
また、お店のファンが増えれば、「日本で働きたい」と考える外国人も増えていくでしょう。
外国人雇用により、人手不足を解消できるだけではなく、観光客との会話もしやすくなります。
外国人観光客の好みや知りたいこと、関心のあることなどもわかりやすくなり、外国人の視点でも接客できるようになる点もメリットです。
その結果、満足度も向上して口コミやSNSなどでの投稿が拡散されれば、より多くの訪日外国人がお店に訪れてくれるようになります。

インバウンド戦略の成功のポイント


インバウンド戦略を成功させるためにも、以下のポイントを意識して計画を立ててみてください。

外国人の目線でリサーチやブランディングを行う

日本人にとっては「良い商品」「魅力的なサービス」でも、外国人にとっては魅力を感じられないケースもあります。
反対に日本人にとっては魅力や特別感のないものでも、外国人にとっては魅力的に感じられるものもあります。
そのため、インバウンド戦略を練る際には外国人目線でのリサーチやブランディングが重要です。

  • 何が喜ばれるのか
  • どのようなことに興味があるのか
  • 求められていること

などを把握するためにも、アンケートを実施するほか、口コミやインターネットを活用して調査するのもおすすめです。
アンケートを取る際には、訪れた観光客に直接質問する以外にもSNSを活用して考えを聞く方法があります。

多言語で情報を発信していく

インターネットを活用すれば様々な情報を収集できます。外国人観光客も、日本の情報をインターネットやSNSを活用して調査する方は多いかもしれません。
しかし、ホームページやSNSで日本語ばかりで魅力を伝えても、外国人には内容が伝わりにくくなってしまいます。
多言語化して情報を発信すれば、多くの外国人に魅力が伝えられるので、コンテンツ作成時には日本語のみならず外国語を用いて発信してみてください。
多言語化に関しては、「インバウンド需要拡大推進事業」といった支援策もあります。自治体により補助金制度を設けている場合もあるので、ぜひ活用を検討してみてください。

「ここだけ」でしか味わえない体験を提供する

「ここだけ」でしか味わえない体験にも外国人は魅力を感じます。

  • 日本特有の文化や伝統に触れる
  • 美しい景色を堪能する
  • 美しい建造物を見る
  • 美味しいものを食べる
  • 技術力の高さを肌で感じたい

上記のような体験が好まれる傾向です。日本の文化としては茶道や武道といった伝統的な体験以外にも、「アニメ」も好まれる傾向です。
日本食人気も高く、お好み焼きなど自分で調理できるものはアクティビティとして楽しまれるケースもあります。
「○○作り体験」といったように外国人向けのサービスを提供するのもおすすめです。

インバウンド戦略で求められる主な施策


インバウンド戦略のためにも役立つツールをご紹介していきます。

多言語対応や決済サービスの導入

ホームページやSNSでの情報発信の際に多言語化することも大切ですが、店舗にある看板やメニューなども多言語に対応していると喜ばれます。
特にアレルギーや宗教的な理由から、食材を避けなければいけないケースもあり、メニューですぐに確認できれば安心です。

また、訪日外国人は現金よりもクレジットカードやスマホ決済のほうが利用しやすいと感じる傾向にあります。
現金が足りなくなれば支払いができなくなり、外国人はお店を利用できなくなってしまいます。
しかし、カード決済やスマホ決済、電子マネーを使用できれば問題ありません。
決済方法に関しては、店先に支払い方法を明示しておくとお店選びをしている外国人へのアピールにもなります。未導入であれば、導入を検討してみてください。

訪日外国人向けのSNS運用

InstagramやX、Facebookなどを活用して情報を集める訪日外国人も多いです。
商品の詳細やサービスの内容など、魅力を伝えるためにもSNSを活用し、アピールすると集客や売上げアップにつながります。
日本人向けのアカウント以外に訪日外国人向けのアカウントを作成すると、読みやすいのでおすすめです。
また、テキストだけではなく動画や写真を活用すると、より魅力が伝わる内容となります。様々な種類のSNSを活用して魅力を広めてみてください。

デジタルサイネージの活用

店頭や交通機関、公共空間などにディスプレイなどの電子表示機を設置して情報発信を行うシステムがデジタルサイネージです。
情報を発信するためにはパンフレットの配布も有効ですが、記載できる言語の数には限りがあり、印刷するためのコストもかかります。

しかし、デジタルサイネージであれば一定時間ごとに異なる言語に変えられ、情報の更新も容易になります。印刷費も必要ないのでコスト削減にもつながるでしょう。
動画やアバターも使用できるので、よりわかりやすい情報発信が可能です。

インバウンド戦略に取り組む企業事例3選


最後に、インバウンド戦略に取り組んでいる企業の事例をご紹介していきます。自社に戦略の参考にしてみてください。

店内で多言語対応・免税カウンター設置│A社 小売業

店内にあるPOPや案内表示を英語だけではなく、韓国語や中国語、タイ語など多言語対応させれば、多くの外国人が利用しやすいでしょう
在籍するスタッフにも外国語を話せるスタッフがいるほか、多言語対応のコールセンタ―も設置されているので、訪日外国人でも困った時にすぐに対応してもらえます。
また、消費税を免除して販売できる制度となる免税免許も取得しているため、免税カウンターが店舗に設置されています。
支払方法も日本円だけではなく、ドルやユーロ、台湾ドルや韓国ウォンなど、様々な支払いに対応しているので外国人が利用しやすいお店です。

英語アナウンス対応やSNSで魅力発信│B社 動物カフェ

動物カフェは、「体験」ができるお店として訪日外国人にも人気です。
語学堪能なスタッフが在籍しているため、動物との写真撮影や触れる際の注意点などを英語で説明することが可能です。
公式サイトでは、日本語だけではなく英語やフランス語、中国語に表示を切り替えできるので、日本に来る前にどういったお店であるのかをチェックできます。
また、SNSでの発信も精力的に実施しています。Instagramでは動物の特徴について、FacebookやXではイベント情報の発信などを実施し、公式サイトには掲載されていない細かい情報までも収集できる仕組みです。

団体向け飲食店予約サービス導入で業務効率化│C社 飲食店

団体向け飲食店予約サービスを活用すれば、日本に訪れる海外の団体旅行客の集客を目指すことも可能です。
訪日団体をターゲットにしたプラットフォームとなっており、飲食店の手配を実施する旅行会社を対象にしています。
予算やエリア、食事の内容や希望時間帯などを条件として入力するとマッチした飲食店が検索結果に表示される仕組みです。
予約だけではなくキャンセルも予約サービス上で行え、業務効率化も図れます。

  • 忙しい時間の予約を控える
  • 平日のみ予約できるようにする

 
といった設定も可能なので、アイドルタイムの解消にもつながります。

まとめ・インバウンド戦略のメリットを理解して計画的に取り組もう

コロナが5類に移行し、海外渡航者への水際対策もなくなりました。その結果、日本を訪れる外国人の数が増加傾向にあります。
2024年も増加が見込まれているので、インバウンド戦略に力を注げば、集客や売上げアップ、そして経済の発展に大きな影響を与えるでしょう。
インバウンド戦略のメリットを理解し、今回ご紹介したポイントを踏まえながら自社でもできる戦略を練ってみてください。

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(編集:創業手帳編集部)

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