注目のスタートアップ

認定NPO法人グローカル人材開発センター 行元沙弥|グローカル人材育成の事業展開で注目の企業

グローカル人材育成事業で注目なのが、行元沙弥さんが現代表を務める認定NPO法人グローカル人材開発センター(以下、グローカルセンター)です。行元さんは2013年創業時、大学生で創業メンバーとして携わり、2020年6月より代表理事に就任されました。

『グローカル』という言葉が耳慣れないという方もいらっしゃるかと思います。『グローカル』という言葉は正式な単語ではなく造語です。世界規模を表すグローバルと、地域を現すローカルを組み合わせて出来ているのが『グローカル』という言葉です。
世界各国との距離が縮まり、世界規模で解決すべき課題や取り組むべきプロジェクトが増加してきた現代、安易に周りに迎合したり、ある特定の文化風習を批判したり、世界を均一化したりするのではなく、多様性を認め合い、各地域の良さや特長を活かし合いながら、それぞれの不合理な部分を改善しつつ、世界をシームレスな一つの輪にしていくことが肝要です。

つまり、世界規模に立った考え方やモノの見方をしつつ、地域や地元の文化や価値・資源をきちんと把握・理解し、社会に有益なことを還元したり創出したり出来る『グローカル人材』の輩出がますます重要度を増しているのです。

グローカル人材の育成・輩出には、様々なバックグラウンドや経験を持った人同士の関わりが欠かせません。社会、企業、学校、地域、行政などが繋がり合い、老若男女・世代・国籍を問わず交わり合えることで、互いに刺激を受け、学び合い、気付き合い、それがイノベーションに繋がっていくものだと思います。

今、そうしたグローカル人材を育成し、輩出していく取り組みに、大きな注目が集まっています。

グローカルセンターのグローカル人材育成事業の特徴は、特にこれからの世界を担う若者の感性を中心に、世代を超えたプロジェクトチームを組み、複雑性を増す様々な社会課題と向き合い、解決に向けた取り組みに挑戦する機会創出を実践し続けている、という点です。

グローカルセンターの行元沙弥さんに事業の特徴や今後の課題についてお話をお聞きしました。

・このプロダクトの特徴は何ですか?

「教育」「人材育成」というと学校を連想されがちですが、GLOCAL CENTERは「教育の社会化」を鍵にまち全体で10年間人材育成を行ってきました。教員だけではなくさまざまな社会人に若者教育に参画してもらうとともに、若者からの気づきが上の世代にフィードバックされる仕組みができています。学生・若者の感性や疑問を社会に届けることを重視し、学生と社会人が共通の問いや課題のもと集い一人の人間として真に教え学び合い、学び続けられる場となっていることがGLOCAL CENTERの特徴です。

・どういう方にこのサービスを使ってほしいですか?

社会人は、「〇〇をしたい、けどどうやっていいか分からない。」「部署や部門どころか、地域や管轄や国を横断しないと解決できなさそうな問題に直面している!」という方、そして本気で若者を面白がって、応援するのが得意という方。

学生は、「このままじゃいけない、だけどどこからなにをしたらいいかわからない。」「 挑戦したいけど不安だな」という自分の中に想いをくすぶらせている人。「一人だと不安だけど、みんなでならやってみたい!」という人。1人1人がもうすでにある力に目を向ける。他の誰かになる必要はなく、自分自身になるための時間はここで過ごせると思います。

・このサービスの解決する社会課題はなんですか?

根底にあるのは、若者の声が届かない閉塞感漂う社会。そこに人材育成を通じてアプローチしていますが、学生たちとともに扱う社会課題が、ワンイシューではないのが特徴です。

‶働く” にまつわる課題や業界の課題は設立当初から大きく扱ってきたのですが、最近では、貧困、気候変動、廃棄にまつわる複雑で難易度が非常に高い問いを高校生大学生と一緒に眺める時間が多く、外部からもそうした相談をいただくことが増えました。

日本はここ数年、ジェンダーギャップ指数を120位から脱することができていませんが、企業の掲げる課題も、業界や地域・国を横断しないと解決できなさそうなものばかりです。大きな問いは様々な人を内包するので、NPOの強みを発揮してテーマごとにプロボノや各分野のプロフェッショナルにチームに入っていただいて、次世代と一緒に全体を眺め実践しようとしています。社会課題はみんなで考えないと立ち向かうことができないなと痛感しています。
学生が持っている問いは大人も一緒ということが多いです。誰もやってなくて難しそうだなと思うことは、よりよい社会のために乗り越える課題につながっています。

・創業期に大変だったことは何でしょう?またどうやって乗り越えましたか?

創業当時は、まだ日本ではSDGsという言葉もなく、NPOで働くということ自体が珍しい時期。「教育システムをアップデートしたい」「企業と学生の機械的な接点の在り方を変えたい」と言っても当時学生だった私の言葉を本気に受け取ってもらえなかったり、「NPOはボランティアでは?ビジネスにできるのか?」「NPOで働く?」という反応も多く、共感いただけるのも中々大変でした。

そういう中で、最初に面白がってくれて、こちらの熱意を受け止めて共感してくださったのは、創設者・現事務局長の中谷と前代表の榊田さん。大学の教育改革と企業風土変革をセットで進める戦略を立てた設立代表者とともに、教育システムをアップデートするために奔走する日々で、異なるセクターを同時に動かすレバレッジポイントを探すことでそれを乗り越えました。 

・どういう会社、サービスに今後していきたいですか?

●NPOの強みを活かしたコンテンツを提供していきます!
企業も行政も手が届かないからこそ、どこにも分類されない課題があります。だいたいの問題は横断型でないと解決できないのに、当事者不在でみんな個々にバラバラに取り組んでいるなと感じることが多いです。NPOだからこそ扱える価値。
グローカルセンターに集う人の生き方や感性を通じて、世界中の繋がるべき人たちがそのテーマや問題意識を通じてゆるやかに出会う。チームができる、また旅に出る、帰ってくる。そんな循環を創りたいと思っています。「うわ、行き詰った」という時に「ああ、ここに来たらなんとかなるかも」という兆しや実感を感じられる時間を提供したいです。

●企業×NPOの可能性を探求したいです!
それも、高校生や大学生の視点と感性を起点にして大人が思いっきり乗っかるような!
シリア紛争、LGBTQ、働き甲斐、海洋汚染、貧困の課題などどれも高校生が取り組みたいと発案してくれたテーマです。こうしたテーマに大人が個人として組織としてどんどん乗っかって一緒に前に進んでもらえるような、学生が変化や次のスタンダードを牽引していくような光景を見たいです。
どんどん大人が学生のフォロワーになるってかっこよくないですか?

これは、結果持続可能なまちづくりにも通じる、自分たちがいなくなっても残る仕組みをつくらないといけないと思います。
「つくりたい文化や当たり前を生み出すために、社会性を第一義に動けるNPOという器でその仕組みを残そうとしている」のだと思います。

だれかのなにかを始める(創る)場面に立ち会えるしくみを未来に。

・今の課題はなんですか?

まず、人材育成にかけられているお金が先進国で最下位レベルということです。
まだまだ、人材育成はコストとして捉えられている傾向が強いです。
また、学生を未来の象徴として対等なパートナーとして捉えるという眼を持った大人をもっと増やしていくことが課題です。

・読者にメッセージをお願いします。

・社会人の皆さんへ
学び続ける、若者に教わり続ける大人になるには、成功体験や学んだことをあっさり手放す力すなわち個人のアンラーニング(積み減らし)が必要です。そして、若者は大人が傍で見守り、耳を傾け、場をつくるだけでものすごい力を発揮したりします。
未来の世代とのActionで、これからの世の中のストーリーはいくらでも変えられる。それらは、まだ何者でもない未来の当事者である若者の力を信じる大人が鍵となり動かされていくと信じています。
次世代の感性で社会が創造的なほうに導かれる未来を一緒にみませんか?

・学生のみなさんへ
京都には、数多くの世界に通じる老舗企業やベンチャー企業が存在します。
足元のLOCALに、みなさんの力を必要として、待っている人が必ずいます。
社会の変化やコロナ禍により業態変容が迫られる中、「次世代の視点を実装したい!」
「一緒に次の社会に向けて価値を創造したい!」という、面白い大人がここには沢山います。
わたしたちと一緒に世界を切り開きませんか?

会社名 認定NPO法人グローカル人材開発センター
代表者名 行元沙弥
創業年 2013年
社員数 7名
事業内容 若者の声が届く「風通しの良い社会を創る」を理念に、GLOBALな視野でLOCALで活躍するグローカル人材の育成を地域全体を巻き込んでALL KYOTOで行っています。次世代の感性で既存の社会に風穴があけられ、次のスタンダードがつくられる。そんな有機的な循環を創るためにセクターを超えたプラットフォームを通じて、高校生、大学生、若手社会人対象の人材育成(PBL課題解決型学習、アクティブラーニング)や採用・就職支援、留学生就職サポート、産官学の連携、次世代リーダー育成のための研修事業等を行っています。
Y[youth] × X[something]=CC[Creative City]、Future Makerである若者が自由闊達にプロジェクトに取り組んでいくまちこそが創造的な都市になる、ということをモットーに一人ひとりの変化を促す学びと実践の場を提供することで、個人の生き方の選択肢を拡げる活動をしています。
サービス名 グローカル人材育成事業、実践と対話を通じたセミナー研修事業
所在地 〒602-8061 京都市上京区甲斐守町97番地 西陣産業創造会館2階
代表者プロフィール 1988年生。2013年グローカルセンター設立に携わり、2020年6月より現職。教育システムのアップデートと人材育成を通じて若者と社会の接点のあり方を変えることで、社会課題にアプローチしている。地域と世界を往復する学びと実践と変容の場づくりを京都をベースに全国・アジアへ展開している。
読んで頂きありがとうございます。より詳しい内容は今月の創業手帳冊子版が無料でもらえますので、合わせて読んでみてください。
カテゴリ 有望企業
関連タグ アクティブラーニング グローカル人材開発センター ワークショップ 人材育成 探求学習 研修 行元沙弥
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